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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科78巻4号

2024年04月発行

雑誌目次

増刊号 産婦人科医のための緊急対応サバイバルブック Ⅰ. 緊急対応に備える

救急外来からのコールの受け方

著者: 津田弘之

ページ範囲:P.8 - P.12

●コンサルテーションにおいて「型」をもつことが重要である.

●救急外来対応マニュアルを作成し,救急外来に従事する研修医にコンサルトすべきタイミング,鑑別診断,救急外来で対応可能な病態などについてわかりやすく記載しておく.

●研修医を対象に勉強会を開催するなど,普段からコミュニケーションを図りコンサルトしやすい雰囲気を醸成しておく.

術後急変に対応するための周術期管理の留意点

著者: 太田剛

ページ範囲:P.13 - P.17

●術後急変は,術後出血,肺血栓塞栓症,術後発熱,臓器障害などの術後合併症によって起こる.

●術後回復能力強化(enhanced recovery after surgery : ERAS)は周術期管理の質を高める.

●迅速対応システム(rapid response system : RRS)を導入することで急変の予兆を察知できる可能性がある.

迅速な超緊急帝王切開を実現するためには何が必要か

著者: 大高麻衣子 ,   齋藤繁

ページ範囲:P.18 - P.23

●超緊急帝王切開とは,「方針決定後,他の要件を一切考慮することなく直ちに手術を開始し,一刻も早い児の娩出をはかる帝王切開術」と定義される.

●より安全で迅速な帝王切開術の実施のためには母体の術前評価を短時間で網羅的に実施する必要がある.

●麻酔科医や手術室看護師などと連携することで,娩出までの時間がより短縮できる可能性がある.

母体搬送をするとき,受けるときのポイント

著者: 田丸俊輔

ページ範囲:P.24 - P.28

●母体搬送の依頼時には,まず短時間で搬送を受ける側に緊急度と想定している診断を伝えたあとで,さらに必要な情報を順序立てて説明することが重要である.

●母体搬送の依頼を受ける際には,まず依頼者の情報から緊急度を推定し,自施設での受け入れ可否の判断を行う必要がある.

●母体搬送をする側,受ける側のいずれにおいても,相手側の状況を最大限に考慮して対応することがスムーズな搬送につながる.

成人・妊婦の心肺蘇生法

著者: 松田祐典

ページ範囲:P.29 - P.34

●成人の心肺蘇生では,強く・速く(100回/分)・絶え間なく胸骨圧迫を継続する一方,胸がしっかり戻るまで圧迫を解除することも重要である.

●妊婦の心肺蘇生は成人とまったく同じだが,死戦期帝王切開・子宮左方移動・特殊な病態(局所麻酔薬中毒,高マグネシウム血症)などが考慮される.

●心肺蘇生の成功には,チームマネジメントが必須であり,必ずしも主治医や担当医がリーダーシップをとる必要はない.

死戦期帝王切開術の実際

著者: 藤田那恵 ,   加藤里絵

ページ範囲:P.35 - P.39

●死戦期帝王切開術は,心停止に陥った妊娠20週以降の妊婦に対する心肺蘇生処置の1つである.

●死戦期帝王切開術と並行して,他の心肺蘇生処置や心停止の原因検索と治療を行わなければ,母体の良好な予後は望めない.

●死戦期帝王切開術は,事前に多職種スタッフで議論のうえプロトコルを作成し,シミュレーションを繰り返し行うことで成功しうる.

新生児の心肺蘇生法(NCPR)

著者: 柴田優花 ,   諫山哲哉

ページ範囲:P.40 - P.44

●赤ちゃんの10人に1人は出生時に何らかの蘇生処置を必要とするが,そのうち9割は初期処置(=ルーチンケア+体位保持+皮膚刺激)と適切な人工呼吸で救命できる.

●初期処置後も自発呼吸がみられない,あるいは心拍が100/分未満の場合には,生後60秒以内に人工呼吸を開始する.

●質の高い新生児蘇生を行うためには,よいチームワークと定期的なトレーニングが重要である.

アナフィラキシーショックへの対応法

著者: 堀内辰男 ,   高澤知規

ページ範囲:P.45 - P.50

●妊娠中のアナフィラキシーは,周産期に発症することが多い.

●アドレナリンの投与の遅れは致命的になる.アナフィラキシーを疑ったら躊躇なく投与する.

●アナフィラキシーが発生した場合,医療者と患者の双方にとって原因物質の同定が重要である.

Ⅱ. 婦人科編 ❶症状・所見からみた疾患鑑別と病態把握《救急外来》

大量の/持続する不正性器出血の患者が来院!①

著者: 東幸弘

ページ範囲:P.52 - P.56

遭遇しやすい典型ケース

【現病歴】

 40歳,未産婦.これまでに産婦人科の受診歴なし.以前より過多月経,過長月経を自覚していた.5日前から続く大量の不正性器出血と労作時の息切れを自覚していた.倦怠感が強く,次第に体動困難となったため救急搬送となった.特記すべき既往歴や常用薬はない.

大量の/持続する不正性器出血の患者が来院!②

著者: 川﨑薫

ページ範囲:P.57 - P.61

遭遇しやすい典型ケース

 52歳,主訴は過多月経.最終月経2日目より月経量が多く持続しているため月経14日目に近医産婦人科を受診した.血液検査にてHb 4.5g/dLであり,濃厚赤血球液(RCC)6単位を輸血された.Hb 7.4g/dLまで改善したが出血は持続しており高次施設に紹介となった.超音波断層法にて5cm大の子宮筋腫を認めた.バイタルサインの異常を認めなかったが,血液検査ではHb 7.1g/dL,翌日6.6g/dLと低下がありRCC 4単位を輸血され9.4g/dLまで上昇した.子宮頸部細胞診と内膜吸引組織診にて異常を認めず,MRIでは子宮筋腫の診断であり,子宮筋腫による過多月経と鉄欠乏性貧血と診断した.子宮からの出血は少量となったため退院となった.6か月後再出血を認め,子宮内膜吸引組織診を施行したところendometrioid carcinoma G1との診断であった.画像診断では子宮体がんⅠA期相当であり腹腔鏡下子宮全摘出術,両側付属器切除術を施行した.

急性腹症の患者が産婦人科にコンサルトされてきた!

著者: 深澤宏子

ページ範囲:P.62 - P.66

遭遇しやすい典型ケース

 26歳の女性,未産婦.急な腹痛にて目が覚めた.しばらく様子をみていたが,症状が軽快せず救急受診した.意識レベルはクリア.痛みが強く,腹部全体に及び,前屈みでお腹を押さえながら歩いている.嘔気も少しあるが,便秘や下痢はしていない.これまで同じような腹痛のエピソードはない.月経周期は整,最終月経初日は約2週間前とのこと.救急外来医師の施行した経腹エコーでは,子宮の後方は不鮮明.モリソン窩にエコーフリースペースは認めない.下腹部に圧痛があることから婦人科疾患を疑われ,産婦人科に紹介となった.

来院時バイタルサイン : 血圧110/65mmHg,心拍数90回/分,体温37.0℃,SpO2 100%(room air),呼吸数15回/分,尿検査は尿が出ないため施行できていない.

卵巣に腫大・腫瘤がみられるとコンサルトされてきた!

著者: 中村智子

ページ範囲:P.67 - P.71

遭遇しやすい典型ケース

症例1 : 34歳女性,1妊1産

 月経周期は順調で,今朝まで腹部症状はなかったが,本日職場で急な腹痛が出現.歩くと響き,嘔気も治まらないため救急搬送された.苦悶表情あり,冷汗あり,ベッド上でうずくまっている.腹部は平坦,下腹部に圧痛あり,筋性防御を認める.

動悸・不安感で救急を受診したが,更年期障害が疑われる?

著者: 寺内公一

ページ範囲:P.72 - P.74

遭遇しやすい典型ケース

52歳,女性.

