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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科73巻1号

2019年01月発行

雑誌目次

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

著者: 古山将康

ページ範囲:P.5 - P.5

 わが国の女性の平均寿命は87歳を越え,加速度的に高齢化が進行している.超高齢社会を迎えて,閉経後の高齢女性の「Successful Aging」を目的とした「アンチエイジング」は産婦人科診療において重要課題である.これまで婦人科腫瘍学,生殖・内分泌学(不妊・不育症),周産期医学の3つの分野が産婦人科のメインテーマ,サブスペシャリティとして確立されてきたが,特に高齢女性のQOLにかかわる骨盤底疾病の診断,治療に関する認知度はいまだ低いと言わざるをえない.高齢女性が80歳までに骨盤底臓器の機能異常(骨盤底疾患)のために医学的治療を受ける頻度は11%とされる.米国では尿失禁に年間20億ドルが消費され,そのほとんどは尿漏れ用のパッドや大人のおむつに消費されているのが現状である.これらの患者の90%は医学的介入によって改善または治癒させることが可能であり,女性医学に携わる医師にとって女性骨盤底疾患の知識は非常に大切である.

 骨盤底疾患(pelvic floor disorders)とは,類腫瘍としての子宮内膜症を含む婦人科腫瘍学,不妊・不育症関連の疾病,妊娠・分娩時の異常,感染症関連の急性疾患を除いた慢性の骨盤底臓器の疾患群と定義される.代表的な疾患として骨盤臓器脱,下部尿路症状,排便機能障害などのウロギネコロジー疾患が大部分を占めるが,原因特定が困難な慢性骨盤痛,外陰痛,性器瘻も女性のQOLを低下させ,悩んでいる女性も多い.産婦人科診療の中でも骨盤底疾患の主訴で受診される患者さんも増加している.産婦人科医は子宮脱などの骨盤臓器脱には積極的にかかわってきたが,付随する下部尿路症状や直腸肛門症状に対しては泌尿器科医や直腸外科医などに紹介することが多いのが現状である.複雑な泌尿器系,下部消化管系の異常を除けば,産婦人科医も十分対応が可能な疾病も多く含まれている.

骨盤底の解剖学

手術に必要な外陰部のマクロ解剖学

著者: 加藤友康 ,   加川隆三郎 ,   秋田恵一

ページ範囲:P.6 - P.12

●外肛門括約筋,浅会陰横筋ならびに球海綿体筋の走行について,従来と異なる新知見が得られた.

●上記の知見から,なぜ女性の痔瘻は男性と比べて肛門の前側方に二次口を有することが多いのか,また,分娩時の会陰裂傷2度では筋肉の損傷はないことがわかった.

●外肛門括約筋と恥骨直腸筋の筋線維が交錯し,骨盤底を形成している.それを恥骨裏面から恥骨直腸筋が支えている.

骨盤底手術のための内視鏡解剖学

著者: 谷村悟

ページ範囲:P.14 - P.22

●膀胱子宮窩腹膜を切開しても膀胱の背側には入れない(膀胱腟筋膜を切る).

●仙骨子宮靱帯は実際のところ直腸子宮靱帯である(側方靱帯がポイント).

●上下腹神経叢,下腹神経を辿って骨盤神経叢,骨盤内臓神経に至る.

骨盤底臓器の生理機能

下部尿路機能と骨盤底

著者: 𠮷澤剛 ,   髙橋悟

ページ範囲:P.23 - P.26

●尿禁制におけるハンモック理論

●DeLanceyのレベル理論

骨盤臓器脱の診療における女性のセクシュアリティと性機能へのアプローチ

著者: 中田真木

ページ範囲:P.27 - P.32

●骨盤臓器脱により性機能が低下する機序として,変形した性器による心理的な負担や性行為への嫌悪,治療後も再発の不安が残ることなどが指摘されている.

●切迫性尿失禁では,心理的な問題だけでなく,リビドーや性的な高まりなど性機能の中核をなす機能が低下している.

●出産後の女性骨盤底機能障害には,外科治療と並行してセクシュアリティの回復を促進する方策が必要である.

