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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科76巻1号

2022年01月発行

雑誌目次

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

著者: 澤井英明 ,   平沢晃

ページ範囲:P.5 - P.5

 産婦人科医のみならずすべての医療者にとって,遺伝医療は分野横断的かつ不可欠な基盤分野といえる.日本産科婦人科学会のサブスペシャルティとしては,周産期,腫瘍,生殖・内分泌,女性ヘルスケアの4領域があるが,臨床遺伝学はこれらすべてのサブスペシャルティ領域を横断的に網羅している.

 周産期医療においては,従来,出生前診断が産婦人科領域の臨床遺伝学領域の先駆けとしてきたことから,その課題も多くある.羊水検査や絨毛検査という古典的な侵襲的検査法は依然として確定診断の重要な検査方法であるが,遺伝学的検査法はG分染法にはじまり,現在はマイクロアレイや次世代シーケンサーを用いた方法まで多様化している.また母体血清マーカー検査や母体血胎児染色体検査といった非侵襲的な方法が新たに導入され,その実施が社会的にも課題となっている.

領域共通

つまずきがちな臨床遺伝学の基本用語の解説

著者: 山田重人 ,   大瀬戸久美子

ページ範囲:P.6 - P.11

●最近,用語の使い方や用語そのものが変わったものに着目して解説した.新しい用法・用語に至った経緯をなるべく丁寧に解説するように心掛けた.

●近年,産婦人科の一般臨床に遺伝医療が浸透してきているので,正しい知識を身につける必要がある.

いま産婦人科診療で求められる遺伝カウンセリングとは

著者: 三宅秀彦

ページ範囲:P.12 - P.16

●遺伝カウンセリングは,情報提供と心理社会的支援からなる.

●遺伝医療の実践において遺伝カウンセリングは必須となるが,現在さまざまな体制整備が進められている.

●遺伝カウンセリングの実践にはトレーニングが必要である.各種学会による研修会の利用が望まれる.

産婦人科遺伝診療をめぐる倫理的課題

著者: 佐々木愛子

ページ範囲:P.17 - P.22

●基本的に,生命倫理の四大原則である①自律性(autonomy),②善行(beneficence),③無危害(non-maleficence),④公正・正義(justice)に従う.

●疾患の重篤性の解釈は,時代,社会状況,医学の進歩,医療水準,さらには判断する個人の立場によって変化しうるものである.

●自律性(autonomy)を成立させるためには,大前提として社会環境の整備が必要である.

家族歴と家系図の記載のしかた

著者: 福島明宗

ページ範囲:P.23 - P.28

●臨床において,詳細な家族歴の情報収集は必須である.

●遺伝医療において,家族歴情報を的確に記載するには家系図記載が必要である.

●メンデル遺伝病のみならず,腫瘍,生活習慣病においても家系図記載が必要である.

周産期

周産期領域で臨床遺伝学はどのように活用されているか

著者: 佐村修

ページ範囲:P.29 - P.34

●周産期管理を行ううえで,初診の段階での問診は重要であり,特に家系図の作成には臨床遺伝学的知識が必須となる.

●出生前遺伝学的検査を行う前には遺伝カウンセリングが重要である.

●胎児の超音波検査で,何らかの先天性疾患が判明したときには,超音波における所見と,臨床遺伝学の知識を利用し,クライエントに今後考えられることについて,説明する必要がある.

出生前検査の妊婦への周知

著者: 保坂千秋 ,   浜之上はるか

ページ範囲:P.35 - P.41

●出生前検査は,「妊娠中に胎児が何らかの疾患に罹患していると思われる場合に,その正確な病態を知るために」実施される.出生前検査でリスク評価が可能な疾患は,先天性疾患の一部である.

●出生前検査のニーズが高まる一方で,医療機関などからの出生前検査に関する情報発信は限定的であり,妊婦らのニーズとの乖離を生んでいる.妊婦らのニーズを踏まえ,出生前検査のあり方について議論が進んでいる.

●妊娠・出産に関する包括的な支援の一環として,妊婦およびそのパートナーが正しい情報のもと意思決定を行えるよう適切に支援すべきである.そのために,妊娠初期段階の妊婦らへ誘導とならない形で,出生前検査に関する情報を提供していくことが適切である.

●遺伝カウンセリングでは,適切な情報提供を行い,相談者が率直な気持ちを表出しやすいように配慮し,正しい知識と広い視野をもってその人らしい選択をできるように支援する.

