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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科77巻7号

2023年07月発行

雑誌目次

今月の臨床 細菌叢から読み解く女性と子どものヘルスケア 総論

細菌叢解析手法の進歩

著者: 増岡弘晃 ,   黒川李奈

ページ範囲:P.656 - P.662

●細菌叢研究は日進月歩で進められており,現在ではメタ16S解析やメタゲノム解析などさまざまな解析手法が選択できるようになった.

●近年では,長いリードが得られるロングリードNGSも登場し,菌株レベルでの菌叢解析や細菌染色体の完全長ゲノムの構築,ファージ・プラスミドゲノムの層別化なども可能となりつつある.

●細菌叢研究は発展途上の部分もいまだ多く,既存のデータベースに依存した解析だけでなく,de novoで解析する重要性が非常に高い.

細菌叢に着目した治療の現状

著者: 石川大

ページ範囲:P.664 - P.671

●2022年11月,米国,オーストラリアにおいてClostridioides difficile感染症に対する腸内細菌叢移植療法(FMT)が薬事承認を受け,実装化が開始された.

●潰瘍性大腸炎に対してのFMT臨床研究が多く行われ,本邦においては2023年1月に先進医療Bとして承認された.

●dysbiosis関連疾患に対してのFMTの適応拡大は進み,マイクロバイオーム創薬につながっていく.

リプロダクション

慢性子宮内膜炎と子宮内フローラ異常のとらえ方の現状

著者: 遠藤俊明 ,   馬場剛

ページ範囲:P.673 - P.678

●不育症や着床不全の原因として慢性子宮内膜炎や子宮内フローラ異常が注目されている.

●慢性子宮内膜炎の病理組織学的診断基準は定まっておらず,報告者によって異なっている.

●子宮内フローラ検査の結果と病理組織学的診断の関連性は明らかではない.

体外受精における着床不全と子宮内細菌叢

著者: 京野廣一

ページ範囲:P.679 - P.683

●体内には多様な菌種が生着して細菌叢を形成するが,子宮内にも細菌叢が存在する.

●子宮内細菌叢に異常が見つかった場合,正常な細菌叢になるよう加療することで着床率の改善が期待できる.

●遺伝子解析技術は飛躍的に進歩しており,細菌叢と着床に関連するより詳細な知見が今後明らかになると考えられる.

不育症と着床不全の子宮内膜マイクロビオーム

著者: 山田秀人 ,   滝本可奈子 ,   施裕徳 ,   出口雅士

ページ範囲:P.685 - P.690

●IVF-ET女性の子宮内マイクロビオームでLactobacillus-dominant microbiota(LDM)がnon-LDMに比べて,着床率,妊娠率および出産率が高いと報告したのは,Morenoらだけである.

●切迫早産女性の腟内マイクロビオームにUreaplasmaが存在すると早産帰結のリスクが高く,不育症の子宮内膜組織マイクロビオームにUreaplasmaが存在すると,次の妊娠では早産と染色体正常流産のリスクが高いことを報告した.

●反復着床不全,不育症,コントロールの間で,子宮内膜組織マイクロビオータに差がない.慢性子宮内膜炎は不育症に多く,L. inersUreaplasmaが慢性子宮内膜炎の発生に関与している可能性がある.

腸内細菌叢異常とPCOS

著者: 草本朱里 ,   原田美由紀

ページ範囲:P.691 - P.696

●PCOS患者,PCOS動物モデルにおいて,腸内細菌叢の変化が示されている.

●腸内細菌叢がPCOSの病態形成に関与している可能性がある.

●腸内細菌叢の改善がPCOSの発症予防・治療につながることが期待される.

周産期

腟内細菌叢と早産のトピック―細菌性腟症・Mycoplasma感染・Ureaplasma感染などへの抗菌薬またはラクトフェリンなどによる対応

著者: 大槻克文

ページ範囲:P.697 - P.703

●腟内の常在菌ならびに病因菌は多岐にわたっており,早産発症までの病態を複雑にしている.

●細菌性腟症に対する抗菌薬使用以外の効果的な治療法として,プレバイオティクスやプロバイオティクスの使用が注目されている.

●早産のハイリスク因子として,MycoplasmaUreaplasma感染,あるいはこれらと細菌性腟症との混合感染が早産リスクを上昇させている.

絨毛膜羊膜炎と羊水中の細菌感染―新たな早産予防・治療戦略の確立に向けて

著者: 漆山大知 ,   秦健一郎 ,   宮本新吾

ページ範囲:P.704 - P.710

●子宮内への細菌感染や子宮内炎症(絨毛膜羊膜炎)は,早産の主要な原因であり,出生児に多大な悪影響を与える.そのため,子宮内感染/炎症の予防と治療は重要であり,早産予防や早産児の予後向上に繋がる.しかし,子宮内感染/炎症では,抗菌薬などを用いた起炎菌に対する早産予防は現段階では推奨されておらず,的確に診断するための羊水穿刺も保険適用がなく,母体の炎症が明確になるまで治療されない.

