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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科71巻3号

2017年04月発行

文献概要

症例

経腟分娩後の癒着胎盤にメトトレキサート療法を施行し子宮を温存しえた1例

著者: 斉藤慶弘1 小原美幸1 横井由里子1 塩沢功1

所属機関: 1松本市立病院産婦人科

ページ範囲:P.387 - P.391

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▶要約

 癒着胎盤は分娩時の多量性器出血の原因となる疾患で,事前の診断が困難な場合が多く,子宮摘出となる症例も少なくない.症例は手術歴や不妊治療歴のない未経妊の26歳.妊娠38週5日に正常経腟分娩となった.分娩時に約1/4ほどの胎盤が遺残し,超音波検査およびMRIにて陥入胎盤と診断した.その後も遺残胎盤の排出を認めず.子宮温存希望のため,産褥11日目にメトトレキサート(以下,MTX)を筋注で24mg/日×4日間投与した.産褥14日目に遺残胎盤の自然娩出を認めた.癒着胎盤に対して,性器出血と感染がコントロールされている場合,MTX療法はまず選択すべき治療である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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