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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科72巻11号

2018年11月発行

雑誌目次

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

著者:

ページ範囲:P.1045 - P.1045

男性不妊を疑ったらどうするか

著者: 大橋正和 ,   森田伸也 ,   高松公晴

ページ範囲:P.1046 - P.1052

ポイント

●不妊原因の半数が男性に存在する.その内訳は86.5%が精液所見不良,13.5%が性機能障害である.

●男性不妊治療によりART→IUIといった妻に対する治療方法の“step down”が可能となる例,性生活が円滑になり自然妊娠が期待できるようになる症例が多々ある.

●不妊診療に携わるすべての産婦人科医にとって男性不妊の知識が必要である.夫の既往歴・手術歴・薬歴から不妊原因が判明する例も散見され,禁煙,精巣を高温環境に置かないなどの生活改善も重要である.

診断法

標準化された精液検査法・自宅で行えるスマートフォンを利用するCASAシステムについて

著者: 渡邊倫子 ,   山崎一恭 ,   岩本晃明

ページ範囲:P.1054 - P.1061

●精液検査は禁欲期間により精子濃度,運動率に影響を及ぼすことがあり,記載しておくことが望ましい.個人内変動があるため1回で判定してはいけない.最低2回,変動が多い場合には3回行う.

●精液検査をMakler chamberで行う場合,精子濃度の測定はホルマリン固定して測定すると精度が上がる.精液量は5μLを載せること.目視より20〜40%程度精子濃度が高くなる.

●スマートフォンによる自宅で行えるCASAの精度は,目視と比較すると芳しくない.しかし男性患者が病院に来たがらない,恥ずかしい,忙しいなどの理由で来院しない患者への受診の動機付けにはなる.

男性不妊症における染色体・遺伝子検査

著者: 木村将貴 ,   中川徹

ページ範囲:P.1062 - P.1067

●将来的な遺伝カウンセリングのため,染色体検査や遺伝子検査が必要になる疾患を確認する.

●染色体検査の適応は非閉塞性無精子症もしくは精子濃度500万/mL以下の高度乏精子症である.流産を繰り返す症例や奇形,精神発達遅滞などの児の異常を疑うような病歴があれば精液所見にかかわらず施行する.

●AZF領域微小欠失は非閉塞性無精子症や高度乏精子症で認められ,男児に遺伝するため注意が必要である.

抗精子抗体

著者: 脇本裕 ,   杉山由希子 ,   柴原浩章

ページ範囲:P.1068 - P.1075

●抗精子抗体は,女性では同種抗体として,男性では自己抗体として産生され,免疫性不妊症の一因となる.

●抗精子抗体の検出法として,女性側では精子不動化試験(sperm immobilization test : SIT)が,男性側ではイムノビーズテスト(immunobead test : IBT)が用いられている.

●WHOは精液検査の際に,運動精子上に結合する抗精子抗体の検出を推奨している.

薬物療法

漢方療法のエビデンス

著者: 武田卓

ページ範囲:P.1076 - P.1080

●男性不妊に対する漢方治療において,補腎剤・補剤とよばれる一群の薬剤が汎用される.

●精索静脈瘤の手術療法に対する漢方療法併用による妊娠率向上に関する有効性を示すメタアナリシスが報告されている.

●男性不妊に対する特定の漢方製剤の有効性を示すエビデンスは乏しく,プラセボ対照試験などによるさらなる検討が必要である.

ビタミン・サプリメント療法のエビデンス

著者: 辻村晃

ページ範囲:P.1081 - P.1086

●男性不妊症(特発性造精機能障害)に対する薬物療法はいまだ経験的に行われていることが多い.

●抗酸化作用を有するビタミン剤,サプリメントは造精機能を改善させる可能性が示唆されている.

●ビタミンB12,E,C,コエンザイムQ10,L─カルニチン,アスタキサンチン,亜鉛,マカなどは少なからず効果が期待できるものとして頻用されている.

低ゴナドトロピン性性腺機能低下症とその治療

著者: 千葉公嗣 ,   藤澤正人

ページ範囲:P.1087 - P.1092

●MHHは頻度の高い疾患ではないが,無精子症症例でも薬物療法のみで自然妊娠まで期待できる,数少ない男性不妊疾患の1つである.

●遺伝子異常などが関与する先天性MHHと,脳外科手術などが関与する後天性MHHがある.

●妊孕性を目的とした治療の中心はhCG製剤とrecombinant human FSH(r-hFSH)製剤の投与であり,在宅自己注射が保険診療上承認されている.

勃起障害・射精障害とその治療

著者: 永尾光一

ページ範囲:P.1093 - P.1098

●EDによる男性不妊症に対するPDE5阻害薬の有効率は高い.

●逆行性射精に対するアモサピンは有効であるが保険適用外である.

●薬物が無効な逆行性射精には,膀胱内精子回収法や精巣内精子回収法(TESE)が行われる.

