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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科76巻5号

2022年05月発行

雑誌目次

今月の臨床 妊娠時の栄養とマイナートラブル豆知識―妊娠生活を快適に過ごすアドバイス 妊婦と栄養

葉酸・マルチビタミンの妊娠中の利点

著者: 中井章人

ページ範囲:P.410 - P.415

●葉酸やビタミンB6,B12はすべての細胞分裂・分化に必須で,妊娠の成立,胎盤の形成,児の発育に重要な役割を果たす.

●葉酸などの不足は,ホモシステインの蓄積をまねき,胎盤血管内皮障害から胎盤関連産科合併症(妊娠高血圧腎症,常位胎盤早期剝離,死産,早産など)を引き起こす.

●すべての妊娠期間を通じた葉酸とビタミンB6,B12の摂取が胎盤関連産科合併症の発症リスクを軽減する.

乳酸菌と早産予防

著者: 米田哲 ,   齋藤滋

ページ範囲:P.416 - P.421

●腟内に存在する乳酸菌は,その自浄作用から細菌性腟症の発症を抑制し,上行性感染を予防することにより自然早産予防効果があるとされている.

●近年,ラクトフェリンは,腟内の乳酸菌を増殖させる作用があると報告されており,今後,注目したい.

●妊娠維持に必須の制御性T細胞の誘導に関与していると考えられる酪酸菌含有のプロバイオティクス(酪酸菌,乳酸菌,糖化菌)は,自然早産を予防する可能性を秘めている.

妊娠中,カフェインはどれだけ摂取してよいのか

著者: 石本人士

ページ範囲:P.423 - P.428

●カフェインは,古くから親しまれている嗜好品であるコーヒー,紅茶,日本茶などに含まれている.

●現時点では,妊婦のカフェイン摂取量は1日200〜300mg未満(コーヒーならマグカップで2杯程度まで)に控えるように推奨されている.

●エナジードリンクなどにはカフェインを多く含むものがあり,過剰摂取で急性中毒を生じ,これによる死亡例も報告されているので,十分に注意を要する.

妊娠時における飲酒・喫煙のリスク―エコチル調査から

著者: 目時弘仁

ページ範囲:P.429 - P.434

●妊娠期間中に飲酒や喫煙を継続している者は稀ではない.

●妊娠期間中の飲酒や喫煙は母児予後に影響を及ぼし,児については少量でも害となる.

●健康維持に関して可能な限り情報提供をするとともに,適切な生活への援助を行う必要がある.

妊娠中,魚介類はどれくらい摂取してよいのか

著者: 川城由紀子

ページ範囲:P.435 - P.439

●魚介類は胎児の成長発達に必要な栄養素を豊富に含んでいる.

●妊婦が魚介類を摂食するにあたって注意が必要な魚介類の種類と1週間の適切な摂取量を理解する.

●医療者から妊婦へ正確な情報を提供する.

妊婦の栄養と至適体重増加量改訂―2021年日本産科婦人科学会「妊娠中の体重増加の目安について」から

著者: 上田めぐみ ,   幸村友季子 ,   伊東宏晃

ページ範囲:P.440 - P.445

●妊娠前の体格を考慮した妊娠中の適切な体重増加と栄養摂取は,周産期合併症および児の長期的な疾患発症リスクの低減のために重要である.

●至適体重増加の推奨について,「妊娠中毒症の栄養管理指針(1997)」は2019年に取り下げられ,2021年に「妊娠中の体重増加量指導の目安」が策定された.

●「妊娠中の体重増加量指導の目安」では,特に,低体重と普通体重の妊婦で,今までの体重増加の指標よりも高い推奨値となっている.また,肥満区分によって周産期リスクが異なるため,肥満は2区分となっている.

妊婦にみられるマイナートラブルと薬剤投与のコツ

妊娠女性の頭痛への対処

著者: 三島就子

ページ範囲:P.446 - P.451

●妊娠女性の頭痛診療では,血圧上昇などのレッドフラグサインの有無を確認し,緊急治療や応急的対応が必要な疾患かどうか判断する.

●妊娠女性の頭痛は,原因に応じて対処することが望ましいが,症状緩和で鎮痛薬を用いる際は,妊娠28週以降NSAIDsが使用できないことに留意する.妊娠全期を通して使用可能な解熱鎮痛薬はアセトアミノフェンである.

●アセトアミノフェンに胎内で曝露された児において,将来の神経発達障害や気管支喘息の発症との関連を示唆する報告があるが,漫然とした使用は控える努力をしつつ,母体に必要以上の我慢を強いることがないよう,上手な疼痛管理を行う.

妊婦貧血への対応

著者: 内田季之

ページ範囲:P.452 - P.458

●生理的に妊娠経過とともにヘモグロビン(Hb)濃度は低下し,妊婦貧血となる.平均赤血球容積(MCV)が低下する小球性貧血であり,鉄欠乏性貧血となる.

●わが国の妊婦は鉄摂取が不足している.プレコンセプションケアとして,鉄摂取を日常から心がけ,やせ,貧血の既往などの場合は妊婦貧血のリスクがあると考え,食事摂取からの鉄補充だけでなくサプリメントも有効活用するように指導する.妊娠中期・後期では1日あたり鉄20mgの摂取が推奨されている.

●鉄剤投与は少なくともHb濃度10.0g/dL未満では開始する.鉄剤に多く出現する消化器症状,特に嘔気・嘔吐は第二鉄製剤が少ない.消化器症状で内服困難,急速に貧血を改善したい場合に静注鉄剤を用いる.鉄剤投与は炎症がある場合は効果が低く,輸血後では鉄過剰となる可能性があるので注意を要する.

