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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科72巻6号

2018年06月発行

雑誌目次

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

がん能動免疫療法の将来展望

著者: 西村泰治

ページ範囲:P.592 - P.599

●がん細胞に固有のミスセンス変異遺伝子によりコードされるネオ抗原ペプチドに対するT細胞の免疫応答,ならびに腫瘍溶解性ウイルスが腫瘍免疫に果たす役割が注目されている.

●がん免疫療法の効果は遅延して発現することが多いが,一部の患者では長期間におよぶ奏効が認められる.患者のQOLは良好であるが,自己免疫疾患などの特有の有害事象に注意する必要がある.

●がん細胞,その微小環境ならびに免疫細胞における個体差を評価するバイオマーカーを確立して,個々の患者に最適の免疫療法を選ぶことが重要である.

●がんの個体間および個体内での多様性を考慮した,免疫療法を含む多様ながん治療法の複合(併用)療法の開発が期待され,多数の治験が進行中である.

がん免疫療法の分類と作用機序

腫瘍免疫の新しい理解と免疫療法のターゲット

著者: 田中淳 ,   坂口志文

ページ範囲:P.524 - P.529

●制御性T細胞は,多様ながん種の腫瘍局所に浸潤し,予後不良との相関が高い.

●制御性T細胞は,腫瘍抗原に対する免疫応答を抑制することから,腫瘍に浸潤する制御性T細胞の除去は,抗腫瘍免疫応答を賦活化する.

●腫瘍浸潤制御性T細胞の除去による免疫抑制解除と,がんワクチンや抗体療法によるCD8T細胞の賦活化を組み合わせることで,効果的ながん免疫療法が期待される.

免疫チェックポイント阻害薬とは何か

著者: 濵西潤三 ,   万代昌紀

ページ範囲:P.530 - P.541

●免疫チェックポイント阻害薬には,主にCTLA-4阻害薬とPD-1経路阻害薬がある.

●免疫チェックポイント阻害薬は,T細胞性免疫を活性化することにより,抗腫瘍作用を発揮する.

●免疫チェックポイント阻害薬には,免疫活性に伴う特有の副作用に注意が必要である.

がんワクチン療法とは何か

著者: 馬淵誠士 ,   甲村奈緒子 ,   横井恵理子 ,   木村正

ページ範囲:P.542 - P.549

●がんワクチン療法は,がん抗原を投与することにより,患者体内で,がん抗原に対する特異的な免疫応答を誘導し,がん細胞を排除しようとする治療法である.

●がん免疫療法は,手術,化学療法,放射線療法に次ぐ治療法として期待されているが,がんワクチン療法単独での臨床効果はいまだ不十分である.

●がん治療ワクチンと,免疫抑制因子(免疫チェックポイント分子や骨髄由来抑制細胞)を排除する治療を組み合わせた“複合的がん免疫療法”に期待が高まっている.

免疫細胞療法とは何か

著者: 後藤重則 ,   神垣隆 ,   瀧澤憲

ページ範囲:P.550 - P.556

●がん細胞に対する免疫応答はT細胞,NK細胞,NKT細胞,樹状細胞などにより行われる.免疫細胞療法はこれらの細胞を体外で培養・加工して投与する治療である.

●免疫細胞療法は,がん抗原を提示した樹状細胞を使った細胞ワクチン,がん細胞を殺傷するT細胞,γδT細胞やNK細胞などを大量に輸注するエフェクター細胞療法がある.

●臨床効果については,過去に多くのランダム化比較試験により生存期間の延長が報告されている.今後はCAR-T細胞を使ったエフェクター細胞療法や,新生抗原を用いた細胞ワクチンの有効性が期待される.

婦人科がんに対する免疫療法

子宮頸がん,子宮体がんに対する免疫療法の動向

著者: 川名敬

ページ範囲:P.558 - P.564

●子宮頸がんのがん抗原であるHPVがん蛋白質を標的とした免疫療法(がんワクチン)が期待される.

