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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科76巻8号

2022年08月発行

雑誌目次

今月の臨床 HPVワクチン勧奨再開―いま知りたいことのすべて 総論

HPVワクチン積極的勧奨再開に思う

著者: 岡部信彦

ページ範囲:P.718 - P.724

●わが国の予防接種制度のなかでこれまでにいくつかのワクチンの中止が行われてきた.

●ワクチン接種による副反応,行わなかった場合の疾病負担,ワクチン接種にあたりこのバランスを常に考えなくてはいけない.

HPVと子宮頸がん・HPV関連疾患

HPV発がんの機序と感染制御機構

著者: 川名敬

ページ範囲:P.725 - P.731

●HPV16,18型に代表されるハイリスクHPVは,感染した上皮細胞に持続感染していくなかで,感染細胞をがん細胞へと変化させることがある.特に女性の子宮頸部は,組織学的な特異性からがん化しやすく,子宮頸がんは若年発症,かつ発生数が圧倒的に多い.

●HPV感染自体を中和抗体によって予防できるHPVワクチンが,子宮頸がんの発症リスクを減少させることが明らかとなった.

●8年以上続いた日本国内での接種勧奨の差し控えが終了し,さらにその間に接種できなかった女性に対するキャッチアップ接種も時限付きではあるが開始される.この機会を逃さずに利用していきたい.

日本人における子宮頸がん分離HPV型とHPVワクチン―9価ワクチンの意義

著者: 小貫麻美子 ,   松本光司

ページ範囲:P.732 - P.737

●9価ワクチンは2021年2月より接種可能になった.HPV16, 18型に加え,次に子宮頸部発がんリスクが高いとされるHPV31, 33, 45, 52, 58型に対する予防効果がある.

●40歳未満の子宮頸がん患者におけるHPV型分布の検討により,9価ワクチンは扁平上皮がん・腺がんにかかわらず日本の子宮頸がんの90%以上を予防すると試算できる.

●2価・4価ワクチンのリアルワールドデータでは接種年齢が高いほどワクチン効果が低下する.HPVワクチンには既感染の治療効果がないため,9価ワクチンでも接種年齢がきわめて重要である.

肛門性器疣贅と外陰部前がん病変

著者: 笹川寿之 ,   斎藤まゆみ ,   島田菫 ,   三部一輝 ,   高田笑 ,   藤田智子

ページ範囲:P.738 - P.745

●女性の肛門性器疣贅(AGW)の多くはHPV6型,11型感染による尖圭コンジローマであり,年間約2,000人の女性に発症している.20〜30%は3か月以内に自然消退するとされているが,多発性病変や再発を繰り返す難治性症例も存在する.

●AGWにかかった女性はさまざまな心理的かつ性的なダメージを受ける.

●尖圭コンジローマを有する妊婦から出産した児が小児期になって発症する若年発症再発性呼吸器乳頭腫症(JORRP)も難治性疾患であり,産科的対応に課題がある.

●4価HPVワクチンの接種によってAGWやJORRPの発症が有意に減少することが証明され,特に接種率50%以上の地域における効果は大きく,ワクチンを接種していない男性に対する集団予防効果まで示されている.

再発性呼吸器乳頭腫症・中咽頭がん

著者: 室野重之

ページ範囲:P.746 - P.752

●再発性呼吸器乳頭腫症は,多発しやすい,また再発しやすい,主に喉頭に発生する良性腫瘍であり,HPV6やHPV11に起因することが多い.

●中咽頭がんとHPVの関連が注目されており,本邦でも中咽頭がんの半数以上はHPV関連となり,急増している.

●ワクチン接種により若年型の再発性呼吸器乳頭腫症の発症率が低下することを示す海外の報告が出始めた.

●ワクチン接種による中咽頭がんの発生率に関する報告はまだないが,口腔HPV感染率は低下することが報告されている.

