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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科76巻12号

2022年12月発行

雑誌目次

今月の臨床 帝王切開分娩のすべて―この1冊でわかるNew Normal Standard

帝王切開の歴史

著者: 亀井良政

ページ範囲:P.1168 - P.1173

はじめに

 本稿執筆を受諾するに際しては,私の勤務地の近隣に本邦の帝王切開術発祥の地があること,私の上司であった石原理前埼玉医科大学教授のご尊父で大学同窓会の大先輩でもおられた故・石原力先生が,わが国における産婦人科医学史研究の第一人者でおられたこと,が大きな理由である.本稿を上梓するにあたっては,故石原力先生の「帝王切開の歴史」1)によるところが非常に大きい.

帝王切開手術の準備

TOLACの適応と成功に関与する諸因子

著者: 小林康祐

ページ範囲:P.1174 - P.1179

●ERCDに比して,TOLACを行うメリットは大きいと思われる.

●しかし,TOLACの最大のリスクは子宮破裂であり,発症した際の母児への影響が大きいのも事実である.

●TOLAC施行に際しては,「第4回 産科医療補償制度 再発防止に関する報告書」の提言や『産婦人科診療ガイドライン―産科編2020』を踏まえ,医療者側の組織体制も十分考慮した管理を心がけるべきである.

選択的帝王切開分娩の至適時期―新生児呼吸障害

著者: 村越毅

ページ範囲:P.1180 - P.1183

●帝王切開における新生児呼吸障害(新生児一過性多呼吸もしくは呼吸窮迫症候群)の発生率は妊娠週数が進むほど減少する.

●前期破水もしくは陣痛発来などにて帝王切開予定日前に緊急帝王切開となる頻度は妊娠週数が進むと増加する.

●これらを鑑みて各施設ごとの診療体制・水準を総合的に判断し娩出時期を決定するが,妊娠38〜39週が推奨される.

●妊娠37週で選択的帝王切開を予定する場合は,新生児呼吸障害に対応できる準備が必要である.

術式の工夫

開腹時の工夫―膀胱損傷を防ぐために

著者: 鷹野夏子 ,   亀井良政

ページ範囲:P.1184 - P.1187

●膀胱損傷のリスク因子について理解し,リスクのある症例では意識と工夫をすることで,損傷を防げる可能性がある.

●膀胱損傷を生じた場合には,術中に発見修復することが重要であり,膀胱損傷が少しでも疑われる場合には膀胱内にインジゴカルミンを注入するなどして術中に診断をつける.

子宮筋層の切開法―切開部位・切開方法と胎児損傷回避の方策

著者: 野田佳照 ,   関谷隆夫

ページ範囲:P.1188 - P.1195

●子宮切開法の種類とバリエーションを理解する.

●標準術式としての子宮下部横切開法の意義と,切開の3つのポイントを理解する.

●胎児損傷を回避するための方策を理解する.

子宮筋層縫合術の工夫―縫合不全・瘢痕部菲薄化の予防のために

著者: 小谷友美 ,   牛田貴文

ページ範囲:P.1196 - P.1201

●伸展した子宮壁の縫合では菲薄化リスクが高いことを認識する.

●脱落膜には針をかけ,脱落膜を創部に陥入させないようにする.

●創部の厚みの違いを認識し,薄く広がる足側の運針に留意する.

●barbed suture糸による無結紮法が普及しつつある.

皮膚縫合の工夫

著者: 小川令

ページ範囲:P.1202 - P.1206

●手術部位感染(SSI)の原因として多いのは,脂肪層を大きく強く糸で締めすぎることにより,壊死組織が生じることである.

●ケロイド・肥厚性瘢痕は,真皮網状層の慢性炎症であり,真皮にかかる張力で悪化するため,真皮縫合よりも筋膜や皮下の縫合が大切である.

●ケロイド・肥厚性瘢痕を発症したら,直ちに副腎皮質ホルモンテープ剤を使用する.

早産児帝王切開の工夫―幸帽児(被膜児)娩出の工夫

著者: 江良澄子

ページ範囲:P.1207 - P.1209

●早産児帝王切開において,破膜せずに娩出させる幸帽児分娩は,児への損傷回避に有用である.

●早産期の厚みのある子宮を切開し展開するのは困難なため,子宮筋層を弛緩させるためにミリスロール®を投与する.

●児への損傷回避のため,早産期の小さい子宮にある程度距離をとって子宮切開する必要がある.体下部のU字,L字,J字切開という方法がある.

前置癒着胎盤の帝王切開・Cesarean hysterectomy

著者: 西島浩二

ページ範囲:P.1211 - P.1220

●前置癒着胎盤に帝王切開を行う際は,事前に関連部署と患者情報を共有し,輸血ができる体制,子宮摘出に移行できる体制を整える.

