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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科7巻6号

1953年06月発行

雑誌目次

グラフ

卵巣甲状腺腫の1例

著者: 加藤俊 ,   木口駿三

ページ範囲:P.311 - P.311

位相差顯微鏡による新産兒腟内容の細胞學的研究

著者: 原田浩

ページ範囲:P.312 - P.312

原著

位相差顯微鏡による新産兒腟内容の細胞研究

著者: 原田浩

ページ範囲:P.313 - P.316

I.緒論
 Papanicolaou1)が人腟内容中の細胞にも囓歯類のそれに於けると同樣に周期性變化が認められると發表して以來,これに關する幾多の發表をみるがNovak5)は腟上皮の周期性變化に關しては信ずべき定説なしと唱えて居る。然も腟上皮が卵巣ホルモン殊にエストロゲンに感じ易いことは疑のないことであるから,性周期の異なれる時期に於て腟内容中の細胞に變化を來すのは當然のことでこの間の消息を裏書きするものであると述べている。
 この樣に成熟婦人の腟内容中の細胞の變化に關する文献は比較的多いが,新産児のそれは比較的少く我國に於ては木内6),石川7)の報告をみるのみである。而して位相差顯微鏡(以下PCMと略す)によりそれを生態形態學的に觀察せるものはなく,ただ新産児の腟内容中のDöderleinの桿菌につき濱田12)が報告したに過ぎない。

女子性器結核の化學療法(第3報)—ストレプトマイシン各種投與法とその血中及内濃度について

著者: 勝山信一 ,   三浦道達

ページ範囲:P.316 - P.318

緒言
 1947年Greenhillは女子性器結核症の根治手術を行う際にはストレプトマイシン(以下S.M.と略記す)使用が有效であることを示唆して以來Schaupp (1949)其の他の症例報告が散見され本邦に於ても2,3の報告があり,わが教室でも一層良好の成績を擧げている。併し其の投與法に關しては筋肉内注射法だけで,他の方法に就いては未だ行われていない。
 吾々は本症の治療に際して,局所病巣のSMの濃度をなるべく高く且つ長く保持する目的で,普通の筋肉内注射法の他に子宮腟部局所注射,子宮卵管内注入を試みて,其の際の血中濃度を筋肉内注射の場合のそれとを比較したのでこれをこゝに報告する。

Prostigmin檢査法に就て

著者: 長野正男

ページ範囲:P.318 - P.322

 1940年Soskin1)等により一妊娠早期診斷法として發表されたProstigmin-Test (Soskin-Test)は,近年ではむしろ機能性無月經の有力な治療法として推奨する者が多い。R.Elert2)による10年間の文献の統計によれば,奏效率91.3%で,子宮内膜が増殖期を示すものに最も效果的である。
 余は機能性無月經を對象とし,無月經を主訴として外來を訪れたものの中,Mainin反應により妊娠を除外したものに就て臨床實驗を行つた。

擦過塗抹標本に現われる子宮頸管粘膜圓柱上皮細胞について

著者: 和田一男

ページ範囲:P.322 - P.325

 1943年G.N.Papanicolaou & Trautが腟内塗抹標本法による子宮癌の診斷を發表して以來,各方面に於ける塗抹標本法の研究は,盛に追試検討され,特に現在産婦人科領域に於ては日常缺くべからざる診斷法となり,吾々も之に依つて臨床的癌診斷上に多大の成績をあげつゝある。尚お慶應義塾大學醫學部産婦人科教室に於ては,安藤教授御指導の下に改良された擦過器を用い,(慶應式擦過器)扁平圓柱結合部から,擦過塗抹標本を作成し,Ayreの擦過器に依るよりも更に大なる效果をあげている。
 元來塗抹標本法は,子宮頸管粘膜圓柱上皮細胞が混入する頻度が多く,此の細胞は屡々大きさ,大小不同,染色性,核の活動状態,核と原形質との割合等に於て惡性細胞に相當類似した形態を示し,その判定上僞陽性になる事も少くない。從つて私は特に此の點に留意して塗抹標本判定に當つているが,今迄の所,悪性細胞と子宮頸管圓柱上皮細胞との明確な判定基準に關して言及した報告を見ないので,500枚の子宮頸管粘膜擦過塗抹標本を作成し,その細胞の特徴につき検討を試みた。