HPVワクチンの有効性

2価・4価ワクチンを使用した日本・海外における臨床データ

著者: 黒澤めぐみ ,   山口真奈子 ,   工藤梨沙 ,   関根正幸 ,   榎本隆之

ページ範囲:P.754 - P.761

●世界からはHPV感染率や前がん病変の減少のみならず,浸潤子宮頸がんに対するHPVワクチンの有効性が報告されている.

●日本においても積極的勧奨中止前のHPVワクチン接種率の高かった世代でHPV感染率や前がん病変に対するワクチンの効果を認めている.

●日本では積極的勧奨中止による影響で,HPV16/18型感染率が上昇しており,将来的な子宮頸がんリスクの上昇が懸念される.

9価ワクチンの有効性と安全性―海外の知見から

著者: 宮城悦子 ,   吉岡俊輝 ,   魚本真理 ,   道佛美帆子 ,   今井雄一

ページ範囲:P.762 - P.768

●本邦においても2021年2月より9価HPVワクチンが任意接種として接種可能となったが,適用は9歳以上の女性のみである.

●世界では,9価HPVワクチンに関する有効性・安全性のエビデンスが蓄積し,若年者への2回接種や男性への定期接種が進んでおり,2価・4価からの移行に関するデータも公表されている.

●日本では2022年4月より2価・4価HPVワクチンの定期接種は正常化に向かい,25歳までの無料キャッチアップ接種も開始されるが,9価ワクチンの海外の知見の周知は遅れている.

副反応の問題

HPVワクチン積極的接種勧奨中止への経緯

著者: 山田正興

ページ範囲:P.769 - P.773

●HPVワクチンは,世界130か国以上で定期予防接種化されている.

●日本における「積極的接種勧奨差し控え」は,医学的根拠に基づかず,マスコミや世論に寄り添った政策決定であった.

●思春期の年代への接種では,接種ストレス関連反応(ISRR)への理解が求められる.

HPVワクチンの副反応に関する国内外の報告

著者: 八木麻未 ,   上田豊 ,   木村正

ページ範囲:P.774 - P.780

●国内外でHPVワクチンの安全性の検討が行われており,いずれもHPVワクチンの安全性を否定するものではなかった.

●接種ストレス関連反応について,biopsychosocial modelによって接種前,接種時,接種後のそれぞれの時点における発症・促進・持続要因について理解しておくことは,ストレス関連反応の予防,診断,管理を行ううえで重要である.

●接種者・保護者が不安を抱いている場合は,多様な要因が絡み合って接種者に悪影響を及ぼす可能性を考慮して対応することが重要である.

HPVワクチン接種後の慢性疼痛―小児・思春期の痛みとHPVワクチン接種後の痛み

著者: 尾張慶子 ,   丹羽英美 ,   牛田享宏

ページ範囲:P.781 - P.787

●痛みとは「感覚かつ情動の不快な体験」である.痛みと侵害受容は異なる現象であり,痛みには大きく分けて「急性痛」と「慢性疼痛」がある.「慢性疼痛」は,通常治癒するのに必要な期間を超えているにもかかわらず,痛みが持続する状態である.

●痛みの概念は個人的な経験を通じて学ぶものであり,生物学的,心理的,社会的影響を受ける.その病態に対応するために,多面的な分析とチーム医療が重要である.

世界の趨勢と特殊な集団への接種

世界におけるHPVワクチンの現状

著者: 井箟一彦

ページ範囲:P.788 - P.793

●世界保健機関(WHO)は,HPVワクチンを全世界で国の接種プログラムとして実施すべきとし,9〜14歳の女子への2回接種を推奨している(日本では3回接種).

●子宮頸がんの世界的な排除に向け,90%の女子が15歳までにHPVワクチン,70%の女性が35歳・45歳までに2回の検診,90%の子宮頸がん患者の治療の3つが必要である.

●男性へのHPVワクチン接種もgender-neutral vaccinationとして50以上の国がプログラムに導入し,有効性と費用対効果のデータが蓄積されつつある.

