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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科73巻8号

2019年08月発行

雑誌目次

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

著者:

ページ範囲:P.717 - P.717

今の時代の漢方診療

最近の漢方診療―診察から薬剤選択まで

著者: 大澤稔

ページ範囲:P.718 - P.726

●患者の虚実は,体格を指すというよりは,病気に抵抗する体力の充足状態を「実証」,不足状態を「虚証」と捉えると理解しやすい.

●気の異常(気虚,気鬱,気逆),血の異常(瘀血,血虚),水の異常(水毒,陰虚),腎の異常は,日常遭遇する症状名に翻訳可能である.

●プライマリ・ケアにおいては,何といっても問診が決め手であり,複数の症状を結びつける(症候群と考える)ことで相応しい漢方薬が選択される.

科学的エビデンスに基づく漢方薬の作用メカニズムの解明―六君子湯,半夏瀉心湯,大建中湯を中心に

著者: 上園保仁 ,   宮野加奈子

ページ範囲:P.728 - P.734

●婦人科疾患には古くより多くの漢方薬が用いられている.婦人科がん患者のがん治療およびその副作用改善にも,漢方薬が科学的エビデンスをもって用いられている.

●婦人科疾患における抗がん薬の副作用として食思不振,悪心・嘔吐および口内炎がある.前者には六君子湯が,後者には半夏瀉心湯が科学的エビデンスをもって処方選択されてきている.

●外科手術後の腸管の癒着,イレウスならびに便秘の予防および症状改善に,大建中湯が科学的エビデンスのある作用メカニズムに基づいて用いられてきている.

医療経済における漢方薬の役割

著者: 康永秀生

ページ範囲:P.735 - P.739

●政府はこれまで繰り返し漢方製剤の保険適用除外を試みてきたものの,実現していない.

●いくつかの臨床場面(術後イレウスに対する大建中湯,慢性硬膜下血腫術後の五苓散,妊娠悪阻に対する漢方治療など)で,漢方薬が医療費を軽減することが示されている.

●今後さらに,漢方薬の効果のみならず費用対効果を検証するための薬剤疫学的,医療経済学的な実証分析の蓄積が不可欠である.

それぞれの場面での使い方

思春期・性成熟期と漢方薬

著者: 小川真里子 ,   髙松潔

ページ範囲:P.740 - P.746

●思春期および性成熟期の女性によくみられる婦人科疾患として,月経に関連する諸問題が挙げられる.そのなかでも漢方が奏効することが多い疾患として,月経困難症と月経前症候群(PMS)が挙げられる.

●婦人科三大漢方薬(当帰芍薬散,加味逍遥散,桂枝茯苓丸)はいずれも漢方では駆瘀血剤とされており,月経困難症とPMSの両方への効果を期待できる.

●月経困難症やPMSの女性に対する漢方処方を考えるとき,まず婦人科三大漢方薬を基本に置き,さらに患者の証や訴えにより,追加および変更する処方を検討することが勧められる.

生殖領域と漢方薬(不妊・不育症)

著者: 永松健

ページ範囲:P.747 - P.752

●生殖機能の低下を背景として不妊症,不育症を生じている女性においては,婦人科疾患の3大方剤である桂枝茯苓丸,当帰芍薬散,加味逍遙散を検討する価値がある.

●多囊胞性卵巣症候群に対する温経湯,抗リン脂質抗体症候群に対する柴苓湯は単独もしくは西洋薬との併用により臨床効果が期待できる漢方療法として重要である.

●基礎的研究での当帰芍薬散,柴苓湯の免疫機能調節作用に関する知見の集積に伴い,不育症治療における治療戦略としての漢方療法の重要性が再認識されている.

産科と漢方薬

著者: 岡村麻子 ,   長田佳世 ,   加藤士郎

ページ範囲:P.754 - P.761

●妊娠,分娩,産褥のいずれの時期においても漢方薬は有益である.

●母児に安全な生薬から構成される漢方薬を選択して使用する必要がある.

●妊娠中は「養胎優先」であり虚に傾くため,副作用にはより留意する必要がある.

更年期と漢方薬

著者: 寺内公一

ページ範囲:P.763 - P.771

●産婦人科医の日常診療において,「更年期障害」は漢方薬の使用率が最も高い病名の1つである.

●更年期障害に対する漢方治療の中心となるのは,「婦人科三大処方」と呼ばれる当帰芍薬散・加味逍遥散・桂枝茯苓丸である.

●当帰芍薬散は頭痛に,加味逍遥散は不眠に,桂枝茯苓丸は高血圧に,それぞれ有効であると考えらえる.

女性のメンタルヘルスケアと漢方薬

著者: 安井敏之 ,   松浦幸恵

ページ範囲:P.772 - P.779

●月経前症候群では,問題となる症状とともに気血水の異常を考えて漢方薬を使い分ける.

●月経困難症の女性には瘀血が多く,駆瘀血作用のある漢方や平滑筋の収縮抑制作用のある芍薬甘草湯が有用である.

●妊娠産褥期のメンタルヘルスでは,中心となっている症状が抑うつ気分か,不安焦燥感か,易疲労感や意欲障害かで漢方薬を考える.

●摂食障害は補剤を中心に考え,腹部膨満,下痢と便秘,精神的興奮によって漢方薬の種類を考慮する.

不定愁訴と漢方薬

著者: 武田卓

ページ範囲:P.780 - P.785

●西洋医学では認識されていない「冷え症」に対して,漢方治療ではさまざまな薬剤が使用可能である.

●漢方薬には,下剤作用のある薬剤は多数あり,単なる下剤作用だけでなくプラスアルファの効果が期待できるものが多い.

●排尿障害に対しては,老化現象全般を改善する薬剤である「補腎剤(ほじんざい)」が使用される.

