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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科70巻8号

2016年08月発行

雑誌目次

今月の臨床 婦人科悪性腫瘍規約改訂のポイントと対応─「何が」「なぜ」「どのように」変わったのか

著者:

ページ範囲:P.685 - P.685

子宮頸部病変

WHO 2014年 子宮頸部病変の改訂のポイント

著者: 森谷卓也 ,   稲吉貴絵 ,   鹿股直樹

ページ範囲:P.686 - P.690

●子宮頸部扁平上皮内病変は,従来の3段階(CIN1,CIN2,CIN3)から2段階(LSIL,HSIL)に変更され,旧CIN1の一部がHSILに含まれるようになった.

●微小浸潤癌は扁平上皮系,腺系とも削除され,所見の記載にとどめられた.腺異形成は採用されず,上皮内腺癌=高異型度腺上皮内腫瘍(HG-CGIN)として記載された.

●ヒトパピローマウイルス感染による腫瘍性変化の指標として,p16に対する免疫組織学的検索の重要性が強調された.

子宮頸部腺癌および腫瘍類似腺病変の病理

著者: 三上芳喜

ページ範囲:P.692 - P.698

●早期(微小)浸潤腺癌は進行期で規定されるため,組織亜型としては削除された.

●腺異形成が削除された.これまで腺異形成として診断されてきた病変のなかには低異型度の上皮内腺癌が含まれる.

●内頸部型粘液性腺癌の名称がなくなり,その多くが通常型腺癌となった一方で,真の粘液性癌が分離され,その亜型として非HPV関連で予後不良の胃型粘液性癌が新たに加わった.

子宮頸部囊胞性病変の治療と管理

著者: 鹿島大靖 ,   塩沢丹里

ページ範囲:P.700 - P.704

●LEGHとMDAは組織形態,胃型粘液産生能,HPV非依存性などの共通点があるうえにしばしば合併することから,LEGHはMDAや粘液性癌の前癌病変である可能性がある.

●LEGHやMDAを含む胃型腺癌の胃型粘液の検出には,HIK1083ラテックス凝集反応キットが有用な可能性がある.

●経腟超音波やMRIによる形態的な特徴と増大傾向の有無を評価すること,および細胞診異常の有無が胃型腺癌,MDAの発見に重要と考える.

子宮体部病変

WHO 2014年 子宮体部病変の改訂のポイント

著者: 津田均

ページ範囲:P.705 - P.712

●類内膜癌の前駆病変が子宮内膜増殖症と子宮内膜異型増殖症の2つに整理された.

●子宮内膜間質肉腫の分類に変更が加えられた.

●免疫組織化学による腺癌や肉腫の起源推定や悪性度の鑑別法の記載,染色体・ゲノム変化の記載が豊富となった.

子宮体癌の治療と管理

著者: 田中智人 ,   大道正英

ページ範囲:P.713 - P.717

●初回治療は子宮全摘出術,両側付属器摘出術,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清が基本となる.

●術後補助療法は,再発リスクを低・中・高に分類して考慮し,中・高リスク群に対してはAP療法もしくはTC療法が選択される.

間葉系腫瘍・癌肉腫の治療と管理

著者: 笠松由佳 ,   安部正和 ,   平嶋泰之

ページ範囲:P.719 - P.724

●根治治療可能な子宮癌肉腫の初回治療は手術であり,腹式子宮全摘術+両側付属器摘出術に加え,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清,大網切除を行うことが推奨される.

●完全切除例に対しても術後補助療法が推奨されるが,エビデンスの高い標準治療は確立していない.

●進行再発例には,治療効果,安全性の点からPTX+CBDCA療法の有効性が示唆されている.

卵巣腫瘍

WHO 2014年 卵巣腫瘍の改訂のポイント

著者: 清川貴子

ページ範囲:P.726 - P.731

●微小浸潤は浸潤巣の最大径が5mm未満と定義され,境界悪性腫瘍に分類する.この概念は,組織型を問わず上皮性腫瘍全体に適用される.

●漿液性癌は,高異型度漿液性癌(HGSC)と低異型度漿液性癌(LGSC)に分けられた.HGSCには卵管癌の卵巣転移例があることが示唆され,その前駆病変として漿液性卵管上皮内癌(STIC)の概念が確立された.

