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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科72巻7号

2018年07月発行

雑誌目次

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

著者:

ページ範囲:P.633 - P.633

病態と新定義

妊娠高血圧症候群の新たな定義・臨床分類

著者: 渡辺員支

ページ範囲:P.634 - P.639

●今回の改訂では,妊娠高血圧症候群に従来含めていなかった高血圧合併妊娠も含めるようになり,妊娠時に高血圧を認めた場合,妊娠高血圧症候群と定義する.

●高血圧と母体臓器障害,子宮胎盤機能不全を認める場合は,蛋白尿がなくても妊娠高血圧腎症とする.

●従来のように蛋白尿の多寡による重症分類は行わず,高血圧が重度の場合あるいは母体の臓器障害,子宮胎盤機能不全を認める場合に重症とする.軽症という用語は原則用いない.

●早発型の定義を海外に合わせて,従来の妊娠32週から妊娠34週未満に発症するものと変更する.

妊娠高血圧症候群の病態に関する最近の知見

著者: 松井遥香 ,   入山高行

ページ範囲:P.640 - P.645

●妊娠高血圧症候群,特に妊娠高血圧腎症の発症および病態形成の分子機序については多くが明らかとなりつつある.

●妊娠初期に子宮螺旋動脈のリモデリング不全を契機として生じる胎盤障害により,胎盤から諸々の原因因子が母体血中に流入し,母体の症状が形成される,というtwo-stage disorder modelが,妊娠高血圧腎症の病態仮説の趨勢を占めている.

●原因因子として精力的に研究がなされているものとして,血管新生関連因子のバランス不全,アンジオテンシンⅡ1型受容体に対する活性化型自己抗体(AT1-AA),胎盤でのアデノシンの過剰蓄積などが挙げられる.これらの因子が関与して妊娠高血圧腎症の病態が形成される.本稿ではこれらの因子を中心として,病態機序についての最近の知見を紹介する.

妊娠高血圧症候群の疫学

出生三世代コホートからみた個別化医療と予防の展望

著者: 菅原準一

ページ範囲:P.646 - P.652

●多因子疾患である妊娠高血圧症候群の病態を解明するためには,遺伝・環境相互作用を解き明かす視点が必要である.

●世界的にもユニークな出生三世代コホートによって,妊婦2万人以上,三世代家族7万人以上の登録が完了し,統合バイオバンクに試料・情報が格納された.

●データクリーニング終了後,共同研究などによって多角的な疫学研究や種々の解析が進み,妊娠高血圧症候群の新しい個別化予防・医療の実現が期待できる.

胎盤特異的microRNAの発現解析からみた発症予測

著者: 三浦清徳 ,   東島愛 ,   増﨑英明

ページ範囲:P.653 - P.658

●microRNAのなかには胎盤特異的に発現するmicroRNAが存在し,それらは胎盤形成過程ならびに胎盤機能の獲得に関与していると考えられる.

●胎盤特異的microRNAは母体血漿中を循環し定量可能であり,その循環量とpreeclampsiaとの関連が指摘されている.

●preeclampsiaの発症予測マーカーの候補としてC19MC microRNAやmiR-210などが注目され,今後の研究が期待される.

妊娠高血圧症候群の予防と治療

家庭血圧測定の有用性

著者: 大口昭英

ページ範囲:P.659 - P.663

●妊婦で白衣高血圧を疑う場合は,家庭血圧測定を行う.

●妊婦の家庭血圧測定値が135/85mmHg以上であれば,高血圧を発症している可能性が高い.

●妊婦の家庭血圧測定値が2機会連続して140/90mmHg以上,あるいは,1回でも160/110mmHg以上の場合は,受診機関に連絡するよう指導しておく.

白衣高血圧の臨床的意義

著者: 目時弘仁

ページ範囲:P.665 - P.670

●白衣高血圧とは,診察室血圧は高血圧であるが,診察室外血圧は正常血圧という状態である.

●白衣高血圧の診断には家庭血圧測定を行う方法と24時間自由行動下血圧測定を行う方法の2つがある.

●白衣高血圧は,診察室高血圧に比較して臓器障害などの予後が良好な可能性があるが,慎重な観察は必要である.

