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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科70巻11号

2016年11月発行

雑誌目次

今月の臨床 骨粗鬆症の最新トピックス─ガイドラインの大幅改訂を迎えて

著者:

ページ範囲:P.993 - P.993

骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版改訂のポイント

著者: 五來逸雄 ,   堀裕雅

ページ範囲:P.994 - P.1000

●薬物治療開始基準 : 原発性骨粗鬆症診断基準の改訂に準拠した修正がなされ,治療開始に際し椎体骨折と大腿骨近位部骨折は骨密度測定値にかかわらず骨粗鬆症と診断し,その他の骨粗鬆症性骨折は従来通り骨密度がYAM値の80%未満を確認するとされた.

●薬物の評価・推奨方法 : 薬物効果の評価はこれまでの「推奨」ではなく,骨密度上昇効果と骨折発生抑制効果(椎体,非椎体,大腿骨近位部のそれぞれについて)について「有効性の評価(A,B,C)」に変更された.

●骨粗鬆症の定義・疫学および成因に関する新しい概念 : ①2型糖尿病の骨密度上昇時の骨折リスクの増加,②慢性腎臓病(CKD)と骨粗鬆症はともにもう一方の病態を増悪させる,③慢性閉塞性肺疾患(COPD)での骨密度低下と骨折リスク上昇の相関,が新しい知見として知られている.

原因ごとの病態

生活習慣病と骨粗鬆症

著者: 高橋一広

ページ範囲:P.1001 - P.1006

●閉経後女性における肥満は,大腿骨頸部骨折に対しては予防的に働くが,椎体骨折を増加させることから,身体部位によっては骨折のリスク因子となる.

●メタボリック症候群では大腿骨頸部や椎体骨の骨密度が低く,骨折の頻度が高くなるという報告がある一方,大腿骨頸部骨密度が高いという報告もあり一定していない.

●糖尿病を合併すると大腿骨頸部骨折が増加するが,骨密度が高くても骨折する例があり,この原因として悪玉架橋である終末糖化産物(AGEs)の増加が考えられている.

アスリートにおける骨粗鬆症

著者: 寺内公一

ページ範囲:P.1007 - P.1011

●エネルギー利用可能性・月経機能・骨密度の3要素がさまざまな程度で異常をきたした状態を女性アスリートの三主徴(female athlete triad : FAT)と呼ぶ.

●FATの診断には3要素の異常がすべて揃う必要はなく,エネルギー利用可能性の低下に関しても摂食障害の有無は問われない.

●FATを疑う患者に対してはDEXA法により骨密度を測定し,骨密度低下症例には適切な栄養の摂取・体重増加を指導し,月経異常の是正を行う.

婦人科がん治療による骨粗鬆症

著者: 佐々木浩

ページ範囲:P.1012 - P.1017

●婦人科がん治療による外科的閉経は,骨密度の低下および骨折のリスクファクターである.

●化学療法における骨密度の低下は,化学療法による卵巣機能障害が関連している.

●高齢子宮頸がん患者に放射線治療を行う場合は,骨盤不全骨折の発症に注意が必要である.

●乳がん治療の術後補助療法としてアロマターゼ阻害薬を用いる場合は,定期的な骨密度測定を行うべきである.

予防

食事・運動

著者: 岩本潤

ページ範囲:P.1018 - P.1021

●骨の健康維持に重要な栄養素としてカルシウム,ビタミンD,ビタミンKが挙げられる.推奨摂取量はそれぞれ700〜800mg/日,400〜800IU/日,250〜300μg/日である.

●閉経後女性において骨密度維持・増加には荷重や筋力が重要であり,有酸素荷重運動・ウォーキング・筋力訓練は骨密度維持・増加に有用である.

●閉経後女性において背筋強化訓練は椎体骨折予防に,高齢者において筋力訓練・バランス訓練を中心とした運動療法は転倒防止に有用である.

治療

骨粗鬆症治療薬の作用機序─製剤の特徴からみた薬剤選択

著者: 岡野浩哉

ページ範囲:P.1022 - P.1029

●閉経後骨粗鬆症に対する治療薬の基本は骨吸収抑制薬であり,エビデンスに基づいた薬剤の特性を理解する.

●治療対象者における治療目的(椎体骨折抑制か大腿骨近位部骨折もか)を明確にし,骨折リスクの程度,年齢,嗜好を勘案し薬剤を選択する.

●骨粗鬆症の管理は長期に及ぶ一方で長期使用に問題を有する薬剤があるため,加齢とリスク因子の再評価による薬剤のスイッチが必要となる.

●婦人科医は閉経後女性の骨粗鬆症および骨粗鬆症による骨折予防のキープレーヤーであり,初回骨折の抑制に最大の役割がある.

エストロゲン製剤

著者: 松下宏 ,   若槻明彦

ページ範囲:P.1030 - P.1035

●エストロゲンは骨吸収を抑制し,BMDを増加させる.

●エストロゲン製剤は高い骨折予防効果をもつ.

●CEEの骨折抑制効果は骨量減少女性や健常女性でも認められ,また60歳以下の女性で高い.

ビスホスホネート

著者: 森重健一郎 ,   杉山三知代

ページ範囲:P.1036 - P.1040

●2015年版ガイドラインでは,服薬コンプライアンスの向上のためビスホスホネート薬に新たな剤形が登場した.

●ボーラス投与が可能なイバンドロネートが新たに掲載された.

●ビスホスホネート薬に特有な有害事象管理のため,新たな工夫が模索されている.

