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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科72巻8号

2018年08月発行

雑誌目次

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

著者:

ページ範囲:P.733 - P.733

アレルギーの病態とアナフィラキシー

アレルギーとアナフィラキシー─概説とトピックス

著者: 永田真

ページ範囲:P.734 - P.740

●アレルギー疾患では,包括的・全身的な視点と,さらに生涯というスパンでの管理を考慮する必要性がある.

●獲得性免疫主体の疾患群と認識されてきたが,近年は自然免疫系の関与も明確化されてきている.

●各種の食物アレルギーあるいはラテックスアレルギーなどで,経皮的感作の重要性が注目を集めている.

●自然経過の修飾作用をもつアレルゲン免疫療法が,わが国でもようやく普及しつつある.

成人に起こるアナフィラキシーとその治療

著者: 中村陽一

ページ範囲:P.741 - P.748

●妊婦のアナフィラキシーの原因は周産期の新生児感染や帝王切開後の母体感染を予防するための抗菌薬が多く,その他,オキシトシン,筋弛緩薬,麻酔薬,ラテックス,殺菌薬などがある.

●妊婦のアナフィラキシー症状の特徴は,通常の皮膚・粘膜症状,呼吸器症状,消化器症状や循環器症状に加えて,外陰部と腟付近の瘙痒,下背部痛,子宮痙攣,胎児の異常,早産などである.

●妊婦の場合に特にアナフィラキシーとの鑑別が問題となる病態は,肺塞栓や肺水腫,心機能低下,虚血性心疾患や僧房弁狭窄症,低血圧症,脳血管障害,羊水塞栓症などである.

●妊娠中のアナフィラキシー予防対策は一般のそれと同様であるが,原因探索のための皮膚プリックテスト,チャレンジテスト,脱感作や免疫療法はその危険性から通常は実施されない.

疾患各論

花粉症の治療と産科

著者: 上條篤

ページ範囲:P.750 - P.756

●妊娠初期の花粉症の薬剤使用は,可能な限り避けることが望ましく,アレルゲン回避や鼻洗浄,温熱エアロゾル療法などで対処する.

●薬剤を選択する場合には,鼻噴霧用ステロイド薬と抗ヒスタミン薬は比較的安全で有効性も高い.

●局所血管収縮薬も比較的安全であるが,連用は点鼻性鼻炎の原因となるため,短期間の使用にとどめる.

喘息と妊娠,分娩

著者: 山本祐華

ページ範囲:P.758 - P.762

●喘息の治療薬の多くは妊娠中も使用できるため,吸入ステロイドを中心とした基本的治療を継続していき,喘息発作を回避していく.

●薬の自己中断によって発作が誘発され,胎児が低酸素になることが問題となる.

●周産期管理において気管支平滑筋を攣縮させる作用をもつ薬剤を使用する機会があるので,薬剤投与前に必ず確認する.

「咳喘息」の実態と産科臨床での対応法

著者: 新実彰男

ページ範囲:P.763 - P.768

●喘息患者が妊娠した場合,約1/3では喘息の増悪頻度や重症度は妊娠前と不変,約1/3では妊娠中に喘息が軽減,残り1/3は悪化するとされる.咳喘息患者でも同様の印象がある.

●妊婦はしばしば薬剤の胎児への影響を過度に心配し自己判断で抗喘息薬を減量〜中止し,喘息が増悪する.ほとんどの抗喘息薬は妊婦,胎児に影響なく安全に使用できる.

●咳喘息の治療は,吸入ステロイド薬や,同剤と長時間作用性β2刺激薬との配合剤が中心となる.妊婦にしばしば合併する胃食道逆流症にも留意が必要である.

成人食物アレルギーへの実践的対応

著者: 福冨友馬

ページ範囲:P.770 - P.776

●「食物アレルギー」とは,「食物に対する免疫機序を介する副反応」であり,関与する免疫機序の代表はⅠ型アレルギー(IgE依存性アレルギー)である.