【主訴】動悸,不安,息切れ,めまい,肩こり,易疲労感,ほてり,発汗,憂うつなど

❶症状・所見からみた疾患鑑別と病態把握《術後急変》

意識レベルが低下した!(意識障害)

著者: 清野学

ページ範囲:P.75 - P.77

遭遇しやすい典型ケース

 78歳.卵巣癌疑いで手術予定であった.術前検査でDダイマー高値であり,造影CT検査で下肢静脈血栓を認めた.開腹による子宮全摘,両側付属器摘出,大網切除,播種切除を施行した.播種を認めステージⅢC期と思われた.術後HCUに入室.術後5時間で意識レベルの低下を認めた.傾眠傾向であり,左上下肢の筋力低下あり.血圧低下なくドレーン排液は淡血性.頭部CTを撮影したが,異常所見なし(図1).脳神経外科に診察を依頼し,頭部MRIを撮影したところ,右中脳動脈の梗塞を認めた(図2,3).術後に低分子ヘパリンを投与していたため血栓溶解療法の適応とならず,血栓回収療法を施行した.

徐々に熱が上がってきたが,どうしたらいい?(発熱)

著者: 清野学

ページ範囲:P.78 - P.79

遭遇しやすい典型ケース

 56歳.3経産.子宮頸癌に対して広汎子宮全摘を施行した.術後6日目から37℃後半の発熱を認め,術後8日目には39℃の発熱を認めた.炎症反応の上昇と下腹部痛を認めた.経腟超音波で左骨盤底にエコーフリースペースを認め,同部位に圧痛を認めた.造影CTを撮影したところ,骨盤左側にリンパ囊胞を形成しており,同部位の感染が疑われた(図1).

呼吸が苦しいと訴えはじめた!(呼吸・循環障害)

著者: 清野学

ページ範囲:P.80 - P.81

遭遇しやすい典型ケース

 38歳.初産婦.骨盤位のため選択的帝王切開を施行.術後1日,初回歩行を行ったのち,ベッドサイドに座ったところ気分不快と呼吸苦を訴えた.顔面蒼白で冷汗を認めた.血圧低下と頻脈があり,SpO2は90%と低下していた.酸素投与を行いつつ造影CTを撮影したところ,右肺動脈主幹部に血栓塞栓症を認めた(図1).循環器内科にコンサルトし,カテコラミンを投与し循環動態を安定させ抗凝固療法を開始した.

尿量が少ない! ドレーンからの排液が止まらない!(術後出血)

著者: 清野学

ページ範囲:P.82 - P.83

遭遇しやすい典型ケース

 58歳.2経産.多発子宮筋腫に対して子宮全摘術を施行.術後疼痛が強くNSAIDsおよびオピオイドを使用したが十分な除痛が得られなかった.尿量が30mL/時未満であり,ドレーンからは血性排液が多かった.血液ガス分析でヘモグロビン値の低下を認め,術後出血を疑った.輸血をオーダーしつつ造影CT検査を施行したところ,左子宮動脈断端部から造影剤の漏出を認め(図1a),多量の血性腹水が疑われた(図1b).

❷婦人科救急疾患への対応法

出血性黄体囊胞破裂

著者: 北出真理

ページ範囲:P.84 - P.89

遭遇しやすい典型ケース

【症例】28歳

【妊娠分娩歴】1妊0産

卵管妊娠破裂/頸管妊娠出血

著者: 石川博士

ページ範囲:P.90 - P.94

遭遇しやすい典型ケース

症例1

 25歳,2妊0産,未婚,パートナーあり,人工妊娠中絶歴1回.2週間前から少量の不正性器出血が持続していたが,もともと月経不順であり放置していた.夜間就寝中に急な腹痛を自覚し,そのまま痛みが強くなり動けなくなったため,同棲しているパートナーが救急車を要請した.救急外来到着時,意識清明,血圧85/60mmHg,脈拍100回/分,顔面蒼白で表情は苦悶様,腹部に著明な圧痛,右下腹部に反跳痛を認めた.尿ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)定性検査陽性,経腟超音波で子宮内に胎囊(GS)は認められず,ダグラス窩と膀胱子宮窩にエコーフリースペース,経腹超音波で肝周囲に腹水を認めた.

卵巣腫瘍茎捻転

著者: 河合要介

ページ範囲:P.95 - P.98

遭遇しやすい典型ケース

 30代女性,未経妊.突然発症した右下腹部の鋭い痛みと側腹部や背部に放散する痛みを主訴に救急外来を受診した.微熱を認め,悪心・嘔吐も伴っていた.妊娠反応は陰性であり,採血では白血球数の軽度上昇を認めた.経腹超音波検査では圧痛部位に一致して腫瘤像を認めた.急性虫垂炎,尿管結石,卵巣腫瘍茎捻転,卵巣出血,卵巣腫瘍破裂などを鑑別疾患に考え,造影CT検査を施行したところ,骨盤内右寄りに直径70mm大の卵巣腫瘍を疑う所見があり,子宮との間に渦巻状の構造を認めた.右卵巣腫瘍茎捻転が疑われ,産婦人科にコンサルテーションしたところ,下腹部痛も持続しており,診断目的で緊急腹腔鏡下手術を行う方針となった.腹腔内を観察すると肉眼的に右卵巣が暗赤色を呈しており,壊死が疑われたが,捻転解除すると右卵巣の色調は回復傾向にあったため,右卵巣腫瘍のみ摘除し,右卵巣は温存可能であった.病理結果では一部壊死組織を認めたが,成熟囊胞性奇形腫で矛盾しない結果であり,悪性所見は認めなかった.

卵巣チョコレート囊胞破裂

著者: 可世木華子

ページ範囲:P.99 - P.102

遭遇しやすい典型ケース

症例1 : 破裂症例(図1)

 月経痛を感じたことがない,もしくは最近月経痛が強くなりLEPやジエノゲスト内服を始めたばかりである.特にきっかけもなく突然腹痛が生じて急性腹症を主訴に救急搬送となった.月経周期は排卵日周辺か月経開始日付近が多い.腹腔内に少量〜中等量の液体貯留があり自発痛がある,卵巣囊腫は大きい場合もあるが小さい場合もある.鎮痛薬と抗菌薬で比較的症状が改善することが多い.採血検査では炎症反応は軽度高値を示すことが多い.

卵巣過剰刺激症候群

著者: 瀧内剛

ページ範囲:P.103 - P.108

遭遇しやすい典型ケース

症例1

 30歳の不妊治療中の女性.月経周期は不順であり多囊胞性卵巣症候群(polycystic ovarian syndrome : PCOS)と診断されていた.前医にてゴナドトロピン療法のうえ性交渉を指導された.黄体補充目的にヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin : hCG)を3日間投与され,月経27日目に卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)と診断,症状増悪のため月経29日目に当院に救急搬送された.

 来院時の診察所見では,血圧110/70mmHg,心拍数110回/分,腹部膨満,両側卵巣は10cm大に腫大し,小骨盤腔を超える腹水貯留を認め,重症OHSSとして同日より6日間入院し輸液にて循環を保持した.入院後hCGの上昇を一過性に認めたため(生化学的妊娠),重症化が遷延することも想定されたが,hCG低下(流産)とともに腹部症状の改善を認めた.

性暴力被害/性器外傷/緊急避妊

著者: 佐藤雄一

ページ範囲:P.109 - P.114

遭遇しやすい典型ケース

症例1 : 21歳女性,未婚,0妊0産

 大学のコンパでお酒を飲み酔っ払ってしまい,同意した覚えなく友人男性から性被害に遭った.翌日,性暴力被害者サポートセンターに相談したところ婦人科診察の必要性を感じ,相談員とともに受診.診察にて暴力や性行為があったかの診察・証拠保全,性感染症の検査,緊急避妊への対応などを行った.今後,メンタルサポートや警察への届けなどを検討する.

❸術後合併症への対応法

深部静脈血栓症/肺塞栓症

著者: 天野創

ページ範囲:P.115 - P.120

遭遇しやすい典型ケース

 45歳女性,0妊0産.30歳から38歳まで月経困難症・子宮内膜症のため近医産婦人科に通院しlow-dose estrogen/progestinによる治療を受けていた.その後,転居や仕事が忙しくなったなどのため産婦人科受診が途絶えていた.最近になって下腹部痛,下腹部膨満感を自覚し近くの総合病院を受診した.超音波検査で卵巣腫瘍を認め卵巣癌が疑われたため精査加療目的に紹介となった.

