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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科74巻6号

2020年06月発行

雑誌目次

今月の臨床 外来でみる子宮内膜症診療―患者特性に応じた管理・投薬のコツ

内膜症病変の新しい臨床的評価法―従来の子宮内膜症評価法の特徴と課題,そして最新の評価法NMS-Eの解説

著者: 市川雅男 ,   渡辺建一郎 ,   可世木華子 ,   小野修一 ,   明樂重夫

ページ範囲:P.526 - P.537

●現時点において,子宮内膜症の全体像を非侵襲的に診断できる確立した方法はない.

●Numerical Multi-scoring System of Endometriosis(NMS-E)法は,内診と経腟超音波検査のみで,子宮内膜症の全体像を非侵襲的に診断できる簡便な方法である.

●NMS-E法の一要素である癒着スコアは,子宮内膜症性癒着の術前と術後の変化をとらえ,術後の不妊治療の指標にもなりうる.

治療薬の使い方とコツ

LEP製剤の使いわけ

著者: 百枝幹雄

ページ範囲:P.538 - P.543

●LEPは含有するプロゲスチンによって特徴があるので,患者の使い心地に応じて使い分ける.

●LEPはレジメンやエチニルエストラジオール含有量により不正出血の頻度や日数に違いがあるので,患者のQOLを考慮して選択する.

●子宮内膜症は単に症状を抑えるだけでなく,病巣の進行を抑えることも大切なので,LEPも連続投与が望ましい.

GnRHアゴニストの役割と注意点

著者: 真壁友子 ,   甲賀かをり

ページ範囲:P.544 - P.548

●GnRHアゴニストは強力なエストロゲン分泌抑制作用を有し,エストロゲン依存性疾患である子宮内膜症の症状緩和や病変の縮小に有用である.

●エストロゲン抑制効果よる骨量減少や更年期症状の副作用から6か月を超える長期使用は原則できず,単剤での長期的管理は困難である.

経口治療薬ジエノゲスト使用のコツ

著者: 阪埜浩司 ,   青木大輔

ページ範囲:P.549 - P.554

●ジエノゲストはGnRHアゴニストと同等の効果が得られる一方,長期投与が可能である.

●ジエノゲストの不正性器出血対策として,sequential療法が効果的とされる.

●近年,子宮内膜症がさまざまな疾患にも関連することがわかってきており,その発症予防や早期からの対策がますます重要視されている.

LNG-IUSの役割と使用のコツ

著者: 太田郁子

ページ範囲:P.555 - P.559

●子宮内膜症治療におけるLNG-IUSの位置づけは,子宮内膜症による疼痛および過多月経の軽減にある.局所療法であるため,チョコレート囊胞などに対する直接的な作用はなく,重度の子宮内膜症および子宮腺筋症症例には不向きであると思われる.また穿孔などのリスクがあるため,対象と挿入時期は十分に考慮しなくてはならない.

●LNG-IUSにより子宮内膜症の疼痛・過多月経の症状が軽減されていても,子宮内膜症は進行することがあり,他剤と同じく治療中は定期的な経過観察が必要である.

●特に子宮内膜症術後の疼痛再発減少に対する効果はOCに匹敵し,OCと比較しても患者満足度は高いため,子宮内膜症術後の疼痛再発減少を目的として使用するのが適していると考えられる.

ライフステージに応じた患者への対応

若年子宮内膜症患者の重症化予防のためにはどうすればよいか?

著者: 北脇城

ページ範囲:P.560 - P.566

●月経困難症や慢性骨盤痛を訴える若年女性に対しては,早期にかつ適切に介入をすることによって子宮内膜症の発生が予防できる可能性がある.

●子宮内膜症に対してはOC・LEP,黄体ホルモンなどの長期的な投与によって重症化を抑制することができる.

●子宮内膜症リスクがある女性に対しては,薬物療法によって症状が軽快した場合においても,その後の定期的な経過観察が必要である.

不妊症治療のなかで子宮内膜症はどのように扱えばよいのか?

著者: 谷口文紀 ,   原田省

ページ範囲:P.567 - P.573

●卵巣チョコレート囊胞がある場合,疼痛が強いときや自然妊娠を強く望むときには保存手術を考慮する.自然妊娠の成立には,子宮内膜症病変が卵管機能に影響を与えているかどうかの判断が重要である.

●囊胞摘出術により卵巣予備能は低下するが,片側の場合は体外受精による妊娠率にさほど悪影響を与えない.

●加齢とともに卵巣予備能は低下することから,ARTへの移行時期を逸することのないように配慮する.

●重症子宮内膜症患者では,ARTにおける獲得卵子数が少なく,生児獲得率は低い.また,流産率が高い.

チョコレート囊胞合併不妊で囊胞摘除は勧めてよいのか?

著者: 小林未央 ,   北原慈和 ,   岩瀬明

ページ範囲:P.574 - P.578

●囊胞摘出術は術後の自然妊娠率を改善するが,体外受精・顕微授精による妊娠率改善には寄与しない.

●囊胞摘出術では卵巣予備能が低下し,両側手術で顕著である.手術方法,止血方法により低下の程度は異なる.

●手術により卵巣予備能が著しく低下した場合は,その後の妊娠率に影響を及ぼすリスクがある.

子宮内膜症をもつ患者に産婦人科処置を行う際には骨盤内感染・卵巣膿瘍に要注意!―ART手技を含めて

著者: 梶原健 ,   左勝則 ,   高村将司

ページ範囲:P.579 - P.583

●子宮内膜症(特に子宮内膜症性卵巣囊胞)の存在は子宮内操作を伴う婦人科処置をする際,骨盤内感染発症のリスク因子となる.

