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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科70巻10号

2016年10月発行

雑誌目次

今月の臨床 胎児発育不全(FGR)の管理Up To Date

著者:

ページ範囲:P.893 - P.893

病態の最新知見

FGRにおける胎児行動の変化と評価

著者: 諸隈誠一 ,   前原佳奈 ,   大川彦宏 ,   加藤聖子

ページ範囲:P.894 - P.898

●胎児の行動は中枢神経機能の表現系ととらえることができる.

●FGRにおける胎児行動について概説する.

●FGRの眼球運動に関する予備研究について紹介する.

FGR児における羊水量の評価

著者: 小松篤史

ページ範囲:P.900 - P.907

●FGR児のwell-beingを評価することは至適分娩時期を判断するうえで非常に重要であり,羊水量は胎児心拍数モニタリングとともにその根幹をなす.

●羊水過多を伴うFGR児には高頻度に染色体異常を含む胎児異常が合併し,羊水過少を伴うFGR児では妊娠高血圧症候群を含む胎児胎盤機能不全を合併する可能性が高いことを認識する.

●ヒトにおける羊水量調節は未知な部分が多いが,胎児尿や嚥下とともに羊水から胎児血中に移行するintramembranous absorptionが重要な役割を担っている可能性がある.

FGR出生児の神経学的予後

著者: 國方徹也

ページ範囲:P.908 - P.912

●妊娠中から入院していた妊婦から出生した新生児の分娩は帝王切開になることが多く,母親がさまざまな合併症が多いことからFGRになりやすいことは理解すべきである.

●SFDの診断には,「日本人の新しい在胎期間別出生時体格標準値」を用いる.文献4の標準値からは帝王切開児は除外されているため,基準値ではなく標準値という表現になっている.正確な基準値は,正期産で出生した正常児の胎児期の体重が理想であるが,超音波での体重推定にも限界がある.

原因別にみた管理の実際 母体要因

母体膠原病によるFGRの予防と管理

著者: 吉田幸洋

ページ範囲:P.913 - P.919

●膠原病のなかでもSLEは,妊娠可能な女性に多く発症し,慢性に経過することから,妊娠・出産との関わりが問題となることが多い.

●自己抗体のうち抗リン脂質抗体が陽性の場合は,severe FGRのハイリスク因子である.胎児評価には,超音波パルスドプラ法による子宮動脈,臍帯動脈,胎児中大脳動脈,静脈管の評価を行う.

●抗リン脂質抗体陽性の場合,FGR発症予防として,副腎皮質ステロイド剤に加え,低用量アスピリン療法とヘパリンカルシウムの持続皮下注射療法が一般的であるが,γグロブリン大量療法や血漿吸着療法などが試みられている.

妊娠高血圧症候群におけるFGRの管理

著者: 近澤研郎 ,   牛嶋順子 ,   高木健次郎

ページ範囲:P.920 - P.925

●妊娠高血圧症候群のFGRは,他原因より重症である.

●FGRは児の予後不良因子である.

●Early-onsetの妊娠高血圧症候群では,待機療法を考慮する.

●Late-onsetの妊娠高血圧症候群ではwell-beingに注意して待機する.

母体糖代謝異常におけるFGR

著者: 内倉友香 ,   杉山隆

ページ範囲:P.926 - P.931

●糖代謝異常合併妊娠では,1型糖尿病,特に最小血管障害を合併した際にFGRを認める場合が多く,網膜症や腎症を合併するとその頻度は顕著となる.

●母体糖代謝異常におけるFGRのなかには,グルコキナーゼ遺伝子変異やインスリン受容体異常,インスリン様成長因子などの重度の胎児発育不全を認めるような遺伝子異常によるものがある.

●糖尿病合併妊娠では,血糖コントロールが不良の場合,周産期合併症のリスクも高く,慎重な胎児評価が必要と考えられる.

胎児要因

先天性心疾患におけるFGRの評価

著者: 山本祐華

ページ範囲:P.932 - P.937

●先天性心疾患(CHD)では染色体異常や心臓以外の構造奇形を合併した場合,FGRのリスクが上昇する.