周産期の遺伝医療において超音波検査がどのように活用されているか

著者: 花岡有為子

ページ範囲:P.42 - P.47

●周産期における超音波検査は,出生前検査となりうることや出生前検査の意義について妊婦や家族に情報提供したうえで,実施にあたっては妊婦・家族の知る権利とともに,知らないでいる権利,知りたくない権利のいずれも尊重されるよう配慮しなければならない.

●超音波検査による形態評価は,先天性に生じうる問題に対して,先を見越した妊娠・分娩,新生児管理につなげることができる.

●超音波検査を介した妊婦や家族との丁寧なコミュニケーションが遺伝カウンセリングの一形態であることを意識する.

コンバインド検査・母体血清マーカー検査の基本原理・精度と実施法

著者: 長谷川潤一 ,   本間千夏 ,   西村陽子

ページ範囲:P.48 - P.53

●スクリーニング検査は,疾患に特異的ではなくても関連する所見を見つけ出し,異常の可能性の高いハイリスクなケースをピックアップするために行われるものである.

●胎児染色体異常のスクリーニング検査には,nuchal translucencyの厚さを用いた超音波マーカー検査,母体血清の各種蛋白の濃度を用いた母体血清マーカー検査,それらを組み合わせたコンバインド検査がある.

●マーカー検査は,非確定的検査であるので,あくまで確率を推定するに過ぎない.他の出生前検査と同様に,遺伝カウンセリングを施行し,検査の精度,限界を十分に理解したうえで施行されなければならない.

NIPTの基本原理・精度と実施法

著者: 鈴森伸宏

ページ範囲:P.54 - P.61

●妊娠9〜10週以降の母体血で,胎児21・18・13トリソミーなどについて,非確定的な出生前遺伝学的検査をすることができる.

●無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal testing : NIPT)の検査結果が陽性(ハイリスク)のときは,羊水などによる確定検査が必要である.

●遺伝カウンセリングでは,偽陽性・偽陰性の可能性について,先天性疾患を出産する可能性,結果によってはさまざまな選択肢につながる場合があることについて説明が大切である.

●諸外国では,染色体微細欠失・重複などを調べるゲノムワイドNIPTが普及してきている.

羊水検査・絨毛検査の適応と実施法

著者: 三浦生子 ,   長谷川ゆり ,   三浦清徳

ページ範囲:P.62 - P.68

●羊水検査ならびに絨毛検査の前後には遺伝カウンセリングが必須であり,検査の意義,実施時期,検査精度と限界,倫理的問題,検査結果への対応などについて情報提供する.

●安全に検査を行うために,超音波検査で母体の腹壁と子宮との間に腸管がないこと,胎児心拍動,胎児発育と妊娠週数,胎児形態異常の有無,羊水量ならびに胎盤付着部位を確認し,超音波ガイド下に穿刺する.

●羊水検査は羊水中の胎児由来細胞を検査するので胎児の染色体核型を反映している.一方,絨毛検査は胎盤の染色体核型を示しており,必ずしも胎児のそれを反映しているとは限らない.

確定的出生前遺伝学的検査の具体的な解析方法と結果の解釈

著者: 佐藤智佳 ,   島田咲 ,   山田崇弘

ページ範囲:P.69 - P.75

●解析方法は染色体核型分析,PCRベースの解析,染色体マイクロアレイ,次世代シークエンサーを用いた解析などがあり,解像度や検出可能な疾患はおのおので異なる.

●目的に合致した適切な解析方法を選択し,おのおのの特徴に留意した結果の解釈が必要である.

●検査の実施に際しては,遺伝,周産期,小児,関連診療科を含めた多職種による連携が求められる.

先天異常で出生した児にどのような検査を行うか

著者: 岡本伸彦

ページ範囲:P.76 - P.81

●遺伝学的検査にあたっては,各種ガイドラインに従い,臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーによる対応が必要である.

●Dysmorphology的考察にはある程度の経験が必要である.日本小児遺伝学会ウェブサイトの「国際基準に基づく小奇形アトラスについて」が参考になる.

●染色体異常については日本人類遺伝学会臨床細胞遺伝学認定士制度のウェブサイトの「染色体異常をみつけたら」が参考になる.

腫瘍

婦人科腫瘍領域では臨床遺伝学はどのように活用されているのか

著者: 渡邉尚文

ページ範囲:P.82 - P.87

●婦人科がんはがん腫および組織型において特徴のある遺伝子異常を認め,他がん種と比較して遺伝性腫瘍の割合が高い.

