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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科76巻6号

2022年06月発行

雑誌目次

今月の臨床 生殖医療・周産期にかかわる法と倫理―親子関係・医療制度・虐待をめぐって 新しい家族のかたちをめぐる諸問題

卵子提供によって出生した子の親子関係

著者: 石原理

ページ範囲:P.518 - P.522

●「親子関係特例法」の成立・施行により卵子提供により出生した子の母子関係がはじめて規定された.

●ただし,「出自を知る権利」など子の権利,また提供者の権利を守るために,さらなる法整備が不可欠である.

●さまざまな「家族のかたち」を視野においた多様な親子関係のあり方に配慮が必要である.

提供精子によって出生した子の親子関係―出自を知る権利を含めて

著者: 久慈直昭

ページ範囲:P.523 - P.528

●提供精子を用いた人工授精(AID)で出生した子の親子関係は海外の報告をみる限りおおむね良好であり,またそれは告知をすることによって少なくとも悪化することはない.

●告知は7歳以前のほうが親子関係は良好になる.

●AIDが当事者や社会に完全に受け入れられるためには,出自を知る権利が認められることが望ましいと考えられる.

代理懐胎によって出生した子の親子関係

著者: 南貴子

ページ範囲:P.529 - P.535

●代理懐胎を規制する法制度は,商業的代理懐胎を認める場合,利他的代理懐胎のみを認める場合,代理懐胎を禁止する場合など,国や州によって異なっている.

●オーストラリア・ビクトリア州では,性別や性的指向,婚姻状態に関係なく,利他的代理懐胎が認められており,代理懐胎は新たな親子関係の形成につながっている.

●利他的代理懐胎を認めるビクトリア州では,代理懐胎者が生まれた子の親となるが,代理懐胎依頼者は裁判所の親決定命令によって子と親子関係を成立させることができる.

●代理懐胎は,女性の身体の搾取・商品化につながる倫理的問題のほかに,代理懐胎者や配偶子ドナーの情報開示など,子の出自を知る権利にかかわる問題も含んでいる.

婚姻・妊娠・出産をとりまく法と産婦人科の接点

著者: 久具宏司

ページ範囲:P.536 - P.545

●離婚後300日以内に生まれた児は前夫の子と推定するのが本則である.離婚後に懐胎したことが証明されれば本則は阻却されるが,そのためには医師による客観的な証明書が必要である.

●女性は,離婚後100日間の再婚禁止が本則である.離婚後に妊娠していない期間があることが証明されれば本則は阻却されるが,そのためには医師による客観的な証明書が必要である.

●婚姻・出産に対する社会の価値観の変化や,虐待,無戸籍など児童をめぐる社会問題の増加を背景に,法制審議会において嫡出推定制度の見直しが進められている.今後の動向には注意を要する.

LGBTカップルが子をもつ場合の親子関係

著者: 中塚幹也

ページ範囲:P.547 - P.553

●戸籍の性別変更の特例法には,婚姻要件(婚姻をしていない),子なし要件(未成年の子がいない),手術要件(生殖腺がない,または生殖腺の機能を永続的に欠く)がある.

●欧米の生殖医学会は,人種や国籍とともに,性的指向,性自認,あるいは,婚姻の状態により,生殖医療の提供を制限すべきではないとしている.

●2020年12月に成立した生殖医療民法特例法では,配偶子提供により生まれた子どもの親子関係を規定しているが,その対象となるLGBT当事者の視点での議論が求められている.

特別養子縁組制度―普通養子縁組制度との違い

著者: 高橋幸子

ページ範囲:P.554 - P.559

●子どもの福祉のための制度として特別養子縁組があり,社会的養護の観点から,偏見なく広がることが望まれる.

●特別養子縁組の養親になるための条件には,年齢のリミットがある.

●外来診療の場では不妊治療の入り口で,また外部講師としての性教育講演会のなかでも特別養子縁組についての情報提供がなされるべきである.

