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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科72巻2号

2018年03月発行

雑誌目次

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

著者:

ページ範囲:P.201 - P.201

安全で効果的なホルモン補充療法の実施法

著者: 岡野浩哉

ページ範囲:P.202 - P.210

●安全面からHRT開始前の患者の評価をさまざまな角度から行うことが肝要であるが,多くの検査を実施することよりも家族歴を含めた詳細な問診が最も重要である.

●効果的にHRTを施行するには,画一的な処方は避け,患者背景を十分に考慮した投与法の選択が鍵となる.

●HRT施行中は患者の訴えを真摯に受け止め,臨機応変な対応を行うことが,医師─患者関係の信頼構築と安全で効果的なHRTの継続に貢献する.

ホルモン製剤による違い

エストロゲンの種類とその特徴

著者: 安井敏之

ページ範囲:P.212 - P.220

●HRTは目的,年齢,合併症を考慮して用量や投与経路を考える.

●更年期障害の改善を目的とするのであれば通常量,骨量増加や骨折抑制など骨の健康を考えるのであれば低用量,泌尿・生殖器症状の改善を目的とする場合には経腟投与が望ましい.

●60歳以降では加齢による静脈血栓塞栓症や脳卒中の増加を考慮して経皮や低用量,また肥満,胆囊疾患,肝機能障害を合併している場合には経皮が望ましい.

黄体ホルモンの種類とその特徴

著者: 倉林工 ,   森川香子

ページ範囲:P.222 - P.231

●ホルモン補充療法における黄体ホルモン投与の目的は,全身的なエストロゲン投与による子宮内膜がんや子宮内膜増殖症のリスクを増加させないことにある.

●黄体ホルモン投与中は浮腫,不安や抑うつなどが起こりやすく,エストロゲン単独に比べ乳がんや静脈血栓塞栓症の発症率が高くなる.

●子宮を有する女性には黄体ホルモン併用を原則とするが,乳がん発症を抑えるため近年ジドロゲステロンの使用が増加している.

効果と注意点(発がんリスクを除いて)

効果が期待できる閉経周辺期の症状

著者: 牧田和也

ページ範囲:P.232 - P.237

●HRTの治療効果が期待できる閉経周辺期の症状には,更年期障害,気分障害,皮膚症状,性器萎縮が当てはまる.

●ホットフラッシュを中心とした更年期障害や性器萎縮に対するHRTの治療効果は周知の事実であるが,それ以外にも睡眠障害,精神的症状,関節・四肢痛に有効な場合がある.

●HRTにより,更年期の抑うつ気分または抑うつ症状は改善するが,うつ病に対する効果は一定しない.

●皮膚組織に対するHRTの効果は証明されているが,積極的にHRTを推奨するには臨床データが十分でない.

HRT開始時期─タイミング仮説

著者: 篠原康一

ページ範囲:P.238 - P.243

●心血管系の有害事象を減らすためにHRTの開始時期・開始年齢を考慮すべきである.

HRT投与期間─いつまで投与できるか?

著者: 樋口毅

ページ範囲:P.244 - P.251

●HRT投与期間の継続(延長)の可否・要否を考える場合には,HRTの目的の確認を行うとともに,対象者の年齢や状態における有害事象,とりわけ急性かつ致死的なもののリスク評価を行い,その情報を共有することが大切である.

●目的,リスク評価を理解したうえであれば,原則的に投与期間の制約はない,というのがグローバルコンセンサスとなっている.

●大規模なRCTでの評価からいえることは,長期投与の点からは通常投与量の結合型エストロゲン/酢酸メドロキシプロゲステロンに限られる.低用量やエストラジール(経口,経皮)では有害事象が増えないことが予測されている.

閉経期ホルモン療法と静脈血栓塞栓症

著者: 寺内公一

ページ範囲:P.253 - P.259

●VTEリスク,すなわち①高齢,②肥満,③喫煙,④手術・骨折などによる長期臥床,⑤VTEの家族歴,を有する症例には慎重に閉経期ホルモン療法(MHT)を行う必要がある.

●MHTに伴うVTEリスクは,①経口投与でEの高用量化とともに上昇し,②経皮投与ではEの用量にかかわらず上昇せず,③用いるPの種類によって異なる.

●MHTに伴うVTEリスクを可能な限り低下させるためには,経皮投与を行うことが望ましく,さらにPとしてはDYDを選択するとよいかもしれない.

内科疾患合併症患者に対するHRT

著者: 望月善子

ページ範囲:P.260 - P.265

●内科合併症を有する女性にHRTを検討する際には,HRTの禁忌症例・慎重投与症例に該当しないか,十分な問診をとり,投与前検査を確実に評価する.

●HRTの施行にあたりリスクとベネフィットを説明し,実際の薬剤はリスクの少ない処方を選択するとともに,内科主治医と密に連携をとり,合併症の有無など細かく診療する.