排便機能と骨盤底

著者: 江川雅之 ,   上村吉穂 ,   田端敏

ページ範囲:P.33 - P.38

●「下部直腸・肛門」は消化管の最下端にあり,便の禁制および排泄という機能を有し,生活の質を維持するうえで重要な臓器である.

●便の禁制には,内外肛門括約筋による持続的収縮,外肛門括約筋による随意的収縮,さらには恥骨直腸筋が関与する肛門直腸角の鋭角化やflap valve mechanismなどが重要な役割を果たしている.

●便の排泄は排便反射によってなされるが,そのメカニズムは複雑であり,多岐にわたる機能の協調作用が必要である.

東洋医学からみた骨盤底機能―骨盤底機能の疾患に漢方薬が効く!

著者: 蔭山充

ページ範囲:P.40 - P.44

骨盤底臓器脱による以下のような症状には,漢方薬が効果的である.

●頻尿・尿意切迫には,ファーストチョイスに‘猪苓湯(40)’を,過活動膀胱には‘清心蓮子飲(111)’を,炎症性の膀胱炎には‘五淋散(56)’を抗菌薬に併用する.

●尿失禁には‘猪苓湯(40)’と‘補中益気湯(41)’を併用する.

●常習性の便秘で高齢者には‘麻子仁丸(126)’を基本に用いる.

●子宮下垂には‘四物湯(71)’と‘補中益気湯(41)’の併用を続ける.

●痔核には‘乙字湯(3)’で炎症を併えば‘排膿散及湯(122)’を併用する.

疾患各論:骨盤臓器脱

骨盤臓器脱の治療方針の立て方

著者: 古山将康

ページ範囲:P.45 - P.51

●骨盤臓器脱の治療目標は脱垂に伴う症状(排尿・排便・性機能)を改善して患者のQOLを向上させることであり,選択できる治療法を患者に提示し,ライフスタイルに合う治療法を決定する.

●骨盤臓器脱の理学的所見を,腟の支持を中心に3つの区画(前方区画,尖端区画,後方区画)に分けて観察し,国際分類のPOP-Qで記載する.補助画像診断として経会陰超音波やMRIも有用である.

●手術療法は,骨盤臓器脱の支持破綻部位を部位特異的にNTR手術で再建する手術法を選択する.性機能温存の必要のある前方区画の重症例や再発腟脱の症例には,経腟メッシュ手術や仙骨腟固定手術も有用である.

骨盤臓器脱の保存療法

著者: 関口由紀 ,   中村綾子 ,   重田美和 ,   増田洋子

ページ範囲:P.52 - P.60

●骨盤臓器脱に対する骨盤底トレーニングは,脱自体の重症度を改善させるには至らないが,外陰部不快感・過活動膀胱症状・便秘などの自覚症状を改善させる.

●日々の運動・姿勢・呼吸などの生活習慣是正も,骨盤臓器脱の保存管理には大切である.

●骨盤臓器脱に対する腟ペッサリーの自己着脱療法は,一生涯続けなけらばならないという制約を除けば,患者の生活の質を十分に向上させるよい治療法である.日本で利用可能な腟ペッサリーの種類も増加している.

骨盤臓器脱に対する外科的治療:native tissue repair

著者: 岡垣竜吾

ページ範囲:P.61 - P.66

●骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse:POP)に対するnative tissue repair(NTR)は19世紀後半からの歴史をもち,有効性と安全性のエビデンスを有する.

●NTRは骨盤支持組織のレベルⅠ〜Ⅲの損傷それぞれに対して対抗策をもっており,症例に合わせて最適の術式を選択することや,術式を組み合わせて用いることが可能である.

●メッシュ手術が普及した現在においても,NTRは有用な治療選択肢として位置づけられており,産婦人科医師はNTRを習得すべきである.

骨盤臓器脱に対する外科的治療:経腟メッシュ手術―人工物を用いる経腟再建手術とFDAのアラート後の対応について

著者: 木村俊夫

ページ範囲:P.67 - P.73

●FDAのアラート以降の骨盤臓器脱に対する経腟メッシュ手術の評価は,前腟壁下垂ではNTRより合併症による再手術が多いが有効性は認められている.一方,後腟壁下垂ではメッシュの有効性は認められていない.