●これまで早産関連の子宮内感染は妊娠中に治療できないと考えられていた.しかし近年,広域抗菌薬治療が奏効したという報告が散見されはじめ,妊娠中に子宮内感染を早期治療する必要性が論じられるようになった.また,次世代シーケンサーやドロップレットデジタルPCRの登場によって,妊娠中の羊水中の細菌を迅速かつ網羅的に定量可能となってきた.

●そこで,子宮内感染/炎症に関する最新のエビデンスを整理したのち,現在の周産期管理における問題点と考えられる①抗菌薬の選択,②治療効果の判定,③治療症例の選択を整理し,新たな周産期管理について考察する.

胎生期から新生児にかけての腸内細菌叢形成―分娩様式,母乳,腸管免疫を中心に

著者: 最上晴太 ,   久保のぞみ ,   近藤英治

ページ範囲:P.711 - P.717

●胎児期から腸内細菌叢は形成されはじめる.

●母乳は新生児期〜乳児期の正常な腸内細菌叢の形成に欠かせない.

●児の腸内細菌叢構成の形成異常は,その後の喘息,アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患,炎症性腸疾患,自己免疫性疾患などの発症リスクを増加させる.

小児

腸内細菌叢と小児の自閉スペクトラム症

著者: 金子一成

ページ範囲:P.718 - P.725

●ヒトの常在菌の90%以上を占める消化管の細菌集団は腸内細菌叢と呼ばれ,遺伝子解析による微生物同定技術の進歩によってヒトの健康における役割が解明されつつある.

●腸内細菌叢の形成期である,受胎から1,000日間(生後2歳まで)の栄養環境が神経系の発達の鍵となる.

●脳の発達における腸内細菌叢の重要性が認識されるにつれ,自閉スペクトラム症の腸内細菌叢が研究の対象として重要性を増している.

小児外科と腸内細菌叢―プロバイオティクスによる治療戦略

著者: 金森豊

ページ範囲:P.726 - P.732

●新生児期から手術治療を必要とする小児外科疾患患児は,腸内細菌叢をコントロールしないとかなり異常な腸内細菌叢を形成する.

●その腸内細菌叢の特徴は,嫌気性菌が減少し,好気性菌や病原性微生物が増加する傾向にある.

●有用なプロバイオティクスやプレバイオティクスを投与することで腸内細菌叢はコントロール可能であり,重要な治療法となりうる.

●今後は,年齢に相応した有効なプロバイオティクスの開発や,糞便移植などの治療法が有用かどうか検証することが重要である.

食物アレルギーの発症予防―腸内細菌叢への影響を含めて

著者: 福家辰樹

ページ範囲:P.733 - P.739

●食物アレルギーにおける最大の発症リスクとして,乳児期のアトピー性皮膚炎や皮膚バリア機能障害が知られており,適切な診断と外用療法による早期の介入が重要と考えられている.

●乳児期早期の腸内細菌叢がアレルギー疾患発症に関わる免疫制御や耐性獲得に重要とされる報告が数多くなされている.

●プロバイオティクスによる食物アレルギーの発症予防効果は現在のところ限定的とされる一方で,食の多様性がアレルギー疾患の発症予防に寄与する可能性が示唆されている.

症例

浸潤性インプラントを認めたseromucinous borderline tumor(SMBT)ⅢB期の1例

著者: 井ノ又裕介 ,   竹内正久 ,   川上穣 ,   嶺真一郎 ,   中村聡 ,   井上貴史

ページ範囲:P.740 - P.745

▶要旨

症例は43歳,術前診断は進行卵巣癌の疑いで開腹術を施行した.腹腔内に淡血性腹水を認めた.両側卵巣は腫大し,不整な乳頭状腫瘤を無数に認めた.胃脾間膜に1cm大の結節を認めた.左付属器の術中迅速病理組織診断はborderline tumorであったが,悪性の可能性を考慮し,卵巣癌に準じてリンパ節郭清を含めたdebulking surgeryを施行した.肉眼的に残存病変なく,手術を終了した.摘出標本の病理組織診断はseromucinous borderline tumor(SMBT)で,大網と胃脾間膜に浸潤性インプラントと骨盤リンパ節転移を認めた.腹水細胞診は陽性であった.境界悪性卵巣腫瘍ⅢB期(pT3bN1aM0)と診断し,術後にパクリタキセル・カルボプラチン(TC)療法を6コース施行した.最終治療後3年Xか月が経過するが,再発は認めていない.浸潤性インプラントを有するSMBTの術後化学療法の有効性は確立されていないが,ガイドラインでは卵巣癌に準じた治療が勧められている.術後化学療法の有効性に関しては今後もSMBT症例の集積と検討が必要である.

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目次

ページ範囲:P.652 - P.653

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.746 - P.746

バックナンバー

ページ範囲:P.747 - P.747

次号予告・奥付

ページ範囲:P.750 - P.750

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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バックナンバー

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71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

71巻9号(2017年9月発行)

今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

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69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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