アスピリンを用いた予防

著者: 佐藤陽一 ,   小川正樹

ページ範囲:P.671 - P.674

●妊娠高血圧症候群のなかでも妊娠高血圧腎症の発症は母児にとって予後不良となる.

●妊娠高血圧腎症ハイリスク妊婦に対する具体的な低用量アスピリン投与法・適応についてはいまだに確立されていない.

●ASPREにより早産期の妊娠高血圧腎症の発症率低下にアスピリン内服の有効性が確認された.

降圧薬選択の問題点と展望

著者: 関博之

ページ範囲:P.675 - P.681

●HDPの病態を考えると,降圧療法は介入時期としては遅いため,妊娠高血圧腎症や妊娠高血圧の重症例ではその効果は必ずしも十分とはいえず,長期間の妊娠期間の延長は困難な場合が多い.

●加重型妊娠高血圧腎症では,降圧療法により長期間の妊娠期間の延長が期待できる症例がある.

●血圧がSBP 170mmHg and/or DBP 110mmHgを超える重篤なHDPでは,母体の脳血管障害や子癇を回避するためには可及的速やかな降圧が必要となるが,胎児においては急激かつ過度な降圧は医原性の胎児胎盤循環不全を惹起する可能性があり,至適降圧レベルの幅は狭い.

●第一選択薬は,妊娠初期からの長期投与の経口薬の場合,メチルドパ,ラベタロール,ヒドララジンが,妊娠20週以降ではニフェジピンが推奨される.

PDE5阻害薬の有効性の検討

著者: 真木晋太郎 ,   田中博明 ,   池田智明

ページ範囲:P.682 - P.688

●ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬は,hypertensive disorders of pregnancy(HDP)に対する新しい治療法として開発が進められている.

●PDE5阻害薬は胎児胎盤血流の改善,および内皮障害改善効果が期待され,HDPの治療薬となる可能性がある.

●日本においてHDPに対するタダラフィル(PDE5阻害薬)治療の前向き多施設共同試験が進行中である.

病理

妊娠高血圧症候群における胎盤病理所見の特徴

著者: 南口早智子

ページ範囲:P.690 - P.695

●胎盤の病理診断依頼に関して,病理医に伝えるべき記載事項を確認する.

●妊娠高血圧症候群に関連する基本的な胎盤の病理所見を理解する.

●妊娠高血圧症候群の病理所見と臨床事項との相関を理解する.

新生児予後

妊娠高血圧症候群母体から出生した早産・低出生体重児の神経発達予後

著者: 山本将功

ページ範囲:P.696 - P.702

●近年,極低出生体重児における妊娠高血圧症候群母体の割合は増加しており,発達予後に与える影響を考慮することは重要である.

●母体の妊娠高血圧症候群は脳性麻痺などの運動発達への影響は少ないが,早発型妊娠高血圧腎症の一部では脳性麻痺のリスクが上昇する可能性がある.

●妊娠高血圧症候群母体は児の自閉症スペクトラム障害発症リスクであり,母体血,臍帯血中では脳の発達に関連する成長因子の発現異常を認め,胎児期から脳の発達に影響を与えている可能性がある.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

術前に卵巣腫瘍が疑われた外腸骨仮性動脈瘤の1例

著者: 日向悠 ,   松井仁志 ,   長尾充

ページ範囲:P.704 - P.708

はじめに

 婦人科領域では,術前に卵巣腫瘍との鑑別が困難である後腹膜腫瘍の症例にしばしば遭遇する.今回,骨盤内腫瘍の精査目的で当科紹介となり,術前に卵巣腫瘍と診断したが,手術中に後腹膜腫瘍と診断し,腫瘍を摘出した結果,血管由来の腫瘤であった,という非常に稀な症例を経験したので報告する.

Obstetric News

女性アスリート三主徴の治療と留意点

著者: 武久徹

ページ範囲:P.709 - P.712

女性アスリート三主徴の病態

 女性アスリート三主徴は,身体的に活発な女性に見られる医学的状態で,3要素は,①低エネルギー可用性±摂食障害,②月経機能不全,③低骨密度であるが,3要素すべての臨床的徴候を示す必要はない.続発症を完全に予防することは難しいため,予防,早期診断,介入が不可欠である.体格やスポーツの種類に関係なく,すべてのアスリートに女性アスリート三主徴のリスクがある.活発なアスリートに対しては全員三主徴の要素を調べ,要素の1つ以上が確認された場合,さらに検査を行うべきである.

