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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科70巻6号

2016年06月発行

雑誌目次

今月の臨床 若年女性の外来診療に役立つ基礎知識

著者:

ページ範囲:P.461 - P.461

ターナー症候群

著者: 粒来拓 ,   榊原秀也

ページ範囲:P.462 - P.466

●原発性無月経を呈すターナー症候群に対しては,エストロゲン補充療法を早期に低用量から開始し,漸増することが推奨される.

●ホルモン補充療法による月経管理のみならず,ターナー症候群に特徴的で多岐にわたる合併症の管理が必要である.

●近年の生殖補助医療の進歩により卵子提供による妊娠も可能となっており,周産期管理を考慮した管理が必要である.

先天性性ステロイドホルモン産生異常症

著者: 久具宏司

ページ範囲:P.467 - P.474

●どの酵素が先天的に欠損するかによって,ステロイド代謝経路の中間代謝物質やホルモンの中で過剰となるものと不足するものが異なり,性機能を含め,臨床症状も大きく異なる.

●新生児マススクリーニングにより診断され,新生児期より糖質コルチコイド補充により治療されている例が多いが,思春期に無月経や男性化徴候の出現で診断されることもある.

●性分化異常を呈することもあるので染色体に基づく性とは異なる性別で養育されている例もあり,性別違和を訴えることもある.親を含めたカウンセリングなど慎重な対応を要する.

性同一性障害

著者: 中塚幹也

ページ範囲:P.475 - P.480

●性同一性障害の診断では,身体の性と性自認との関係に着目し,性指向や性役割は問わない.この点では,身体の性と性指向との関係に着目して判断する同性愛とは異なる.

●ホルモン療法中は,副作用のチェックのための検査と,禁煙や体重管理などの注意を喚起する必要がある.

●二次性徴に伴って起こる自殺企図や不登校,また,不可逆的な身体の変化を回避するためには,適切な時期に二次性徴抑制療法を行うことが有効である.

中枢性月経異常

著者: 岩佐武 ,   松崎利也 ,   苛原稔

ページ範囲:P.481 - P.485

●月経異常は若年女性の約11%に認められ,不妊だけでなく将来における子宮体がんや骨粗鬆症の発症リスクを高める.

●月経異常の約70%は中枢組織,すなわち視床下部─下垂体系に起因しており,治療を適切に行ううえで病因・病態を正確に把握することが重要となる.

●治療に際しては,原因の改善を試みるとともに,排卵誘発または性ステロイドホルモン補充を施行する.

月経痛の診断と治療

著者: 綾部琢哉

ページ範囲:P.486 - P.492

●月経痛の背景となる疾患が見つからなくても,将来の妊孕性を考えて,対症療法だけでなく内分泌治療をしておくほうがよい場合がある.

●非ステロイド性抗炎症薬はプロスタグランジンによる子宮収縮を抑制することにより疼痛を軽減するが,子宮が収縮して虚血に陥る前から内服を開始しないと効きが悪い.

●合成エストロゲン─合成プロゲステロン合剤には子宮内膜症の予防効果も期待されている.初経発来後の使用制限は通常と同様であるとされている.

ピル処方の適応と留意点

著者: 西嶌優子 ,   安達知子

ページ範囲:P.493 - P.501

●低用量ピルは通常,経口避妊薬(oral contraceptive : OC)を指すが,広い意味で同様成分の低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤(low dose estrogen-progestin : LEP)も含める.

●OCは避妊を,LEPは月経困難症や子宮内膜症など疾患の治療を目的として使用する.

●多くの若年女性が安全に使用でき,高い避妊効果とその他の多大な副効用のあるなか,副作用である静脈血栓塞栓症への留意が必要で,服薬指導は重要である.

月経周期調整法

著者: 田坂慶一

ページ範囲:P.502 - P.506

●月経周期調整(周期短縮または延長)を行うためには,女性の月経周期,持続期間とともに最終月経の確認と月経周期調整の目的を明確にする必要がある.

●月経周期短縮の目的では,月経開始5日目から10〜14日,中用量OCを服用する.服用中止後2〜3日で消退出血が来る.

