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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科76巻10号

2022年10月発行

雑誌目次

今月の臨床 女性医学から読み解くメタボリック症候群―専門医のための必須知識

女性のライフステージにおけるメタボリック症候群

著者: 澤田健二郎

ページ範囲:P.938 - P.949

●内臓脂肪型肥満に加えて,糖尿病,高血圧,脂質異常症の動脈硬化リスクが2つ以上重なった状態を,メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)と定義し,リスクが重なると心疾患と脳血管疾患の発症リスクが上昇する.

●女性の5人に1人が,メタボリック症候群が強く疑われる者または予備群である.

●女性の場合,閉経によるエストロゲン減少を機に肥満,糖尿病,高血圧,脂質異常症の発症頻度が上昇する.

女性ホルモンとの関係

内臓脂肪型肥満に対する女性ホルモンの影響

著者: 小林範子

ページ範囲:P.950 - P.957

●閉経後は,エストロゲンの減少によりSHBG産生が低下してテストステロン優勢となり,内臓脂肪が増加する.

●エストロゲンは脂肪分解を促進し,脂肪蓄積を抑制する作用がある.

●エストロゲンの脂肪分解,合成の機序にはLPL,PPARγなど,さまざまな因子の関連がみられる.

脂質代謝に対する女性ホルモンの影響

著者: 篠原康一

ページ範囲:P.958 - P.964

●産婦人科医全体として心血管疾患の予防医学の観点からの認識は低いが,更年期を専門とする産婦人科医のほうが脂質管理に対する介入頻度が多い.産婦人科医全体として脂質への関心も改善していることを期待する.

●エストロゲンと脂質代謝 : 閉経後のトリグリセライド(TG)の増加により,small dense LDLは活性酸素に容易に酸化されやすい超悪玉のLDLになっている.閉経後は内臓脂肪型肥満が増加するため,内臓脂肪の蓄積に伴い分泌された遊離脂肪酸は門脈から肝臓に流入し,肝内でのTG合成を亢進してVLDL分泌を増加させる.したがって,閉経後のTG上昇は内臓脂肪の増加と関連する可能性がある.

●閉経後脂質異常症に対するエストロゲンによる治療 : 更年期症状がある場合にはホルモン補充療法(HRT)が適応となるので,HRTの禁忌でない症例には生活習慣の改善に加え,HRTの脂質代謝改善効果に期待して3〜6か月間施行する.「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」の管理目標値に到達していなければ,HRTにスタチンやフィブラート系薬などを追加する.経口・経皮・エストロゲンの種類や用量に注意が必要である.またHRTの薬剤選択にあたっては,薬剤の特徴を十分理解したうえで,年齢やHRTの目的および合併症を考慮して投与薬剤,投与量,投与ルートを決めることが重要である.

糖代謝に対する女性ホルモンの影響

著者: 岡野浩哉

ページ範囲:P.965 - P.974

●閉経により内臓脂肪の蓄積を含む上半身型肥満が増加し,過去1〜2か月の糖代謝状況を反映するHbA1cが増加することが,わが国の統計からも明らかである.

●エストロゲンはさまざまな組織・臓器でエネルギー恒常性と糖代謝の制御に重要な役割を担っているため,その欠乏は2型糖尿病の素因となる代謝機能障害を促進する.

●閉経後エストロゲン補充は,エネルギー恒常性を促進し,炎症を軽減し,体脂肪分布・インスリン抵抗性・膵β細胞機能を改善することから,糖代謝改善および糖尿病発症予防効果を示す.

血圧の変動に対する女性ホルモンの影響

著者: 北島道夫

ページ範囲:P.975 - P.980

●月経を有する性成熟期女性は男性よりも血圧が低く,閉経後女性は血圧が上昇傾向に転じ,男性と比較して高血圧症の発症頻度が上昇する.

●血圧調節には短期的調節と長期的調節があり,女性ホルモンはいずれの機序にも影響を与え,女性ホルモンの変動は高血圧症の発症に関連している.

●ホルモン療法が血圧調節に与える影響は合成ホルモンの薬理作用の相違や併用製剤の相互作用により異なる.

動脈硬化に対する女性ホルモンの影響

著者: 山田容子

ページ範囲:P.981 - P.986

●エストロゲンは動脈硬化に対して保護的に働く.

●閉経後は,女性も動脈硬化性疾患の発症が増加するため,閉経後の女性は男性と同じように動脈硬化のリスクマネジメントを行う必要がある

●閉経後女性に対する,脂質異常症,高血圧症,糖尿病の治療は動脈硬化性疾患の発症予防に効果がある.

疾患・分野別編

PCOSとメタボリック症候群

著者: 髙橋俊文 ,   大越千弘 ,   神保正利

ページ範囲:P.987 - P.992

●PCOSの病態にはインスリン抵抗性が関与し,肥満,糖・脂質代謝異常,高血圧などの合併頻度が高い.

●PCOS女性は非PCOS女性と比べメタボリック症候群の発症リスクが2〜2.88倍と高く,有病率が33〜47%と高率である.

●医師はPCOS女性がライフステージを通じてメタボリック症候群の発症リスクが高いという認識をもち,体重・血圧測定,生化学(脂質,血糖など)検査を行うべきである.

妊娠糖尿病とメタボリック症候群

著者: 柳沢慶香

ページ範囲:P.993 - P.999

●妊娠中にメタボリック症候群が認められた女性では,妊娠糖尿病の発症頻度が高い可能性がある.