 産婦人科医は,予防的管理のための総合的な受診で女性アスリート三主徴の要素をスクリーニングする機会がある.月経周期は女性アスリート三主徴のリスクがあるアスリートを確認するうえで生活反応として有用で,スポーツを行う前の重要な部分であるべきである.

Estrogen Series・172

PCOS その2

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.713 - P.713

 PCOSの診断には不明な部分が多い.

 たとえばロッテルダム診断基準では卵巣内の卵胞数は12個以上としているが,2014年のエクスパートパネルはこれを24個以上の場合にすることを推奨している.結局,この意見は採択されなかった.卵胞数とは結局,超音波診断の技術的な側面によるのであろうか? また,患者年齢とも関連がある.年齢が25歳以上になると,PCOSの発生頻度は急速に低下する,と指摘した論文は複数ある.実際,PCOSの所見や症状は一過性であることが多い.体重過剰,多毛症,ニキビ増加,不規則な月経,などのある患者の多くを,実際にPCOSと診断することは不適当と考える医師は多い.

症例

微小な卵巣奇形腫に対し腹腔鏡下手術を行った後に寛解に至った抗NMDA受容体脳炎の1例

著者: 糸井瑞恵 ,   平敷好一郎 ,   春成淳平 ,   大塚聡代 ,   片山恵里 ,   藤田久子 ,   新井未央 ,   河原井麗正 ,   井上泰 ,   木村博昭

ページ範囲:P.715 - P.720

▶要約

 抗N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体脳炎は,神経細胞のNMDA受容体に対する自己抗体による自己免疫性脳炎である.症例は40歳.急性発症の精神錯乱にて近医精神科に入院.ステロイドパルス療法,抗ウイルス薬治療を行うが入院13日目に強直性痙攣を生じ,当院神経内科に搬送となった.経過から抗NMDA受容体脳炎の可能性を考慮し当科紹介となった.左卵巣に1cmの奇形腫が疑われ手術の方針となったが,術前検査で深部静脈血栓症,肺塞栓症を認めたため,血栓症治療後に腹腔鏡下左付属器切除を施行した.髄液検査にて抗NMDA受容体抗体陽性であり,診断確定となった.微小な卵巣奇形腫でも脳炎の原因となりうることから,病変の検索には慎重を期す必要がある.また,臥床状態に加えステロイド治療が行われることが多く,血栓症のリスクは高い.術前の血栓スクリーニングとともに,手術に際しては低侵襲な腹腔鏡下手術が望ましいと考える.

重症妊娠悪阻からWernicke脳症とRefeeding症候群を発症した1例

著者: 箕浦麻陽 ,   藤田太輔 ,   佐野匠 ,   鈴木裕介 ,   寺井義人 ,   大道正英

ページ範囲:P.721 - P.725

▶要約

 Wernicke脳症はビタミンB1欠乏による代謝性脳症である.今回,重症妊娠悪阻から発症したWernicke脳症およびRefeeding症候群の1例を経験したので報告する.

 症例は初産婦,妊娠7週より嘔気・嘔吐が持続,妊娠9週より経口摂取不可能な状態が持続し,3か月で12kgの体重減少を認めた.妊娠19週より全身倦怠感が増悪し,子宮内胎児死亡を確認した.また同日ブドウ糖輸液で点滴加療したところ意識障害を認め,高血糖563mg/dLを認めたことから,糖尿病性ケトアシドーシスを疑い当院に搬送となった.高血糖については精査の結果,Refeeding症候群と診断し,生理食塩水投与のみで改善を認めた.また頭部MRIでWernicke脳症と診断し,ビタミンB1大量療法により神経症状は速やかに改善した.重症妊娠悪阻から発症したWernicke脳症の治療にはビタミンB1の大量投与が必要であり,また経口摂取できない状態が長期間続いた場合に,急激なブドウ糖補充を行うとRefeeding症候群となるため注意する必要がある.

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目次

ページ範囲:P.630 - P.631

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.726 - P.726

バックナンバー

ページ範囲:P.727 - P.727

次号予告・奥付

ページ範囲:P.728 - P.728

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻4号(2015年4月発行)

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69巻3号(2015年4月発行)

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