●月経周期の延長のためには,予定月経の5日前から中用量OC内服開始,服用中止後,出血が始まる.月経が全く不順の場合には8〜10日前から中用量OC服用開始,翌々日までに月経発来したら内服中止でよい.それ以後発来予定の月経は回避できる.

性感染症─クラミジアと淋菌

著者: 岩破一博

ページ範囲:P.507 - P.513

●女性では,治療失敗例を放置すると不妊症の原因となるため,感度の高い核酸増幅法により治療効果判定を行う.性器および咽頭にクラミジア(CT)を混合感染することがあるので,淋菌(NG)だけでなく同時にCT検査を行うことが必要である.

●セフトリアキソン(CTRX)は世界的にもNG感染症治療の第1選択薬であるが,CTRX耐性NGの出現と拡散は,NG感染症治療をきわめて困難にすることが危惧される.適切な抗菌薬治療を徹底するためにも,NGの分離同定と薬剤感受性試験の実施が重要になる.薬剤感受性の低下した耐性株の存在から,治療後の治癒判定検査が必要である.

●性成熟前の小児にNG感染症を診た場合,治療と同時に性的虐待の有無を疑う.

子宮頸部病変

著者: 宮城悦子 ,   鈴木幸雄 ,   川野藍子 ,   最上多恵

ページ範囲:P.514 - P.519

●子宮頸管部ポリープ状病変 : 原則は摘出して病理診断へ.妊娠中は超音波断層法などで子宮内膜から連続する脱落膜ポリープの可能性が低いことを摘出前に確認する.

●子宮頸部囊胞性病変 : 細胞診,自覚症状,粘液所見,MRI画像所見などから総合的に判断する.HPV陰性腺癌の可能性も考慮し,必要に応じて円錐切除術を行う.

●異形成の取り扱い : 若年者のCIN1/2は自然消退の可能性が高いことを考慮する.細胞診・コルポ診不一致例は内頸部も含めた生検を行う.妊娠中のCIN3は慎重観察し,分娩後の治療が原則である.

外陰部病変

著者: 笹川寿之

ページ範囲:P.520 - P.526

●湿疹 : 水疱形成の有無,発生部位,色調,腟炎の合併

●潰瘍 : 肉芽,疼痛,周囲硬結の有無,性状,鼠径リンパ節腫大

●腫瘍 : 前庭部乳頭と尖圭コンジローマとVINの鑑別

スポーツ性月経異常

著者: 難波聡

ページ範囲:P.527 - P.532

●まず,血中エストラジオール値20pg/mLを基準に低エストロゲン状態かどうかを鑑別することが望ましい.

●低エストロゲンの場合には,ホルモン補充療法を行うべきである.

●アスリートそれぞれの事情に配慮しつつ,トレーニング量・食生活・体重の見直しを薦める.

食生活と性機能

著者: 藤原智子

ページ範囲:P.533 - P.539

●思春期のダイエットで生じた生殖機能の異常は,その後の食生活習慣の改善で正常化したように思えても,母性を担う時期に再び顕在化して重大な支障を生じる可能性がある.

●朝食欠食による生活リズムの乱れは月経痛を誘発する可能性がある.

●ダイエットで性機能異常を呈した若年女性には,生活リズムに整合した摂食をカウンセリングで推奨することが求められる.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

長期間観察していた子宮内膜症の術後に突然S状結腸穿孔および汎発性腹膜炎を発症した1症例

著者: 齊藤俊雄

ページ範囲:P.540 - P.544

症例
▶患者 : 45歳,0経妊0経産,既婚.
▶主訴 : 月経困難症,下腹部痛,肛門痛.
▶既往歴 : 特記すべきことなし.
▶家族歴 : 特記すべきことなし.
▶月経歴 : 28日周期・整.
▶現病歴

 38歳時に,月経困難症,過多月経,下腹部痛のため,近医より紹介されて初診した.

Obstetric News

緊急避妊─米国産婦人科学会2015年

著者: 武久徹

ページ範囲:P.545 - P.547

 避妊せずに性行為を行った,または避妊に失敗した場合,5日以内に緊急避妊の適応となる.レボノルゲストレル放出子宮内システム(IUS)を除き,銅放出子宮内器具(IUD),経口レボノルゲストレル,経口ミフェプリストン(RU-486),経口酢酸ウリプリスタルなど,現在,各種の有効で信頼できる緊急避妊法がある.しかし,それぞれの方法に総合的有効性,副効果,不良効果,使用に適切なタイミングの違いがある.