●粘液性腫瘍とは従来の腸型粘液性腫瘍のみを指す.従来の内頸部様(Müller管型)粘液性腫瘍は,新たに設定された漿液粘液性腫瘍に分類される.

卵巣漿液性癌の新しい概念

著者: 京哲 ,   中山健太郎

ページ範囲:P.732 - P.740

●卵巣癌は,その発癌分子機構の違いによる新たな分類法が提唱された.特に漿液性癌では卵管采上皮細胞を起源として卵管上皮内癌(STIC)を通じて発生する高異型漿液性癌と,卵巣の封入体囊胞を通じて発生する低異型漿液性癌に分けられる.

●高異型漿液性癌はp53遺伝子異常をベースに遺伝子不安定性を背景としてaggressiveなgrowthを示し,予後不良である.

●低異型漿液性癌はKRASPTENPIK3CAなどにわずかな遺伝子変異が少しずつ集積し,precursorである境界悪性病変(SBT/APST)を通じて段階的に発生するもので,発育は緩徐で予後良好である.

●封入体囊胞も卵管采細胞の自然移植によって形成される説が提唱されていおり,低異型漿液性癌やそのprecursorである境界悪性病変までもが卵管采細胞を起源とする可能性がある.

●両側卵管切除術を行うことで,将来の卵巣癌の発生頻度が約60〜70%減少することが明らかとなり,両側卵管切除術が卵巣癌発生予防策として定着してゆくであろう.

卵巣がん・卵管がん・原発性腹膜がんのFIGO進行期分類2014の要点と臨床的意義

著者: 小宮山慎一

ページ範囲:P.741 - P.747

●FIGO2014進行期分類では,卵巣がんは「同一の疾患ではなく,疾患のグループである」と明記され,各組織型に共通した予後因子を採用した.さらに卵巣がんのみならず,原発性腹膜がんと卵管がんも統一した分類となった.

●これらを用いて,世界規模の予後解析を行うためのデータ収集を行うことを志向している.

●ⅠC期の細分類,ⅢA期の細分類,Ⅳ期の亜分類が大きく改変された.

外陰癌

外陰癌日産婦学会進行期2014年と治療ガイドライン2015のポイント

著者: 齋藤俊章

ページ範囲:P.748 - P.755

●外陰癌日産婦学会進行期2014年(FIGO進行期分類2008)は過去20年のエビデンスをもとにし,新しい病理組織学的要因による予後グループを意識した手術進行期の大改訂である.

●「外陰がん・腟がん治療ガイドライン2015年版」では,これらのエビデンスをもとにした本邦における新たな治療体系確立の足掛かりとして外陰がんについての情報を網羅した.

●NCCNガイドライン,Vulvar cancerが本邦のガイドライン発刊後に公表されている.大筋は両ガイドラインで同じだが,新しい治療戦略に関する推奨に温度差があることは否めない.

絨毛性疾患

WHO 2014年 絨毛性疾患改訂のポイント

著者: 福永真治

ページ範囲:P.756 - P.762

●絨毛性疾患のWHO分類が2014年に改訂された1).最大の改訂は腫瘍項目に類上皮性トロホブラスト腫瘍が追加されたことである.2011年の絨毛性疾患取扱い規約第3版2)の分類,解説とほぼ同様の内容となっており,わが国での診断,治療に関して混乱はないものと思われる.

●全奇胎,特に早期の組織学的所見が詳細に記載され,p57 immunostaining, DNA genotypingについても解説されている.すでに絨毛性疾患取扱い規約第3版に記載され,実際上の変更はない.

●部分奇胎との鑑別が必要な異常(非奇胎性)絨毛病変が追記されたが,その解説や図は掲載されていない.その病変の多くは組織診断が容易ではなく,genotypingが必要となる.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

卵巣がんの術後診断で治療したがその後に大腸がんと判明した症例

著者: 幅田周太朗 ,   横山和典 ,   藤岡保範

ページ範囲:P.764 - P.769

症例
▶患者

 61歳,2経妊2経産.
▶主訴

 左下腹部痛,発熱.
▶既往歴

 特記すべきことなし.
▶家族歴

 特記すべきことなし.
▶現病歴

 下腹部痛と発熱を主訴に他院を受診し,超音波検査で骨盤内腫瘤を認めたため,卵巣腫瘍疑いで当院を紹介され受診となった.当院受診時は下腹部痛,発熱とも改善していた.