●左心閉塞性疾患(特に左心低形成症候群や重症の大動脈縮窄症)では,FGRがなくても生理的にbrain sparing effect(MCA RI低下とUmA RI上昇)を認める.

●右心閉塞性疾患では,胎児循環の悪化がなくても生理的に静脈管の逆流波や下大静脈の逆流波の増高を認める.

FGRを伴う先天性サイトメガロウイルス感染の診断と管理─出生児の神経学的予後を含めて

著者: 森岡一朗 ,   西田浩輔 ,   山田秀人

ページ範囲:P.938 - P.943

●FGRなどの超音波検査異常,母体CMV-IgM陽性とIgG avidity index低値がある場合は,先天性CMV感染である確率が高い.

●最近,出生時に症状を有する症候性先天性CMV感染症児に対し,神経学的予後の改善目的に抗ウイルス薬治療が行われ,効果が期待できる.

●しかしながら,FGR合併先天性CMV感染児で出生時に症候がある,特に小頭症,血小板減少,肝機能障害がある場合は,抗ウイルス薬治療を行っても高率に神経学的後障害を残す.

臍帯・胎盤要因

臍帯異常によるFGRの評価

著者: 仲村将光 ,   大場智洋 ,   関沢明彦

ページ範囲:P.945 - P.950

●胎児発育不全(FGR)の原因 : ①胎児の染色体異常や形態異常といった遺伝学的要因,②妊娠高血圧症候群のような絨毛が形成される時期のトラブルによる胎盤の発育不全や機能不全,③胎児─臍帯─胎盤系の循環障害をきたす臍帯の構造異常に伴う臍帯血管内の血栓塞栓症による胎盤梗塞のような後天的要因に分類される.

●胎児─臍帯─胎盤系の循環障害 : 臍帯の構造異常(付着部異常,捻転異常,巻絡,単一臍帯動脈,細い臍帯)の存在により臍帯血管内における血流うっ滞によって易血栓性となり,それが胎盤および胎児の各臓器に梗塞を起こすことによって胎児の発育および出生後の発達に影響すると考えられる.

●胎児─臍帯─胎盤系の易血栓性に伴う児の予後 : 血流うっ滞によって胎児血管内に微小血栓が生じ,それらによって中枢神経系に塞栓症が起きると長期神経学的に予後不良となる.

胎盤限局性モザイクによるFGR

著者: 三浦清徳 ,   増﨑英明

ページ範囲:P.951 - P.959

●胎盤限局性モザイク(CPM)とは,胎児は正常核型であるが,胎盤にのみ染色体異常が認められる状態である.

●特発性の胎児発育不全(FGR)の約10〜20%に胎盤限局性モザイク(CPM)が認められる.

●CPMには胎児に片親性ダイソミー(UPD)などの遺伝子異常が存在している可能性があり,その診断には染色体検査に加えて遺伝子多型解析が有用である.

●CPMによるFGRの発症機序として,CPMに伴う胎盤機能異常やUPDによる胎児因子が考えられる.

●CPMの診断は,FGRの原因を明らかにするだけでなく,出生後の成長・発育のフォローアップにとって重要な情報をもたらす.

娩出時期の決定法

胎児循環評価からみたFGRの適切な娩出時期の決定─古くて新しい臍帯動脈血流の解釈

著者: 岩垣重紀 ,   志賀友美 ,   千秋里香 ,   高橋雄一郎

ページ範囲:P.961 - P.966

●早期発症重症FGRの娩出時期の決定に,臍帯動脈,静脈管の血流所見が有用である.

●臍帯動脈に関しては,途絶・逆流の有無のみではなくその重症度を途絶・逆流率で表現することで,より危機的な児の状態を評価できる可能性がある.