Estrogen Series・151

更年期後のホルモン療法とその長期的アウトカム

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.548 - P.549

 米国ですでに完了したWomen's Health Initiative(WHI)は,画期的な大規模調査であった.その目的は,大部分が健康である更年期後女性において,ホルモン療法と長期的なアウトカムとの関連を見ようとしたものである.米国では,ある時期には更年期後女性の40%がホルモン療法を受けていた時代があったが,そのようなホルモン療法の隆盛は,2002年にWHIの調査の結果が発表されるやホルモン使用率は低下し続け,いまや影もない(というか,影くらいになってしまった).

 WHIの設定した観察期間にわたる試験終了後にも,さらに期間を延長して,ホルモン療法と長期的疾患との関連を見ようとする調査はいまだに継続している.今回ご紹介するのは,JAMAに発表された長期的追跡の結果である1).その主な調査対象となった合併症は,冠動脈疾患(CHD)と浸潤性乳癌であった.それ以外にも,脳卒中,肺栓塞,認知症,胆道疾患,尿失禁,などのリスクが認められた.ホルモン療法によって減少を示す疾患には,大腿骨骨折,糖尿病,血管運動神経症状などが認められた.

原著

当院で加療した妊娠中の付属器腫瘍の茎捻転13例の検討

著者: 大竹紀子 ,   前田裕斗 ,   柳川真澄 ,   山添紗恵子 ,   日野麻世 ,   松林彩 ,   林信孝 ,   宮本泰斗 ,   小山瑠梨子 ,   冨田裕之 ,   池田裕美枝 ,   上松和彦 ,   青木卓哉 ,   今村裕子 ,   星野達二 ,   吉岡信也

ページ範囲:P.551 - P.555

▶要約

 妊娠中の急性腹症の鑑別は多岐にわたり,診断に苦慮することがある.今回われわれは,妊娠中の付属器腫瘍の茎捻転13例について,その特徴と手術様式による差異を,同時期に当院で管理した非妊娠時発症の付属器腫瘍の茎捻転症例64例と比較検討した.妊娠時の付属器腫瘍の茎捻転例では,非妊娠時に比較して小さな付属器腫瘍や,妊婦健診で指摘されていなかった付属器腫瘍の茎捻転症例があった.

 診断には超音波だけでなくMRIが有用であり,付属器腫瘍の茎捻転が否定できない場合には十分に検索することが必要である.手術では再発を予防するために捻転の解除だけでなく,囊腫の摘出や囊腫の穿刺が必要となる.8例に対して行った腹腔鏡下手術では,合併症,周産期予後において問題なく施行できた.妊娠中に付属器腫瘍の茎捻転を疑う場合にも,妊娠子宮の大きさに注意をすれば,腹腔鏡下手術による低侵襲な診断と治療は選択肢になると考える.

症例

Edwardsiella tardaによる子宮付属器膿瘍からの敗血症性ショックをきたした1例

著者: 山下亜貴子 ,   中田俊之 ,   林博章 ,   山岸昭夫

ページ範囲:P.557 - P.561

▶要約

 Edwardsiella tardaは爬虫類などの腸内常在菌として存在するグラム陰性桿菌である.人への感染は稀であるといわれるが,胃腸炎患者の糞便から検出されることがある.基礎疾患のあるcompromised hostへの感染や海外渡航歴,魚介類の生食などで感染するといわれるが,その感染経路に関しては不明な点も多い.今回,基礎疾患のない49歳女性のEdwardsiella tardaによる子宮付属器膿瘍から敗血症性ショックに至った症例を経験した.子宮付属器摘出術を施行し,抗菌薬投与と血液濾過透析,エンドトキシン吸着療法などを施行し改善に至った.本菌による骨盤内感染の報告は国内でも散見されるが,基礎疾患がなく海外渡航歴や魚介類の生食などの明らかな感染経路がない報告は稀である.敗血症に至った場合の致死率の高さより,婦人科領域での感染例では本菌も念頭に置いて治療をする必要があると考えられた.

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次号予告・奥付

ページ範囲:P.564 - P.564

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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