icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科71巻12号

2017年12月発行

文献概要

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識 生殖医療にかかわる法的問題

配偶子提供(性同一性障害を含む)

著者: 水澤友利1 久慈直昭2

所属機関: 1英ウィメンズクリニック 2東京医科大学産婦人科教室

ページ範囲:P.1157 - P.1164

文献購入ページに移動
●配偶子提供を利用した生殖医療は同性愛者や性同一性障害者を含めたさまざまな多様化する家族の在り方に適応しているが,それを利用した親,その治療で生まれた人,配偶子提供者という複雑な関係性を生じ,既存の親子を定義する法律では家族の親子関係を保証するには法律的に不十分である.

●配偶子提供で生まれた人は配偶子提供者の匿名性や治療について親から告知されないことより出自を知る権利が損害され,それが問題提起されて20年近く経つが未解決のままである.

●将来,日本においてこうした問題を改善するためには,新しい親子の定義と,配偶子提供で生まれた人の出自を知る権利を法律で保障することが必要と考える.

参考文献

1)Wilson S, et al : Identity, genealogy and the social family : the case of donor insemination. Int J Law Policy Family 11 : 270─297, 1997
2)Landau R, et al : The management of genetic origins : secrecy and openness in donor assisted conception in Israel and elsewhere. Hum Reprod 13 : 3268─3273, 1998
3)厚生科学審議会先端医療技術評価部会,生殖補助医療技術に関する専門委員会 : 精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書.2000年12月.http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s0012/s1228-1_18.html#5
4)非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ(DOG : DI Offspring group),長沖暁子 : AIDでうまれたということ精子提供で生まれた子どもたちの声.pp12─36,萬書房,2014
5)厚生科学審議会生殖補助医療部会 : 精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書.2003年4月28日.http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/04/s0428-5a.html#2 2003
6)法務省 : 精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療により出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する要綱中間試案.http://www.moj.go.jp/content/000071864.pdf
7)日本産科婦人科学会 : 非配偶者間人工授精に関する見解.2015年6月.http://www.jsog.or.jp/ethic/teikyouseishi_20150620.html
8)東京高裁決定.1998(平成10)年9月16日,判タ1014号245頁
9)性別変更の男性と人工授精の子,親子と認めず,大阪家裁.朝日新聞(2013年9月13日)
10)深見公子 : 民法第772条(嫡出の推定),第779条(認知).実用六法 平成29年版(加藤晋介 監修).p244,成美堂,2016
11)Turner AJ, et al : What does it mean to be a donor offspring? The identity experiences of adults conceived by donor insemination and the implications for counselling and therapy. Hum Reprod 15 : 2041─2051, 2000
12)ユニセフ : 子どもの権利条約.http://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_rig.html
13)Lycett E, et al : Offspring created as a result of donor insemination : a study of family relationships, child adjustment, and disclosure. Fertil Steril 82 : 172─179, 2004
14)非配偶者間人工授精で生まれた人の自助グループ(DOG : DI Offspring group),長沖暁子 : AIDでうまれたということ精子提供で生まれた子どもたちの声.p18,pp38─65,萬書房,2014
15)ケン・ダニエルズ : 家族をつくる─提供精子を使った人工授精で子どもを持った人たち.pp87─142,人間と歴史社,2010
16)稲熊利和 : 生殖補助医療への法規制をめぐる諸問題─代理懐胎の是非と親子関係法制の整備等について.立法と調査263 : 128─136, 2007
17)林かおり : 海外における生殖補助医療法の現状─死後生殖,代理懐胎,子どもの出自を知る権利をめぐって─外国の立法国立国会図書館調査及び立法考査局.外国の立法243 : 99─136, 2010
18)菱木昭八朗 : スウェーデン補助生殖立法にみる非配偶者間補助生殖子の自己の出自を知る権利について.http://www.senshu-u.ac.jp/School/horitu/researchcluster/hishiki/hishiki_db/know.pdf
19)Gottlieb C, et al : Disclosure of donor insemination to the child : the impact of Swedish legislation on couples' attitudes. Hum Reprod 15 : 2052─2056, 2000
20)梅澤 彩 : ニュージーランドの養子縁組生殖補助医療法立命館法学,2016.http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/16-56/003umezawa.pdf
21)深見公子 : 日本国憲法 第24条 家族生活における個人の尊厳と両性の平等.実用六法 平成29年版(加藤晋介 監修).p21,成美堂,2016
22)卵子提供第三者卵子で初の出産 不妊女性,匿名提供受け 神戸NPO発表.毎日新聞(2017年3月22日,東京夕刊).https : //mainichi.jp/articles/20170322/dde/001/040/071000c

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?