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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科74巻3号

2020年04月発行

雑誌目次

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

変貌する卵巣がん治療

著者: 佐藤豊実

ページ範囲:P.310 - P.315

●LION試験の結果,一部の患者ではprimary debulking surgery時に後腹膜リンパ節郭清を行わないことが勧められるかもしれない.

●卵巣がんに使用できる分子標的薬が続々と登場し,シスプラチン,タキサン登場時のようなブレークスルーが起きている.

●新しい分子標的薬が登場し,その組み合わせは多彩であり,加えてパネル検査による個別化も進めば腫瘍内科医とのコラボレーションが必要となる可能性がある.

新規治療薬の作用機序と使いどころ《コンパニオン診断》

卵巣がんに対するコンパニオン診断の使い方

著者: 平沢晃

ページ範囲:P.317 - P.323

●マイクロサテライト不安定性(MSI)検査は,免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブの選択を目的としたコンパニオン診断に用いられる.

BRCA1/2遺伝学的検査は,BRCA1/2陽性の卵巣がんに対する初回化学療法後の維持療法にPARP阻害薬オラパリブを使用するためのコンパニオン診断に用いられる.

●卵巣がんのコンパニオン診断を契機として,Lynch症候群や遺伝性乳がん卵巣がん(Hereditary breast and ovarian cancer : HBOC)などの遺伝性腫瘍が判明することがある.知ることのメリットを活かす対応が重要である.

新規治療薬の作用機序と使いどころ《分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬》

VEGF阻害薬の作用機序と使いどころ

著者: 馬淵誠士 ,   山田有紀 ,   岩井加奈

ページ範囲:P.325 - P.333

●抗VEGF-A中和抗体であるベバシズマブは,①血管新生の阻害,②既存の微小血管の退縮,③腫瘍血管の正常化を引き起こすため,単剤より抗がん剤との併用で強い効果を発揮する.

●ベバシズマブは,術後補助化学療法や再発がんに対する治療において無増悪生存期間を延長するだけでなく,腹水の産生抑制を通じてQOLの改善にも寄与しうる薬剤である.

●ベバシズマブを用いた術前化学療法やベバシズマブと他の分子標的治療薬の併用効果を検討する臨床試験,また効果を予見するバイオマーカーの開発を目指した研究が進行中である.

PARP阻害薬の作用機序と使いどころ

著者: 渡邉絵里 ,   梶山広明

ページ範囲:P.334 - P.343

●PARP阻害薬は,DNA修復機構において一本鎖切断修復を妨げるため,二本鎖切断修復機構に異常をきたした細胞に投与することで,細胞死を導く(合成致死).

●再発卵巣がん治療 : オラパリブ,ニラパリブ,ルカパリブの3剤いずれも,BRCA遺伝子変異陽性もしくは腫瘍が相同組換修復異常を有する症例で,プラセボ群に比較し,大幅なprogression-free survival(PFS)の延長を認めた.

●新規に診断された進行卵巣がんの一次維持療法 : オラパリブはBRCA遺伝子変異を有しプラチナ製剤感受性の症例,ニラパリブはBRCAの有無にかかわらず,相同組換修復異常を認める症例で,progression-free survivalを改善した.

●有害事象 : オラパリブでは貧血,ニラパリブでは血小板減少が多く報告されるなど,各薬剤により有害事象が異なるため,投与に際し注意が必要である.

免疫チェックポイント阻害薬の作用機序と使いどころ

著者: 濵西潤三 ,   万代昌紀

ページ範囲:P.344 - P.355

●高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)の卵巣がんに対して,ペムブロリズマブは有効である.

●PARP阻害薬や血管新生阻害薬との併用療法が期待されている.

●特定の希少組織型に対する有用性も報告されている.

ここが知りたい最新の治療戦略《初回治療》

初回腫瘍減量術(PDS)での後腹膜リンパ節郭清の意義は?

著者: 太田剛

ページ範囲:P.357 - P.362

●腫大リンパ節のない進行卵巣がんにおいてPDSでcomplete surgeryを完遂し得た場合,系統的な後腹膜リンパ節郭清の追加は予後を改善せず,術後合併症を有意に増加させた.

●腫大リンパ節のある進行卵巣がんあるいは早期卵巣がんの症例における後腹膜リンパ節郭清の治療的意義はいまだ明らかでない.

化学療法先行後の腫瘍減量術(NAC+IDS)の適応は?

著者: 鈴木嘉穂 ,   寺井義人

ページ範囲:P.363 - P.368

●PDSでR0が可能であれば手術が最優先である.R0が不可能な場合は,組織型がClearあるいはMucinousでなく,PSが不良な患者に対してNAC+IDSは考慮される.

●NACのレジメンは,conventional TC療法,dose-dense TC療法,weekly TC療法のいずれかを用いる.分子標的薬併用の有効性が期待されている.

●腹腔鏡下生検術は有用性の報告がされており,スコア化することでPDSの可否の判断に用いることができる.臍部腹壁直下に播種病変が大きい場合や癒着が強い症例などは,開腹手術への移行を躊躇しない.

初回化学療法でconventional TC療法とdose-dense TC療法をどのように使い分けるか?