Obstetric News

骨盤位外回転術①

著者: 武久徹

ページ範囲:P.770 - P.771

骨盤位分娩

 骨盤位は満期妊娠の約3〜4%に存在するが,帝切分娩率が高い.デンマーク全国分娩登録では,満期単胎骨盤位妊娠23,789人(1997〜2008年)における帝切率は79.6%から94.2%に増加している.

 骨盤位外回転術(external cephalic version : ECV)は,帝切を減少できる1つの方法であるが,ECV施行率には差があり,適格と思われる妊婦の約20〜30%は勧められていない(Birth 41 : 323, 2014/J Obstet Gynecol 22 : 486, 2002).

Estrogen Series・153

緊急避妊法(Emergency Contraception)

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.772 - P.772

 計画されない妊娠は多い.米国でも妊娠の半数は意図されたものではない.しかし避妊法を有効に使用すれば,それらの妊娠を防ぐことができることを医師は銘記すべきである.

 緊急の経口避妊薬は,米国には2種があり,①ulipristal acetate(30mg),および②levonorgestrel(1.5mg)がある.この2種の避妊法を使用したときの妊娠率は,39種の臨床試験によれば0〜6.5%である.また,単発1回の性行為による妊娠の40〜90%を防止する.

症例

初回治療17年後に悪性転化した卵巣粘液性境界悪性腫瘍の1例

著者: 赤澤宗俊 ,   横山幹文 ,   瓦林靖広

ページ範囲:P.773 - P.777

▶要約

 卵巣境界悪性腫瘍で17年後に悪性転化をした症例を経験したので報告する.症例は61歳,3経妊3経産.19年前に子宮内膜症に対して,単純子宮全摘術が施行されていた.17年前に卵巣粘液性囊胞性腫瘍,境界悪性(粘液性境界悪性腫瘍)に対して両側付属器切除術,大網部分切除術,虫垂切除術を施行され,術後化学療法(CAP療法)を施行された.その後,10年間当科外来で経過観察を行った.治療後17年目に倦怠感および食欲不振が出現し,画像検索にて骨盤内右側に手拳大の腫瘍を認めた.卵巣境界悪性腫瘍再発と術前診断し腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は表面不整で手拳大に腫大し,周囲腸間膜と癒着し右尿管を巻き込んでいた.病理組織検査では腺癌の結果であり,晩期再発・悪性転化と診断した.術後追加療法としてTC療法6コースを施行し,現在外来通院中である.卵巣境界悪性腫瘍の悪性転化について文献的に考察し報告する.

卵巣腫瘍茎捻転腹腔鏡手術後に診断に至った閉経前卵巣悪性腫瘍2症例の検討

著者: 濵田萌 ,   武内享介 ,   白國あかり ,   山下詩乃 ,   吉田愛 ,   武田晃子 ,   杉本誠 ,   辻野太郎

ページ範囲:P.779 - P.783

▶要約

 卵巣腫瘍茎捻転を契機に卵巣癌と診断された2症例を経験した.2症例とも40歳台であり,閉経前であった.腫瘍マーカーは軽度上昇,腫瘍径はそれぞれ7cmと10cmであった.単房性囊胞性腫瘍が疑われた症例では腹腔鏡による付属器切除を施行したが,被膜の自然破綻が見られた.術後組織診断では出血性背景を伴う漿液性囊胞性腺癌であった.成熟囊胞奇形腫が疑われた症例では,腹腔鏡による腫瘍切除を行ったが,術中操作による被膜破綻が生じた.術後の病理所見では成熟囊胞奇形腫の悪性転化であった.いずれの症例に対しても術後に根治術が施行された.卵巣癌罹患率が上昇する40歳以降の茎捻転症例では,卵巣癌の可能性も念頭に置いて,腫瘍マーカーをはじめとする術前検査の評価ならびに術後の組織学的検索を進める必要がある.

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バックナンバー

ページ範囲:P.787 - P.787

次号予告・奥付

ページ範囲:P.788 - P.788

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

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今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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