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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科7巻13号

1953年12月発行

雑誌目次

原著

妊婦の末稍循環機能檢査—特に自律神經との關係に就て

著者: 玉井硏吉

ページ範囲:P.859 - P.867

I.緒論
 妊娠と自律神經との間に密接な關係があることは周知の事であり,殊に妊娠中毒症の際に該神經が失調を來すことは多數の學者の齊しく認める所で,その失調の程度は中毒症の予後に大きな關連を持つものとされているが,若し自律神經に失調を來せば,同時に血管運動神經に變調を與え,循環機能に影響を及ぼすことは十分老えられることである。一於末稍循環機能状態の検査法としてBickenbachの發表した起立試驗がある。之は重力による末稍血管えの血液鬱滞の爲に起る血壓降下の程度を検査する方法であつて,從來は手術の適應,予後の判定に用いられて來たものであるが以上述べた樣に妊娠中毒症の際に自律神經が失調を來すとすれば,此の場合末稍循環機能検査法である起立試験も何等かの變化を受けて不思議でない筈である。元來妊娠中毒症の予後判定は頗る重要な問題であって,特に前半期妊娠中毒症である惡阻の予後に關しては,それが最も多く見られるものであり,又一歩を誤まれば母體の生命にも危険を及ぼすので,極めて慎重に制斷すべきものであり,現在では體重尿量の減少,尿中蛋白アセトンの増加,血中カリウムの増加,或いは發熱,脈膊の細小頻數,腦症状の發現等を以て予後不良の徴としているのであるが,先に述べた如く妊婦の自律神經系と起立試驗との關係を明らかにすれば,本法によつて妊娠中毒症の予後を或る程度迄判定することも可能となる筈である。

妊娠5カ月以後の妊娠中絶法

著者: 篠塚達三

ページ範囲:P.869 - P.872

緒言
 妊娠5ケ月以後の人工妊娠中絶には種々の方法が發表されているが,未だ滿足出來る方法は發見されていない。メトロイリーゼ,ブジールングは娩出迄に比較的長時間を要し感染の危險があり,アブレル氏方法は比較的確實であるが時に不慮の危險を招く。最近種々の溶液を卵膜子宮壁間に注入する方法が發表されている。私は以下述べるような種々の方法を行つて見たので比較發表する,尚全實驗例共施術直後鹽酸キニーネ1gを2時間毎に3回に分服させた。

症例研究

機能性子宮出血の1治驗

著者: 久保健太郞

ページ範囲:P.873 - P.876

 筆者は所謂機能性出血に對する治療法特にste—roidhormonを以つてする治療方式に充分なる理論的根據並びに臨床的治驗を有しないため,機能性出血につき総括的論説を行うことは出來ない。唯最近經驗せる數例の機能性出血について若干私見を記述したいと思う。
 機能性出血に於ては,Alien, Hisaw, Gardn—er, Novakの見解の如く,腦下垂膿機能不全に基くEstrogen,Progesterone失調による子宮粘膜出血が見られ,此の考えは文献上或いは筆者の從來の研究からも妥當であると考えられる。即ち卵巣には殘存臚胞,子宮粘膜には細小血管特に螺旋血管の攣縮性收縮,血管壁及び間質の變性,壞死が見られる。思春期出血,更年期出血と稱せられるものは機能性出血の典型的なものにして,Schroederの所謂出血性メトロパチー或は其他の無排卵性出血は之に類し,大體臨床的意味に於て無排卵性,卵胞期性出血を示すものである。

胎兒を伴った部分性胞状奇胎の2例及び胞状奇胎の成因に關する一考察

著者: 五十嵐正雄

ページ範囲:P.879 - P.884

 胞状奇胎では奇胎組織以外,子宮内に胎兒を發見出來ないのが普通であるが,稀に胎兒又は浸軟兒を合併し,又極めて稀には成熟兒を伴い分娩時相前後して娩出された例が報告されている。著者は胎兒を併つた部分性胞状奇胎の2例をこゝに報告すると共に,現在尚未解決の問題である胞状奇胎の成因に關して,經驗例の検討と文献考察との結果から一考察を試みたいと思う。

