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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科77巻2号

2023年03月発行

雑誌目次

今月の臨床 子宮体がん診療の最前線―最新分類から治療法まで オーバービュー

様変わりする子宮体がん診療

著者: 万代昌紀

ページ範囲:P.218 - P.221

●『子宮体癌取扱い規約 病理編 第5版』においては,組織型の分類の背景に原因(etiology)や病理発生(pathogenesis)の概念が色濃く反映されていることが特徴である.

●手術療法における最も大きな変化は低侵襲手術の導入と発展であり,もう1つのトレンドは手術療法における個別化の方向性である.

●薬物療法では子宮体がんにおいてもゲノム情報に基づく分子標的薬(免疫チェックポイント阻害薬を含む)による個別化治療の流れが本格化している.

新たな分類

子宮体がんの分子遺伝学的分類と診断

著者: 前田大地

ページ範囲:P.222 - P.227

●近年の網羅的遺伝子解析研究によって,子宮体がんは分子遺伝学的観点からPOLE-ultramutated群,MMR-deficient群,p53-mutant群とその他・非特異群の4群に分けられることが明らかになった.

POLE-ultramutated群は他の群に比べて予後良好であること,MMR-deficient群は免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できることなどから,分子遺伝学的分類を行うことの臨床的価値は高いと考えられる.

●病理組織診断に分子遺伝学的分類をいかに反映させていくかが今後の課題となる.

子宮体癌取扱い規約における分類の再編―新WHO分類を踏まえた今後の方向性

著者: 三上芳喜

ページ範囲:P.228 - P.232

●WHO分類第5版に準拠した『子宮体癌取扱い規約 病理編 第5版』が出版された.

●臨床的意義,組織発生,分子遺伝学の観点から子宮体癌の分類が再編成された.

●類内膜癌の分子遺伝学的分類(①POLE-超高頻度変異 POLE-ultramutated,②ミスマッチ修復欠損Mismatch repair-deficient,③p53変異p53-mutant,④非特異的分子プロファイルNon-specific molecular profile)が最適なマネジメントを可能とすることが期待される.

手術療法

子宮体がんに対する腹腔鏡手術

著者: 近澤研郎 ,   磯部真倫

ページ範囲:P.233 - P.238

●早期,中高リスク子宮体がんと腹腔鏡のエビデンスを知る.

●マニピュレータによる腫瘍飛散を防ぐ.

●en bloc骨盤リンパ節の実際を学ぶ.

子宮体がんに対するロボット支援下手術の実際

著者: 吉田健太 ,   近藤英司

ページ範囲:P.239 - P.244

●子宮体がん患者は年々増加しており,保険収載も伴ってロボット支援下手術件数は増加している.現行の機種以外も保険収載見込みのため,今後も増加が予想される.

●子宮体がんのリスクは肥満であり,ロボット支援下手術が威力を発揮する.特にロボットアームによる吊り上げ効果は,ワーキングスペースの改善および麻酔科管理に寄与する.

●リトラクションアームの使い方が最も重要である.常にカウンタートラクションがかかるように操作する必要がある.

高齢者に対する手術療法

著者: 田中智人

ページ範囲:P.245 - P.249

●高齢者に対しては,病巣が子宮に限局している場合は,低侵襲手術が望ましい.

●リンパ節郭清および生検は予後を改善する可能性がある.年齢および合併症を考慮すると,Ⅰ〜Ⅱ期はセンチネルリンパ節生検,Ⅲ期以上はリンパ節郭清が重要となる.

●術後補助療法は,Ⅲ期以上の進行がんに対しては予後を改善するが,Ⅰ〜Ⅱ期に対しては過剰医療となる可能性がある.

子宮体がんにおける傍大動脈リンパ節郭清の治療的意義

著者: 山崎博之 ,   金野陽輔 ,   渡利英道

ページ範囲:P.250 - P.255

●再発中リスク以上の症例において傍大動脈リンパ節郭清が予後を改善する可能性がある.

●どのような集団に対して傍大動脈リンパ節郭清を行うべきかについて,コンセンサスを得られた明確なエビデンスはない.

●傍大動脈リンパ節に明らかな腫大のない推定再発中リスク以上の症例を対象に,傍大動脈リンパ節郭清の治療的意義を検証するJCOG1412試験の結果が待たれる.

腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術の安全な施行のために

著者: 寺井義人

ページ範囲:P.256 - P.261

●腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術を安全に施行するためには,術前にCTなどで血管走行の確認と術中の術野展開が重要である.

●腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術での合併症として,血管損傷と尿管損傷,隣接臓器の熱損傷に注意が必要である.

●現在の保険適用では,腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術は子宮体がんⅠA期のみであり,欧米並みにⅠB,Ⅱ期への適用拡大やロボット支援下手術での傍大動脈リンパ節郭清術への適用拡大が望まれる.

センチネルリンパ節生検の現状

著者: 戸上真一

ページ範囲:P.262 - P.268

●子宮体がんに対するセンチネルリンパ節生検は,術後の下肢リンパ浮腫,骨盤リンパ囊胞の軽減だけでなく,リンパ節転移の診断率向上ももたらし,欧米ではリンパ郭清に代わるステージング法として位置づけられている.