●婦人科がんにおける体細胞を対象としたゲノム検査は遺伝性腫瘍の情報を含むため,あらかじめ遺伝カウンセリング体制を構築しておく必要がある.

●日本における全ゲノム解析は,新規治療法の開発や個別化医療の推進などを目的に,がん(遺伝性腫瘍を含む)や難病を対象に国家プロジェクトとして行われている.

HBOCに対応するための知識―遺伝性疾患としての病態,診断法,治療ないし対応法と説明の際の留意点

著者: 西野幸治 ,   関根正幸 ,   榎本隆之

ページ範囲:P.88 - P.95

●卵巣がんの約15%は遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)である.HBOCを診断することのベネフィットは大きく,卵巣がん全例に対してBRCA遺伝学的検査の実施を考慮すべきである.

●HBOCは,診断法や病的バリアント保持者に対する対応(サーベイランス・リスク低減手術など)が定まっている数少ない遺伝性疾患の1つである.

●HBOCを診断することは,発端者へのPARP阻害薬による治療のみならず,家系員のバリアント保持者の診断やサーベイランス・リスク低減手術の提供を可能とし,健康維持に大きく貢献する.

Lynch症候群に対応するための知識―遺伝性疾患としての病態,診断法,治療ないし対応法と説明の際の留意点

著者: 志鎌あゆみ

ページ範囲:P.96 - P.103

●Lynch症候群は,DNAミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞病的バリアントに起因し,大腸がんや子宮体がんの生涯罹患リスクが高い常染色体優性(顕性)遺伝性腫瘍である.

MSH6病的バリアントでは,特に子宮体がんの罹患リスクが高いなど,病的バリアントを有する遺伝子の種類により,がん罹患リスクが異なる.

●子宮体がんの約3%がLynch症候群であるが,臨床像からLynch症候群を推定することが困難であるため,全子宮体がん患者に対し,腫瘍組織を用いたMSI検査やMMR蛋白の免疫組織化学染色による評価を行うユニバーサルスクリーニングが提案されている.

Peutz-Jeghers症候群およびCowden症候群についての必修知識

著者: 小林佑介

ページ範囲:P.104 - P.110

●Peutz-Jeghers症候群は,がん抑制遺伝子STK11/LKB1を原因遺伝子とし,消化管の過誤腫性ポリポーシスと粘膜皮膚色素沈着が特徴であり,子宮頸がんを引き起こすことがある.

●Cowden症候群は,がん抑制遺伝子PTENを原因遺伝子とし,消化管ポリポーシス,皮膚粘膜病変,精神症状を呈することが特徴で,子宮体がん,乳がん,甲状腺がん,大腸がん,腎細胞がんが発生しやすい.

●Peutz-Jeghers症候群やCowden症候群など稀な遺伝性腫瘍を見逃さないためにも,日常診療において遺伝性疾患を意識した外表観察や,既往歴や家族歴に関する十分な問診が重要である.

がんゲノム医療とgermline findingsの取り扱い

著者: 小川千加子 ,   増山寿 ,   平沢晃

ページ範囲:P.111 - P.118

●がんに関連する生殖細胞系列の遺伝情報は,本人の治療だけでなく,本人の次なるがんへの対策や,未発症を含む血縁者のがん予防につながる重要な情報である.

●婦人科領域では他がん種に比べ,germline findingsが比較的高率に検出される.遺伝性乳がん卵巣がんとLynch症候群が多いが,それ以外の遺伝性腫瘍もある.

●がんゲノムプロファイリング検査で開示すべきgermline findingsが見出されなかったとしても,遺伝性疾患が除外できたわけではないことに留意する.

コンパニオン診断の婦人科実地臨床での活用

著者: 織田克利

ページ範囲:P.119 - P.124

●Germline(生殖細胞系列)BRCA1/2病的バリアントのみでなく,somatic(体細胞)BRCA1/2病的バリアントも,PARP阻害薬のコンパニオン診断としての評価対象に含まれる.

●相同組換修復欠損の有無を判定するためのコンパニオン診断として,myChoiceTM診断システムが承認され,BRCA1/2病的バリアントに加え,genomic instabilityスコアも判定が可能となった.

●FoundationOne® CDxがんゲノムプロファイルのコンパニオン診断機能の1つとして,マイクロサテライト不安定性(MSI)-Highが追加された.