著者: 藤原聡枝 ,   大道正英

ページ範囲:P.369 - P.373

●Ⅱ期以上を対象に,日本人でのdose-dense TC(ddTC)療法のconventional TC(cTC)療法に対する有効性が示されたが,有害事象である貧血の頻度が高い.

●残存病変が1cm未満の症例,組織型が明細胞癌,または粘液性癌では,ddTC療法とcTC療法のレジメンに有意差はない.

●ベバシズマブ併用時は,cTC療法が望ましい.

●高異型度漿液性癌のなかでもMTタイプはddTC療法の有用性が示唆される.

組織型を考慮した初回化学療法は推奨されるか?

著者: 村上幸祐

ページ範囲:P.374 - P.378

●組織型を考慮した初回化学療法は,現時点では推奨されない.

●併用療法や,腫瘍の特性に応じたレジメンの個別化など,今後のエビデンスの集積が待たれる.

維持化学療法の位置づけは?

著者: 田中良道

ページ範囲:P.380 - P.385

●ベバシズマブは,進行卵巣がんにおける初回治療時,あるいは再発時の化学療法との併用および維持療法として考慮される.

●オラパリブは,BRCA遺伝子変異が確認された進行卵巣がんにおける初回治療時の維持療法,あるいはプラチナ感受性再発で化学療法が奏効したのちの維持療法として考慮される.

●今後,オラパリブ以外のPARP阻害薬(ニラパリブ,ルカパリブ,ベリパリブ)の保険収載が期待される.投与症例の抽出方法(BRCA遺伝子変異の有無,HRDの有無など)やベバシズマブとの併用が可能になるかなど,エビデンスを注視していく必要がある.維持療法の重要性はますます高まっている.

ここが知りたい最新の治療戦略《再発治療》

再発に対する腫瘍減量術(SDS)は推奨されるか?

著者: 吉野潔

ページ範囲:P.386 - P.391

●再発卵巣がんに対するSDSでは完全摘出することが予後改善に繋がる.

●SDSでの完全摘出を推測するモデルとしてAGOスコアおよびTianスコアが有用とされ,現時点ではそれらに当てはまる症例を選択するべきであろう.

●DESKTOPⅢをはじめ,SDSについてのランダム化比較試験が報告されてきており,注目していく必要がある.

プラチナ感受性再発に対して推奨されるレジメンは?

著者: 高野政志 ,   宮本守員 ,   吉川智之

ページ範囲:P.392 - P.399

●プラチナ感受性再発に対する治療の基本はプラチナ併用療法であり,上乗せ薬剤としてベバシズマブ併用・維持療法,あるいは奏効例に対するオラパリブ維持療法がある.

●ベバシズマブ,オラパリブともにPFS延長効果を認めるが,BRCA遺伝子の変異有無などによって得られる効果に差異があり,特異な副障害にも留意が必要である

●プラチナ感受性再発患者に対するSDS手術に関して否定的な報告がなされたが,腫瘍の状態(個数,局在,薬剤耐性など)によってさらなる検討が必要と思われる.

プラチナ抵抗性再発に対して推奨されるレジメンは?

著者: 境秀樹 ,   松本光史

ページ範囲:P.401 - P.407

●プラチナ製剤抵抗性再発では,既治療薬との交差耐性や既治療薬の毒性を考慮して単剤療法を行う.

●化学療法単独に対して,化学療法にベバシズマブを併用することの有効性が示されている.

●プラチナ製剤抵抗性2レジメン目まで延命効果が認められている.

●QOLが低下した状態や,途中中止が懸念される状態では緩和治療に専念したほうがよい可能性が高い.

連載 FOCUS

seromucinous borderline tumorの画像診断のポイント

著者: 山本和宏

ページ範囲:P.408 - P.415

Seromucinous borderline tumorとは(図1)

 卵巣に発生する漿液粘液性境界悪性腫瘍(seromucinous borderline tumor : SMBT)はWHO分類第4版(2014)で新たに設けられた分類で,旧WHO分類(2003)での「内頸部様粘液性境界悪性腫瘍(endocervical-like MBT)」と「混合型上皮性境界悪性腫瘍(mixed epithelial BT)」に相当する.

 その経緯は,はじめは粘液上皮を含む漿液性境界悪性腫瘍(serous borderline tumor : SBT)として1986年にBostwick DGら1)によって報告された.その後,1988年にRutgersら2)により粘液性境界悪性腫瘍(mucinous borderline tumor : MBT)の内頸部型(endocervical-like)に位置付けられた.

Obstetric News

新型コロナウイルス2019感染と妊娠(米国産婦人科学会2019)―Practice Advisory Novel Coronavirus 2019 COVID 19

著者: 武久徹

ページ範囲:P.416 - P.418

 米国産婦人科学会(ACOG)は,中国武漢市で最初に検出され,拡大し続けている新型コロナウイルスによる呼吸器疾患(COVID-19)の発生を綿密に監視している.

 米国で検出された旅行者のCOVID-19のImported caseはヒトからヒトへの蔓延が見られている.しかし,現時点で米国一般市民に対するCOVID-19による差し迫った健康リスクは低いと考えられている.

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目次

ページ範囲:P.306 - P.307

バックナンバー

ページ範囲:P.419 - P.419

次号予告・奥付

ページ範囲:P.420 - P.420

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻9号(2015年9月発行)

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69巻8号(2015年8月発行)

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69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

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69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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