下腹痛を主訴とせる肥大卵巣下垂例

著者: 富松俊行 ,   成田富士郎

ページ範囲:P.884 - P.886

緒言
 産婦人科醫を訪れる患者のうち腹痛を主訴とする者の多い事は周知の通りであるが,腹痛は産婦人科的疾患から來る場合と,その他一般内外科疾患等による場合とある爲に,特に類症鑑別に留意する必要ある事は言う迄もない。而して此等の類症鑑別に際し,内診所見を知り得る我々産婦人科醫は,他科の醫師よりは遙かに有利なる條件を有する強みがある。それでも尚原因不明で,しかも慢性の疼痛を訴える一群の疾患が婦人科領域に存在し,毎常その適確なる診断及び治療に困惑させられるものである。急性腹痛を主訴とするものは屡々重症疾患の徴候である事があり,確診を下し得ない場合は試驗開腹の適應となる事が多いが,慢性の場合には保存的療法に終始する事が多い。しかし別の目的で開腹して初めて慢性腹痛の原因を確め得た例も少くない。
 最近當教室に於て,頑固な下腹痛を主訴とし,確實なる診斷を下し得ぬまゝに卵管結紮も行う目的で開腹し,開腹の結果,骨盤鬱皿,子宮及び子宮頸鬱血並びに所謂嚢腫性卵巣下垂症の確診を得その爲に慢性の下腹痛を惹起したと思われる1例を經驗したので,こゝに報告する。

急性白血球減少症に對するシスチン製剤(パニールチン)の効用(第I報)

著者: 牧野甲子二郎

ページ範囲:P.886 - P.890

緒論
 惡性腫瘍の療法としては,手術,局所的レントゲン深部治療或はラヂウム等の放射線療法を以つて唯一の手段とされて居たが,此處に新しく細胞毒又は分裂毒に依つて腫瘍細胞のみを發育抑制し之を治療せんとする所謂全身的化學療法劑なるものが出現するに至つた。之等關係化合物に關する同樣の研究が數多く發表される樣になつたが今日迄その基本化合物であるtris或はメチルビス—β—クロールエチルアミン鹽酸鹽即ちナイトロヂエン・マスタード(以下ナ・マという) A及Bとこれ等の中でナ・マ類のN-oxide殊にメチルビス—β—クロールエチルアミン—N—オキサイド鹽酸鹽(ナイトロミン)が現在治療の目的に使用せられている。
 一般にナ・マ類の作用は生體内で變化して一種の四級アミンであるエチレンイモニウム型(III)となつて發現するものとせられており,毒性の點はナ・マAよりBが弱くN-oxide鹽酸鹽は約1/10であると云われている。副作用として自覺的に食慾不振,惡心嘔吐,頭痛,全身倦怠が最も多く,手先のしびれ,發熱(39℃に達することあり,のぼせ感等があり,他覺的に注射局所血管の狹窄,皮下出血斑,血尿等あり特に顯著なのは血液に及ぼす影響で著明な白血球減少症を惹起する。總じて青年期以後の婦人にあつては之等の副作用は殊更に顯著な場合が少くなく,小兒はかえつて副作用が少いと云われている。

廣靱帶内血腫2例

著者: 庄司忠 ,   金谷富生

ページ範囲:P.890 - P.891

緒言
 子宮外妊娠時の腹腔内出血量に就ては個々の例に於て非常なる相違があつて,少い場合には殆ど認められない樣な場合もある(藤井)。而も特殊な例としては腹腔内出血を見ずして専ら廣靱帶内血腫を形成する場合もあり得る。既に我國に於て矢內原,櫻井氏等の報告例がある。
 余等も最近明らかにに本症に該當するもの一例と本症を疑はしむるもの一例とを得たので茲に追加報告する。

卵巣嚢腫と誤りし巨大膀胱擴張症の1例

著者: 關英敏

ページ範囲:P.893 - P.894

I.緒言
 卵巣腫瘍は臨床上屡々遭遇するが故に,却て鑑別に困難を感ずる場合があるが,最近私は卵巣嚢腫の診斷の下に開腹手術を行つた結果,測らずも巨大膀胱擴張症とも云うべき珍しい症例を經驗したので,大方の御參老として報告し御批判を仰ぐものである。

皮樣嚢腫莖自然離斷の1例

著者: 山本弘

ページ範囲:P.895 - P.896

緒言
 卵巣嚢腫の茎自然離斷はMorgani(1748)が屍體解剖時に始めて發見し,手術時に發見したのはMartin(1892)を嚆矢とす。以來今日迄本邦に於ても數氏の報告をみるが未だ比較的稀なものである。私も最近1例を經驗したので茲に報告する。