 初診時の診察所見では,経腟超音波にて12cm大の囊胞内に充実部を伴う腫瘍を認めた.腫瘍の可動性は不良であり,子宮や骨盤壁との癒着が疑われた.血液検査所見では,血算,生化学検査に特に異常値は認めなかったが,CA125が817U/mL, D-dimerが12.5μg/mLとそれぞれ高値であった.骨盤MRI検査では,左卵巣に長径12cm大の内部に充実成分を伴う囊胞性腫瘍を認め,子宮内膜症に由来する卵巣癌が疑われた.胸腹部造影CT検査では遠隔転移を疑う所見を認めなかったが,総腸骨領域および傍大動脈領域に腫大リンパ節を認めた.骨盤内静脈の血栓症や肺塞栓症は造影CT検査では認めなかった.下肢超音波検査を施行したところ,左ヒラメ筋静脈から大腿静脈遠位にかけて連なる深部静脈血栓症を認めた.経口血液凝固第Ⅹa因子阻害薬であるリバーロキサバン30mg/日の内服を開始した.初診から2週間目に開腹手術を行い,術中迅速病理で卵巣癌,明細胞癌の疑いと診断されたため卵巣癌根治術(腹式単純子宮全摘+両側付属器切除+骨盤内〜傍大動脈リンパ節郭清+大網部分切除術)を施行した.周術期の深部静脈血栓症への対策は,リバーロキサバンを手術開始24時間前に中止とし,手術終了4時間後から未分画ヘパリン1万単位/日の持続点滴を開始し,術後2日目朝に中止とした.同時に術後2日目朝よりリバーロキサバン15mg/日の内服を開始とした.経過中,肺塞栓症などの症候性静脈血栓塞栓症は発症しなかった.

消化管穿孔

著者: 植田彰彦

ページ範囲:P.121 - P.125

遭遇しやすい典型ケース

 過去に手術既往があり腹腔内に癒着を認めた悪性婦人科腫瘍に対して開腹手術を実施したのち,術後経過中に腹膜刺激症状を伴う突然の強い腹痛を認めた症例.38℃の発熱,頻脈,呼吸数増加を認め,輸液管理と広域抗菌薬投与を開始.凝固系異常は認めなかった.腹部造影CT検査を行ったところ,結腸領域に腹水,腸管壁の肥厚を認め,腹膜炎,消化管穿孔と診断した.消化管外科および麻酔科コンサルトのうえで,速やかに外科的治療を実施.腹腔内の腹腔内洗浄ドレナージと穿孔部の腸管部分切除および人工肛門造設を行った.術後はバイタルサインが安定し炎症反応低下を認めたため,抗菌薬加療を4日間実施後終了した.人工肛門造設部は術後十分に期間を空け二期的に人工肛門閉鎖手術を実施した.

敗血症

著者: 川口龍二 ,   前花知果 ,   木村文則

ページ範囲:P.126 - P.129

遭遇しやすい典型ケース

 38歳女性に対して,卵巣子宮内膜症性囊胞にて腹腔鏡下卵巣囊腫摘出術およびダグラス窩癒着剝離術を行った.術後より38℃台の発熱が持続していたが,術後3日目に39℃台の発熱と急激な下腹部痛を認めた.腹部は膨満し,触診にて下腹部を中心に圧痛を認めた.腹部CTにてダグラス窩付近に膿瘍を認め,それに伴う汎発性腹膜炎と診断された.quick SOFA(sequential organ failure assessment)スコアは2点であり,さらにSOFAスコアにより敗血症と診断された.血液検査においても炎症所見は高度であり,直ちに広域抗菌薬を投与開始した.また,抗菌薬投与前に血液培養を提出し,感受性試験の結果に基づきスペクトルを狭めていった.さらに,膿瘍のドレナージが可能かどうか放射線科とも相談し,CTガイド下にドレナージ術を行い,その後,症状は改善していった.

全身性炎症反応症候群に伴う急性呼吸窮迫症候群

著者: 寺田信一 ,   大道正英

ページ範囲:P.130 - P.135

遭遇しやすい典型ケース

 当直中に,前日に手術をされた患者が突然の下腹部痛および発熱を認めるとのことで連絡があった.患者は69歳で卵巣癌に対して腹式単純子宮全摘出術,両側付属器摘出術,骨盤・傍大動脈リンパ節郭清術,S状結腸合併切除術を施行した.訪床したところ意識は清明であったが強い下腹部痛の訴えがあり,バイタルサインは38.6℃の発熱,呼吸数25回/分,心拍数100回/分,血圧80/45mmHgと,quick SOFAスコアは2点であり敗血症を疑った.診察したところ下腹部は板状硬で圧痛および反跳痛を認め,ドレーンの排液は混濁していた.血液検査所見はWBC 25,200/μL,Hb 11.1g/dL,CRP 28.8mg/dLであった.腹部CTは腸管浮腫,腹水およびfree airを認めていた.以上から縫合不全による術後腸管穿孔による腹膜炎,敗血症の診断で外科に相談し緊急手術を施行した.再開腹したところ腸管穿孔を認め,人工肛門造設術およびドレナージ術を施行した.術後は気管内挿管下にICUに入室した.ICUではquick SOFAスコアは2点以上で,PaO2/FiO2比が250と低値で胸部X線検査では両側肺野の透過性の低下を認めており,心臓超音波検査で心不全は否定的であったため敗血症に伴う呼吸窮迫症候群と診断し,人工呼吸管理のもと治療を行い改善した.

重症薬疹

著者: 長又哲史

ページ範囲:P.136 - P.140

遭遇しやすい典型ケース

 44歳,2経産の女性.子宮筋腫に対し腹腔鏡下子宮全摘術を施行後,術後5日目に発熱,炎症反応上昇を認めた.クスコ診にて少量の膿性帯下を認め,経腟エコーでは腟断端部に血腫を認めた.腟断端部の血腫,感染を疑ったため血液培養,腟培養を採取し,抗菌薬としてアンピシリン/スルバクタムを開始した.いったん解熱傾向となっていたが,抗菌薬開始後5日目に体幹の紅斑,水疱,口腔粘膜びらん,結膜充血と,38℃の発熱を認めた.抗菌薬を中止し皮膚科にコンサルトしたところ,表皮剝離面積は10%以下であった.紅斑部の迅速病理診断を行い,表皮細胞壊死を確認,眼科診にて偽膜形成を認め,Stevens-Johnson症候群の診断となった.

 メチルプレドニゾロンパルス療法ののち,プレドニゾロン1mg/kg/日で開始し徐々に漸減,後遺症なく改善を認めた.

イレウス/腸閉塞

著者: 古株哲也

ページ範囲:P.141 - P.145

遭遇しやすい典型ケース

 65歳,女性,身長161cm,体重52kg.既往歴に特記すべき事項はない.子宮体癌,漿液性癌,stage ⅠBの術前診断で,腹式単純子宮全摘出術,両側付属器摘出術,骨盤および傍大動脈リンパ節郭清,大網切除術を実施した.術後7週目に腹痛,嘔吐を主訴に救急外来を受診した.腹部超音波検査で腸管拡張とkeyboard signを認め(図1a,矢頭),単純X線検査で腸管は拡張し,鏡面像(niveau)形成を伴っていた(図1b).単純および造影CTで骨盤部小腸が拡張し,肛門側は虚脱していたが(図1c,矢印),造影効果は保たれclosed loopを疑う所見も認めなかったため,癒着による単純性腸閉塞の診断でイレウス管による保存的治療を行った(図1d).しかし,保存的治療で奏効せず,4日目に開腹術を行った.術中所見では骨盤部で小腸壁同士がヘアピン状に癒着していた.血流障害は伴わず,同部位の癒着剝離を行い手術を終了した.