思春期以降のHPVワクチン接種

著者: 今野良

ページ範囲:P.794 - P.799

●HPVワクチンの第一次対象は思春期女子であるが,第二次の対象は15歳以上の女性や男性である.海外では,思春期に接種を逃した対象にもキャッチアップ接種制度がある.

●男子,MSM,トランスジェンダーへの接種は彼らに発生するがんの予防と,女性を含めた社会全体への高くて迅速な集団免疫の期待である.

●国の介入により思春期の女子の接種機会を奪ったのは日本の行政の罪であり,将来の子宮頸がん罹患や死亡という重大な禍根を回避するためには,高いキャッチアップ接種率を達成しなければならない.

検診との関係

ワクチン接種を前提とした子宮頸がん検診の将来像

著者: 藤井多久磨

ページ範囲:P.800 - P.806

●子宮頸がん検診では,HPV検査のほうが細胞診より感度がよいが特異度が劣る.

●細胞診陰性だがHPV陽性例の前がん病変進展のリスクが注目を集めている.

●HPVワクチンと検診で子宮頸がん予防の相乗効果が期待できる.

●HPV単独検査陽性例のトリアージでは細胞診が活用されているが,細胞診免疫染色法も期待される手法の1つである.

FOCUS 〔シリーズ〕産婦人科と「働き方改革」【第2回】

「医師の働き方改革」と学会の現在地

著者: 榎本隆之 ,   増山寿 ,   中川慧

ページ範囲:P.808 - P.814

●2024年4月から始まる「医師の働き方改革」が実行されると,産婦人科医療機関,特に分娩を取り扱う施設はこれまでより多くの医師数を必要とすることになり,タスクシフトなどによる勤務の効率化,施設の集約化の議論は避けて通れない問題である.

●日本産科婦人科学会においては2019年6月に設立されたサステイナブル産婦人科医療体制確立委員会を中心に,医師の働き方改革と医療提供体制の課題に対応するための検討を進めており,労働時間のタイムスタディ,Q&A集の作成や好事例の収集などを通して産婦人科医の働き方改革に関する情報共有,発信を行っている.

●地域の周産期医療を取り巻く環境は各都道府県・市町村によって異なる.「医師の働き方改革」は地域に応じた対応が必要であることから,分娩取扱施設だけでなく,地方自治体・大学・医師会・学会・住民などの関係各所を巻き込んで早急に議論を尽くしていただきたい.

症例

反復するparasitic leiomyomaに良性転移性平滑筋腫を併発していると考えられた1例

著者: 清水拓哉 ,   雨田恵 ,   大谷清香 ,   苅部瑞穂 ,   美濃部奈美子 ,   木林潤一郎

ページ範囲:P.815 - P.819

▶要旨

 近年,子宮筋腫での腹腔鏡下手術における検体回収時に細断化された筋腫核が腹腔内に生着・発育したり,腹腔外に転移する症例がある.今回,parasitic leiomyoma(PL)に良性転移性平滑筋腫(BML)を併発していると示唆される1例を経験したので報告する.患者は44歳,0妊0産.5年前に他院で腹腔鏡下子宮筋腫核出術の既往があった.他院で経過観察していたが,閉院に伴い紹介受診した.MRI検査で子宮に多発する腫瘤を認め,腹腔鏡下子宮全摘術を施行する方針とした.術中,PLを複数認めた.腫瘤は病理検査で平滑筋腫と診断した.術後2年目の外来検診で多数のPLを認めたので再度,腹腔鏡下筋腫核出術を施行した.術後にGnRHa療法を行ったが,休薬期間中のCT検査でPLの再発,肺野にBMLを認めた.再発抑制が困難であり,腹腔鏡下両側付属器切除術,筋腫核出術を施行した.その後の定期検査ではPLの再発やBMLの増大は認めていない.

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目次

ページ範囲:P.714 - P.715

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.822 - P.822

バックナンバー

ページ範囲:P.823 - P.823

次号予告・奥付

ページ範囲:P.824 - P.824

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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