●国内でも多くの施設で子宮体がんセンチネルリンパ節生検が行われているが,この手技を標準治療とするためには一刻も早い保険収載が必要不可欠である.

●トレーサーが適応外であることが,センチネルリンパ節生検の保険収載への大きな障壁であり,公知申請によるトレーサーの薬事承認に向けて現在活動を進めている.

薬物療法

メトホルミンを併用した妊孕性温存療法

著者: 三橋暁

ページ範囲:P.269 - P.275

●妊孕性温存を希望する若年の子宮体がんおよび子宮内膜異型増殖症は,多囊胞性卵巣症候群や肥満・インスリン抵抗性を有する頻度が高く,MPAを用いた妊孕性温存療法にメトホルミンの併用効果が期待される.

●メトホルミンはMPA投与時の体重増加や耐糖能悪化を予防する可能性がある.

●現在,MPAを用いた妊孕性温存療法にメトホルミンを併用する医師主導治験が行われており,その結果が待たれる.

術後化学療法

著者: 野村弘行

ページ範囲:P.276 - P.283

●再発リスクを有する子宮体がん術後症例の補助療法として化学療法が推奨される.

●本邦で行われた術後補助化学療法の第Ⅲ相試験ではAP療法,DP療法,TC療法の3群で有効性に差を認めなかった.

●エビデンスの適用にあたっては,試験により対象となった再発リスクの定義の違いに留意する必要がある.

―【がん免疫療法】―ミスマッチ修復(MMR)遺伝子機能欠損の評価法

著者: 百村麻衣 ,   小林陽一

ページ範囲:P.284 - P.291

●ミスマッチ修復(MMR)遺伝子機能欠損を評価するスクリーニング検査にはマイクロサテライト不安定性(MSI)検査と免疫染色(IHC)がある.

●Lynch症候群は大腸がん,子宮体がん,卵巣がん,尿路がん,胃がんなどの関連腫瘍を好発する.

●MMR遺伝子別に関連腫瘍の発生頻度,発生時期が異なるため,カウンセリングやサーベイランスを行ううえで留意が必要である.

―【がん免疫療法】―ペムブロリズマブ

著者: 濵西潤三 ,   万代昌紀

ページ範囲:P.292 - P.299

●ペムブロリズマブは,免疫抑制補助シグナル受容体PD-1を標的とする抗体薬である.

●MSI-High/dMMR(高頻度マイクロサテライト不安定性/ミスマッチ修復遺伝子欠損)がんでは,免疫応答とともにPD-1経路も誘導されている.

●MSI-High/dMMRの子宮体がんには,抗PD-1抗体ペムブロリズマブが高い治療効果を示す.

―【がん免疫療法】―抗がん薬レンバチニブとペムブロリズマブの併用療法

著者: 山上亘 ,   坂井健良 ,   青木大輔

ページ範囲:P.300 - P.305

●レンバチニブ・ペムブロリズマブ併用療法は,バイオマーカーによらず,がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の子宮体がんに対して保険適用となった.

●特徴的な有害事象が出現するため,それらに留意して管理を行う必要がある.

●有効かつ安全に治療を進めるためには,他科医や他職種との連携を適切に行うことが肝要である.

子宮体部肉腫の分子標的療法

著者: 河村美由紀

ページ範囲:P.306 - P.312

●子宮肉腫には多様な組織型があり,それぞれの標準治療は確立していない.最も多い組織型である子宮平滑筋肉腫も,ドキソルビシン療法以降の治療法は確立していない.

●子宮内膜間質肉腫(ESS)は,低異型度ESS・高異型度ESS・未分化子宮肉腫に分類される.低異型度ESSはホルモン療法の効果が報告されているが,高異型度ESSや未分化子宮肉腫に確立した治療はない.

●子宮がん肉腫は,子宮体がんに準じて扱われているが,HER2陽性割合が高いなど特殊な組織型である.国内第Ⅱ相試験であるSTATICE試験でT-Dxdの高い効果を認めた.

症例

腹腔鏡下術後のドロペリドール持続投与により急性ジストニアをきたした1症例

著者: 溝上友美 ,   生田明子 ,   奥楓 ,   白神裕士 ,   吉村智雄 ,   椹木晋 ,   山﨑悦子 ,   松本早苗 ,   神崎秀陽 ,   北正人 ,   岡田英孝

ページ範囲:P.313 - P.317

▶要旨

術後悪心・嘔吐(postoperative nausea and vomiting : PONV)は術後のQOLや満足度を低下させる.特に高リスク群では積極的なPONVの予防を行うことが重要である.PONVを予防する目的で使用したドロペリドールが原因と考えられる若年患者での急性ジストニアを経験したので報告する.症例は17歳女性.腹腔鏡下左卵巣内膜症性囊胞摘出術を実施し,術後鎮痛薬としてフェンタニルを持続投与した.PONV予防のために併用したドロペリドールによる急性ジストニアと考えられる両側眼球上転を発症したため,ドロペリドールの投与を中止し,抗不安薬と抗コリン薬の投与により症状は消失した.ドロペリドールによる急性ジストニアは若年者に好発し,早期対応のための知識と十分な注意が必要である.

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目次

ページ範囲:P.214 - P.215

次号予告・奥付

ページ範囲:P.320 - P.320

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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