●リスク回避の方法として,低用量,経皮剤の使用,黄体ホルモンの選択,内科薬剤の使用などがあるが,個々の症例において安全に行えるか検討する.

悪性腫瘍との関連

HRTの発がんリスク

著者: 尾林聡

ページ範囲:P.266 - P.271

●ホルモン補充療法は更年期障害の治療に有用であるが,エストロゲンの副作用として子宮内膜がん,乳がんなどの発生に留意する必要がある.

●日本での発生が増加している卵巣がんであるが,HRTにより1,000人に1人程度増加すると最近報告された.

●一方,結腸がんではETでRR 0.77,EPTで0.88とむしろ低下すると考えられている.

BRCA遺伝子変異を有する女性へのHRT

著者: 髙松潔 ,   橋本志歩 ,   杉山重里 ,   小川真里子

ページ範囲:P.272 - P.277

●乳がんの既往がなく,発症もしていないBRCA遺伝子変異を有する女性へのHRTは,一般女性へのHRT同様に有用である.

●現在までのところ,これらの女性へのHRT施行により,乳がん・卵巣がん・子宮内膜がんリスクの上昇を示唆する報告はない.

BRCA遺伝子変異を有する女性に対しては,RRSO後や自然閉経後の諸症状・疾患に対し,あるいはヘルスケアの目的でHRTの可能性を提示することはQOLの維持・向上の点から必須であると考えられる.

がんサバイバーに対するHRT

著者: 佐々木浩

ページ範囲:P.278 - P.283

●子宮頸がん術後のHRTは扁平上皮癌においては問題ないと考えられるが,腺癌に関してはエビデンスが乏しいため十分なインフォームド・コンセントが必要である.

●子宮体がん術後のHRTは初期においては許容されるが,Ⅲ期以上の進行症例には推奨されていない.

●卵巣がん術後のHRTは進行期,組織型にかかわらず可能と考えるが,血栓症などの副作用には注意が必要である.

連載 Estrogen Series・168

ハワイ大学と南カリフォルニア大学によるサルコペニアの多民族研究

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.284 - P.284

 高齢になると骨格筋が失われ,体重が低下し,運動機能も低下する.この状態は臨床的にはサルコペニア(sarcopenia)と呼ばれる.これらの高齢者は歩行の困難,椅子から立ち上がることの困難,階段を上ることの困難,転倒時の困難,などを示す.運動能力だけではなく,社会的あるいは感情的な側面から見たQOL(quality of life)も,高齢者の幸福を形作る重要な要素である.

 最近のハワイ大学および南カリフォルニア大学の研究者らは42,500人の高齢者を対象に,人種の相違に基づいて比較した動作の困難さを示す調査を行った.男女別にみると,過去2年間に転倒を経験した高齢者は,女性の18%,男性の12%にみられた.椅子から立ち上がることの困難さを経験している高齢者は,女性43%,男性35%で,重量10ポンド以上の物を持ち上げることの困難さは,女性の37%,男性の18%,階段を上ることの困難さを経験した高齢者は女性31%,男性19%であった.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

術前に診断困難であった直腸がん異時性びまん性子宮筋層転移の1症例

著者: 中島文香 ,   丸山康世 ,   平吹知雄

ページ範囲:P.285 - P.288

症例
▶患者

 73歳,2回経妊2回経産,閉経55歳.
▶主訴

 自覚症状なし.
▶既往歴

 直腸がん,高血圧,子宮筋腫.
▶現病歴

 71歳時に直腸がんに対して,前医外科で腹腔鏡下低位前方切除術を施行し,直腸がん,25×25mm,SE, ly0v0n0,stageⅡの診断となり,後療法不要で術後フォローアップ中であった.術後に一度CEA 1.9ng/mL,CA19-9 8.8U/mLまで低下していた腫瘍マーカーが,当院来院2か月前から徐々に上昇する傾向にあった.胸腹部造影CT検査で子宮体部に造影効果を認めたが,大腸内視鏡検査にて直腸粘膜に異常はなく,子宮体がんを強く疑い,精査目的に当院当科へ紹介受診となった.若年時より多発子宮筋腫の指摘はあった.不正性器出血などの本人の自覚症状はなかった.

Obstetric News

早産予防〜推奨の要約(米国産婦人科学会2012年&2016年)

著者: 武久徹

ページ範囲:P.289 - P.292

 本稿では,ACOGの早産予防に対する推奨の要約について,2016年と2012年の比較を行う.

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目次

ページ範囲:P.198 - P.199

バックナンバー

ページ範囲:P.293 - P.293

次号予告・奥付

ページ範囲:P.296 - P.296

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

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75巻9号(2021年9月発行)

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73巻5号(2019年5月発行)

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今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

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72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

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72巻6号(2018年6月発行)

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72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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