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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科77巻8号

2023年08月発行

雑誌目次

今月の臨床 早産予防・治療の現在地―最新の標準を探る 早産の定義・診断・疫学

早産関連の用語の解説

著者: 大井理恵 ,   松田義雄

ページ範囲:P.756 - P.760

●早産は「自然早産」(spontaneous preterm birth)と「人工(または治療的)早産」(英語としてはmedically indicated preterm birthが該当すると考えられる)に分類される.

●『産科婦人科用語集・用語解説集』改訂第4版で「切迫早産」と定義されている「規則的な子宮収縮とそれに伴う頸管の経時的変化を呈する病態」に相当する英語は「preterm labor」である.

●切迫早産および関連する個々の病態に応じた適切な医療を提供するには病態を正確に認識する必要があり,そのために用語の定義や使い方から見直すべきである.

早産のリスク因子

著者: 伊東麻美 ,   田中幹二

ページ範囲:P.762 - P.767

●早産は,妊娠前の母体特性,遺伝的因子,産科的既往歴,妊娠中のリスクなど複数の内的・外的因子の総合作用で生じる.

●早産の最も重要なリスク因子は早産の既往であり,わが国における早産既往女性の早産再発率は16.3%である.

●糖尿病,高血圧,甲状腺疾患,うつ病,感染症の基礎疾患や,低栄養状態や子宮奇形を有する女性では早産リスクが高くなる.

―[コラム]―子宮頸管ポリープ・脱落膜ポリープと自然早産

著者: 林周作

ページ範囲:P.768 - P.769

 妊娠中の子宮頸管ポリープ(cervical polyp : CP)は性器出血や局所炎症の原因となるため,自然早産のリスク因子だと考えられてきた.また,妊娠中のCP切除には,出血・炎症を抑えて流早産の予防につながるという肯定的な意見と,流早産や破水を誘発するリスクがあるという否定的な意見がある1).本コラムでは,これら2つの話題に加えて,妊娠中のCPの病理組織診断の1つである脱落膜ポリープについて,近年の研究報告をもとに解説する.

早産予防の戦略

プレコンセプショナルケア―プロバイオティクス,プレバイオティクス,シンバイオティクスを中心に

著者: 大槻克文

ページ範囲:P.770 - P.777

●本邦における早産再発率は22〜30%と報告されており,決して低くはない.

●早産予防のためには妊娠前からのリスク評価と対応が肝要である.

●慢性子宮内膜炎など,妊娠前の子宮内および腟内環境を整えておく重要性が報告されている.

●細菌性腟症に対する抗菌薬使用以外の効果的な治療法として,プレバイオティクスやプロバイオティクスの使用が注目されている.

細菌性腟症に対する治療介入の是非

著者: 堀江健司 ,   大口昭英

ページ範囲:P.778 - P.782

●妊娠中の細菌性腟症は早産のリスク因子である.

●全妊婦を対象としたスクリーニング,無症状妊婦への抗菌薬治療は推奨されていないが,早産ハイリスク妊婦においては早産予防効果を示す報告もある.

●早産予防につながる治療対象妊婦の選定方法,スクリーニング時期などの検討が必要である.

プロゲステロン製剤

著者: 林昌子

ページ範囲:P.784 - P.788

●プロゲステロンの腟内投与は,単胎で妊娠中期に頸管長が短縮した症例の早産を減少させ,また,早産既往のある単胎症例の早産を減少させる可能性がある.

●ヒドロキシプロゲステロンカプロン酸エステル(17-OHPC)の筋肉内投与は,単胎の頸管長短縮症例,あるいは早産既往症例の早産を減少させる可能性がある.

●本邦ではプロゲステロン腟坐剤は切迫早産に対する保険適用はなく,17-OHPCは保険適用とされていたが,2023年3月にて国内での販売が中止された.

子宮頸管ペッサリー

著者: 熊谷恭子 ,   尾崎康彦

ページ範囲:P.790 - P.795

●頸管ペッサリーは,現時点では切迫早産に対する保険適用はないため,使用にあたっては適応外使用となることに留意する.

●頸管ペッサリーを挿入すると,帯下増加は起こりやすく,時に破水との鑑別を要する.

●頸管ペッサリーを使用するにあたり,ペッサリー挿入・抜去方法について事前のトレーニングが重要である.

―【予防的子宮頸管縫縮術】―縫縮困難例に対する経腟的頸管縫縮術の工夫

著者: 松岡隆

ページ範囲:P.796 - P.800

●子宮腟部が把持できるかどうかが,経腟的頸管縫縮術の可否を決める.

●胎胞膨隆例に対する治療的頸管縫縮術では,炎症コントロール,展退した腟部の慎重な把持と綿球やミニメトロなどを用いた胎胞の還納が手術の成否を決める.

●治療的頸管縫縮術は根本的治療法ではなく,一時的な妊娠延長の意味合いが大きいが,超早産時期における治療的頸管縫縮術は児の予後改善に寄与する可能性がある.

―【予防的子宮頸管縫縮術】―経腹的子宮頸管縫縮術

著者: 桑原慶充

ページ範囲:P.801 - P.806

●既往妊娠で予防的頸管縫縮術が不成功,あるいは解剖学的に実施困難な場合は,経腹的子宮(峡部)頸管縫縮術が考慮される.

●手術の侵襲性,保険未収載であることによる患者負担,胎児死亡に至った場合の娩出法などの問題があり,実施の適応は厳格に判断する必要がある.