婦人科関連遺伝性腫瘍に関する国内外ガイドラインの最新事情

著者: 植木有紗

ページ範囲:P.125 - P.130

●ガイドラインとは,最新かつ最善の治療法を常時把握し続けることを補助する目的のツールであるが,強制力はない.

●がん種ごと,あるいは遺伝性腫瘍ごとに策定されているガイドラインを,目的に応じて利活用するべきである.

●ガイドラインは随時改訂されるため,常に最新のガイドラインを参考にした知識のアップデートが必須である.

生殖

生殖医療では臨床遺伝学はどのように活用されているのか

著者: 片桐由起子 ,   林裕子 ,   玉置優子

ページ範囲:P.131 - P.135

●生殖補助医療(ART)により生殖医療と遺伝医療が密接に関係するようになった.

●ARTには遺伝学的課題が存在している.

●ART実施に先立った,生殖医療の遺伝学的課題の情報提供や,必要に応じた遺伝カウンセリングの実施が必要である.

単一遺伝子疾患に対する着床前遺伝学的検査(PGT-M)の実際

著者: 中岡義晴

ページ範囲:P.136 - P.142

●PGT-Mは日本産科婦人科学会(日産婦)が症例の重篤性を判断して,承認された症例のみに実施されている.

●体外受精技術や遺伝子解析法の進歩,さらに遺伝に関する考えや社会状況の大きな変化などから,日産婦はPGT-Mの適応と実施方法について変更を予定している.

●遺伝子解析の外部委託により,生殖医療専門施設などのPGT-M実施施設数は増加し,患者のアクセスが容易になってきている.

不妊症に対する着床前遺伝学的検査の実際

著者: 桑原章

ページ範囲:P.143 - P.147

●PGT-A(PGT-SR併用)を行うと,移植あたり妊娠率(着床率)と移植あたりの流産率を改善することができる.

●移植可能胚が得られた周期あたりの臨床妊娠率,生児獲得率に影響はないが,一定期間あたりの累積妊娠率に貢献できる可能性がある.

●反復流産例,高齢の夫婦などで流産回避,あるいは早期妊娠成立を目的とするPGT-Aを行う場合は,慎重な事前説明と結果解釈が重要である.

不育症に染色体・遺伝子の異常がどのようにかかわっているのか

著者: 小澤伸晃

ページ範囲:P.148 - P.154

●自然流産に至る最大の原因は染色体異常であり,不育症のマネジメントのために流産染色体検査は重要である.

●夫婦染色体検査では,検査前の遺伝カウンセリングが重要であり,異常が検出された際には生殖への影響や治療の可能性について十分な情報提供を行う.

●PGT-SRやPGT-Aの施行前には,自然妊娠予後との比較など現時点でのエビデンスに基づいた適切な遺伝カウンセリングが必要である.

着床前遺伝学的検査での具体的な解析方法と結果の解釈

著者: 古俣知里 ,   加藤武馬 ,   倉橋浩樹

ページ範囲:P.155 - P.161

●着床前遺伝学的検査は,胚盤胞生検で栄養外胚葉細胞を5〜10細胞採取するようになり精度が向上した.

●着床前胚染色体異数体検査と重篤な遺伝性疾患を対象とした着床前遺伝学的検査とでは全ゲノム増幅法が大きく異なる.

●検査精度,結果の解釈,モザイク胚の移植など複雑な問題があり,検査前・検査後遺伝カウンセリングが重要である.

男性不妊症に対応するための遺伝学の知識と遺伝カウンセリング

著者: 市川智彦 ,   宇津野恵美 ,   高橋敬一

ページ範囲:P.162 - P.168

●無精子症を呈する疾患には,クラインフェルター症候群,Y染色体微小欠失,先天性両側精管欠損症,低ゴナドトロピン性性腺機能低下症,XX男性などがある.

●Y染色体上のAZFc領域の欠失を呈する無精子症では精巣内精子を回収できる可能性が高いが,欠失が男児に受け継がれ同様の表現型を示すと考えられる.

●生殖補助医療により男性不妊症の原因となる病態が何らかの形で児に引き継がれる可能性があり,遺伝学の知識とともに適切な遺伝カウンセリングのスキルが求められる.

女性医学

女性医学で活用される臨床遺伝学

著者: 白土なほ子

ページ範囲:P.169 - P.173

●女性医学では性分化疾患,原発性無月経などの思春期発来異常,性別違和,各種代謝異常症などにおいて臨床遺伝と関連した診療が行われる.

●月経随伴症状を伴う器質的疾患,がんサバイバーの診療などにおいて,新たに遺伝医学との接点が生じてきている.