●子宮底部横切開法は適応が限られた術式であるが,従来の手術法で対処しきれない症例に遭遇した際には有効な帝王切開法となる.

●cesarean hysterectomyを行う際は,妊娠子宮の特徴を理解し,尿管損傷に注意しながら,挟鉗・切断・結紮の操作を確実に行う.

帝王切開創部縫合時における浅筋膜の構造と見つけ方

著者: 草開妙 ,   谷村悟

ページ範囲:P.1221 - P.1226

●ケロイド・肥厚性瘢痕を予防するために浅筋膜縫合による減張の有用性が示唆されている.

●皮下には脂肪だけでなく,浅筋膜を中心とした線維構造の立体的かつ機能的なネットワークが構築されている.

●皮下組織の2つの脂肪層を見分け,その間に引き込まれている浅筋膜を同定して縫合を行う.

術前・術中管理

帝王切開分娩の食事・飲水制限と輸液

著者: 疋田陽子 ,   岡田尚子

ページ範囲:P.1227 - P.1232

●妊産婦はその消化器系解剖学・生理学的変化により胃内容逆流が起こりやすく,誤嚥予防に配慮する必要がある.

●いかなる分娩も緊急帝王切開の可能性がある.経口摂取制限は,分娩の状況,妊産婦の合併症,区域麻酔不成功のリスクなどを総合的に判断して決定する.

●帝王切開では術中のみならず回復まで見越した輸液管理が求められる.麻酔後低血圧を予防しつつ,過剰輸液も避けなければならない.

硬膜外無痛分娩中の緊急帝王切開分娩の麻酔

著者: 細川幸希

ページ範囲:P.1233 - P.1238

●硬膜外無痛分娩から緊急帝王切開分娩へ移行する際の麻酔は,麻酔科医が不在の状況では脊髄クモ膜下麻酔が望ましい.

●硬膜外無痛分娩中のクモ膜下穿刺は通常より難易度が高まる.

●硬膜外無痛分娩中の脊髄クモ膜下麻酔は,麻酔高が予想以上に高位におよぶ可能性があり注意を要する.

●上記を回避するため,無痛分娩中は多量の局所麻酔薬の硬膜外投与を行わず,脊髄クモ膜下麻酔実施前の30分間は硬膜外腔への薬剤投与を避ける.

術中・術後の子宮収縮薬の投与方法

著者: 日向俊輔

ページ範囲:P.1239 - P.1245

●子宮収縮薬には副作用も多く,漫然と投与せず過不足ない適正な量の投与に努める.

●子宮収縮薬の適正使用に関する国際的コンセンサスステートメントを活用する.

●弛緩出血が持続する場合には,「産科危機的出血への対応指針2022」に沿って集学的治療を行う.

死線期帝王切開術の国内の実施状況

著者: 今井紀昭 ,   齋藤彩 ,   石川源 ,   室月淳

ページ範囲:P.1246 - P.1252

●妊婦の心肺蘇生は,妊娠20週以降であれば子宮左方移動を行いながら一般成人と同様に行い,無効であれば早急に死線期帝王切開を行うよう努力する.

●国内で行われた19例の死線期帝王切開を検討したところ,蘇生成功率68%,生存率42%と海外の報告と比べ遜色ない結果であった.

●死線期帝王切開をいつでもできるように,日頃から関係部署と協力しシミュレーションなどを行い,準備しておく必要がある.

死戦期帝王切開術における心肺蘇生―麻酔科の立場から

著者: 加藤里絵

ページ範囲:P.1253 - P.1260

●まずは自己心拍再開を目指す.死戦期帝王切開術は自己心拍再開のための蘇生処置の1つである.

●自己心拍再開だけでは心停止患者を救命することはできない.心停止に至った原因の是正が必要である.

●自己心拍再開後の凝固障害を伴う産後大量出血に備える.

●妊婦の心肺蘇生の特徴(死戦期帝王切開術,妊産婦に一般的な心停止の原因,自己心拍再開後の大量出血)を,多部署からなる蘇生チームで共有する.

術後の長期合併症の管理

帝王切開瘢痕症候群の病態と治療

著者: 谷村悟

ページ範囲:P.1261 - P.1267

●2022年4月から帝王切開瘢痕症候群に対する腹腔鏡下子宮瘢痕部修復術が保険収載された.対象は帝王切開創子宮瘢痕部を原因とする続発性不妊症・過長月経・器質性月経困難症である.

●症状の特徴は通常の月経終了後に少量の不正子宮出血が持続することである.診断には排卵期の超音波検査により陥凹部の液体貯留と,液体が血液であることを確認する必要がある.

●病態として子宮内膜症,腺筋症の関与が疑われる.

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目次

ページ範囲:P.1164 - P.1165

次号予告・奥付

ページ範囲:P.1270 - P.1270

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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