警友病院における昭和27年度子宮癌篩別檢診について(第1報)

著者: 長內國臣 ,   渡邊茂人 ,   齊藤博

ページ範囲:P.325 - P.326

はしがき
 横濱の警友病院においては昭和26年9月以降,前醫長尾島信夫博士(現慶大助教授)の提唱により,35才以上の外來患者に對して子宮癌篩別検診を行つていた。この第一次成績としては自昭和26年9月至昭和27年3月の神奈川縣下4大病院(神奈川濟生會,川崎鋼管,川崎市立及び當院)の綜合成績として,既に昭和27年度日本産婦人科學會總會で發表1)したところであるが,吾々も引續き本法を施行中であるので,その後の4月以降における昭和27年度の當院のみの成績を續報する。

症例研究

卵巣甲状腺腫の1例

著者: 加藤俊 ,   木口駿三

ページ範囲:P.329 - P.330

I.緒言
 卵巣甲状腺腫は稀なる腫瘍で,文献上に於ては所謂卵巣特殊性腫瘍中Kermauer2.5%のを最大とし,A.Meyerの0.3%Batisweiler0.5%等と大約0.5%内外の頻度を示しているに過ぎない。我國に於ても現在迄に僅かに14例の報告をみるのみで,慈惠醫大産婦人科教室に於ける卵巣特殊性腫瘍蒐集450例中に於ても僅かに2例(0.4%)の該腫瘍を認めるに過ぎない。筆者等は最近卵巣甲状腺腫と子宮腟部癌の合併例を經驗したので此れを報告する。

卵巣僞粘液腫の1例

著者: 藤田眞助

ページ範囲:P.333 - P.334

緒論
 屡々多様の腫瘍を發生する卵巣に於て,最もその發生頻度の大なるものは僞ムチン性嚢腫でありその特異型なる卵巣僞粘液腫は極めて稀なものである。本症は甚だ僞ムチン性嚢腫に類似するも次の點により明確に區別せられるものである。即ち①嚢腫壁は甚だ菲薄で容易に破れる事。②内容は甚だ粘稠で灌注性を缺如する事。⑧内容排出により腹膜僞粘液腫を續發する事。④内容はβ僞ムチンより成る事。等である。余は最近本症の1例を經驗したので報告する次第である。

腹膜僞粘液腫の1例

著者: 渡部三郞

ページ範囲:P.334 - P.335

 腹膜僞粘液腫は卵巣性と虫樣突起性とより來るとされ,卵巣性のものが多く,比較的稀な疾患であり且高年者に多いと記載されているが,私は最近若年者に於ける1例を經驗したので報告する。

子宮頸癌の恥骨轉移の1例

著者: 舟橋良治 ,   端野博康

ページ範囲:P.337 - P.338

緒論
 子宮頸癌の轉移好發部位は,骨盤内淋巴結節の他肺肝腎骨等であり,その骨轉移は比較的稀なものとされている。A.Schonbergは564例中5例0.83%R.Roshは233例中1例0.43%と稱しE.Philippは5〜15%と云つている。骨では腰椎,骨盤,大腿骨,頸骨等で,遠隔骨への轉移は更に稀なものとされている。本邦においては,昭和八年安藤教授の報告以來諸學の報告があり,恥骨轉移についても,水野,尼木等の報告があるが比較的めずらしい症例なので報告する。

頸癌手術による腹壁移植再發の1例

著者: 原田肇 ,   石井竹三

ページ範囲:P.338 - P.341

緒言
 癌腫の蔓延は原發巣から連續的に擴大することが多いが,一方非連續的に遠隔部位へ蔓延することがある。その方法には淋巴道轉移,血管道轉移,接觸轉移,移植の方法が考えられる。その内淋巴道によるものが最も多く,次いで血管道によるもので移植再發は極めて稀だとされている。
 我々は子宮頸癌の子宮單純全剔除術後腹壁手術瘢痕部に移植再發したと思われる1例を維驗したので此處に報告する。

