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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科71巻6号

2017年06月発行

雑誌目次

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

著者:

ページ範囲:P.499 - P.499

総論

周産期とメンタルヘルス

著者: 岡野禎治

ページ範囲:P.500 - P.505

●周産期の精神障害の総称として「産後うつ病」という用語は使用しない.うつ病に限らずさまざまな精神疾患が出現するが,重症度に合わせた精神科医との対応が重要である.

●妊娠登録時には,周産期に再発リスクの高い女性(精神科既往歴,精神薬服薬,家族歴)を検出し,精神科医と連携して,必ず産後の健診までフォローする.

●産褥期はうつ病のスクリーニングを実施して,精神医療サービスとの連携体制を構築する.

妊産婦死亡原因としての自殺とその予防─産後うつを含めて

著者: 竹田省

ページ範囲:P.506 - P.510

●ICD10(2013年版)での変更により,精神疾患により自殺した場合,間接産科的死亡に入れる.妊産褥婦の死亡では死亡診断書(死体検案書)に,死因とともに妊娠週数,1年未満の産褥日数を記載する.

●本邦の妊産婦死亡,後発妊産婦死亡原因は自殺が多く,諸外国と比較して多い傾向にある.

●周産期メンタルヘルスの重要性を認識し,産後うつ病のスクリーニングや問題症例への介入で自殺防止に地域全体で取り組む必要がある.

連携管理

精神疾患合併妊娠のハイリスク管理加算に伴う医療連携

著者: 鈴木俊治

ページ範囲:P.511 - P.515

●精神疾患合併妊娠のハイリスク管理加算は,精神科との医療連携を前提とした保険収載である.

●周産期メンタルヘルスケア充実のため,コンセンサスが得られたガイドラインの作成や,各地域での救急連携を含めた医療連携体制の構築が必要である.

周産期メンタルヘルスにおける多職種連携

著者: 笠井靖代

ページ範囲:P.516 - P.522

●周産期医療は,これまで母体の産科合併症の管理が中心であったが,近年,「産後うつ」を始めとする精神の不調をかかえる妊産婦への支援の重要性が認識されている.

●周産期メンタルヘルスにおいては,精神科を含めた各診療科にまたがる多職種連携に加えて,病院と地域との連携が不可欠であり,また迅速な対応や柔軟な判断を要する場合も少なくない.

●精神疾患がハイリスク対象化となっても,母体の身体的合併症がない場合には,自然分娩となることが多い.自然分娩の場合には,ハイリスク分娩管理加算が請求できない点が,今後の課題である.

病態別の管理

不育症におけるsupportive care

著者: 永松健 ,   長坂貴顕 ,   藤井知行

ページ範囲:P.523 - P.526

●繰り返す流産体験は患者にとって強い精神的ストレスとなり,気分障害を生じている場合がある.

●不育症診療では原因因子の検索,治療方針の決定においてsupportive careを心掛けた対応が重要である.

●不育症女性における精神的ストレスは,その後の妊娠においてさらなる流産を生じる要因となる可能性がある.

胎児異常・胎児新生児死亡を経験した妊産婦へのケア

著者: 杉林里佳 ,   左合治彦

ページ範囲:P.528 - P.533

●産婦と家族の精神的苦痛に配慮し,悲嘆のプロセスを十分に理解して対応する.

●胎児異常を診断した場合,疾患の正確な診断,予後の明確な説明,選択可能な管理方法や治療方法の説明,両親が最良の選択をするための支援が重要である.

●こころのケアにあたる際には産科医,精神科医,助産師,看護師,カウンセラー,ソーシャルワーカーなどとともにチーム医療を行う.

精神疾患をもつ人の妊娠・出産・育児を支える

著者: 熊倉陽介

ページ範囲:P.535 - P.540

●向精神薬の副作用や,服薬を中断することで精神状態が悪化してしまうこと自体のリスクなどの情報提供を行い,妊娠・出産・育児を乗り越えるための方策を本人や家族と一緒に話し合う.

●保健師や精神科などと妊娠中から連携し,妊娠・出産・育児を支える体制を構築する.

●精神症状が激しい場合など急性期には,多職種・多部門で刻一刻と変わる状況に対してそのつど協議しながら方針を決定し,切迫したときほど柔軟に工夫して母児の安全を守る.

子ども虐待が疑われる妊産婦への対応

著者: 川口晴菜 ,   光田信明

ページ範囲:P.541 - P.545

●主に医療機関における妊婦健康診査の際に,子ども虐待を念頭において妊娠中から支援すべき妊婦を抽出する.

●抽出においては,問診票を活用し,面接によって情報の確認を行う.

●支援の必要な妊産婦を発見した際には,市町村に連絡し,妊娠中から連携して支援を行う.

性暴力被害が疑われる症例への対応

著者: 中島聡美

ページ範囲:P.546 - P.552

●性暴力被害者は,医療機関を受診しても被害を訴えないことが多いことから,望まない妊娠や未成年者の妊娠や性感染症の場合には,性暴力被害の可能性も検討する.

●性暴力被害のメンタルヘルスでは,PTSDやうつ病だけでなく,自殺行動やアルコール・薬物関連問題などの深刻な問題の存在にも留意する必要がある.

●性暴力被害者のケアには,医療機関だけでなく,警察や行政,ワンストップ支援センターなどさまざまな支援機関と連携することが重要である.

若年者に対する性虐待への対応

著者: 高橋幸子

ページ範囲:P.553 - P.557

●出産となる場合,母親学級は個別で受けることができるよう配慮し,入院は産科病棟以外が望ましい.できれば無痛分娩での対応とする.低身長により帝王切開を行うこともある.特別養子縁組となる場合はグリーフケアを行う.