妊娠悪阻・唾液分泌過多に対する漢方療法―小半夏加茯苓湯などの処方の実際

著者: 森裕紀子 ,   花輪壽彦

ページ範囲:P.459 - P.464

●日本の添付文書の多くは「妊娠中の投与に関する安全性は確立していない」と記載がある.漢方薬も同様だが,長い歴史のなかで悪阻に用いる一般漢方エキス製剤は安全と考える.

●つわりの漢方治療の選択には,妊婦の性格や妊娠に対する不安の有無から「気剤」の必要性と,「冷え」の有無が,鑑別のポイントである.

●一般にエキス製剤は湯に溶かしての服用を推奨するが,つわりの場合は冷服でもよい.

胃炎合併妊婦への薬剤の選び方

著者: 嶋田真弓 ,   和栗雅子

ページ範囲:P.465 - P.472

●妊婦の消化器症状の愁訴は多く,妊娠悪阻や胃食道逆流症(GERD)は妊娠期によくみられるものである.

●胃炎・消化性潰瘍においては,H.pyloriの感染によるもの,低用量アスピリンを含むNSAIDs潰瘍に特に注意する.

●プロトンポンプ阻害薬,ヒスタミンH2受容体拮抗薬などは妊娠期におおむね安全に使用可能である.プロスタグランジンE1誘導体は妊娠期に禁忌である.

妊娠中の便秘処方と漢方

著者: 中山毅 ,   向亜紀 ,   浅沼栄里

ページ範囲:P.473 - P.477

●便秘に関する周辺症状(便性,腹部膨満,腹痛など)を,丁寧に問診する.

●漢方薬を用いることにより,テーラーメイドな治療が可能になる.

●腹痛や腹部膨満感が主である,または手術既往のある便秘には,大建中湯を用いるとよい印象がある.

妊娠時のむくみ・こむら返りへの対処

著者: 山本伸一 ,   小井戸茂 ,   内田能安

ページ範囲:P.478 - P.485

●妊娠中は,下肢にむくみを認めやすいが,立ちくらみや頭痛などさまざまな水毒症状は全身に出現しやすい.水毒は糖質の摂取とも関係することがあり,その点も踏まえた食事指導が有効なことが少なくない.

●こむら返りの原因は,むくみの原因とも共通する部分があり,妊娠中は,むくみが出現することも,こむら返りの発症に関与している可能性がある.芍薬甘草湯は有効だが,甘草の投与量には注意する.

●妊娠中は,黄体ホルモンの作用で腸管蠕動が低下するが,この影響で腸管リンパの流れが悪化すると,下腿浮腫の原因となりうる.むくみの治療には,腸管蠕動の改善も重要と思われ,寒証の便秘では大建中湯が有効なことが多い.

瘙痒・皮膚炎などの妊娠時における皮膚症状への対処

著者: 吉田和恵

ページ範囲:P.486 - P.492

●瘙痒・皮膚炎をみたときには,発症時期,皮疹の性状,部位などから適切な診断をつけ,ステロイド外用薬,抗ヒスタミン薬などで対処する.

●ステロイド外用薬は,5段階のランクに分類され,皮疹の重症度,部位など,症例により適切なランクを選択し,適切な量を必要十分な期間にわたり外用する必要がある.

●妊娠中に生じうる皮膚疾患は多岐にわたるため,判断に迷う場合,一般的なステロイド外用薬,抗ヒスタミン薬内服で軽快しない場合は,皮膚科専門医へのコンサルテーションを検討していただきたい.

妊娠時の耳閉感・鼻づまりへの対処

著者: 池谷美樹

ページ範囲:P.493 - P.498

●妊娠中の耳鼻科領域のトラブルについては,薬物的療法のみでなく自分でできる生活習慣の指導を行うことで妊婦の不安をやわらげ,満足度を上げることができる.

●妊婦の訴える耳閉感の多くは耳管開放症によるものであるが,その特徴を理解し,耳鼻科受診が必要な症例を鑑別していく.

●鼻閉には感染性とアレルギー性鼻炎があり,ある程度鑑別したうえで妊娠中は非薬物的治療や局所投与薬から開始し,内服が必要な症例には安全性が確認されたものを処方する.

症例

BMI 53kg/m2の高度肥満子宮体がん患者に対して腹腔鏡下手術を施行した1例

著者: 宮崎聖子 ,   村上望美 ,   清水悠仁 ,   中村菫 ,   岩崎聡美 ,   堀新平 ,   井手上隆史 ,   荒金太 ,   福松之敦

ページ範囲:P.499 - P.503

▶要旨

 近年早期子宮体がん患者に対する腹腔鏡下手術が一般的に行われており,高度肥満の腹腔鏡下手術を適用する機会が増加している.今回われわれはBMI 53.2kg/m2の高度肥満子宮体がん患者に対し腹腔鏡下子宮全摘術および両側付属器摘出術を施行した症例を経験した.手術時間は延長したが,開腹移行や合併症なく手術を施行可能であった.

連載 Obstetric News

いつ避妊は必要なくなるか?―英国産婦人科学会ガイドライン

著者: 武久徹

ページ範囲:P.504 - P.506

(✓)通常は無月経の1年後に後方視的に臨床的に閉経と診断される.ほとんどの女性は診断のための血清ホルモン・レベルの測定を必要としない.

(D)プロゲストーゲン単独避妊(プロベラ・デポを含む)を使用している50歳を超えた女性は,必要であれば閉経状態を調べるために血清卵胞刺激ホルモン(FSH)測定を受けることができる.

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目次

ページ範囲:P.406 - P.407

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.510 - P.510

バックナンバー

ページ範囲:P.511 - P.511

次号予告・奥付

ページ範囲:P.512 - P.512

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

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69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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