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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科75巻4号

2021年04月発行

文献概要

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために 周産期

Q10 マタニティ・ブルーズ,産後うつ病とはなんですか?

著者: 佐藤昌司1

所属機関: 1大分県立病院総合周産期母子医療センター

ページ範囲:P.122 - P.124

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A10

 マタニティ・ブルーズは,産後3〜10日頃に起こる“一時的な情動不安定の状態”です.主な症状は軽度の抑うつ,涙もろさ,不安あるいは集中力低下などで,特に涙もろくなることが重要なサインです.産褥の方の約30%に起こり,通常2週間ほどで症状は自然に消失するので,ほとんどの場合には治療を要しません.しかし,一部の方はその後に産後うつ病に移行したとの報告もあるので,ご自身でも念のためにその後の生活・育児の状況に注意し,ご家族の育児への協力を依頼するとともに,症状の改善に合わせて徐々に育児に向かっていくよう,また,もし2週間以上経ても症状が残っているような場合には産科医療機関に連絡していただくことをお勧めします.

 産後うつ病は,産褥期の精神障害のなかで最も多く,わが国では産褥の方の10〜15%前後に起こるとされています.主な症状は抑うつ気分,不安,焦燥,不眠などで,母親としての責務を果たせないことや,子どもや夫に対して愛情が湧いてこないことに対する自責の念,育児への不安・恐怖などを強く感じます.軽い抑うつの状態から,日常生活が何もできなくなる重症の方までさまざまですが,さらに重症になると悲観の度合いが強くなったりして危険ですので,きちんと精神科医師の診察を受けたうえで診断や治療,今後の授乳などについてお聞きいただき,ご家族にも協力していただきながら必要な治療を受けられたほうが安心です.必要に応じて,精神科,産婦人科,小児科のスタッフと保健師さん,行政の方々とも連携をとりながら子育てに臨むことが大切です.

参考文献

1)Kitamura T, et al : Arch Womens Ment Health 9 : 121-130, 2006
2)岡野禎治,他 : 精神医学33 : 1051-1058, 1991
3)Tokumitsu K, et al : Ann Gen Psychiatry 19 : 41, 2020
4)Kitamura T, et al : Br J Psychiatry 168 : 732-738, 1996
5)岡野禎治,他 : 精神科診断学7 : 525-533, 1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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