●粘膜免疫を介したがん免疫療法がCIN治療薬として期待される.

●子宮体がんは遺伝子変異が多いがん腫であり,ネオアンチゲン発現を多く認めることからがん免疫療法が期待される.

●子宮体がんの4つの遺伝子学的分類は免疫チェックポイント阻害薬の適応を決めるカギとなる.

卵巣がんに対する免疫療法の動向

著者: 長谷川幸清 ,   佐藤翔 ,   西川忠曉

ページ範囲:P.566 - P.571

●卵巣がんに対する免疫チェックポイント阻害薬は有望であると考えられているが,現在のところ標準治療としては確立していない.

●バイオマーカーによる患者の絞り込みや免疫チェックポイント阻害薬と他の薬剤(化学療法,血管新生阻害薬,PARP阻害薬など)との併用療法が期待されている.

●遺伝子改変を行ったT細胞やウイルスを用いた新しい免疫治療が一部のがんで有効性が証明されており,卵巣がんでも有効な可能性がある.

がん免疫療法の応用と問題点─婦人科腫瘍を中心に

抗がん剤・放射線・分子標的薬を免疫療法とどのように併用するか?

著者: 村上幸祐 ,   松村謙臣

ページ範囲:P.572 - P.577

●免疫療法単独では治療効果に限界があり,現在,免疫療法と従来の治療法を組み合わせたさまざまな臨床試験が行われている.

●免疫療法と抗がん剤,分子標的薬についてもさまざまな組み合わせで検討がなされているが,医療経済に与える影響も大きく,治療の個別化が重要である.

●放射線療法により,腫瘍抗原が放出されて免疫機構が活性化され,免疫療法の効果を高める可能性がある.

免疫チェックポイント阻害薬の効果と関係するがん免疫病態

著者: 河上裕

ページ範囲:P.578 - P.583

●がん免疫病態には,がん細胞遺伝子異常,免疫体質,環境因子により個人差があるが,がん種ごとに免疫的なサブタイプに分類でき,免疫療法への反応性に関与する.

●DNA突然変異由来のネオ抗原に特異的なT細胞が主要エフェクターとなるがんは多いが,がん種によってはエフェクター機構が異なる可能性がある.

●免疫療法の治療効果を予測するバイオマーカーとして,DNA突然変異数,活性化T細胞関連因子,免疫抵抗性因子,免疫応答体質,腸内細菌叢などが検討されている.

免疫療法にはどのような問題点・副作用があるか?

著者: 河野光一郎 ,   牛嶋公生

ページ範囲:P.584 - P.591

●がん免疫療法では一時的に病勢が進行もしくはそのようにみえることもあるため,効果判定時には考慮が必要である.

●治療効果を予測するバイオマーカーとしてmutation burden,腫瘍浸潤リンパ球,PD-L1発現が有望であり,今後の研究に期待したい.

●これまでの薬物療法と異なる免疫療法特有な有害事象があること,発症が急で一部では致死的になることもあるため,注意深い観察と各専門医との連携体制を構築しておくことが重要である.

連載 FOCUS

子宮再生

著者: 升田博隆 ,   丸山哲夫

ページ範囲:P.600 - P.604

はじめに

 再生医学とは,臓器や組織の人工的な再生を図る学問であり,近年,再生医学は幹細胞学とともに目覚ましい発展を遂げている.自己複製能と多分化能をもつ細胞と定義される幹細胞は,生体内において発生・再生・創傷治癒を担うと考えられ,臓器や組織の再生を図るにはこの幹細胞を使用する方法が最も理にかなっている.生体内のすべての細胞への分化能をもつ未分化性の高い胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)は,一見使い勝手がよさそうだが,腫瘍化への配慮や,胚細胞から分化細胞へ至るまでの分化誘導を再現する必要があり容易ではない.また,成人の各組織に存在し組織内の細胞への分化が可能と考えられる体性幹細胞(組織幹細胞)も,それぞれの臓器が多種多様な細胞により複雑な構造をとることから同定や分離が困難であり,大多数の固形臓器では体性幹細胞の正確な同定まで至っていない.