●卵管卵巣膿瘍に進展した際には,外科的な処置が必要になることが多く,その後に妊孕性が大きく損なわれることがある.

●特に子宮内膜症性卵巣囊胞が併存している症例の処置を行う際には,処置中の抗菌薬の投与など十分な感染を予防する手段を講じる必要がある.

妊産婦が子宮内膜症をもつ場合に留意すべき産科合併症とは?

著者: 田中博明 ,   田中佳世 ,   池田智明

ページ範囲:P.584 - P.588

●子宮内膜症は,前置胎盤,産褥出血,早産,前置胎盤,帝王切開,small for gestational age,妊娠高血圧症候群などの産科合併症の危険因子である可能性がある.

●子宮内膜症は妊娠中に,腹腔内出血,消化管穿孔,uroperitoneum,子宮内膜症性卵巣囊胞破裂を稀であるが合併することがある.

循環器疾患リスクを考慮した子宮内膜症の治療戦略とは

著者: 若槻明彦

ページ範囲:P.589 - P.594

●子宮内膜症女性では,炎症の活性化,内因性抗酸化因子の減少,内因性NOS抑制物質の上昇により,血管内皮機能は低下している.

●子宮内膜症女性は心血管疾患の高リスクであることが臨床試験で証明されている.

●OC・LEPは脂質や血管内皮機能の改善効果があるが,子宮内膜症女性の心血管疾患の予防に効果的であるか否かはさらなる検討が必要である.

閉経前後の子宮内膜症患者にはどう対応するか?

著者: 北島道夫

ページ範囲:P.595 - P.601

●40歳以降に診断される子宮内膜症は稀でなく,性成熟期から引き続き薬物療法が必要な例も少なくないが,周閉経期の女性特有の徴候を考慮した対応が必要である.

●手術療法あるいは長期の内分泌療法を適用する場合は,症例ごとにリスクとベネフィットを勘案して副作用の少ない治療法・薬剤を選択する.

●子宮内膜症既往のある女性にホルモン補充療法を適用する場合は,連続投与によるエストロゲン・プロゲスチン併用療法を考慮する.

保存的治療の限界と注意点

卵巣チョコレート囊胞のがん化と早期診断

著者: 松村謙臣 ,   村上幸祐

ページ範囲:P.603 - P.612

●これまで報告されてきた「卵巣チョコレート囊胞のがん化」の多くは,囊胞のフォロー開始時から卵巣がんであった症例であると考えられる.

●正所性子宮内膜の遺伝子変異が内膜症関連卵巣がんの原因として注目されつつある.

●子宮内膜症の悪性化を念頭においた管理は勧められない.

卵巣チョコレート囊胞破裂の診断とその管理

著者: 森田峰人

ページ範囲:P.613 - P.618

●卵巣チョコレート囊胞破裂は比較的稀な疾患であるが,急性腹症として鑑別を要する疾患は多岐にわたる.

●卵巣チョコレート囊胞の破裂の診断の正診率は必ずしも高くなく,症状,画像検査,血液生化学検査などを効率的に組み合わせた精度の高い診断を行う必要がある.

●卵巣チョコレート囊胞の破裂の治療は,抗菌薬などによる保存的治療と,ドレナージや囊胞摘出術,子宮付属器切除術などの外科的治療が選択肢となる.妊孕能温存の観点からは,卵巣予備能に十分配慮した術前の薬物療法や手術操作が必要である.

稀少部位子宮内膜症とその管理―頻度,合併症,悪性化と管理法

著者: 小寺千聡 ,   本田律生 ,   片渕秀隆

ページ範囲:P.620 - P.625

●稀少部位子宮内膜症は,その稀少性からいまだ診断や治療に関する十分なエビデンスが得られていない.

●子宮内膜症の発生部位により薬物療法と外科療法の有用性が異なるため,他診療科と十分に連携し,時機を逸することのない治療選択が重要である.

●女性のライフステージに配慮し,特徴的な合併症や悪性化に留意した長期管理を行う必要がある.

連載 Obstetric News

新型コロナウイルス感染と産科(2)―CDCの母乳哺育に関する情報とACOGの医療勧告

著者: 武久徹

ページ範囲:P.628 - P.630

CDC

妊娠と母乳哺育

 現時点で,妊婦は一般集団に比べ,新型コロナウイルス(COVID-19)への感染機会がより多いか,感染した場合により重篤な疾患になる可能性が高いかについては不明である.

 利用できる情報に基づくと,妊婦は成人の非妊婦とリスクは同等のようである.

症例

腹腔鏡下に根治術を完遂し得たS状結腸子宮瘻の1例

著者: 伊東史学 ,   向川智英 ,   橋口康弘 ,   細川奈月 ,   杉浦敦 ,   谷口真紀子 ,   佐道俊幸 ,   喜多恒和

ページ範囲:P.631 - P.634

▶要約

 S状結腸子宮瘻は,結腸憩室炎を契機にS状結腸壁が子宮と癒着し,慢性的な炎症の結果瘻孔を形成すると考えられ,高齢者に多い1).根治的治療として,子宮摘出ならびに結腸の合併切除術が必要となるが,今回腹腔鏡下に手術を施行し得た.子宮とS状結腸は剝離しないまま合併切除し,子宮下部側は大腸用自動縫合器で切断することで,便汁の腹腔内漏出を避けることができた.近年,腹腔鏡下手術は急速に広まっているが,子宮と結腸の合併切除を行う機会は少なく,本症例のような高齢者に多い疾患には低侵襲に行うことが可能と考えられた.

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目次

ページ範囲:P.522 - P.523

バックナンバー

ページ範囲:P.635 - P.635

次号予告・奥付

ページ範囲:P.636 - P.636

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

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今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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