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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科70巻2号

2016年03月発行

文献概要

今月の臨床 不妊女性に対する手術療法─適応・タイミングと手技のコツ

不妊女性に対する手術療法の位置づけ

著者: 長田尚夫12

所属機関: 1加藤レディスクリニック 2Natural ART Clinic日本橋

ページ範囲:P.154 - P.165

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●筆者が経験した不妊患者の原因分類では,卵管・子宮因子が全体の40.4%と最も多く,その大部分は,卵管形成術,子宮筋腫核出術,卵巣囊腫摘出術などを行うことによって妊孕性を回復できる.

●体外受精と卵管形成術を治療成績から比較すると,体外受精の治療周期当たりの生産率は11.5%であるが,卵管形成術の妊娠率は34.5%と明らかに高い.

●着床障害や発育障害の原因になる子宮筋腫や卵管留症などの不妊原因に対し外科治療を積極的に行うことは,自然妊娠の回復を計るばかりでなく体外受精の成績をも上げることになる.

●わが国のART施行年齢は年々高齢化し,40歳以上の割合はすでに40%を占める.体外受精の高齢者の出生率が低いばかりでなく,2016年4月からは回数制限と年齢制限が始まる.一方,不妊症の手術療法は,高齢者であっても手術によって不妊原因を除けば,排卵がある限り毎月自然妊娠の可能性が回復することから,その意義は大きい.

参考文献

1) 長田尚夫 : 妊孕性の温存,獲得,回復を意識した手術(卵管形成術),エキスパートに学ぶ.産婦手術17 : 73─82, 2006
2) 長田尚夫 : 実践婦人科腹腔鏡下手術.pp1─396,メジカルビュー,2009
3) 長田尚夫 : 腹腔鏡下卵管形成術.体外受精の成績向上のために(鈴木秋悦 編).pp65─71,メジカルビュー,2005
4) 長田尚夫 : 低侵襲手術による卵管性不妊の治療IVF-ETの成績向上に必要な卵管形成術.産婦手術18 : 107─111, 2007
5) 長田尚夫,他 : 体外受精症例における卵管性不妊の取り扱い,特に卵管留症に対する卵管開口術,卵管クリッピングの効果について.日産婦内視鏡会誌23 : 59─65, 2007
6) 長田尚夫 : 現状のエビデンスに基づくARTの適応 : 卵管因子,新しい生殖医療のガイドライン改訂第2版.pp233─243,金原出版,2003
7) Osada H, et al : Outpatient evaluation and treatment of tubal obstruction with selective salpingography and balloon tuboplasty. Fertil Steril 75 : 1032─1036, 2000
8) 長田尚夫 : 子宮筋3重フラップ法による重症子宮腺筋症摘出術79例の効果とその意義.産婦手術18 : 151─160, 2007
9) 斉藤英和,他 : 日本産科婦人科学会平成26年度倫理委員会,登録・調査小委員会報告(2013年度分の体外受精・胚移植等の臨床実施成績および2015年7月における登録施設名).日産婦会誌67 : 2077─2121, 2015
10) European Society of Human Reproduction and embryology : ART fact sheet, July, 2014.https://www.eshre.eu/guidelines-and-legal/art-fact-sheet.aspx
11) 長田尚夫,他 : 卵管閉塞,卵管周囲癒着の治療と妊孕性.産婦の実際59 : 743─749, 2010
12) 長田尚夫 : 難治性不妊症に挑む,卵管留水腫による体外受精不成功に対する対応,日本産科婦人科学会生涯研修集プログラム : クリニカルカンファレンス(8).日産婦会誌 : N─347─351, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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