術後管理と漢方薬

著者: 田中良道

ページ範囲:P.786 - P.790

●近年,漢方薬を用いた臨床試験や基礎研究の報告が相次ぎ,質の高いエビデンスが蓄積し,ひと昔前のイメージとはがらりと変わっている.

●術後管理のなかでも,イレウス発症予防として,あるいは便秘症に対しての大建中湯はエビデンスが蓄積されている.

●そのほかとして,術後の胃腸虚弱・消化不良に対する六君子湯,術後の体力消耗に対する補中益気湯,十全大補湯などの有効性の報告が多い.

がん支持療法と漢方薬

著者: 西田欣広

ページ範囲:P.792 - P.797

●がん支持療法の1つである漢方薬の使い方をマスターすることは,がん患者のQOLの向上に有用である.

●漢方薬は病名処方からでもよいのでまず使ってみることが大切である.

●次の一手として漢方診断に気血水,腹診を加えるとより治療効率の高い漢方薬を処方することができる.

健康寿命の延伸に向けての漢方医学の役割について

著者: 斎藤仁美 ,   梶本勝文 ,   萩原圭祐

ページ範囲:P.798 - P.803

●女性は,周閉経期の急激な女性ホルモン低下により心身の変調をきたし,種々の要因によりフレイルに至るリスクが高い.

●健康長寿をもたらすためには,フレイルの発症予防と治療介入が重要であり,フレイルの身体的側面を形成する重要な因子として,サルコペニアが注目されている.

●分子生物学的に牛車腎気丸の抗サルコペニア効果と鎮痛効果を確認し,現在,腎虚スコアによるフレイル予測・診断・介入システムの構築と牛車腎気丸の効果に関する前向き研究が開始されている.

連載 Obstetric News

誘発分娩を考える(8)―難産

著者: 武久徹

ページ範囲:P.804 - P.805

 帝王切開は米国において最多の大手術であり,毎年約100万例に達する.妊娠の約1/3は,米国では帝王切開で出産している.その原因は,帝王切開後の経腟試験分娩(VBAC)減少,母体(と家族)の希望,ハイリスク妊娠数の増加,そして産科法医学的環境などが考えられる.

 米国イェール大学で7年間(2003〜2009年),32,443例の生児出産が調べられた.この間,帝王切開率は26%から36.5%に50%増加したが,この50%の増加の原因は,初回帝王切開の増加だった.

Estrogen Series・183

学生の睡眠時間

著者: 矢沢珪二郎

ページ範囲:P.806 - P.806

 朝の登校時間を遅らせ,授業時間の開始を遅くすることは,ティーンエイジャーにとってより良い夜間の睡眠をもたらす可能性がある.

 思春期においては,circadian rhythmが変化し,その睡眠と覚醒は,典型的にはより遅い時間帯にシフトする.その結果,思春期男女の覚醒・睡眠のパターンがしばしば社会的活動の時間帯とは一致しないという問題が起こり,米国における“思春期男女は毎晩10時間の睡眠が望ましい”という推奨とも一致しないことになる.

原著

月経前症候群症状日誌Daily Record of Severity of Problems(DRSP)に対する言語性妥当性を検証した日本語版作成

著者: 武田卓 ,   椎名昌美 ,   山田恵子

ページ範囲:P.807 - P.811

▶要約

 月経前症候群や月経前不快気分障害は月経前の不快な精神身体症状を特徴とし,女性のQOLを著しく損なう.正確な診断のためには前向き記述の連日症状評価が必要とされ,世界的にはDaily Record of Severity of Problems(DRSP)が汎用されている.言語的妥当性を担保した翻訳版質問票作成の標準的手法により,日本語版DRSPを作成したので報告する.

症例

神経内分泌腫瘍成分を伴う子宮頸部癌肉腫の1例

著者: 森田奈津子 ,   田中智人 ,   芦原敬允 ,   大道正英

ページ範囲:P.813 - P.818

▶要約

 子宮頸部癌肉腫は稀な疾患であり,腫瘍を構成する癌腫は扁平上皮癌もしくは類内膜癌が多く,神経内分泌腫瘍成分を伴う症例はきわめて少ない.今回,神経内分泌腫瘍成分を伴う癌腫成分と肉腫成分で構成される子宮頸部癌肉腫の症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

 症例は58歳,2妊2産.帯下異常を主訴に受診し,子宮頸部に乳頭状に発育する腫瘤を認めた.子宮頸部組織診で低分化腺癌の結果であった.MRI画像で子宮頸部に48mmの腫瘤を認め,子宮頸癌ⅠB2期の診断でNACとして動注化学療法(Balloon occuluded arterial infusion : BOAI)を選択した.1コース終了後に腫瘤は縮小傾向を認めたが,副作用である末梢神経の痺れが強く,広汎子宮全摘術と両側付属器摘出術を行った.病理組織診では核腫大を伴う紡錘型細胞の増殖(肉腫成分)と,充実性包巣を形成する核異型の強い腫瘍細胞の増殖(癌腫成分)が混在していた.免疫染色では肉腫成分はp16,vimentin,PASが陽性で,AE1/AE3,CK7,CK20は陰性であった.癌腫成分ではAE1/AE3,CD56,synaptophysin,chromograninAが陽性であった.最終病理診断はCervical carcinosarcoma with neuroendcrine diffentiation,ypT1b1 N1 M0であり,術後補助療法として同時化学放射線療法を行うも,治療終了後5か月で副腎に再発を認め,TC療法を3コース施行した.CTで副腎病変は縮小を認めず,現在化学療法をCDDP+CPT-11へ変更としている.

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目次

ページ範囲:P.714 - P.715

バックナンバー

ページ範囲:P.819 - P.819

次号予告・奥付

ページ範囲:P.820 - P.820

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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