術後の泌尿器合併症

著者: 黒崎亮

ページ範囲:P.146 - P.149

遭遇しやすい典型ケース

 55歳,2妊2産.閉経52歳.3か月前から続く不正性器出血を主訴に受診した.精査により,子宮体癌ⅠA期(T1aN0M0)の診断で,腹腔鏡下子宮全摘術と両側付属器切除術を行う方針とした.手術を開始したところ,子宮頸管から膀胱を剝離する操作の際に,膀胱側からの出血が止まらず,バイポーラで焼灼止血を試みるも難渋した.出血の勢いはさらに増してきたため,さらに焼灼止血を継続し,何とか止血を得ることができ,子宮全摘術と両側付属器切除術を施行した.術後4日目,急激な腹痛のため,ナースコールがあった.訪室してみると,表情は苦悶状で腹部全体の疼痛を訴えている.尿量も減少しているようだった.造影CTを撮影したところ,骨盤内に液体が貯留しており,5分の造影後期相でダグラス窩に造影剤の漏出が確認された.尿管損傷を疑い,泌尿器科医師にコンサルトし,右尿管ステント留置を行ったところ,徐々に腹痛は軽快した.

せん妄

著者: 金村昌徳

ページ範囲:P.150 - P.154

遭遇しやすい典型ケース

 症例は80歳.偶発的に発見された卵巣腫瘍のため他院より紹介された.MRIでは卵巣がんを疑う所見があり,開腹手術が必要と判断した.本人は最近物忘れがひどく,話の辻褄が合わないことが多くなってきたので軽い認知症ではないかと患者家族から疑われている経緯があったが,外来受診の段階では意思の疎通も良好で,術前の手術説明に対しても理解良好であったため予定通り手術を施行した.腹式単純子宮全摘出術,両側付属器摘出術,大網部分切除が施行された.既往に弁膜症の治療歴があり抗凝固薬を内服していたため硬膜外麻酔は併用せず全身麻酔のみで手術を施行した.手術時間は3時間,出血量は200mLで手術終了した.手術当日は傾眠傾向が強く入眠がちであったが術後1日目の夜間,看護師が訪床時にうわごとのように何かをつぶやきながら点滴のルートを引っ張っているのを見つけた.危険であるためルートを触らないように指導するも「自宅へ帰る」とルートを引っ張り続け,個室であるにもかかわらず「悪者に襲われた」などの幻覚を疑う言動があり,看護師2人で制止するもベッドから立ち上がろうとする行動が続いた.

コンパートメント症候群

著者: 恒遠啓示 ,   嶋洋明 ,   大道正英

ページ範囲:P.155 - P.159

遭遇しやすい典型ケース

 当直中,昨日手術された患者が,右側下肢の疼痛を訴えているという連絡が入った.その患者は38歳で未婚,BMIが34と肥満の方であった.多発子宮筋腫に腹腔鏡下筋腫核出術を施行した.手術時間が6時間半と長時間であった.出血量は840mLと多かったが,回収式自己血輸血で550mLほど返血している.確認のために訪床すると右側下肢が腫大し圧痛があり,運動障害も出ているようだ.本日の採血でCKが3,450U/L(基準値 : 30〜200U/L)と異常値を示している.コンパートメント症候群を疑い,直ちに整形外科医に相談した.整形外科医はすぐにコンパートメント内圧を測定したが,コンパートメント内圧が23mmHgであり,30mmHg以上と高くないので,筋膜切開は行わずに経過観察の方針を示した.診断を圧座症候群とした.症状は1週間後には改善し,歩行はできている.

❹オンコロジック・エマージェンシーへの対応法

発熱性好中球減少症

著者: 市村友季 ,   大上健太 ,   角俊幸

ページ範囲:P.160 - P.164

遭遇しやすい典型ケース

 卵巣癌ⅢC期術後(suboptimal surgery)でパクリタキセル+カルボプラチン+ベバシズマブによる薬物療法を受けている68歳の患者が,治療6日目に38.6℃の発熱を主訴に時間外受診した.合併症に慢性気管支炎があり,口内炎による治療中で疼痛のために食事は食べやすくしたものを摂取している.卵巣癌治療以前から咳と痰の症状があったが増悪はなく,そのほかの自覚症状はなかった.診察所見で異常はみられず,胸部X線も今回の化学療法実施前の所見と変化はなかった.血液検査では白血球数は800/μL(好中球20%,単球3%)と低値であった.発熱性好中球減少症の診断基準を満たし,かつ高リスク症例と考えられたため入院による治療を勧めた.入院後,血液培養・喀痰培養などを実施したうえでセフェピム4g/日(2g/回×2回/日)による治療を開始した.

間質性肺炎

著者: 馬淵泰士 ,   井箟一彦

ページ範囲:P.165 - P.169

遭遇しやすい典型ケース

卵巣癌再発,67歳女性

 プラチナ製剤抵抗性再発卵巣癌(肺転移および腹膜播種)に対し,ゲムシタビン投与7日後に,呼吸苦症状およびSpO2が94%と低下が認められた.胸部CTにて,右肺上葉や両側肺下葉などにすりガラス陰影が認められた(図1).血中KL-6(基準値:≦401.2U/mL)は,23,450U/mLであった.感染性肺炎は臨床的に否定的であった.上記より,ゲムシタビンによる薬剤性間質性肺炎と診断した.被疑薬中止により改善した.

腫瘍崩壊症候群

著者: 岡愛実子 ,   中川慧

ページ範囲:P.170 - P.176

遭遇しやすい典型ケース

 76歳女性.既往歴なし.腹部膨満感を主訴に来院した.経腟超音波検査にて左付属器領域に充実成分を伴う10cm大の腫瘤性病変を認めた.骨盤部造影MRI検査,胸腹部造影CT検査にて骨盤内に10×7cm大で一部に充実成分を含む多房性腫瘤,広範囲に及ぶ腹膜播種,脾臓,肝臓への多発転移,腹水貯留を認めた.腹腔内観察および組織採取を目的とした審査腹腔鏡手術を施行したところ,広範な腹膜,横隔膜,腸管,大網,肝表面に播種病変を認め,Fagottiスコア12点であった.腹膜播種病変より組織を採取し,病理学的検査により高異型度漿液性癌,ステージⅣBと診断された.初回化学療法としてパクリタキセル+カルボプラチンが投与された.4日後より,嘔気,下痢,動悸,尿量低下を認めた.血液検査でUA 9.9mg/dL,K 5.3mmol/dL,P 9.5mg/dL,Cre 2.2mg/dLを,12誘導心電図で心室性期外収縮を認め,clinical TLSと診断した.速やかにICUへ入室し,生理食塩水を用いた大量補液,フェブキソスタット投与にて加療を開始した.また,持続的にバイタルサイン,心電図,4〜6時間ごとの血液検査,水分in/out量をモニタリングし,腎臓内科医やICU担当医とも連携をとりながら管理を行った.治療開始後,症状は速やかに改善し,血液検査値も正常化し,6日後には一般病棟へ移動した.患者は予定通り化学療法を継続できた.

腫瘍による脊髄圧迫

著者: 小林佑介

ページ範囲:P.177 - P.181

遭遇しやすい典型ケース

 74歳,2妊2産,卵巣漿液性癌ⅢC期.4年前にprimary debulking surgeryが行われ,腹腔内播種や骨盤および傍大動脈リンパ節転移を認めたが播種巣を含め全切除できcomplete surgeryとなった.そののちに補助化学療法と維持療法により治療継続するも再発を認め,化学療法5th lineまで行い病勢制御を試みるも増悪していた.直近のCT検査では膵体部,肺,肝臓表面,頸椎・胸椎・両側肋骨・左恥骨・両側大腿骨の骨幹部に再発巣を認めていた.今後の治療方針を外来で相談していたが,背部痛が増強したため緊急入院し,オピオイド製剤で疼痛管理を行った.入院後3日目に排尿・排便障害が出現したため,緊急でMRI検査を行ったところ第4,第5胸椎後方に溶骨性変化を認めたことから脊椎転移腫瘍が脊柱管内に進展したことによる脊髄圧迫と診断した.オンコロジック・エマージェンシーと判断し,翌日より第2〜第7胸椎に対して緊急で姑息的放射線照射を行った.さらに,入院後7日目には両下肢の対麻痺が出現したため,ステロイドパルス療法も併用した.放射線療法および薬物療法により背部痛は軽減したが膀胱・直腸障害や麻痺症状は残存し,ADLの低下とともに細菌性肺炎を合併したことで永眠された.