周産期にかかわる医療制度

入院助産制度と出産扶助・医療扶助

著者: 長治誠

ページ範囲:P.560 - P.568

●出産にかかわる費用は自費であるが,社会福祉制度として,生活保護法による出産扶助と医療扶助,児童福祉法による入院助産制度がある.

●2つの制度の違いを理解し,社会的ハイリスク妊産婦に対し適切な援助を行うことが必要である.

●出産育児一時金,出産扶助,医療扶助,入院助産という4つの制度ではなく,社会福祉制度としての一本化が望まれる.

わが国における医療安全施策

著者: 梅木和宣

ページ範囲:P.569 - P.573

●医療の安全の確保は,わが国の医療政策における重要な課題である.医療の安全を向上させていくには,さまざまな関係者がおのおのの立場から共同行動として総合的に取り組んでいく必要がある.

●厚生労働省では,「医療安全推進総合対策」等にもとづき,医療法の改正等を通じて,医療機関における医療安全体制整備,医療安全支援センター設置,各種制度等を推進している.

●以上の取り組みを通じて,安全文化が醸成され,患者と医療従事者が互いに信頼関係を築くことで,お互いの理解がよりいっそう深まり,良質かつ適切な医療を提供する環境が整うことが期待される.

※本文の内容は執筆者個人の責任によるもので,厚生労働省としての見解を示すものではありません.

産科医療補償制度の変遷

著者: 鈴木英明

ページ範囲:P.574 - P.580

●本制度は,紛争の防止・早期解決および産科医療の質の向上を目的として,分娩に関連して発症した重度の脳性麻痺児を補償する無過失補償制度として2009年に創設された.

●発足後,周産期医学の進歩や制度運営を重ねて知見が集積されるなかで,「補償対象基準」について課題が浮き彫りとなったため,2022年出生児より基準が改定された.

●具体的には,「個別審査」が廃止され,「補償対象基準」は在胎週数が28週以上のみに改定された.

周産期の虐待をめぐる諸問題

DV防止法と周産期医療

著者: 桑原博道 ,   田村孔

ページ範囲:P.581 - P.586

●妊婦に対するDVを発見した場合には,被害者の意思を尊重しつつ,関係機関への通報や被害者への情報提供を検討しておく.

●妊婦へのDVスクリーニングは,潜在的な被害者を見つけ出すために作成されたものであり,さらなる普及が望まれる.

●DVの事実があることから,配偶者の同意を得ないで人工妊娠中絶手術を実施することは違法ではないとした裁判例がある.

新生児の医療ネグレクトへの対応

著者: 保条成宏

ページ範囲:P.587 - P.591

●医療ネグレクトの本質は,子ども―親―医師間の「関係障害」にある.

●医療ネグレクトへの対応において,「子どもの最善の利益」を代弁・代行する「子どもの代理人」の実践が重要となる.

●子どもの権利条約において「子どもの最善の利益」を確保する任務を負う「法定保護者」として,「子どもの代理人」を制度化するべきである.

改正児童虐待防止法と周産期臨床

著者: 板澤寿子

ページ範囲:P.592 - P.598

●児童虐待防止法〔令和2(2020)年4月1日施行〕の主な改正点は,親権者による体罰の禁止の明確化,児童相談所の体制強化,関係機関間の連携強化である.

●母子保健に従事する保健・医療・福祉関係者は妊産婦のメンタルヘルスと心理社会的リスク因子を把握し,背景に合わせた支援を行う必要がある.

●周産期における適切な医療と支援が児童虐待防止の第一歩である.