選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)

著者: 野崎雅裕

ページ範囲:P.1042 - P.1049

●SERMは骨に対してはエストロゲンと同様の作用を有するが,子宮や乳腺に対しては抗エストロゲン作用を示すことから,HRTのデメリットをカバーする薬剤である.

●SERMの骨折発生リスク低下作用は,骨密度増加による作用と骨質劣化を抑制する作用によることが認められており,糖尿病などの生活習慣病合併例に有用である.

●SERMの副作用にはホットフラッシュなどの血管運動神経症状や血栓症がごく稀にあるものの,服薬は食後でもよく,他の骨粗鬆症治療薬に比べて簡便に使用できる.

副甲状腺ホルモン薬

著者: 倉林工

ページ範囲:P.1050 - P.1056

●副甲状腺ホルモン薬のテリパラチドは現在使用可能な唯一の骨形成促進薬である.

●テリパラチドには,連日製剤と週1回投与で骨代謝作用が若干異なること,投与期間に縛りがあること,薬価が高いことなどの特徴がある.

●著しい骨密度低下例,重度あるいは複数の椎体骨折を有する例,大腿骨近位部骨折の既往例など骨折リスクの高い重症骨粗鬆症患者が良い適応となる.

●今後は投与中止後の骨吸収抑制薬との逐次療法など,効果的な投与方法が期待される.

抗RANKL抗体(デノスマブ)

著者: 安井敏之 ,   松井寿美佳

ページ範囲:P.1058 - P.1066

●抗RANKL抗体(デノスマブ)はRANKLが受容体に結合するのを競合的にブロックすることにより破骨細胞の分化・活性化を抑制し,骨吸収抑制効果がみられる.

●腰椎,大腿骨近位部,大腿骨頸部,橈骨遠位端1/3など,すべての部位で骨密度の増加が認められる.

●椎体,非椎体,大腿骨近位部,いずれの骨折に対しても有効性が認められている.

●有害事象として,低カルシウム血症,顎骨壊死,非定型大腿骨骨折に注意する.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

筋層浸潤はごくわずかな子宮内膜癌であったが骨盤センチネルリンパ節に微小転移があり対側の傍大動脈リンパ節に転移を認めた1例

著者: 山下剛 ,   西澤庸子 ,   下山則彦

ページ範囲:P.1068 - P.1074

症例
▶患者

 49歳,1経妊1経産.
▶初診までの経過

 持続する不正出血を主訴に前医を受診.腫大した子宮および卵巣腫瘍を指摘され,また子宮内膜細胞診classⅤのため,子宮体癌疑いで当科を初診した.

Obstetric News

片頭痛と経口避妊薬使用(2)─米国産婦人科学会&避妊使用に関する米国医療適格基準

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1076 - P.1077

医学的状態併存女性における経口避妊薬使用〜片頭痛(米国産婦人科学会)

 頭痛は生殖年齢女性にしばしば発生する.これらの頭痛は片頭痛ではなく,ほとんどが緊張型頭痛である.女性における群発頭痛はきわめて稀である(服部孝道氏:私信).片頭痛がある女性は経口避妊薬(OCs)を使うと症状の改善をみることがあるが,逆に悪化する女性もいる.しかし,OCsを使っている多くの女性は,ホルモン製剤を使っていない時期に片頭痛が起こる.片頭痛があるとOCs使用を決める際に影響することから,診断においては注意深い考慮が大切である.

 典型的な片頭痛の前兆は可視的で,頭痛の前に5〜60分間続く.以下の可逆的な視覚症状は前兆の存在を示す : 視野の周囲に進行的に側方にちらつく無色のジグザグの線,側方に拡がるきらきらする暗点(正常またはやや不鮮明な視覚の領域に囲まれた視野の中に,消失した,または不鮮明な領域).

Estrogen Series・156

卵巣癌防止のための卵管切除術─ACOG Committee Opinion No.620.

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1078 - P.1078

 女性の癌の中で,卵巣癌は最も死亡率が高く,女性における癌死亡率の第5位を占める.現在のところ卵巣癌スクリーニングは成功しておらず,偽陽性の結果,不必要な手術手技も多い.予防的卵巣切除術は卵巣癌予防の機会をもたらすが,それによりどれほどの利点があるのかについては,ランダム試験が必要である.

原著

女子大学生における食生活と月経困難症との関連に関する検討

著者: 秦幸吉 ,   野津朱里 ,   川谷真由美 ,   名和田清子

ページ範囲:P.1079 - P.1083

▶要約

〔目的〕女子大学生における食生活と月経困難症に関連があるか否かを検討することを目的とした.〔対象と方法〕対象は島根県立大学の女子学生126名とした.食物摂取頻度調査法により栄養素摂取量および食品群別摂取量を算出し,月経困難症スコアとの関連を検討した.〔結果〕対象の平均年齢は19.5±2.5歳,BMIは20.5±2.2kg/m2,月経困難症スコアは中央値1.0点(4分位範囲3.0点)であった.月経困難症スコアはカルシウムおよびビタミンA・K・C,葉酸摂取量と有意な負相関を認めた.また,緑黄色野菜および海草類,豆類,果実類,種実類摂取量と有意な負相関を認めた.〔結論〕緑黄色野菜や海草類,豆類,果実類,種実類等に含まれる抗酸化ビタミンやフィトケミカルが子宮内膜における活性酸素産生を抑制し,その結果,子宮内膜からのからのプロスタグランディンの過剰分泌を抑えることにより,月経困難症の症状を緩和する可能性が示唆された.

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バックナンバー

ページ範囲:P.1087 - P.1087

次号予告・奥付

ページ範囲:P.1088 - P.1088

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

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69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

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