免疫関連有害事象

著者: 西川忠曉

ページ範囲:P.182 - P.188

遭遇しやすい典型ケース

症例1

 再発子宮頸がんに対してKEYNOTE-826レジメン(パクリタキセル+カルボプラチン+ペムブロリズマブ+ベバシズマブ)を投与中の患者が意識障害で搬送された.急患室で測定した静脈血ガスでは血糖値426mg/dLならびに著明なアシドーシス(HCO3 10mEq/L)を認め,尿中ケトン体は3+を示していた.

Ⅲ. 産科編 ❶症状・所見からみた疾患鑑別

妊婦が頭痛・めまい・意識障害を訴えて来院した!(神経系症状)

著者: 永田愛 ,   三浦清徳

ページ範囲:P.190 - P.195

遭遇しやすい典型ケース

症例1

 34歳,初産婦.妊娠初期よりつわり症状が持続しているが,最近嘔吐の回数は減少し,体重は増加傾向に転じていた.妊娠前より時折めまいを自覚し耳鼻科を受診することがあったが,現在内服薬は持っていない.妊娠18週2日,めまい,嘔吐を主訴に夜間救急外来を受診した.

 バイタルサインは血圧125/88mmHg,心拍数76回/分,体温36.7℃, SpO2 98%(room air).座位で閉眼したまま応答するが,従命可能.頭痛なし.眼華閃発なし.

妊婦が息苦しいと訴えて来院した!(呼吸器系症状)

著者: 高橋司 ,   齋藤昌利

ページ範囲:P.196 - P.200

遭遇しやすい典型ケース

症例1 : 37歳女性,6妊3産(帝王切開3回)

 既往歴は帝王切開以外特になく,家族歴も特になかった.自然妊娠で妊娠成立した.妊娠32週に規則的な腹部の張りを訴え,入院管理となった.入院後も張りは落ち着かず,リトドリン塩酸塩の持続点滴が開始された.妊娠37週での帝王切開術を予定し,妊娠35週に行った術前検査では,採血,心電図,胸部X線で異常を認めなかった.妊娠37週3日に既往帝王切開術後妊娠のために脊椎麻酔下に選択的帝王切開術を施行した.児は2,632gの男児で術中出血量は753gであった.帰室後は特に問題なく経過していた.

 術後1日目,離床する際に呼吸苦の訴えあり,SpO2は92%(room air)であった.酸素1L/分投与により96%まで改善し,呼吸苦は軽減した.しかし,酸素投与をやめるとSpO2は再び90〜92%に低下し,呼吸苦が増悪した.

妊婦が胸痛・動悸・息切れを訴えて来院した!(循環器系症状)

著者: 金川武司

ページ範囲:P.201 - P.204

遭遇しやすい典型ケース

 37歳,初産婦.既往歴なし.体外受精で妊娠が成立した.非妊娠時体重58kg(BMI 24).妊娠38週に血圧が140/94mmHgの上昇を認めていたが,尿蛋白は陰性であった.体重は67kgであった.妊娠40週2日に陣痛が発来し経腟分娩に至った.分娩後は呼吸困難の症状なく産褥5日目に退院した.退院時体重は67kgであった.

 退院後より体調が優れず,退院後翌日より呼吸困難感が出現した.同日の産褥6日目に救急外来を受診した.受診時の評価で血圧141/119mmHg,心拍数156回/分,呼吸数30回/分,体温36.8℃,酸素飽和度95%(酸素3L/分)であった.胸部X線写真で心拡大,胸水,肺うっ血を認めた(図1).心エコーでは左室駆出率は20〜30%.急性心不全の診断がなされ,フロセミドとカルペリチドが開始されたが,改善されないため循環器専門病院に搬送された.

妊婦が腹痛・下痢・下血・嘔吐を主訴に来院した!(消化器系症状)

著者: 宮坂尚幸

ページ範囲:P.205 - P.209

遭遇しやすい典型ケース

症例 : 32歳,女性,1妊0産

主訴 : 腹痛

妊娠初期の妊婦の性器出血をどう鑑別診断する?

著者: 米森恵美 ,   桑田知之

ページ範囲:P.210 - P.213

遭遇しやすい典型ケース

症例1 : 40歳,3妊0産

 妊娠6週(最終月経より推定).妊娠5週の時点で子宮内に胎囊が確認された.そのあとから,付着する程度の少量の性器出血が持続している.

妊娠中期以降の妊婦の性器出血をどう鑑別診断する?

著者: 高橋宏典

ページ範囲:P.214 - P.218

遭遇しやすい典型ケース

 40歳,初妊.不妊クリニックで凍結融解胚移植(顕微授精,胚盤胞移植)により単胎妊娠が成立した.既往歴は特にない.順調に経過していたが,妊娠24週6日の妊婦健診で全前置胎盤の状態であることが認識されていた.妊娠26週4日に性器出血のため,救急外来を受診.腹痛は認められなかった.腟鏡診上,腟内には新鮮な出血の貯留がみられた.経腟超音波上,後壁主座の部分前置胎盤(図1)で,子宮頸管長は40mmと正常であった.ノン・ストレス・テストではreactiveで,不規則な子宮収縮が認められた.出血が持続していたため入院管理とし,リトドリン塩酸塩の点滴治療が開始された.ベタメタゾンについては出血がおさまりつつあったので,投与されなかった.

❷周産期救急疾患への初期対応

切迫早産/早産

著者: 米田哲

ページ範囲:P.219 - P.222

遭遇しやすい典型ケース

症例1

 27歳,2妊1産(前回は,妊娠30週の自然早産であった).自然妊娠が成立後,近医(NICU併設のない市中病院)にて妊婦健診を受けていた.妊娠27週0日,児の推定体重は1,000g,胎盤・臍帯に異常を認めなかった.子宮頸管長は20mmと短縮傾向にあったが,自覚症状に乏しく,自宅安静を指示されていた.妊娠28週0日,就寝後,突然の腹痛を自覚し,少量の出血を認めたため,通院中の病院を受診した.当直の産婦人科医が診察したところ,子宮口はすでに3〜4cm開大しており,陣痛発来と判断した.子宮収縮抑制薬の点滴治療を指示しつつ,NICUのある3次施設へ連絡後,すぐに救急車を呼び,新生児用の聴診器とアンビューバックを携帯しつつ同乗し母体搬送した.搬送中に怒責感がさらに強くなり,破水したとの訴えがあった.診察すると,すでに発露状態であり,次の怒責で児頭より娩出となった.第一呼吸は認め,筋緊張はしっかりしていた.救急車内にあったバスタオルで新生児をくるみ,保温に努めた.自発呼吸を認め,心拍数は120〜130回/分であったが,次第に,多呼吸,陥没呼吸,全身チアノーゼを呈したため,アンビューバックにて呼吸を補助しつつ,搬送先に電話にて状況を説明した.

警告出血を伴う前置胎盤

著者: 角田陽平 ,   桑原慶充

ページ範囲:P.223 - P.227

遭遇しやすい典型ケース

【シチュエーション】大学病院,当直医2人,NICUあり,夜間当直帯

【症例】40歳,3妊0産

常位胎盤早期剝離

著者: 田野翔 ,   小谷友美

ページ範囲:P.228 - P.232

遭遇しやすい典型ケース

症例1 : 28歳,1妊0産,既往歴なし

【現病歴】妊娠36週6日に持続する強い腹痛を主訴に当院を受診した.不正性器出血はなく,胎動は明らかなものは感じなくなった.腹痛は間欠的で1時間前に突然始まった.これまでの妊婦健診で異常の指摘はなかった.

【初診時所見】体温37.0℃,血圧102/69 mmHg,脈拍87回/分.超音波断層法で7×3cmの胎盤後血腫を認め(図1),胎児心拍は確認できなかった.内診で子宮口は1cm開大しており,性器出血はなかった.

