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症例
肺炎球菌による卵管卵巣膿瘍の1例
著者: 齋藤強太1 沼田雅裕1 有波良成1 大野正文1
所属機関: 1新潟県立中央病院産婦人科
ページ範囲:P.1261 - P.1265
文献購入ページに移動卵管卵巣膿瘍(tubo-ovarian abcess : TOA)は子宮付属器炎に起因する膿瘍性の疾患である.起因菌はさまざまであるが,今回,起因菌として稀な肺炎球菌によるTOAを経験した.
症例は65歳女性.腹痛のため受診し膀胱炎と診断され,レボフロキサシン水和物500mg/日を7日間内服したが症状の改善はなかった.超音波検査,CT(computed tomography)検査でTOAが疑われた.手術時,両側にTOAがあり,右側は周囲と広範囲に癒着し虫垂が巻き込まれていたため,両側付属器切除術,単純子宮全摘術,虫垂切除術を施行した.術後に腹痛は消失し,術後11日目に退院した.膿から肺炎球菌が検出され,5類感染症の侵襲性肺炎球菌感染症(invasive pneumococcal disease : IPD)と診断した.
TOAに対する治療の第一選択は抗菌薬による保存的加療であるが,治療抵抗性の場合は,症状の持続・悪化に加え,腹腔内での癒着を引き起こし手術が困難になる場合があるため,早期の外科的治療も考慮する必要があると考えられた.また,65歳以上の高齢者には肺炎球菌ワクチン投与が推奨される.
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