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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科7巻9号

1953年09月発行

雑誌目次

綜説

産婦人科領域に於けるProthrombinの意義に就て

著者: 小島光

ページ範囲:P.505 - P.513

まえがき
 産婦人科領域では出血を主徴とする疾患は極めて多く,之の主因をなすと考えられる内分泌學的考察は無數にある。然しながら出血機序の本體を究明する爲には,同時にprothrombinを中心とする凝血學的考察が必要である。斯る意味に於て之が測定の根本をなす血液凝固説の最近の動向,測定法及本領域に於ける研究業績を文献的に考察して見たい。

脳下垂體後葉製劑の静脈内點滴注入法に就て

著者: 篠原弘藏

ページ範囲:P.513 - P.518

まえがき
 戰時中諸外國に立ち遲れた吾醫學も終戰後は目覺しい勢いで世界の水準に達せんとし,又事實一部に於ては既に水準又はそれ以上に及ばんとするものもあることは誠に喜こばしい現象である。ただこの遲れを感じた吾々醫學者の意慾と焦躁とにより,往々にして歐米の醫學を模倣追随することのみに性急となり,之に何等の修正をも加えず無批判に之を移入し能事了れりとなす傾向がないでもない。今ここに述べようとする本法も亦吾々産科醫ことつては確に新しい陣痛の促進法又は誘發法ではあるが尚追試検討を要する方法であると思う。
 筆者も戰後本法に關する諸成績を熟讀玩味して夙に之を移入實施しようと考え,現在各種の基礎實驗を行いつつあり,特に人體應用に際しては陣痛外計測法及び心音描記の同時使用を試み,鋭意その成績の検討につとめているが未だ發表の域に達していない。

原著

笑氣吸入無痛分娩法の基礎的並びに臨床的研究—特に子宮收縮に及ぼす影響に就て

著者: 長野壽久

ページ範囲:P.521 - P.526

緒論
 笑氣吸入による所謂無痛分娩法はKlikowitch,Winkel等によつて應用されて以來,麻醉發來並に回復が極めて迅速且つ深度の調節性に富む等の長所があり,殊にアメリカに於て適切な麻醉裝置が改良製作されるに及び其の使用は本格化され,歐米では現在娩出期に於ける麻醉の王座を占めるに至つた。
 然るに我が國では,未だ織田,尾島兩氏の臨床報告を見るのみであり,殊にその基礎的實驗に至つては皆無の状態に加えて臨床的實驗特に其の陣痛に及ぼす影響に就ても從來單に腹壁上より手掌を用いて觸診することに依り子宮收縮の強さ及び持續時間等を測定する所謂觸診法が慣用されたに過ぎず,從てその成績判定上主觀に依る誤差が不可避であつた事實に鑑み,余は吾教室故富澤博士の考案になる子宮收縮外測裝置を用いて笑氣の家兎生體子宮收縮に及ぼす影響並に臨床上陣痛に及ぼす作用に就き詳細な觀察を試み,認むべき成績を得たので,以下其の概要を報告する。

子宮癌患者に對するMethylandrostendiolの實驗例

著者: 和田善二 ,   越智勳

ページ範囲:P.526 - P.531

緒言
 さきにKochakian1)は人體並に各種實驗動物に對して蛋白質同化作用促進物質としてAndro-genが有効に作用する事を認め,さらにKenyon等2)により正常なる男子及び婦人においても有効なことが明らかにされた。その後各種の研究により蛋白質同化作用をもつている各種SteroidのうちTestosteronは現在最も強力なものとされている。即ちTestosteronにより,總てのアミノ酸が體内において充分利用され,多量の蛋白質が合成され,筋組織が肥大し,體重増加を來たすものである。
 このTestosteronは蛋白質,アミノ酸を投與する際に體内において有効に利用する目的をもつて現在臨床的に應用されている。しかしこの目的に,Testosteronを使用する場合,臨床的に最も障害となるのは,これを小兒や女性に長期間,大量に投與した場合に男性化作用がおこることが問題となる。このためにTestosteronの使用範圍がせまくなつてしまうのであるが,最近Methylandro-stendiol (M.A.D)なる有力な蛋白質同化作用促進物質が明らかにされた。このSteroidは1935年Ruzickaににより合成されたもので,Methylte-stosteron (M.T.S)に極く類似の構造式を示し,蛋白質同化作用は極めて強く,これに反して男性化作用は弱いものである。