●中絶となる場合も出産となる場合も,被性虐待児に対する一般的なメンタルサポートを行う.ボディイメージの回復をサポートする声掛けを.

●性虐待による妊娠を防ぐために,社会全体が性虐待に対する認識をもつ.性虐待があるときは周囲の大人に助けを求められるよう,10歳頃にはプライベートゾーンについての集団教育を行う.

薬物療法

周産期メンタルヘルスの薬物療法 : 10の原則

著者: 鈴木利人

ページ範囲:P.558 - P.564

●薬物療法を考えるにあたり,患者の目線に立ち「どのようにすれば薬物療法をせずに,周産期の精神状態の安定を図ることができるか」を考える.

●妊娠への影響は,催奇形性のみならず,胎児発育不全,産科合併症,新生児毒性,新生児離脱,児の中・長期的な認知や運動発達の障害などへの影響を考慮する.

●薬物療法を中断した際の再発リスクを決して軽視しない.不安定な精神状態は妊婦の安全や胎児・乳幼児のその後の成長に影響を与える.

●最終的な判断は,家族と患者による自己決定権に委ねられる.

向精神薬と授乳

著者: 肥沼幸

ページ範囲:P.566 - P.570

●授乳期であっても,母体の疾患や病状にあわせた適切な治療を継続する必要があることを関係医療者間で共有して治療を行う.

●薬剤の母乳移行量や授乳児への影響に関する情報は,添付文書情報のみではなく専門書や専門サイトで最新の情報を確認し,患者にきちんと説明しておく.

●母乳哺育に関する選択は患者自身の決定を尊重し,医療者は患者が自信をもって育児を継続していけるように支援する.

連載 Obstetric News

誘発分娩不成功回避

著者: 武久徹

ページ範囲:P.571 - P.573

初回帝切回避に関するNICHD,米国周産期学会,米国産婦人科学会合同ワークショップ

Spong CY,et al. Obstetrics & Gynecology 120 : 1181, 2012

■キーポイント

*受け入れられる適応がない帝王切開(帝切)は,“選択的帝切”ではなく,“nonindicated cesarean delivery”のような用語にすべきである.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

帝王切開術後に診断された周産期心筋症の1例

著者: 片山素子 ,   三浦裕美子 ,   平尾薫丸

ページ範囲:P.574 - P.578

症例
▶患者

 41歳,1経妊0経産.
▶既往歴

 高校生時に心電図異常のため精査を施行されたが,明らかな異常はなく,経過観察となった.

症例

腸管子宮内膜症による腸閉塞を発症した一卵性双胎姉妹の1例

著者: 新井未央 ,   木村博昭 ,   片山恵里 ,   藤田久子 ,   糸井瑞恵 ,   神下優 ,   神山正明 ,   井上泰 ,   平敷好一郎

ページ範囲:P.579 - P.584

▶要約

 一卵性双胎の姉妹がともに腸管子宮内膜症に伴う腸閉塞を発症した稀な症例を経験した.症例1は43歳,2経産の姉.1年ほど前から月経時の腹痛と下血があった.月経中に強い腹痛を生じ,下部消化管内視鏡検査でS状結腸の閉塞を指摘された.保存的治療後,S状結腸切除術を施行.S状結腸漿膜下〜粘膜下層に広汎な子宮内膜組織を認め,腸管子宮内膜症の診断に至った.症例2は44歳,未経産の妹.8年ほど前から月経前日に腹痛と下血があり,腸管子宮内膜症が疑われていた.月経開始後の腹部症状を主訴に受診し,精査にてS状結腸および直腸の狭窄を認めた.子宮筋腫と左卵巣チョコレート囊胞もあり,開腹手術を施行.姉と同様,S状結腸に広汎な子宮内膜組織を認めた.双胎における希少部位子宮内膜症の報告は数少ないが,過去の研究により子宮内膜症の発生には複数の遺伝的因子の関与が示されており,家族歴の聴取は診断の一助となりうる.

帝王切開瘢痕部に妊娠した侵入奇胎の術前診断で全腹腔鏡下子宮全摘出術を施行した1例

著者: 生駒洋平 ,   溝上友美 ,   坪倉弘晃 ,   佛原悠介 ,   村田紘未 ,   吉村智雄 ,   生田明子 ,   北正人 ,   神崎秀陽 ,   岡田英孝

ページ範囲:P.585 - P.589

▶要約

 絨毛性疾患は生殖年齢に好発し化学療法が奏効するため,子宮を温存できることが多い.今回,帝王切開瘢痕部に妊娠した侵入胞状奇胎(侵入奇胎)の診断のもと,全腹腔鏡下子宮全摘出術を施行した稀な症例を経験した.症例は35歳,4経妊3経産(帝王切開3回).部分胞状奇胎が疑われたため当科へ紹介受診となった.妊娠9週相当で血中hCGは高値(48,276mIU/mL)であり,画像所見からも侵入奇胎が疑われた.穿孔・大量出血の危険性を伴うこと,妊孕能温存の希望がないことより,化学療法や子宮内容除去術は施行せず全腹腔鏡下子宮全摘出術を選択した.絨毛組織が付着した子宮前壁筋層は菲薄化していたが,定型通り手術は遂行でき,術後,血中hCG値は速やかに下降した.帝王切開瘢痕部の侵入奇胎において,全腹腔鏡下子宮全摘出術は安全に遂行でき根治性の高い治療法と考えられた.

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バックナンバー

ページ範囲:P.593 - P.593

次号予告・奥付

ページ範囲:P.594 - P.594

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻5号(2015年5月発行)

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69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

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