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連載 教訓的症例から学ぶ産婦人科診療のピットフォール
妊娠中に強い頭痛・発熱・嘔吐症状で搬送され,リンパ球性下垂体炎と診断された2症例
著者: 清水美代1 加藤淑子1 福岡正晃1
所属機関: 1済生会京都府病院産婦人科
ページ範囲:P.844 - P.849
文献購入ページに移動リンパ球性下垂体炎はリンパ球の浸潤を主体とする自己免疫性の慢性炎症性疾患である.特にリンパ球性下垂体前葉炎は女性に発症することが多く,妊娠後期や産後に発症しやすいといわれる.初発症状として下垂体腫大による頭痛や視力・視野障害が多い.しかし,そのほかにも全身倦怠感や胃腸症状などさまざまな症状が起こりうるため,診断が難しい場合がある.
確定診断には下垂体生検が必要となるが侵襲を伴うため,臨床症状,MRI,下垂体ホルモン値の低下により診断される例が多い.
今回,頭痛・発熱・嘔吐を認め救急搬送となり,下垂体炎が疑われた妊娠32週,妊娠30週の2症例を経験した.最初の症例では,治療抵抗性の強い頭痛・発熱がみられ,診断に苦慮したが,尿崩症が契機となり診断に至った.約1年後に経験した2症例目では,1症例目に比べ症状が少し軽く,初めは診断できなかったが,1症例目を経験していたことで診断に至った.
妊婦の下垂体炎は稀であるが,認識することで不要な検査や投薬を行わずに済むため,知っておくべき疾患と考えられた.
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