手術療法

精路再建手術の適応と限界

著者: 白石晃司

ページ範囲:P.1099 - P.1104

●閉塞性無精子症は精路再建によりタイミング法や人工授精での妊娠が可能であり,明らかな女性側因子がなければ必ずオプションとして提示すべきである.

●精管結紮後や鼠径ヘルニア術後の場合には精管─精管吻合が,精巣上体炎後の場合には精管─精巣上体吻合が施行される.

●精路再建,特に精管─精巣上体吻合は施行可能な医療機関が限られるため,泌尿器科生殖医療専門医などを窓口としてコンサルトする必要がある.

精索静脈瘤(臨床・手術)の適応と限界

著者: 湯村寧 ,   竹島徹平 ,   黒田晋之介

ページ範囲:P.1106 - P.1112

●精索静脈瘤は男性不妊患者の約3割を占めており手術治療が有効である.最も行われている術式は顕微鏡下の低位結紮術である.

●手術後3〜6か月で精液所見は改善する(わが国の調査では患者の70%程度).海外のRCTでも同様の結果が得られている.

●近年の報告で精索静脈瘤手術により精子のDNA断片化も改善することがわかってきており,ARTを行うカップルに対しても有効である可能性が示唆されている.

ARTと長期予後

TESEの実際

著者: 小林秀行

ページ範囲:P.1114 - P.1118

●精巣内精子回収術(testicular sperm extraction : TESE)には,conventional(simple)TESEと顕微鏡下精巣内精子回収術(microdissection TESE : micro TESE)の2種類がある.

●閉塞性無精子症患者に対しては,conventional TESEを施行し,非閉塞性無精子症患者に対しては,micro TESEを行う.

●2014年度に実施した全国調査における精子回収率は,conventional TESEにおいて98.3%,micro TESEにおいて34.0%であった.

未熟雄性配偶子を用いた不妊治療の可能性

著者: 田中温

ページ範囲:P.1120 - P.1126

●造精細胞の中で円形精子細胞を正確に見つけることが本治療の最も大事な点である.円形精子細胞と最も良く似た精祖細胞との違いが重要となり,両者の鑑別は大きさ,核膜,核小体の3項目で可能である.

●円形精子細胞にはスパームファクターが十分でないため,卵子の活性化が十分に起きない.ROSIでは卵子の活性化が必要で,現在のところ電気刺激が最も効果がある.

●現在われわれは電気刺激の至適条件を模索している.最終的には電気刺激に代わって,マウスにおける塩化ストロンチウムのような培養液の中に浸漬するだけで活性化が起こる方法を見つけていきたい.

男性不妊患者より出生した児の長期予後

著者: 中林章

ページ範囲:P.1127 - P.1132

●ART児および不妊治療群で先天異常のリスクが増加していることから,ARTとともに不妊症であることがリスク増加に関与している可能性が高い.

●ARTによる長期的な影響に関し結論づけることは現時点では困難である.

●ICSI児と自然妊娠児を比較し,精子濃度,総精子数,総運動精子数に有意な差を認めたとする報告がある.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

治療に苦慮した難治性リンパ囊胞の1例

著者: 舟本寛

ページ範囲:P.1134 - P.1139

はじめに

 子宮がんなどの婦人科悪性腫瘍に対して後腹膜リンパ節郭清術は一般的に行われている手術療法であり,術後のリンパ囊胞は時折認められる合併症である.それが無症候性の場合は治療不要であり,多くは自然に吸収される.しかし,水尿管,水腎症,感染,深部静脈血栓症,下肢リンパ浮腫,腸閉塞などを引き起こす有症候性のリンパ囊胞は治療の対象となる.今回,症候性骨盤リンパ囊胞に対して,ICG蛍光リンパ管造影法にて囊胞内のリンパ液の漏出部位と思われる箇所にクリップをかけ,さらにフィブリン糊を散布し,治療した症例を経験したので報告する.

Obstetric News

経口避妊薬─延長使用と長期継続使用(Ⅱ)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.1140 - P.1141

引用 : ACOG PROLOG. Patient Management in the Office, 7th ed., #69, 2017年

 女性の90%は人生のある時点で月経困難症を経験する.ホルモン避妊製剤は月経困難症がある女性の最高75%において,月経関連痛の減少に関連がある.配合型経口避妊薬(oral contraceptives : OCs)延長使用や長期継続使用(休薬や偽薬を使用せずに何か月間も,ときには1年以上連続使用する方法)は,月経困難症の治療に安全で有効な選択肢である.

Estrogen Series・176

多囊胞性卵巣症候群(PCOS)

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.1142 - P.1143

 多囊胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は,いまだによく解明されていない疾患である.

 PCOSに関して,最近,米国産婦人科学会の機関紙であるObstetrics and Gynecology誌においてその要約が示されているので,それをご紹介したい1)

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目次

ページ範囲:P.1042 - P.1043

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.1145 - P.1145

バックナンバー

ページ範囲:P.1147 - P.1147

次号予告・奥付

ページ範囲:P.1148 - P.1148

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

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今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

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71巻8号(2017年8月発行)

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今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

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合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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