●女性医学の分野ではさまざまなライフステージにおいて遺伝的・環境的・心理社会的要因に目を向けて継続的に診療を行うことが重要である.

症例

診断が困難であった妊娠初期の腹腔内出血に対し腹腔鏡手術を施行した症例

著者: 清水美代 ,   田村祐子 ,   渡邉愛 ,   加藤淑子 ,   福岡正晃

ページ範囲:P.175 - P.178

▶要旨

 妊娠初期の急性腹症の原因として,異所性妊娠,子宮付属器腫瘍の捻転や破裂,流産などが考えられる.今回,妊娠初期の急性腹症に対し腹腔鏡手術を行った症例を経験した.患者は多量の腹腔内出血を発症しており,腹腔鏡により性交による後腹膜の裂創からの出血であると推測された.その後,子宮内に胎囊を確認し,妊娠経過は問題なく出産に至った.妊娠初期の腹痛,腹腔内出血の診断に苦慮することは時に経験するが,さまざまな可能性を考慮しなければならないこと,手術の必要性,タイミングについてもあらためて考えさせられた.

連載 Obstetric News

40歳以降の女性に対する適切な避妊法 : ホルモン避妊製剤を何歳で中止できるか?―米国産婦人科学会

著者: 武久徹

ページ範囲:P.179 - P.180

 健康かつ非喫煙で,心臓血管疾患に対する特有の危険因子〔35歳以上,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism : VTE)往歴,血栓形成傾向,不動状態,分娩時輸血,肥満指数30以上,分娩後多量出血,帝王切開後,子癇前症または喫煙・避妊に関する米国医療適格基準(The United States Medical Eligibility Criteria : USMEC)〕がない女性は,55歳まで配合型ホルモン避妊製剤の使用を継続することができる(表1).

 心臓血管疾患を含め多くの慢性的医学状態に対し,年齢は重要な危険因子であるが,年齢だけにもとづくホルモン避妊製剤の使用禁忌はない.避妊方法の使用中止を決定する場合,年をとるにつれて妊娠のリスクが減少することを考慮したうえで避妊と避妊以外の有益な効果を調べなければならない.

前兆がある片頭痛がある女性に対する閉経ホルモン療法

著者: 武久徹

ページ範囲:P.181 - P.184

 片頭痛の有病率は男性より女性において著しく高い.女性片頭痛はしばしば初経時に始まるが,中年期に有病率がピークに達し,30歳代女性の約1/3は片頭痛診断基準を満たしている.片頭痛は中等度から高度の拍動性の頭痛または頭部の片側が悪化し,通常は身体活動でさらに悪化する拍動性疼痛として現れる.片頭痛に関する国際頭痛学会(IHS)の診断基準は,この特徴の少なくとも5回の発作歴,各発作は4〜72時間(治療した場合はより短くなる可能性がある),音過敏,光過敏,そして吐き気そして/または嘔吐の症状の少なくとも1つを含む.

 ホルモン療法は下降するエストロゲン・レベルを軽減させるために閉経前女性または閉経周辺期女性においてホルモン療法を使用することができる.

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目次

ページ範囲:P.2 - P.3

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.188 - P.188

バックナンバー

ページ範囲:P.189 - P.189

次号予告・奥付

ページ範囲:P.190 - P.190

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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バックナンバー

76巻12号(2022年12月発行)

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

76巻11号(2022年11月発行)

今月の臨床 生殖医療の安全性―どんなリスクと留意点があるのか?

76巻10号(2022年10月発行)

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

76巻9号(2022年9月発行)

今月の臨床 胎児発育のすべて―FGRから巨大児まで

76巻8号(2022年8月発行)

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて

76巻7号(2022年7月発行)

今月の臨床 子宮内膜症の最新知識―この1冊で重要ポイントを網羅する

76巻6号(2022年6月発行)

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって

76巻5号(2022年5月発行)

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76巻4号(2022年4月発行)

増刊号 最新の不妊診療がわかる!―生殖補助医療を中心とした新たな治療体系

76巻3号(2022年4月発行)

今月の臨床 がん遺伝子検査に基づく婦人科がん治療―最前線のレジメン選択法を理解する

76巻2号(2022年3月発行)

今月の臨床 妊娠初期の経過異常とその対処―流産・異所性妊娠・絨毛性疾患の診断と治療

76巻1号(2022年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科医が知っておきたい臨床遺伝学のすべて

75巻12号(2021年12月発行)

今月の臨床 プレコンセプションケアにどう取り組むか―いつ,誰に,何をする?