●原因食物は,成人では,果物・野菜,小麦,甲殻類,スパイス,アニサキスなどの頻度が高い.

●食物過敏反応の診断において最も重要なのは患者の誘発歴に関する詳細な問診である.

●成人食物アレルギーの診断における血液IgE検査の感度は,決して十分に高いとはいえない.血液抗原特異的IgE抗体価検査が陰性であるにもかかわらず,食べると重篤な症状が起こる事例は決して稀ではない.IgE抗体が関与しない食物過敏反応も存在する.

ラテックスアレルギー,ラテックス─フルーツ症候群

著者: 矢上晶子

ページ範囲:P.777 - P.781

●ラテックスアレルギーは,天然ゴムの蛋白を含むゴム手袋などにより誘発される即時型アレルギーである.

●ラテックスアレルギーの半数近くの患者は食物アレルギーであるラテックス─フルーツ症候群が確認される.

●発症の予防には,パウダーフリーラテックス手袋を,ラテックスアレルギー患者にはラテックスフリー手袋を使用する.

胎児・新生児・乳児期におけるアレルギー予防対策

著者: 下条直樹

ページ範囲:P.782 - P.785

●妊娠中・授乳中の母体の食事制限が児のアレルギー発症を予防するエビデンスはない.一方で,ハイリスク児の母体がアレルゲンとなりうる食物を頻回に摂取することが児のアレルギーを予防できるというエビデンスも十分ではない.

●児の離乳食を遅らせることはアレルギーの発症予防にならないのみでなく,かえって食物アレルギーの発症リスクを上げると考えられている.ハイリスク児であっても,湿疹の治療をきちんと行いつつ離乳食を進めることが勧められる.

●食物は直接的・間接的に免疫機能を調節する.母体・児ともに,食物を単にアレルゲンの観点からのみとらえるのではなく,免疫調節物質としての働きからも考えることが大切と思われる.

輸血関連急性肺障害(TRALI)

著者: 岡崎仁

ページ範囲:P.786 - P.792

●白血球抗体(HLA/HNA抗体) : 経産婦に多く見出される抗体で,妊娠に伴い検出されるが,男性に検出されることもある.保持者は通常健康体である.HLA抗体はclass Iおよびclass II抗体があり,どちらも輸血関連急性肺障害(TRALI)などの副反応に関連することがある.HNA抗体のなかではHNA-3a抗体が重篤なTRALIを起こすといわれているが,検出頻度は低い.

●輸血関連循環過負荷(TACO) : 輸血により,循環過負荷となり,うっ血性心不全,肺水腫となる輸血副反応である.輸血の入れすぎだけが原因というわけではなく,輸血以前の患者の循環状態の把握がされていないことも原因の1つではないかと考えられており,特に高齢の患者では注意すべき副反応である.TRALIとの鑑別が重要となる.

薬疹と薬物アレルギー

著者: 高村直子 ,   相原道子

ページ範囲:P.794 - P.800

●薬剤アレルギーは全身投与された薬剤,またはその代謝産物により誘導される即時型または遅延型のアレルギー反応による障害である.

●原因薬剤投与から薬疹発症までの期間は2週間以内が多いが,臨床型や薬剤によって数日から時には数年と期間に幅があるため,発疹をみた際には薬疹の可能性を考慮することが重要である.

●重症型の薬疹は急激に進行し致死的な経過をたどることもある.重症化を示唆する水疱やびらんの形成,著しい粘膜疹,高熱,臓器障害などの所見に注意することが重要である.

母乳栄養により発症する新生児・乳児消化管アレルギー

著者: 久松千恵子

ページ範囲:P.802 - P.806

●新生児・乳児消化管アレルギーは食物アレルギーの一種である.母乳栄養児にも消化管アレルギーは起こりうる.

●症状の主体は,血便,下痢,腹部膨満などの消化器症状ではあるが,ほかに発疹や発熱,体重増加不良などで発症することもあり,その臨床像は多彩である.