●後腟壁の整復はNTRでも対応可能であり,NTRにはメッシュにはない利点もあるため,メッシュは前腟壁に制限して後腟壁の補強はNTRで行う.

●TVMでは膀胱側腔を大きく展開し骨盤側壁までメッシュを広げるが,メッシュサイズを小さくして側方剝離を制限することで合併症を減らすことができる.

骨盤臓器脱に対する外科的治療:腹腔鏡下仙骨腟固定術

著者: 吉村和晃

ページ範囲:P.74 - P.79

●腹腔鏡下仙骨腟固定術(LSC)は,さまざまなタイプの骨盤臓器脱に対して有効な術式であり,標準術式の1つになりつつある.

●高い難易度と長い手術時間がLSCの問題点であり,術者の技量により適切な症例を選ぶことが重要である.気腹は2時間以内を目標にする.

●多彩な骨盤臓器脱症例に対応できるよう,またLSCが施行不能だった場合に備えて,LSC以外の術式も準備しておく必要がある.

疾患各論:下部尿路症状

腹圧性尿失禁の診断と治療

著者: 福島正人 ,   横山修

ページ範囲:P.80 - P.86

●腹圧性尿失禁には理学療法が有用である.

●減量も効果的である.

●手術療法は尿道裏面にテープを通す中部尿道スリング手術が第一選択である.

過活動膀胱の診断と治療

著者: 山西友典 ,   加賀勘家 ,   加賀麻祐子 ,   布施美樹 ,   石塚満

ページ範囲:P.88 - P.96

●過活動膀胱は尿意切迫感を必須の症状とし,通常は頻尿・夜間頻尿を伴い,切迫性尿失禁を伴う場合(OAB wet)と伴わない場合(OAB dry)がある.その診断にはOABSSなどのスコアと排尿日誌による鑑別診断が重要である.

●過活動膀胱の治療の第一選択は,生活指導,膀胱訓練,骨盤底筋訓練などを組み合わせた行動療法である.薬物療法には抗コリン薬とβ3アドレナリン受容体作動薬がある.

●行動療法,薬物療法が無効な難治例には,電気・磁気刺激などのneuromodulation,特に仙骨神経刺激療法が有用である.ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法は現在治験中である.

膀胱腟瘻の診断と治療

著者: 嘉村康邦

ページ範囲:P.98 - P.106

●先進国におけるVVFはほとんどが子宮摘出に伴うとされ,特に腹腔鏡下子宮摘出後に発生が多いことからenergy deviceの使用法に注意すべきである.

●子宮摘出後のVVFは膀胱後三角部正中付近に瘻孔が位置することが多く,手術侵襲の低い経腟的修復がよい適応となる.

●膀胱腟瘻閉鎖術はその件数はきわめて少なく習熟するのが難しいため,患者を集約化し熟達した術者が施行するのが望ましい.

疾患各論:排便障害

直腸脱の診断と治療―腹腔鏡下直腸固定術について

著者: 小出欣和 ,   花井恒一 ,   宇山一郎

ページ範囲:P.108 - P.113

●直腸脱は骨盤臓器脱の1つであり,他の骨盤臓器脱と合併することが多く,婦人科,泌尿器科との連携が必要な疾患である.

●外科治療には経肛門的/経腹的手術があるが,どちらが優れた術式かいまだ結論は出ていない.

●腹腔鏡下直腸固定術は,低侵襲と根治性を兼ねそなえた優れた術式である.

慢性便秘の診断と治療

著者: 杉田奈央子 ,   藤原靖弘

ページ範囲:P.114 - P.120

●2017年10月に国内初の慢性便秘症診療ガイドラインが発刊されたことや新規治療薬が続々と登場していることより,便秘診療は大きく変わりつつある.

●便秘の病態はさまざまであり,目の前の患者がどのタイプの便秘であるかを診断し治療を進める点が重要である.