75巻11号(2021年11月発行)

今月の臨床 月経異常に対するホルモン療法を極める!―最新エビデンスと処方の実際

75巻10号(2021年10月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅱ)―分娩時・産褥期の処置・手術

75巻9号(2021年9月発行)

今月の臨床 産科手術を極める(Ⅰ)―妊娠中の処置・手術

75巻8号(2021年8月発行)

今月の臨床 エキスパートに聞く 耐性菌と院内感染―産婦人科医に必要な基礎知識

75巻7号(2021年7月発行)

今月の臨床 専攻医必携! 術中・術後トラブル対処法―予期せぬ合併症で慌てないために

75巻6号(2021年6月発行)

今月の臨床 大規模災害時の周産期医療―災害に負けない準備と対応

75巻5号(2021年5月発行)

今月の臨床 頸管熟化と子宮収縮の徹底理解!―安全な分娩誘発・計画分娩のために

75巻4号(2021年4月発行)

増刊号 産婦人科患者説明ガイド―納得・満足を引き出すために

75巻3号(2021年4月発行)

今月の臨床 女性のライフステージごとのホルモン療法―この1冊ですべてを網羅する

75巻2号(2021年3月発行)

今月の臨床 妊娠・分娩時の薬物治療―最新の使い方は? 留意点は?

75巻1号(2021年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 生殖医療の基礎知識アップデート―患者説明に役立つ最新エビデンス・最新データ

74巻12号(2020年12月発行)

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74巻11号(2020年11月発行)

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74巻10号(2020年10月発行)

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74巻9号(2020年9月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅱ)―母体合併症の影響は? 新生児スクリーニングはどうする?

74巻8号(2020年8月発行)

今月の臨床 産婦人科医に最低限必要な正期産新生児管理の最新知識(Ⅰ)―どんなときに小児科の応援を呼ぶ?

74巻7号(2020年7月発行)

今月の臨床 若年女性診療の「こんなとき」どうする?―多彩でデリケートな健康課題への処方箋

74巻6号(2020年6月発行)

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74巻4号(2020年4月発行)

増刊号 産婦人科処方のすべて2020―症例に応じた実践マニュアル

74巻3号(2020年4月発行)

今月の臨床 徹底解説! 卵巣がんの最新治療―複雑化する治療を整理する

74巻2号(2020年3月発行)

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74巻1号(2020年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 周産期超音波検査バイブル―エキスパートに学ぶ技術と知識のエッセンス

73巻12号(2019年12月発行)

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73巻11号(2019年11月発行)

今月の臨床 基本手術手技の習得・指導ガイダンス―専攻医修了要件をどのように満たすか?〈特別付録web動画〉

73巻10号(2019年10月発行)

今月の臨床 進化する子宮筋腫診療―診断から最新治療・合併症まで

73巻9号(2019年9月発行)

今月の臨床 産科危機的出血のベストマネジメント―知っておくべき最新の対応策

73巻8号(2019年8月発行)

今月の臨床 産婦人科で漢方を使いこなす!―漢方診療の新しい潮流をふまえて

73巻7号(2019年7月発行)

今月の臨床 卵巣刺激・排卵誘発のすべて―どんな症例に,どのように行うのか

73巻6号(2019年6月発行)

今月の臨床 多胎管理のここがポイント―TTTSとその周辺

73巻5号(2019年5月発行)

今月の臨床 妊婦の腫瘍性疾患の管理―見つけたらどう対応するか

73巻4号(2019年4月発行)

増刊号 産婦人科救急・当直対応マニュアル

73巻3号(2019年4月発行)

今月の臨床 いまさら聞けない 体外受精法と胚培養の基礎知識

73巻2号(2019年3月発行)

今月の臨床 NIPT新時代の幕開け―検査の実際と将来展望

73巻1号(2019年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 エキスパートに学ぶ 女性骨盤底疾患のすべて

72巻12号(2018年12月発行)

今月の臨床 女性のアンチエイジング─老化のメカニズムから予防・対処法まで

72巻11号(2018年11月発行)

今月の臨床 男性不妊アップデート─ARTをする前に知っておきたい基礎知識

72巻10号(2018年10月発行)

今月の臨床 糖代謝異常合併妊娠のベストマネジメント─成因から管理法,母児の予後まで

72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

今月の臨床 完全マスター! 妊娠高血圧症候群─PIHからHDPへ

72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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