一部胞状奇胎兼妊娠7ヵ月生活胎兒共存の1例

著者: 齋藤成一

ページ範囲:P.341 - P.342

緒言
 最近私は,下腹部の陣痛用疼痛と強度の子宮出血の主訴の下に入院した患者に就いて,一部胞状奇胎兼妊娠7ヵ月生活胎児を共存した1例を經驗したので,次に其の概要を述べて,諸賢の御批判を仰がんとする次第である。

妊娠9ヵ月に合併した蜘網膜下出血の1例

著者: 吉元昭治

ページ範囲:P.342 - P.346

緒言
 蜘網膜下出血は古くから知られWilks (1859)の例を以て初めとしQuinke (1981)が腰椎穿刺を行うに至つて確定した。妊娠に合併した本症は稀有なもので歐米では,Stroink (1936)の分娩後數時間で起きた1例Moskowitz及び,Schnei-der (1938)の分娩中の3例,Dahle (1946)の妊娠中毒症によると思われる3例,Carber及びMaier (1948)は妊娠中の2例と,分娩後の3例を,Pancot及び,Galleは梅毒によるものを1例.Gershenfeld及び,Savel (1950)は分娩後3日の1例Trodella (1952)は同じく分娩後3日に起きた1例を夫々報告している。本邦では,長澤(1930),藤田(1937),風野(1938),橋本(1941),國井(1942)林(19 3,49)等の報告を見るのみである。最近我が教室に於て妊娠9ヵ月に突然本症を合併した1例を經驗したので報告する次第である。

診療室

人工造膣術,殊にシュウベルト氏手術治驗

著者: 益田壽 ,   末廣泰祐

ページ範囲:P.347 - P.349

 腟缺損症とて必ずしも性的缺損でないから本疾患・殊に其先天性の者であつて,成熟期に達してる婦人では啻に人生の2大慾望の1を充たし得ないのみか,精神的の影響はより大きく,自己の不運を託ち,世を呪い,人を憾み,悶々の極あたら1命をも擲つに至ることさえある。だから斯かる奇形を除去して患者を精神的打撃より解放さし,以て性的生活を可能ならしめ,能う可くんば擧児の希望さえも獲得せしめんと努力した先入が寡くない。曾て町野教授は本症にSchubert法を應用した6治驗例を報告しているが,其後同教授執刀の下に行われた6治驗例を更に迫加報告するに當つて先ず諸造腟術の大要を記述することとする。

皮膚埋沒縫合法(續報)

著者: 矢內原啓太郞

ページ範囲:P.351 - P.352

 皮膚埋沒縫合法は30餘年前本田操氏の創案による本邦獨特の技術として發表せられたもので,筆者も既に追試實驗例を報告したことがあつた。(産科と婦人科第6巻2號,同仁醫學第10巻3號)。その後術式に多少の考按を加え實驗も數百例に達したことであるが一般にはあまり實施されていないように見受けられるために,續報を試みた。近時米國では分娩時の會陰縫合には專ら埋沒法が行われている模樣で日本人の特技でもないらしい。
 手術の本態から云えば手術創ことに腹部手術の創痕の美醜の如きは末葉のことであるが,人情から云つても更に目立たぬようにしたいことは患者にも術者にも望ましいことである。縫合糸や鈎の如きものを皮膚表面に殘したのではそれを除去する手數を要し患者にはその恐怖と多少の苦痛を與え,創痕も一條の細い線だけに止め難いが埋沒縫合では拔糸拔鈎の必要がなく創痕も目立たないしその上術後の經過を著しく短縮し,在院日數を少くする便利がある。