●高齢者の便秘では,加齢による機能性の排便障害などに加え,併存疾患による症候性や薬剤による影響など複数の要因が存在することに注意する必要がある.また投薬による副作用にも留意すべきである.

便失禁の診断と治療

著者: 髙尾良彦 ,   瀧山亜希 ,   石原聡一郎 ,   清水伸幸 ,   菊池潔

ページ範囲:P.121 - P.127

●便失禁の診療はガイドラインに沿って初期診療を行い,症状の改善が認められない場合は速やかに専門診療を行う.

●便失禁のリスク因子として,自宅分娩,分娩回数や初回経腟分娩,鉗子分娩や吸引分娩,分娩第2期の遷延などの産科的要因が確認されている.

●肛門括約筋損傷は分娩直後の症状が軽微でも,晩期の便失禁発症のリスク因子になるので,予防とともに迅速な専門的診療が必要になることもある.

直腸腟瘻の診断と治療

著者: 古川聡美

ページ範囲:P.128 - P.134

●直腸腟瘻は,その大きさ,位置,原因などにより分類されることが多い.特に位置,原因は手術術式を決定するうえで重要であるため,把握しておく必要がある.

●産婦人科医が遭遇する直腸腟瘻は,分娩時損傷に起因する中〜低位置であることが多い.

疾患各論:慢性骨盤痛・外陰痛

慢性骨盤痛

著者: 小玉美智子 ,   木村正

ページ範囲:P.136 - P.143

●慢性骨盤痛は,さまざまな器質的疾患,機能的疾患,精神的要因が複数関与して発症することがあり,診断・治療が難しい疾患である.

●慢性骨盤痛の診療に際しては,詳細な問診,総合的な診察が重要で,痛みを質問票によって自己評価することが,医師・患者双方にとって治療効果を判定するために必要である.

慢性骨盤痛に対する漢方治療

著者: 塩田敦子

ページ範囲:P.144 - P.151

●慢性骨盤痛・慢性外陰痛の症状・原因はさまざまで,環境や背景,心理社会的因子の影響も大きいため,診断と処方が結びつきにくいという特徴がある.

●痛みに対する漢方学的なアセスメントの方法と,「心身一如」「同病異治」の考え方は,難治性の慢性疼痛を理解するうえで有用である.

●患者を包括的に診る姿勢は癒しにつながり,病態,証を見極め処方を行う漢方治療は慢性骨盤痛・慢性外陰痛に効果的である.

連載 FOCUS

卵巣癌実地臨床に導入されたPARP阻害薬

著者: 千代田達幸 ,   同前愛 ,   早乙女啓子 ,   青木大輔

ページ範囲:P.152 - P.162

はじめに

 Poly(ADP-ribose)polymerase(PARP)阻害薬の卵巣癌治療への導入は期待を集めている.2005年にPARP阻害薬がBRCA1もしくはBRCA2の変異(BRCA1/2変異)をもつ細胞に選択的に細胞毒性をもつことが示され1, 2),癌治療における合成致死(synthetic lethality)の代表例の1つとなった.DNAの相同組換え(homologous recombination:HR)による2本鎖修復ができない細胞において,PARP阻害薬はDNAの1本鎖修復を阻害するため,結果的にDNA修復ができず細胞死に至ると考えられている.2014年12月にPARP阻害薬は米国食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)に承認され,本邦においては2018年1月に薬事承認がなされた.

 高悪性度漿液性癌(high-grade serous cancers:HGSCs)はDNA2本鎖修復機構である相同組換えの異常(homologous recombination deficiency:HRD)を約50%に示し,BRCA1/2の生殖細胞系列変異と体細胞系列変異の合計が約30%,その他のDNA修復経路の異常が約20%を占める3).類内膜癌,明細胞癌,癌肉腫においてもHGSCsと同程度にHRDがあると報告されており4),PARP阻害薬の効果が認められる可能性がある.第Ⅱ相試験ではあるがStudy 19においてオラパリブはBRCA1/2野生型に対しても無増悪生存期間(PFS)を延長する効果を示し5),2017年8月にFDAによりBRCA1/2変異の有無にかかわらずプラチナ感受性再発卵巣癌に対するオラパリブの使用が承認された.第Ⅲ相臨床試験においてニラパリブはBRCA1/2変異,HRDがない患者に対しても有効であり,臨床現場においてPARP阻害薬がすべてのプラチナ感受性再発HGSCsに有効であることが示された6).今後はPARP阻害薬を化学療法もしくは血管新生阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬などの分子標的治療薬とどのように併用していくかも重要なテーマである.