●妊娠糖尿病既往女性は既往のない女性に比べ,分娩後のメタボリック症候群の発症頻度が高い.その予測因子として,妊娠中の空腹時血糖値,妊娠前の肥満などが報告されている.

●妊娠糖尿病から出生した児は,小児期よりすでにメタボリック症候群のリスクが高く,それは成長後も継続している可能性がある.

妊娠高血圧症候群とメタボリック症候群

著者: 増山寿

ページ範囲:P.1000 - P.1005

●妊娠高血圧症候群(HDP)は,母体は早産,子癇,常位胎盤早期剝離など,児は胎児発育不全(FGR)を合併しやすい重要な周産期疾患である.

●HDP罹患女性は将来メタボリック症候群や心血管疾患の発症リスクが上昇することが知られている.

●HDP罹患母体から出生した児も,将来メタボリック症候群や心血管疾患発症リスクが高いと報告されており,継続的なフォローアップ体制の構築が必要である.

子宮筋腫とメタボリック症候群

著者: 武田卓

ページ範囲:P.1006 - P.1010

●メタボリック症候群と子宮筋腫との関連性が多くの疫学研究から報告されている.

●レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系は子宮筋腫治療の新しい標的となりえる.

●女性ヘルスケアの視点からは,子宮筋腫管理において,メタボリック症候群に対する長期的な対応も必要である.

子宮内膜症とメタボリック症候群

著者: 前田英子 ,   森泰輔

ページ範囲:P.1011 - P.1016

●子宮内膜症はBMIと逆相関し,痩せ型において子宮内膜症の発症率や重症度が高いことが示されている.

●子宮内膜症では特に閉経前の女性において非子宮内膜症女性に比して心血管疾患の発症リスクが高く,さらに将来の心血管疾患のリスクも増加させる.

●子宮内膜症の炎症部位では,サイトカインやCRPが生成され活性酸素が増加し酸化ストレスが亢進し,血管内皮障害や動脈硬化の発症に寄与していると考えられる.

がん治療によるメタボリック症候群への影響―肥満・脂質異常・心血管疾患・糖尿病を中心に

著者: 佐々木浩

ページ範囲:P.1017 - P.1021

●がん患者は手術・化学療法・放射線治療の影響とともに生活習慣も変化することからメタボリック症候群になりやすい.

●外科的閉経は肥満・脂質異常・心血管疾患・糖尿病におけるリスクファクターとなる.

●がん治療後も長期的な健康管理を行うことは重要である.

最新治療編

脂質異常症に対する最新治療

著者: 小川真里子 ,   橋本志歩 ,   髙松潔

ページ範囲:P.1022 - P.1027

●心血管疾患の予防として,高LDL-C血症の管理が重要であるが,高LDL-C血症の治療に第一選択として広く用いられるスタチンは,特に女性において筋肉の副作用をきたしやすいといわれる.

●スタチン以外の高LDL-C血症治療薬のなかで,PCSK9阻害薬は,高いLDL-C低下作用をもち,スタチンとの併用も可能であることから,高リスクでスタチンが無効な患者への治療薬として注目されている.

●近年,高血圧などの生活習慣病に対するワクチンが開発されているが,脂質異常症に対してはPCSK9を標的としたワクチンなどが開発され,臨床における実用化が待たれている.

肥満に対する最新治療―抗肥満薬の現状と未来

著者: 上野浩晶

ページ範囲:P.1028 - P.1034

●内因性の摂食調節ペプチドを応用した抗肥満薬が多数開発中である.

●半減期を長くした週1回投与製剤や,皮下注射ではなく経口投与が可能な製剤も開発されている.

●複数の摂食調節ペプチドの構造を併せ持ち,より強力な摂食抑制作用を示す薬剤も臨床応用されつつある.

症例

子宮全摘後に後腹膜に再発を繰り返した悪性度不明な子宮平滑筋腫瘍の1例

著者: 山本文子 ,   山本直 ,   高木みか ,   西村弘 ,   柳田恵理子 ,   村山寿彦

ページ範囲:P.1035 - P.1040

▶要旨

 症例は84歳.63歳時に子宮筋腫の診断にて腟式子宮全摘術,79歳時にも開腹で子宮筋腫摘出術が施行されていた.今回,骨盤内腫瘤にて紹介となり,摘出術を施行したところ,後腹膜から発生した腫瘍であり,当初mitotically active leiomyomaと考えたが,臨床経過と病理組織像の再検討により,悪性度不明な子宮平滑筋腫瘍(uterine smooth muscle tumor of uncertain malignant potential : STUMP)と診断した.また,今回の腫瘍がSTUMPと診断されたことで,79歳時の腫瘍もSTUMPの範疇に入ると考えられた.今回,79歳時の画像や病理組織像も検討することで,STUMPを経時的に追跡することができた.

 STUMPは,平滑筋腫と平滑筋肉腫の間にあるさまざまに異なる生物学的特性を示す腫瘍の集合体であるが,症例数が少なく,病理診断も容易ではない.病理診断医への十分な臨床情報の提供が不可欠であり,臨床病理学的に総合的に判断することが重要である.病態や臨床像も多様で不明な点が多いが,1例1例の症例の積み重ねによって徐々に解明されていくことが期待される.

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目次

ページ範囲:P.934 - P.935

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.1044 - P.1044

バックナンバー

ページ範囲:P.1045 - P.1045

次号予告・奥付

ページ範囲:P.1046 - P.1046

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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