症例

CCRT直前に脳出血を発症したが,治療を完遂できた子宮頸がんⅡB期の維持透析患者の1例

著者: 向山文貴 ,   木村博昭 ,   後藤優希 ,   廣瀬雅紀 ,   安部真希子 ,   清水わか子 ,   平敷好一郎

ページ範囲:P.599 - P.604

▶要旨

 維持透析患者の子宮頸がんに対して同時化学放射線療法(CCRT)を施行した報告例は少ない.今回,子宮頸がんⅡB期の維持透析患者に対して,直前に脳出血を発症したがCCRTを完遂できた症例を経験した.患者は57歳,6経妊6経産.本態性高血圧症による慢性腎不全で15年前より維持透析を受けている.発熱,下腹部痛を主訴に前医受診し,単純CT検査で子宮囊胞性腫瘤を認めたため当科紹介受診となった.精査により子宮留膿腫,子宮頸部扁平上皮癌ⅡB期(T2bN0M0)の診断となった.当科初診10日後に高血圧緊急症による左被殻出血を偶発的に発症し,当院脳神経外科で保存加療を受けた.右片麻痺が残存したが,全身状態は良好なためCCRTを行う方針とした.当科初診29日後より開始し,シスプラチンは非透析日に標準投与量から50%減量した20mg/m2/週で投与した.大きな有害事象なくCCRTを完遂し,評価で完全奏効と判定した.治療後2か月の現在,再発なく経過している.

連載 Obstetric News

閉経の予知としての抗ミュラー管ホルモン利用

著者: 武久徹

ページ範囲:P.606 - P.607

 抗ミュラー管ホルモン(anti-müllerian hormone : AMH)は,発育中の卵胞内の各卵子を取り囲む顆粒膜細胞によって産生される.ある時点でのAMHの産生量と血清レベルは,女性の卵巣予備能を反映しており,複数の研究により,AMHの値は生殖期間中に低下することが実証されている.不妊症の女性の卵巣予備能の評価や,この集団における卵巣刺激プロトコルの選択にAMH値を使用することを支持するデータが存在する.

 しかし,不妊症の診断を受けていない女性の不妊カウンセリングに血清AMH値を使用することは,現在のところ質の高い情報源からのデータでは支持されていない.妊娠を試みたことがないか,または以前に援助なしで妊娠したことがある生殖年齢の女性を含む,不妊症の有病率が低い女性の集団において,血清AMH値の予測可能性を検討する際には注意を払う必要がある.現在の情報によると,妊娠可能と思われる女性の集団において,任意の時点で得られた1回の血清AMH値の評価は,妊娠までの期間を予測するのに有用ではないと考えられることから,この点に関する患者のカウンセリングに使用すべきではない.

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目次

ページ範囲:P.514 - P.515

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.610 - P.610

バックナンバー

ページ範囲:P.611 - P.611

次号予告・奥付

ページ範囲:P.612 - P.612

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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73巻9号(2019年9月発行)

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72巻9号(2018年9月発行)

今月の臨床 症例検討会で突っ込まれないための“実践的”婦人科画像の読み方

72巻8号(2018年8月発行)

今月の臨床 スペシャリストに聞く 産婦人科でのアレルギー対応法

72巻7号(2018年7月発行)

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72巻6号(2018年6月発行)

今月の臨床 がん免疫療法の新展開─「知らない」ではすまない今のトレンド

72巻5号(2018年5月発行)

今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

72巻4号(2018年4月発行)

増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド─いまのトレンドを逃さずチェック!

72巻3号(2018年4月発行)

今月の臨床 ここが知りたい! 早産の予知・予防の最前線

72巻2号(2018年3月発行)

今月の臨床 ホルモン補充療法ベストプラクティス─いつから始める? いつまで続ける? 何に注意する?

72巻1号(2018年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 産婦人科感染症の診断・管理─その秘訣とピットフォール

71巻12号(2017年12月発行)

今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

今月の臨床 遺伝子診療の最前線─着床前,胎児から婦人科がんまで

71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

今月の臨床 「産婦人科診療ガイドライン─産科編 2017」の新規項目と改正点

71巻7号(2017年7月発行)

今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

71巻6号(2017年6月発行)

今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

71巻5号(2017年5月発行)

今月の臨床 万能幹細胞・幹細胞とゲノム編集─再生医療の進歩が医療を変える

71巻4号(2017年4月発行)

増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

71巻2号(2017年3月発行)

今月の臨床 産科麻酔パーフェクトガイド

71巻1号(2017年1月発行)

合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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