●臍帯動脈の途絶/逆流率が0.4を越える場合,児の生命予後,神経学的予後が不良である可能性が高くなる.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

子宮動脈塞栓術施行後2日で血流が再開し,再塞栓術を行った子宮頸管妊娠の1例

著者: 田村充利 ,   上田江里子

ページ範囲:P.968 - P.974

症例
▶患者

 17歳,1経妊0経産(人工妊娠中絶1回).
▶主訴

 子宮頸管妊娠による出血として他院から救急搬送.
▶既往歴

 特記すべきことなし.
▶現病歴

 最終月経はX−2月下旬かX−1月上旬頃ではっきりしない.X月10日に自分で行った市販の妊娠反応が陽性で,X月15日に前医を受診した.超音波検査で子宮内腔に胎囊を確認できなかった.この日のhCG値は539mIU/mLであった.X月22日の前医の外来で子宮頸管内に径1cmの胎囊様腫瘤像を認めた.子宮頸管異所性妊娠が疑われたが,出血や下腹部痛がなかったため,翌日に当科の新患外来に紹介する予定として帰宅した.同日夜19時頃,ドライブ中に急に車の座席が濡れるほどの性器出血が起きたため,前医に連絡し,前医に受診.その後,当院へ救急搬送となった.

Obstetric News

片頭痛と経口避妊薬使用(1)─症例

著者: 武久徹

ページ範囲:P.975 - P.976

症例

 31歳.月経周辺で頻繁な前兆を伴わない片頭痛歴がある.経口避妊薬(OC)がこのような頭痛のコントロールに有効な可能性があると読んだことがあり,OCs処方を希望して来院した.月経1〜3日前と月経中に,拍動性の,中心性の局在する痛み,指の麻痺,吐き気を経験すると報告している.この女性が経験している症状でOC選択に影響を与えそうな症状はどれか?

 (A)拍動性で中心性の痛み

 (B)前兆を伴わない片頭痛

 (C)指の麻痺

 (D)吐き気

[正解](C)

Estrogen Series・155

更年期後のホルモン療法と動脈硬化症

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.977 - P.978

 1980年代に行われた多くのホルモン療法に関する研究によれば,ホルモン療法は更年期後女性の冠動脈疾患を約50%ほども低下させると当時予想された1).したがって,そのような治療法は冠動脈疾患の治療のみならず,その予防にも有効であると推定された.

 しかしながら,その後の大規模試験によると,更年期後のホルモン療法には心血管系に対する効果はみられなかった.ある研究では1年間のエストロゲン─プロゲスチン療法で,かえって冠動脈疾患の増加をみた2).WHI研究では,エストロゲンおよびプロゲスチンの使用により心疾患および脳卒中のリスクは有意な増加をみた3).この研究で,エストロゲンのみ使用した選択肢では,脳卒中の増加がみられ,冠動脈疾患の有意な減少はみられなかった4)

症例

巨大卵巣腫瘍により顕在化した右横隔膜ヘルニア嵌頓,絞扼性イレウスの1例

著者: 藤田久子 ,   木村博昭 ,   片山恵里 ,   糸井瑞恵 ,   新井未央 ,   神山正明 ,   小林壮一 ,   平敷好一郎

ページ範囲:P.979 - P.984

▶要約

 症例は67歳,2回経産婦.心窩部痛を主訴に近医受診した.下腹部の巨大腫瘤と右胸水を認め入院したが,翌日呼吸困難,嘔吐が出現し当院へ救急搬送となった.CT検査では,右無気肺,胸水貯留と肝臓右側に圧排された腸管ガス像を認めた.また,下腹部には長径20cm大の囊胞性腫瘤を認め巨大卵巣腫瘍による腸閉塞を疑われ婦人科紹介となった.経腹的に卵巣囊腫内容を2,000mL排液し,胸腔穿刺にて血性胸水を300mL排液するも,呼吸障害は増悪し,再度撮影した胸腹部CT検査から右横隔膜ヘルニアによる絞扼性イレウスの疑いとなり,緊急開腹手術を施行した.右横隔膜背側に40×30mmのヘルニア門を認め小腸が脱出し,絞扼性イレウスの状態であり,肝臓の一部は胸腔内に突出していた.骨盤内腫瘤は卵巣成熟囊胞性奇形腫であった.回盲部切除と横隔膜修復,両側付属器切除を施行した.術後経過は良好で術後14日目に退院した.

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バックナンバー

ページ範囲:P.985 - P.985

次号予告・奥付

ページ範囲:P.988 - P.988

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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