 本稿ではPARP阻害薬について臨床試験の成果をもとに本邦における導入とその今後について概説する.

教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール

進行外陰がんに対する内陰部動脈からの術前動注化学療法は有用か?

著者: 水野公雄

ページ範囲:P.164 - P.169

はじめに

 外陰がんの治療は手術療法が基本であり,手術が困難な場合には化学療法や放射線治療が選択されるが,確定した治療方法がないのが現状である.局所のがん病変が広汎で外尿道口や肛門への浸潤が存在する場合には,腫瘍を抗がん剤投与により縮小させたのちに手術し,尿道や肛門の合併切除を回避して患者の排泄機能の温存を図ることも考慮される.今回,局所への抗がん剤の効果を高める目的で外陰の支配動脈である内陰部動脈からの動注化学療法後手術を試みた症例のうち,著効を示した症例の具体的治療内容を提示するとともに,同治療を行った他症例の結果を検討し,外陰がんに対する動注化学療法の有用性について考察した.

Estrogen Series・178

米国家庭の苦しい台所―ハワイ州ACSの場合

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.170 - P.170

 先ごろ,2017年度の国勢調査の結果が発表された.この調査はAmerican Community Survey(ACS)と呼ばれ,市民の暮らし向きに焦点を当てている.ハワイ州の貧困率は全米で3番目に低い.

 しかし実際の暮らし向きはなかなか厳しい.以下いくつかの具体的なデータを引用する.

Obstetric News

誘発分娩を考える(2)―ARRIVE試験に対する米国産婦人科学会と米国周産期医学会共同声明

著者: 武久徹

ページ範囲:P.171 - P.172

 米国産婦人科学会(ACOG)と米国周産期医学会(SMFM)は,NEJM誌に発表されたARRIVE試験(NEJM 379:513, 2018)の結果に対して以下の声明を発表した.

原著

初回治療として根治的放射線療法を施行した子宮体癌13例の検討

著者: 北見和久 ,   鈴木邦昭 ,   山田友梨花 ,   尾瀬武志 ,   窪川芽衣 ,   嶋谷拓真 ,   植草良輔 ,   國島温志 ,   甲木聡 ,   長尾有佳里 ,   藤田啓 ,   矢吹淳司 ,   河合要介 ,   梅村康太 ,   岡田真由美 ,   山田剛大 ,   石原俊一 ,   河井通泰

ページ範囲:P.173 - P.178

▶要約

 子宮体癌の初回治療は手術治療が基本であるが,高齢や合併症,肥満などにより困難な場合もある.当院で2007年1月から2016年12月の間に初回治療として放射線療法を選択した子宮体癌13例について後方視的に検討した.全例治療前にCTとMRIを施行し手術進行期分類(日産婦2011,FIGO2008)を推定,ⅠA期10例,ⅠB期2例,ⅢC1期1例であった.全骨盤照射と腔内照射併用が10例,腔内照射のみが3例,CR率は61.5%(8/13例)であった.単変量解析にて組織型(類内膜癌G1/G2)がCRと有意に関連する因子であり(p=0.03),5年全生存率57.7%,5年疾患特異生存率71.4%,Ⅰ期かつ類内膜癌G1/G2の5年疾患特異生存率100%であった.晩期有害事象はCTCAE Grade1の血尿と肛門出血を1例ずつ認めたのみであり,手術不能患者に根治的放射線療法は安全で有効な治療法と考えられた.

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目次

ページ範囲:P.2 - P.3

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.163 - P.163

バックナンバー

ページ範囲:P.179 - P.179

次号予告・奥付

ページ範囲:P.180 - P.180

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

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今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス

76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

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76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

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合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

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74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

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74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

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合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

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73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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