境界領域

婦人陰部水腫

著者: 中島哲夫

ページ範囲:P.353 - P.358

緒言
 婦人陰部水腫(水瘤)は女性水腫Hydrocelefemina s.muliebris,Nuck水腫HydroceleNucki,Nuck嚢胞,大陰脣水腫,女性鼠徑水腫とも呼ばれ,子宮圓靱帶水腫Hydrocele lig.Ro—tundi ut.(子宮鼠徑索水腫Hydrocele chordaeuteroingrulinalis)の主因をなしている。本水腫は男性の精系水腫に略々相當するものであるが,精系水腫に比して甚だ少い。外國ではWechsel—manが1890年に既に文献上の60例に自己の2例を追加報告しているといわれ,以後尠からざる報告例があるが,本邦に於ては,文献上では,1927年鈴木・角田の1例報告以來現在迄8報告,症例數にして14例にすぎない。勿論外國に比し本邦に於ては,その發生が少いのかも知れぬが,それでも相當數の症例が誤診や,看過されたり,或はあつても報告されていない事を日常時々聞いている。慶大外科教室にても,偶々昭和25-26年間に8例の症例を經驗した位である。從つて從來考えられていた程,本邦にても本症は稀有の疾患でなく,樣に思われ,且つは疾病の關係上,患者は外科及び婦人科を訪れるため,兩科の領域界の疾病として誠に興味深いものと考え,先ず慶大外科の症例を簡單に報告し,ついで先人の報告に基いて,本疾患についていさゝか考按を試たが,諸賢の御參考の助となれば幸甚である。

速報

手術的侵襲の腦下垂體後葉に及ぼす影響に就て

著者: 並木勉 ,   岡田和親 ,   水野三雄 ,   朝日治

ページ範囲:P.361 - P.363

緒言
 生體に外傷,手術的操作等所謂Selye (1936)の云うStressが加わると生體は之に對し防禦順應せんと努力し,此處に一連の生體反應が惹起される。即ちSelyeは之を警戒反應と呼んでいるが此等の生體反應は副腎皮質が主役を演ずるものと考えられる。最近,Thorn (1948),渋澤等(昭26)は手術前後に各種副腎皮質検査を行い,その機能状態に依りショックを防止すべき事を強調している。
 一方我が産婦人科領域に於て之を見るに,妊娠分娩,産褥現象等も又廣義のStressと考えられる.即ち腦下垂體に就て考察するに,生體は妊娠により後葉機能亢進を招來し,Oxytocinの分泌が増加するが,他方主として網内系臓器からOx—ytosinaseを生産し過剩ホルモンを破壞不活化して流早産を防止し妊娠を維持發展せしめんとするのである。

妊娠中毒症に於ける胎盤所見に就て

著者: 福田透

ページ範囲:P.364 - P.367

 妊娠中毒症の本體に就ては古來幾多の學説が唱えられて來たに拘らず,孰れも假説の範圍を脱せず,今日未だ定説の據るべきもの無き状態であるが種々な點からおして胎盤がその主役を演じている事は想像にかたくないところである。この胎盤説にも(1)胎盤産生のホルモンに依るとする説。(2)酵素説。(3)絨毛組織片説。(4)胎盤分解産物を重視する説等の各説があり,一定しておらぬのであるが,私は妊娠中毒症本體解決の一端に資するため,主として本院に入院した本症患者の胎盤に就き肉眼的竝に組織學的検索を行つており,以下今日迄得た所見の一部を發表する。

抄録

骨盤肉腫と妊娠,他

著者: 柴生田

ページ範囲:P.368 - P.373

 妊娠中に臨床的及びレ線的に診斷された骨盤軟骨肉腫の1例報告である。此の腫瘍は小骨盤壁全周に及び,下大靜脈内に侵潤して肺肝に轉移巣を生じ,死亡後の組織學的檢索で軟骨肉腫と診斷された。最近の報告によれば惡性骨腫瘍は妊娠により惡影響を受け,妊娠の輕過と共にその發育は速かとなり,分娩後は更に之が著しく,廣範圍の轉移を來すと言われる。
 此處に報告している3例は妊娠前からあつた良性の股關節軟骨が妊娠第3ヵ月から惡性化して神経痛樣症状を呈し速かに發育したもので,腹式帝王切開術で分娩終了後子宮腟上部切斷術を行つたが,術後55日で腹膜炎の爲死亡した。此は良性骨腫瘍も妊娠の影響で惡性化することを示している。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻6号(2015年6月発行)

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69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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