抗生物質,副腎皮質ホルモン,及び性ホルモンの末梢血像及び骨髄像に及ぼす影響に就て

著者: 石井丈博

ページ範囲:P.531 - P.535

I.緒言
 現在治療上必要缺くべからざる抗菌性物質の作用機序に對しては種々の學説があるが,その主體をなすものはむしろ病原體の發育阻止作用であるとされて居り,本教室に於てもこれ等藥劑の投與が白血球貧喰能の亢進を來し(河原1))又血清殺菌力の上昇を來す(柳澤2))という等の實驗發表がある。即ち抗菌性物質は生體防禦力を増強せしむるものと解する事が出來,近來各種ホルモン殊に副腎皮質ホルモンの此の方面に對する關心が著しく高められて來ている。
 抑々血液像は造血器管殊に骨髄機能の反映である事は既にNaegeli3).Schilling4).吉峰5)等主張している所であるが,一方Barta6)は臨床上末梢血液像と骨髄像とは必ずしも一致するものではないと云い,血液所見は單に血球の新生並に破壞だけではなく,造血臓器よりの游出機轉の關與も一考すべきものとしている。

症例研究

子宮内骨格化胎兒の1例

著者: 關闡

ページ範囲:P.537 - P.538

 子宮内で死亡した胎兒の運命は成書に記されてあるように,融解吸收,浸軟,ミイラ化,石兒等種々あるが,之等は何れも無菌的に變化した場合であつて腐敗したのではない。しかし稀ではあるが破水後傳染して腐敗し,胎兒の軟部は崩壤して骨格だけが子宮内に殘留することがある。多くは1部が殘留するので殆ど全部が殘つていた報告は數例に過ぎず,我が國では八木の報告だけのようである。
 余は先年1例を經驗したので追加報告する。

右側卵管に於ける1卵性双胎妊娠の1例

著者: 錦織粲

ページ範囲:P.538 - P.540

緒言
 子宮外妊娠はZangenmeisterに依れば全産婦の0.4〜0.1%に於いて見ると云われて居る。
 又,双胎妊娠は正常妊娠との比は80:1と云われて居り,從つて兩者合併する事は比較的稀とされて居る。更に一側卵管双胎妊娠に到つては本邦に於ては中村氏,土肥氏,柳井氏,楠氏,石渡氏の報告があるのみで極めて稀であるが,此度その1例を經驗したので追加報告する。

診療室

膜様月經困難症の1例

著者: 野平知雄

ページ範囲:P.541 - P.542

I.緒言
 余は最近性器出血,強度腰痛の主訴の下に外來を訪れし患者を治療中,比較的稀な膜様月脛困難症の一例に遭遇したので茲に御報告致し御批判を仰ぐ次第である。

檢査室

新生兒採尿法

著者: 佐々木壽男

ページ範囲:P.543 - P.546

はしがき
 著者は蛋白質同化性ホルモンの新生兒に及ぼす影響につい既報したが,この研究1)2)で蛋白質同化作用を實證するために兒の24時間の全尿を糞便で汚染されることなく採集して,精密なN-bala—nceを追求する必要に迫られた。しかし新生兒および乳兒採尿は本質的に種々の難點を伴うために從來から困難視されている問題である。いまその難點と思われる事項を考察してみると次の通りである。
 (1)新生兒および乳兒は言語を解しないために醫師の命令に從わせることが不可能で,恰も實驗動物を取扱う場合に似ていること。

第3回綜合醫學賞入選論文

娩期妊娠中毒症の治療

著者: 松岡廣次

ページ範囲:P.549 - P.559

I.緒論
I)二つの生命に對する治療
 妊娠中毒症の治療は大家でさえも非常にむつかしいとされている。即ち本症は原因,本態が未だ不明なるのみならず,臨床像並びに經過も多種多様である。從つて治療についても色々と意見が分れていてどの様な治療を如何なる時期に加えるのが適當であるか臨床醫は迷わされることがある。然し産科の診療時屡々遭遇する疾病であり青年醫師といえども治療に際しては二つの生命を同時にあずかり其の治療技術如何は母兒の生命を左右することもあり,又その時々の症状により刻々變化に應ずる治療が必要で一番醫師の手腕を要するものである。

産婦人科學領域に於ける精神身體醫學的研究

著者: 奥平高雄

ページ範囲:P.559 - P.567

I.緒言
 19〜20世系にかけてやゝもすれば無視され勝ちであつた精神的機能的なものを,もう少し醫學に取り入れようとする所から所謂精神身體醫學(Ps-ychosomomatic Medicine)が發達して來て,今次大戰を契期として神經症の問題に直面し,學問としての一つの體系を形作るようになつて來た。アメリカでは既に1943年American Society forReaseaches in Psycosomatic Problemsが創立され,精神問題に直面して跪いた現代醫學に新しい展開をなしつゝあるという。
 精神身體醫學と云う新しい言葉の組合せやその定義には異論はあるが,その主旨は決して新規なものでもなく,又特殊なものでもない。唯新しい方法と概念によつて古くからの觀察に再び息吹を與えたものに過ぎない。即ち,人間の情緒は重要な意義を持ち,これに依つて實際に肉體的病變を惹き起しうると云う事實の科學的認識から出發し身體と精神との關連を疾病と云う場に於て究明し病人を全人間的,動的に把握することに重點を置き,精神醫學,精神分析學,心理學等の方法や事實や法則を醫學上の問題に適用せんとするものである。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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