HELLP症候群/急性妊娠脂肪肝

著者: 森川守

ページ範囲:P.233 - P.238

遭遇しやすい典型ケース

 症例は妊娠28週の初産婦.妊娠経過は順調であったが,2週間前の妊婦健診で140/90mmHg台の高血圧を初めて認め,自宅血圧測定が開始となった.4日前から37℃台の発熱,胃痛,嘔吐・下痢があった.3日前に飲食が困難となり近医内科を受診し,ウイルス性胃腸炎と診断され,ブチルスコポラミンの筋肉内投与と胃腸薬を処方され帰宅した.自宅で服薬していたが,症状は改善がなかった.前日に自宅血圧が130/80mmHg台から150/90mmHg台へ上昇した.胃痛がひどく飲水もできなくなっていた.本日,心窩部痛の増強,胎動の減少を主訴に,時間外受診された.血圧は160/100mmHg台,尿蛋白は4+だった.下肢の浮腫を認めたが,体重は1週間前に比べ3kg減少していた.胎児心拍数モニタリングで軽度の遷延一過性徐脈を認めた.血液検査結果はHb 15.9g/dL,Ht 45.6%,Plt 25,000/zL,T-Bil 2.4mg/dL,AST 231U/L,ALT 198U/L,LDH 978U/L,UA 9.8mg/dL,Cre 2.3mg/dL.血小板輸注を行ったのちに全身麻酔下で緊急帝王切開を施行した.

周産期心筋症

著者: 神谷千津子

ページ範囲:P.239 - P.244

遭遇しやすい典型ケース

 37歳,1経1産.強い呼吸困難感のため,救急車で来院した.1か月前に,妊娠38週で重症妊娠高血圧腎症を診断された.妊娠中の体重増加は15kgで,浮腫が顕著であった.分娩誘発を試みるも分娩停止のため,帝王切開術を施行された.分娩後数日の経過で血圧は正常域に回復したが,浮腫の軽減はなかった.分娩後から労作時の息切れ,倦怠感の自覚症状があったが,産後の症状と考え,産科主治医には伝えず,予定通りの日数で退院した.退院後,徐々に症状が強くなったが,我慢して育児を続けていた.1週間前に,安静時にも呼吸困難感が出現したため,近くの内科クリニックを受診した.気管支喘息と診断され,吸入薬が処方された.喘息治療は無効で,さらに症状が進行し起座呼吸となったため,家族が救急要請した.救急車内でのバイタルサインは,体温36.5℃,血圧146/90mmHg,脈拍120回/分,SpO2 90%(酸素投与により94%に改善)であった.なお,妊娠前の既往歴や心臓病の家族歴はない.

❸分娩時・産褥期の緊急対応

肩甲難産

著者: 石川浩史

ページ範囲:P.245 - P.248

遭遇しやすい典型ケース

 38歳,身長156cm,非妊時体重78kgの経産婦.妊娠中期に妊娠糖尿病を指摘されており,最終的な胎児推定体重は3,600gであった.妊娠41週2日に陣痛発来のため入院.分娩第1期は8時間,途中で希望により硬膜外麻酔を導入し効果は良好であった.分娩第2期は遷延しすでに2時間経過していた.母体疲労・第2期遷延の適応にて急速遂娩の方針とし,妊産婦および立ち会っていた夫に吸引分娩の方針とすることを説明した.児受けの看護師に新生児蘇生法(NCPR)の準備をするように指示.硬膜外麻酔の効果を確認.導尿し,内診にて子宮口全開大,児頭先進部St+3,回旋異常はなく,吸引分娩の要約を満たしていることを確認した.会陰切開を入れ,陣痛に合わせて吸引分娩3回目にて児頭が娩出したが,児頭が産道に後戻りしようとしており,助産師が児頭を牽引しても前在肩甲が娩出されない.医師に交代して児頭を牽引しても同様である.マクロバーツ法を試みたが効果はない.ウッズスクリュー法という方法の名前は知っているが,とっさのことで手技が思い出せない.児頭が徐々に青黒い色になってゆく.さあ,どうする…….

臍帯下垂・脱出

著者: 関口和企 ,   落合大吾

ページ範囲:P.249 - P.254

遭遇しやすい典型ケース

 35歳,2妊1産.前回は41週経腟分娩で児は3,000gだった.今回の妊娠では40週の妊婦健康診査において胎児推定体重が2,500gと,胎児発育不全を指摘されていた.

 妊娠41週0日に誘発分娩目的で入院した.入院時の内診所見で児は先進が頭,下降度−3以上,子宮口0cm,展退度0%のため,メトロイリンテル40mLを留置した.翌朝午前9時にメトロイリンテルを抜去し,10時からオキシトシンによる分娩誘発を行った.その間トイレは妊婦自身で歩行してもらっていた.午前11時に自然破水し,下降度−2,子宮口5cmまで進行した.また,破水後より繰り返す軽度変動一過性徐脈を認めた.その後陣痛は増強し,午前12時で下降度−2,子宮口8cmとなったため分娩室まで歩行移動した.移動後に分娩監視装置を装着すると高度な変動一過性徐脈を認め,その直後から胎児の心拍数が60回/分台を持続するようになった.内診をすると臍帯が腟内に触れ,臍帯脱出と診断した.臍帯の用手的還納を行い,妊婦に努責をかけてもらい子宮口が全開大になってから吸引分娩で児を娩出した.急速遂娩の決定から10分程度で娩出するつもりだったが,実際は28分かかった.児はアプガースコア1分値0点,5分値1点であり,重症新生児仮死であった.

羊水塞栓症

著者: 小田智昭 ,   伊東宏晃

ページ範囲:P.255 - P.263

遭遇しやすい典型ケース

症例1 : 心肺虚脱型羊水塞栓症

 41歳経産婦,分娩予定日超過のため妊娠41週に分娩誘発を行った.オキシトシン点滴開始4時間後,子宮口5cm開大時に自然破水した.その5分後に呼吸困難,気分不快を訴え,胎児持続性徐脈を認めた.全身をガクガクとふるわせたあと意識消失した.腹部は板状硬であった.すぐに手術室で超緊急帝王切開を行った.子宮切開時に血性羊水を認めた.児Apgar scoreは1点(1分値)/3点(5分値)で臍帯動脈血pH 6.8であった.児娩出時に母体は心停止したが心肺蘇生を行い,数分で自己心拍再開した.胎盤後血腫は認めなかった.胎盤娩出後から非凝固性出血が子宮内腔および子宮切開部より続き,子宮は弛緩した状態のまま用手圧迫や子宮収縮薬を使用してもまったく収縮しなかったため,子宮腟上部切断術を行った.発症時ヘモグロビン濃度(Hb)9.0g/dL,血小板数(Plt)10.8万/μL,フィブリノゲン値(Fib)<50mg/dL,プロトロンビン時間(PT)22.6秒〔PT時間−国際標準比(PT-INR)1.92〕,フィブリン分解物質(FDP)>1,200μg/mL,Dダイマー(DD)>600μg/mLであった.大量輸血,フィブリノゲン濃縮製剤の投与を行ったが,再び心停止したあとは自己心拍再開せず死亡した.羊水塞栓症血清マーカーは亜鉛コプロポルフィリン-1(ZnCP1) 3.0 pmol/mL,シアリルTn(STN) 180.0U/mL,C3 69.0mg/dL,C4 7.0mg/dL,C1インヒビター活性 <25%とすべて異常値であった.病理解剖を行い,心肺虚脱型羊水塞栓症と診断した.

子宮破裂/切迫子宮破裂

著者: 関口敦子

ページ範囲:P.264 - P.270

遭遇しやすい典型ケース

症例1

 34歳,3妊2産.第1子は帝王切開分娩,第2子は吸引分娩.今回もtrial of labor after caesarean section(TOLAC)希望があり,妊娠39週に陣痛発来,子宮口4cm開大で入院した.入院後の分娩進行は緩慢で,入院10時間後に子宮口全開大を確認,しかしその直後の怒責時に患者が腹部の激痛を訴え,遷延一過性徐脈を呈し計測が困難となった.再び内診すると児頭が上昇して触知できず,完全子宮破裂と判断してグレードAで緊急帝王切開術を行った.開腹時に胎児躯幹が子宮外へ脱出しており,腹腔内出血を認め,子宮下節筋層が前回帝王切開創部から右方頭側へ延長し断裂していた.子宮動脈断裂は免れていたが破裂創が大きく腟上部切断術を施行,総出血量は約2,800mLであった.児のApgar scoreは1分値1点,5分値3点でNICU入室,のちに低酸素脳症と診断された.