 そんな中でもより効率的な臓器再生が模索されており,動物の体内でヒトの臓器を作成する試みやscaffoldに細胞を注入し臓器構築を促す試みなどが行われている.

 この再生医学の中で最もイメージしやすい臨床応用は,さまざまな疾患や機能の低下により臓器の置換が必要である場合であり,生命維持器官に対する再生医療を目指した再生医学が最も注目され発展する傾向にあるが,種の保存にとって不可欠な卵巣や子宮といった生殖器官の再生も無視できない重要な領域である.実際に,卵子や精子といった生殖細胞の幹細胞学・再生医学はここ数年で劇的に進展している.

 本稿では,子宮の再生に焦点を当てて概説する.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

術前に子宮筋腫と診断し子宮筋腫核出術を行った平滑筋肉腫の1症例

著者: 坂本公彦 ,   木村友沢 ,   角田肇

ページ範囲:P.606 - P.611

はじめに

 子宮平滑筋肉腫は子宮体部筋層に発生する間葉系悪性腫瘍で,婦人科腫瘍のなかでも特に予後不良とされる.若年女性の子宮筋腫に対して手術を行う際には,MRIなどの術前検査を行い子宮平滑筋肉腫の可能性を否定する必要があるが,ときに診断の難しい症例に遭遇する.今回,術後病理検査で初めて子宮平滑筋肉腫と診断された教訓的な症例を経験したので報告する.

Estrogen Series・171

PCOS その1

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.612 - P.613

 今までのPCOS(polycystic ovarian syndrome)の診断名は,その診断名の刻印を押された若い女性たちにとって,不必要な負担を強いるものではないか,と考える医師は多いのではないか?

 確かにPCOSの典型をみると,アンドロゲン増加,生殖障害,長期的な心血管障害,2型糖尿病など,アンドロゲンの過剰が中心的な症状をもたらしている.しかし,最近見直されたアンドロゲン過剰によらないPCOS診断は,多くの女性,特に若い女性に肉体的,精神的負担を(不必要に)与えるものと考えられる.最近の調査によれば,米国の十代女性の21%がPCOSの診断をつけられる可能性がある.これは今から20年前になされたNIHの同様な調査の結果が4〜6%であったことを考えると,大変なPCOS診断の増加である.

Obstetric News

高血圧と避妊

著者: 武久徹

ページ範囲:P.614 - P.616

 高血圧女性が避妊の相談で来院した場合に,どのような選択肢があるか? 一般的に最も多く採用されるcombined hormonal contraceptives(CHCs〜配合型ホルモン避妊製剤)には,低用量(含有されるエチニール・エストラジオール≦35μg)combined oral contraceptives(COCs〜配合型経口避妊剤),配合型ホルモン・パッチ(日本では未承認),配合型腟リング(日本では未承認)が含まれる.

 COCsやCOCs以外の避妊方法を選択する場合,米国において使用される「避妊使用のための米国医療適格基準2016年」では,年齢と高血圧に関し,表1のように分類されている.

症例

腹腔鏡下に手術施行した囊胞性子宮腺筋症の2例

著者: 佐々木高綱 ,   松浦美幸 ,   山田弘次 ,   吉澤順子 ,   水田裕久 ,   山田嘉彦

ページ範囲:P.617 - P.622

▶要約

 囊胞性子宮腺筋症は非常に稀な子宮の囊胞性病変であり,強い月経困難症を引き起こす.今回われわれは比較的短期間に囊胞性子宮腺筋症を2例経験し,腹腔鏡下に手術を施行したので文献的考察を加えて報告する.

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目次

ページ範囲:P.514 - P.515

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.626 - P.626

バックナンバー

ページ範囲:P.627 - P.627

次号予告・奥付

ページ範囲:P.628 - P.628

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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