診療室

リンパ節剔出後に發生するリンパ溜腫の檢討

著者: 原田肇 ,   佐川秀逸 ,   石井竹三

ページ範囲:P.897 - P.900

緒言
 リンパ溜腫とは,小林がリンパ節廓清研究中發見し,13例を報告したリンパ潴溜症と同一のものである。著者も昭和27年7月より,墨汁によるリンパ節生體着色を行ひ,リンパ節廓清の徹底化,リンパ系の解剖を研究中當教室にも發見された。詳細に調査すると非常に多いので,臨床觀察を行い,發生頻度・時期・經過・特異例・成立機序・豫防法等に若干の知見をえた。

逆算式妊娠歴計算器の考案

著者: 田中敏

ページ範囲:P.900 - P.901

緒言
 兒童福祉法による妊婦手帳の制定以來,醫師による妊婦の診察及び保健指導が徹底して來たのはまことに喜ばしい事であるが,妊娠時期の診斷は容易でなく,多數の妊婦を検診する場合,岡林式等便利な計算器を用いても仲々馬鹿にならない時間をとるものである。
 私は計算方式に趣きを異にした妊娠歴計算器を考案し,使用しているが甚だ便利と信するので,こゝに報告する。

婦人科局所止血劑としてのアルギン酸曹達鹽の効果

著者: 國貞勝子

ページ範囲:P.901 - P.906

緒言
 現在我國に於ける外科,産婦人科,耳鼻科等領域に於て,實質性出血及び局所出血に對する處置に際し,困難を感じる場合が,かなり多く存在する。私は之に對してアルギン酸曹達鹽比較的濃度高率の液を用い,産婦人科的に慮用し,止血劑としての効果を擧げ,從來の綿花フエストタンポン等による副作用(發熱等)を輕減し得たので報告する。
 このアルギン酸曹達鹽とは,從來工業用として廣く用いられ,その驚異的な高粘性によつて乳化液の安定劑,分散劑並びに粘強劑として獨自の性能を示し,食料,アイスクリーム,製菓,化粧品紡織,捺染,歯科材料,ゴム,水性塗料,裝紙工業等に急速な發展を遂げ,從來のそれらの製造技術を革新したところが多いといわれている。醫學的には最近ば大友田教授により,アルギン酸曹達鹽の精製品を代用血漿として大出血後の虚脱等に効果を認め,又増血作用のあることを報告したが以來各方面に於て應用されるに至り,又この止血作用に就いても研究が行われ,特に1946年C.A.Smith氏により.止血剤としての利用を報じられて以來注目されて來た。

産婦人科領域に於ける開腹術後療法に關する研究補遺—その2 當病院に於ける調査成績

著者: 內野久 ,   村山文子 ,   水野哲義 ,   吉浜善述

ページ範囲:P.906 - P.909

本篇に於ける研究の動機として
 元來,婦人科領域に於ける開腹術では,獨力で歩行して入院した患者,即ち健康體,或はそれに近い患者にメスを加えることが多い。

速報

腦下垂膿前葉の機能と其の細胞配分に關する研究(續き)

著者: 伊藤美禰子

ページ範囲:P.911 - P.916

V. Estrogen過量投與による前葉細胞の變化
I.緒言
 一般に正常動物に男性Hormon物質,發情H-ormon物質を續けて注射し,注射量が過大であると色素好性細胞の顆粒消失がおこる。Wolfe27)(1933)によれば白鼠に卵胞Hormonを注射すれば色素好性細胞の顆粒並に數の減少及び色素嫌性細胞の數と大きさの増加を見る。Cramer, Horming28)(1936),Gradner, Strony u.Smth29)(1931)等は同樣の事を唱へた。又Wolfe30)(1935)は成熟雌白鼠に1日Oertron 200 RE 12日間注射すると卵巣は黄體形成著明で腦下垂體の重量は,正常より著増し又β細胞の顆粒減少を見る。これは妊娠尿の投與と同樣の組織學的變化であると述べてゐる。Hohlweg31)(1934)は幼若動物に100REの卵胞Hormonを注射すると,4週間後にγ細胞は不鮮明な細胞境界とChromatinに乏しい核を有する樣になり,α細胞と同樣に變化すると報告している。Smith (1947)は正常雌白鼠にEtrogenを注射しても下垂體,副腎の重量は少し増量すると唱へた。

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臨牀婦人科産科 第7巻 總索引

ページ範囲:P.919 - P.924

科別索引
産婦人科
産婦人科領域に於ける副腎皮質…………………1號— 5

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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