子宮内反症

著者: 金西賢治

ページ範囲:P.271 - P.275

遭遇しやすい典型ケース

 33歳,女性,3妊2産.妊娠40週4日で陣痛発来にて入院となった.これまでの妊娠健康診査では問題はなかった.分娩進行も問題なく子宮口全開大時に自然破水したのち,頭位にて正常経腟分娩に至った.新生児は男児で3,560g,アプガースコアは1分後9点,5分後10点であった.児娩出後30分以上経過したが胎盤が娩出されないため,左手で子宮底を圧迫しつつ,右手で臍帯をやや強めに牽引したところ,抵抗を感じながら胎盤は娩出された.胎盤とともに暗赤色の腫瘤が腟内から会陰部まで突出し,同時に患者は激しい痛みを訴えた.患者の意識は清明で血圧110/70mmHg,脈拍100回/分,体温38.6℃であった.完全子宮内反を考え,疼痛緩和と子宮の弛緩を期待しニトログリセリンを投与し,用手的な整復を試みた.術者の左手で内反した子宮底を覆うようにしながら頭側に押し上げようとしたが,反転部位の絞扼輪の抵抗が強く,激しい痛みもあり成功しなかった.出血は持続し,血圧も80/60mmHgと低下,顔面も蒼白となったため,急速に細胞外液を点滴しながら手術室に搬送し,循環状態を安定させ全身麻酔下で再度,用手的整復術により子宮を整復した.整復子宮の維持と子宮からの出血に対し,子宮内止血バルーンタンポナーデによりその後の出血も減少低下し,全身状態も安定した.

産科危機的出血

著者: 中村永信 ,   松永茂剛

ページ範囲:P.276 - P.282

遭遇しやすい典型ケース

 39歳,1妊0産,A病院で妊婦健診を行い,破水後翌日の妊娠39週2日にオキシトシン点滴での分娩誘発を行った.誘発後7時間で子宮口は全開大し,誘発後9時間で続発性微弱陣痛を認め徐々に陣痛発作の間隔は延長していった.最終的には分娩停止の適応で,誘発後11時間経過した時点で吸引分娩を施行した.児は3,750gの男児.胎盤娩出後から子宮収縮が不良となり,子宮内バルーンタンポナーデを行った.

 分娩時出血は1,200mL,産後1時間で再度500mLの出血を認めた.産後1時間時点でのバイタルサインは血圧104/65mmHg,心拍数110回/分であり,ショックインデックスは1以上となった.

産科領域のDICへの対応

著者: 板倉敦夫

ページ範囲:P.283 - P.286

遭遇しやすい典型ケース

 32歳の特にリスクを認めない39週の初産婦が子宮口全開大後,自然破水をした.その後胎児心拍数陣痛図(CTG)で突然の徐脈を認めた.意識は清明,橈骨動脈を触知して血圧の著しい低下がなく,CTGの心音と母体脈拍が異なることを確認した.酸素を投与し,腹部の触診を行ったが異常な硬さは感じなかった.左側臥位にして内診したが,臍帯は触知しなかった.児頭は小泉門先進,矢状縫合縦径に一致,先進部は+4であったことから,鉗子分娩で児を娩出した.出生体重3,046g,アプガースコア4/7,臍帯動脈ガス分析 : pH 7.09であった.新生児蘇生の初期措置を行っていると,助産師より性器出血が多いと声がかかり,交代して双手圧迫を行いながら人員を集めた.さらにルートを確保してオキシトシン,エルゴメトリンを投与したが,双手圧迫を解除すると出血する状態が持続した.出血に凝血塊を認めず臨床現場即時検査(POCT)でフィブリノゲン82mg/dLであったことから「産科危機的出血」宣言を行い,フィブリノゲン製剤3g,赤血球製剤(RBC)6単位,新鮮凍結血漿(FFP)6単位を同型ノンクロスでオーダーした.検査室よりフィブリノゲン78mg/dL,FDP 238μg/mL,アンチトロンビン(AT)92%,Hb 8.4g/dLであると連絡があった.最終的にRBC 12単位(RBC-LR-2 : 6パック),FFP 12単位(FFP-LR120 : 6パック,FFP-LR240 : 3パック),フィブリノゲン製剤6gを投与し,出血量3,560gで止血が得られた.後日,亜鉛コプロポルフィリン<1.6 pmol/mL,シアリルTn抗原(STN)65.0U/mLと報告があった.

❹妊産褥婦の合併疾患への対応法

喘息増悪(発作)

著者: 黑川裕介 ,   武藤愛 ,   吉里俊幸

ページ範囲:P.287 - P.293

遭遇しやすい典型ケース

 24歳,初妊婦,20歳から現在まで喫煙中.小児期から喘息に対してかかりつけ医で薬物治療を行っていたが,普段から薬物のアドヒアランスは不良のうえ,禁煙していなかった.約4週間前に市販の妊娠検査薬で陽性となったため妊娠に気づいていたが産婦人科を受診していなかった.また,最近季節が変わり,夜間軽度の喘息発作が頻回に出現していたが,かかりつけ医も受診していなかった.本日,少量の性器出血を主訴に夜間に総合病院を受診し,産婦人科医が初期対応した.診察で妊娠8週相当であった.受診時に呼吸困難を伴う喘息増悪が出現し,苦しくて横になれないほどの呼吸困難を訴え,動作も困難であったために,喘息発作を疑い,内科当直医へ引き継いだ.精査の結果,気管支喘息増悪(中発作)と診断され,β2刺激薬吸入,全身性ステロイド薬投与などの外来治療を2時間行うも反応不十分であるため,入院管理となった.入院後,喘息に対してのβ2刺激薬吸入と全身性ステロイド治療を行い,約1週間後には改善し退院可能となった.産科医が再度診察し妊娠9週の診断となった.退院時に改めて禁煙を指導し,妊娠中の気管支喘息管理は普段から吸入ステロイド薬を使用することで喘息を増悪させないことが重要であると説明した.

高血圧/高血圧性脳症/脳卒中

著者: 笠井絢子 ,   青木茂

ページ範囲:P.294 - P.298

遭遇しやすい典型ケース

 37歳,1妊0産.既往歴・合併症なし.身長155cm,非妊娠時体重54kg,BMI 22.4kg/m2.自然妊娠.妊娠初期から近医クリニックで妊婦健診を受けていた.妊娠初期の血圧は108/68mmHg,尿蛋白陰性であった.健診時の血圧は130/90mmHg程度で推移していた.妊娠39週6日に前期破水で入院.入院時血圧123/93mmHgと拡張期血圧は高値であったが,入院時尿蛋白は陰性だった.自然に陣痛が発来したが,入院6時間後に血圧179/113mmHgとなったため,ニカルジピン塩酸塩持続点滴を開始した.この間,頭痛などの自覚症状は認めなかった.入院7時間後,意識レベル低下,痙攣発作を認めたため,子癇発作を疑い,硫酸マグネシウム点滴を開始し,当院へ転院搬送を依頼した.その後,自然に意識レベルは改善したが,再度2回痙攣発作を認め,著明な高血圧201/137mmHg,および胎児徐脈80bpmを認めた.当院到着時,麻痺や瞳孔不同は認めなかったが,Glasgow Coma ScaleでE1V1M4と意識レベル低下を認め,不穏状態であった.血圧155/84mmHgで,胎児心拍は80bpmと徐脈を認めた.鎮静および気管挿管を行い,頭部単純CTで脳卒中がないことを確認したうえで,子癇発作疑い,胎児機能不全の診断で緊急帝王切開術を施行した.術後に意識レベルは改善したが,ICU入室とした.手術翌日の頭部単純MRIにて両側後頭葉,一部右前頭葉にfluid attenuated inversion recovery(FLAIR)画像で高信号,拡散強調画像で低信号領域を認め,子癇発作と診断した.