●子宮峡部の縫縮によってのみ生児出産が可能な女性が一定数存在することを認識し,自施設で対応できない場合はスムーズな医療連携を心がける.

―【予防的子宮頸管縫縮術】―腹腔鏡下子宮峡部頸管縫縮術

著者: 瀬尾晃平

ページ範囲:P.808 - P.813

●難治性頸管無力症 : 円錐切除,頸部摘出,頸部筋腫核出術,陳旧性頸管裂傷などにより,解剖学的に子宮腟部が欠損,かつ既往から頸管無力症と診断される症例を難治性頸管無力症と呼ぶ.頸管縫縮術を行う必要があるにもかかわらず,従来法では治療困難な症例である.

●子宮峡部 : 解剖学的内子宮口と組織学的内子宮口の間を指す.これは,妊娠後期に展退する子宮下節に相当する.子宮峡部縫縮は子宮下節の下端を縫縮するため,理想的な縫縮の高さとなる.

切迫早産の治療

―【tocolysis】―short tocolysisの実際

著者: 室月淳

ページ範囲:P.814 - P.819

●塩酸リトドリンの長期投与に有効性のエビデンスがないことは,コクランデータベースなどをみても明らかである.

●従来から国内で行われてきた長期入院および塩酸リトドリンの持続投与は,意味がないだけでなく,その副作用のリスクからみて廃止すべきである.

●長く続いた慣習を改めることには心理的抵抗があるが,切迫早産症例の具体的な経過をみればtocolysisを中止しても特に問題のないことを示す.

―【tocolysis】―long term tocolysisの対象と効用

著者: 米田哲

ページ範囲:P.820 - P.825

●本邦で定義されている切迫早産は,true labor(本格的な陣痛)を伴っていないケースでもその診断が可能であり,欧米におけるpreterm laborとは概念が異なっている.

●short term tocolysisは,true laborを伴ったpreterm laborに対して施行されるエビデンスの認められた治療であるが,true laborを伴っていない軽症〜中等症の切迫早産(本邦の診断)は対象外である.

●中等症の切迫早産(本邦の診断)に対して,long term tocolysisを施行することにより,施行しない場合に比し,平均で約2週間の妊娠延長効果が期待される.一方,軽症例には,その施行を慎むべきである.

糖尿病合併/妊娠糖尿病妊婦の切迫早産管理

著者: 衛藤英理子 ,   増山寿

ページ範囲:P.827 - P.831

●糖尿病合併/妊娠糖尿病妊婦では,羊水過多症や易感染性による切迫早産のリスクがある.

●切迫早産の治療薬である塩酸リトドリンには血糖値を上昇させる副作用があり,希釈溶液としても5%ブドウ糖注射液または10%マルトース注射液が使用されるため,血糖値が上昇しやすい.また,硫酸マグネシウム水和物にもブドウ糖が含まれるため,特に塩酸リトドリンとの併用症例では血糖値の上昇に注意する.

●胎児肺成熟や頭蓋内出血予防目的にベタメタゾンが投与される場合には,母体の高血糖から周産期合併症をきたす可能性があり,血糖管理に留意する必要がある.

早産期前期破水(pPROM)の管理

著者: 大井理恵

ページ範囲:P.832 - P.837

●臨床的絨毛膜羊膜炎(CAM)の所見が認められる場合は遂娩(分娩誘発もしくは帝王切開)を行う.

●臨床的CAMがない場合,妊娠34週以降は遂娩または陣痛発来待機を行い,26〜33週では予防的抗菌薬投与を行いつつ待機的に管理する.

●上記2点が原則であるが,どの週数においても自施設で管理可能な状態かどうかを新生児科とよく協議することが鉄則である.

症例

軽症型βサラセミア合併妊娠の1例

著者: 吉野なな実 ,   池田枝里 ,   遠藤瑞穂 ,   辻中安菜 ,   常見浩司 ,   橘涼太 ,   芦田敬

ページ範囲:P.838 - P.843

▶要旨

 サラセミアはグロビン産生低下による先天性の溶血性貧血および小球性貧血である.

 症例は38歳女性.妊娠歴は2妊1産.妊娠初期検査で小球性低色素性貧血を認め,鉄剤を処方された.中期検査で貧血の改善はなく,その後,鉄剤は処方されなかった.血液検査で鉄欠乏は認めなかった.父と兄に貧血の家族歴があり,サラセミア貧血が疑われた.血液塗抹標本では,赤血球大小不同,標的赤血球,奇形赤血球を認めた.ヘモグロビン分画検査では,HbF,HbA2の上昇を認めた.遺伝子検査で軽症型βサラセミアと診断された.妊娠中はHb 9g/dL前後で経過し,胎児の発育は順調だった.妊娠39週3日に自然経腟分娩となった.

 一般に妊娠時には鉄欠乏性貧血を伴いやすく,貧血に対して鉄剤を投与されることが多い.一方,サラセミアでは鉄過剰になりやすく,鉄剤の過剰投与は母体の不整脈やうっ血性心不全などのリスクとなる.鉄剤不応性の小球性貧血ではサラセミアを疑うことが重要である.

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目次

ページ範囲:P.752 - P.753

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.844 - P.844

バックナンバー

ページ範囲:P.845 - P.845

次号予告・奥付

ページ範囲:P.848 - P.848

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻10号(2015年10月発行)

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69巻9号(2015年9月発行)

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今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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