●診断には外科的消化器疾患を始めとするさまざまな疾患との鑑別が必要となり,そのなかには急な治療を要する疾患も含まれている.本症が疑われる場合は小児科や小児外科へコンサルトしてほしい.

精液アレルギー

著者: 澤田祐季 ,   齋藤知恵子 ,   松川泰 ,   佐藤剛 ,   杉浦真弓

ページ範囲:P.807 - P.811

●精液アレルギーは,精漿中の蛋白を抗原とし,局所の瘙痒から致命的なアナフィラキシーショックまで幅広い臨床所見を示す即時型アレルギー反応である.

●症状が重篤な場合は通常の性交では自然妊娠は困難であるため,挙児希望があれば脱感作療法,人工授精,体外受精が考慮される.

●それぞれの治療法にはメリット,デメリットがあるため,治療の選択肢を提示し,十分な説明をしたうえでの治療方針の決定が重要である.

連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

急性妊娠脂肪肝とHELLP症候群の鑑別が困難であり帝王切開後に大量出血をきたした症例

著者: 山下博

ページ範囲:P.812 - P.816

症例

 本症例は短時間の間にさまざまなイベントが発生したため,初診時の時刻を0 : 00として時刻を付記しながら症例を供覧する.
▶患者 39歳.
▶既往歴 特になし.
▶妊娠歴 1妊0産.
▶現病歴

 他院にて妊婦健診中であった.妊娠37週5日,強い上腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した(この時刻を0 : 00とする).母子手帳を持参していなかったため,詳細な妊娠経過は不明であったが,3日前の健診で担当医師より,血圧が高めで蛋白尿が出はじめていると言われたとのことであった.疼痛が強く,入院管理となった.

Obstetric News

出生前診断─ダウン症候群①症例

著者: 武久徹

ページ範囲:P.817 - P.819

引用 : ACOG PROLOG,Patient Management in the Office,#104,2017年

[症例]32歳,未産婦.妊娠11週で初めての分娩前管理で受診.染色体異数性スクリーニングに関する選択肢を相談することを希望している.均衡型14 ; 21ロバートソン転座保因者である以外は特記すべき既往歴はない.この患者のダウン症候群スクリーニングに関する最良の選択肢はどれか?

Estrogen Series・173

白人,大卒,男性の三条件がより高額給与に結びつく

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.820 - P.821

 米国人はどれくらいの収入を得ているのだろうか? その収入は分野によってどのように変化するのか? これらはかなり基本的な疑問であるが,最近のホノルルの新聞から,その要旨をご紹介したい.

 表1は業種ごとの米国とハワイにおける給与の比較である.上がハワイの給与職業分野別の給料の平均で,下が全米の各産業の給料平均である.

症例

広基性に単角子宮と連続している非交通性副角子宮に対して,腹腔鏡下副角子宮切除術を行った1例

著者: 泉玄太郎 ,   森嶋かほる ,   山本直子 ,   原田美由紀 ,   平田哲也 ,   甲賀かをり ,   平池修 ,   大須賀穣 ,   藤井知行

ページ範囲:P.823 - P.826

▶要約

 非交通性副角子宮を伴う単角子宮は,副角切除術の適応になる.低侵襲性や整容性から腹腔鏡下手術も選択肢になるが,その手術難易度は副角子宮と単角子宮の位置関係によって大きく変わる.われわれは,単角子宮と広基性に連続している副角子宮を腹腔鏡下に切除したので報告する.術前に造影CTによる血管走行の評価を行い,子宮頸部への血流を極力残すことに留意した.また,子宮鏡を術中に使用して,子宮筋層を透見することで,切除範囲の確認を行った.そして,術前には子宮筋腫摘出術を想定した準備を行った.術中術後経過は順調で,症状の再発もみられていない.本法は,単角子宮の機能を極力温存しながら,副角子宮を切除するために有効であると考えられた.

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目次

ページ範囲:P.730 - P.731

バックナンバー

ページ範囲:P.827 - P.827

次号予告・奥付

ページ範囲:P.828 - P.828

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

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69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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