劇症型A群β溶血性レンサ球菌感染症

著者: 早田英二郎

ページ範囲:P.299 - P.302

遭遇しやすい典型ケース

 30歳台,経産婦.妊娠36週の昼頃から下痢を認めた.22時頃に発熱と腹痛が出現したため近隣の産科診療所を受診した.受診時,体温38.8℃,血圧122/74mmHg,脈拍117回/分,SpO2 94%(酸素10L),呼吸回数30回/分,病歴聴取時に少しボーっとした受け答えであった.腹部は板状硬,胎児心拍数陣痛図で繰り返す遅発一過性徐脈を認めた.血液検査などの結果が判明する前に常位胎盤早期剝離,敗血症の疑いで直ちに総合周産期母子医療センターへ救急搬送し,23時頃に搬送先医療機関の手術室に入室し,緊急帝王切開術を実施した.手術中に前医から「妊娠35週に咳嗽および咽頭痛のため経口抗菌薬の内服を開始した」との情報提供を受け,常位胎盤早期剝離のほかに,劇症型A群溶血性レンサ球菌感染症による敗血症を疑った.術中から抗菌薬(アンピシリン,クリンダマイシン)を投与するとともに,輸血,フィブリノゲン製剤,アンチトロンビン製剤などの補充療法,集中治療室での全身管理を行った.血液の培養検査でgroup A Streptococcus(GAS)を認め,Streptococcal toxic shock syndrome(STSS)と確定診断した.

急性虫垂炎

著者: 太田菜美 ,   南佐和子 ,   井箟一彦

ページ範囲:P.303 - P.307

遭遇しやすい典型ケース

 29歳の初産婦.妊娠31週5日より切迫早産のため前医に入院中であった.妊娠35週5日より38.8℃の発熱,右下腹部痛,腹膜刺激症状が出現し,炎症反応(WBC 13,500/μL,CRP 10.8mg/dL)の高値を認め,当院へ搬送となった.単純CTで虫垂の腫大を認め,先端部に液体貯留,周囲の脂肪織濃度の上昇を認めた.穿孔の診断には至らなかったが膿瘍形成の可能性があり,急性虫垂炎の疑いで,発症から40時間で緊急手術を施行した.腹部CTで虫垂は臍高付近に認めたため,臍を中心として約12cm傍腹直筋切開を行った.虫垂は穿孔しており膿汁様腹水を認めた.妊娠子宮を刺激しないよう虫垂を切除後,腹腔内洗浄を行った.術後も腹膜炎症状が改善せず,妊娠継続,経腟分娩は困難と判断し,2日後の36週1日に緊急帝王切開術を施行し,2,549gの女児を分娩した.黄白色の混濁した腹水を認め,腹腔内洗浄とドレナージを施行した.術後麻痺性イレウスを認め,絶食管理を要したが,帝王切開術後12日目に退院となった.

糖尿病性ケトアシドーシス

著者: 牧尉太

ページ範囲:P.308 - P.312

遭遇しやすい典型ケース

症例 : 39歳,1妊1産

【既往歴】前児妊娠時妊娠糖尿病

【家族歴】父 2型糖尿病

甲状腺クリーゼ

著者: 成瀬勝彦

ページ範囲:P.313 - P.316

遭遇しやすい典型ケース

 32歳の初妊婦.妊娠前より甲状腺機能亢進症を指摘されており,プロピルチオウラシルの処方を受けていたが,妊娠を機に転居し内分泌内科が遠方になったため産婦人科で同量の処方を続けていた.妊娠経過に異常はなかった.

 妊娠39週,陣痛発来を主訴に産婦人科に夜間受診したが,その際に体温39.4℃,血圧130/84mmHg,脈拍150回/分,また陣痛によるものとしては明らかにおかしい著明な発汗と錯乱した発言がみられ,その後意識がもうろうとし始めた.COVID-19迅速抗原検査は陰性.血圧の上昇がないことから高次施設への搬送を躊躇したが,意識障害が顕著となったことで周産期母子医療センターへの搬送を決定.搬送先でコンサルトされた内科当直医が頸部腫脹を見出し,既往歴の聴取から甲状腺クリーゼを疑って血液検査を行い,確定した.妊娠終結が望まれたが手術侵襲の危険もあったことからひとまず経腟分娩をめざすこととし,自然に分娩進行があったためヨウ化カリウムとプロピルチオウラシルの投与を行って経過をみた.幸い経腟分娩となり,母体の状態もその後安定した.

全身性エリテマトーデスの増悪

著者: 田中博明 ,   田中佳世

ページ範囲:P.317 - P.321

遭遇しやすい典型ケース

 30歳台.初産婦.20歳台に全身性エリテマトーデス(SLE)と診断されていたが,転居を契機にフォローアップは自己中断されていた.定期的に発熱していたが,近医で処方された解熱鎮痛薬で対処していた.妊娠後は,妊婦健診を受けていた産婦人科医にSLEを診断されたことがあることは申告していたが経過観察とされ,妊婦健診を受けていた.妊娠26週,季節性インフルエンザに罹患し,1週間経過しても解熱せず,全身倦怠感が増悪したため健診施設を受診した.受診時,全身浮腫,高血圧,蛋白尿を認め,妊娠高血圧症候群(HDP)を疑われたため高次施設へ搬送された.搬送後,内科と共同で精査を行いHDPではなくSLEの増悪の可能性が強く疑われた.すぐにプレドニゾロン,免疫抑制薬の投与を開始したが,汎血球減少,腎機能低下,肺高血圧症など重度の臓器障害を認めたため,妊娠の継続は困難と判断され,搬送翌日に妊娠を終了した.

てんかん

著者: 佐々真梨子 ,   笠井靖代 ,   寒川早織

ページ範囲:P.322 - P.327

遭遇しやすい典型ケース

 28歳女性.初産婦.大学生の頃から睡眠不足を契機に倒れることを繰り返していた.24歳時に意識消失および強直間代性痙攣を起こし,救急搬送された.てんかんの診断でレベチラセタム1,000mg/日の内服を開始した.以降,脳外科クリニックで抗てんかん薬の処方を受けており,怠薬することなく内服を継続し,発作なく経過していた.

 自然妊娠が成立し,妊娠中も抗てんかん薬の内服を継続し,発作を起こすことなく母子ともに妊娠経過は順調であった.妊娠39週2日に2,782gの男児を自然分娩した.分娩時間は15時間30分,分娩時出血量は350gであった.産後は頻回授乳のため睡眠不足が続いたが,産後経過は概ね良好であった.産褥4日,午前5時頃,児のおむつ替えをしていたところ,突然転倒した.同室にいたほかの褥婦よりナースコールがあり訪室したところ,意識は消失しており,四肢は痙攣していた.

外傷/交通外傷

著者: 江沙音 ,   兵藤博信

ページ範囲:P.328 - P.334

遭遇しやすい典型ケース

 34歳女性,2妊1産.既往歴なく妊娠経過は良好であった.妊娠32週2日,歩行中に左側より普通自動車に追突されERへ救急搬送となった.目撃者によると,交差点を右折しようとした時速20km程度の普通自動車が横断歩道を歩行中の患者に衝突し,患者は1 mほど飛ばされ倒れており,周囲の人が救急車を要請した.来院時,会話は可能であるが,事故当時の状況を覚えていなかった.バイタルサインは安定しており,右顔面,右前腕,右下肢に擦過傷を認める以外に特記所見はなかった.focused assessment with sonography for trauma(FAST)で腹腔内出血を疑う所見はなく,頭部CTでも異常所見はなかった.子宮収縮感はなく胎動は感じられ,胎児超音波検査およびノンストレステストでも異常所見を認めず,児の健常性は保たれていると考えられ,帰宅とした.翌日,朝より持続する腹痛を主訴に来院されたところ,腹部は触診で硬く,腟鏡診で少量の性器出血を認めた.ノンストレステストで遷延一過性徐脈を認めたため,常位胎盤早期剝離を疑い緊急帝王切開とした.

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目次

ページ範囲:P.2 - P.5

奥付

ページ範囲:P.336 - P.336

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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