文献詳細
文献概要
増刊号 産婦人科医のための緊急対応サバイバルブック Ⅱ. 婦人科編 ❸術後合併症への対応法
術後の泌尿器合併症
著者: 黒崎亮1
所属機関: 1埼玉医科大学国際医療センター婦人科腫瘍科
ページ範囲:P.146 - P.149
文献購入ページに移動遭遇しやすい典型ケース
55歳,2妊2産.閉経52歳.3か月前から続く不正性器出血を主訴に受診した.精査により,子宮体癌ⅠA期(T1aN0M0)の診断で,腹腔鏡下子宮全摘術と両側付属器切除術を行う方針とした.手術を開始したところ,子宮頸管から膀胱を剝離する操作の際に,膀胱側からの出血が止まらず,バイポーラで焼灼止血を試みるも難渋した.出血の勢いはさらに増してきたため,さらに焼灼止血を継続し,何とか止血を得ることができ,子宮全摘術と両側付属器切除術を施行した.術後4日目,急激な腹痛のため,ナースコールがあった.訪室してみると,表情は苦悶状で腹部全体の疼痛を訴えている.尿量も減少しているようだった.造影CTを撮影したところ,骨盤内に液体が貯留しており,5分の造影後期相でダグラス窩に造影剤の漏出が確認された.尿管損傷を疑い,泌尿器科医師にコンサルトし,右尿管ステント留置を行ったところ,徐々に腹痛は軽快した.
55歳,2妊2産.閉経52歳.3か月前から続く不正性器出血を主訴に受診した.精査により,子宮体癌ⅠA期(T1aN0M0)の診断で,腹腔鏡下子宮全摘術と両側付属器切除術を行う方針とした.手術を開始したところ,子宮頸管から膀胱を剝離する操作の際に,膀胱側からの出血が止まらず,バイポーラで焼灼止血を試みるも難渋した.出血の勢いはさらに増してきたため,さらに焼灼止血を継続し,何とか止血を得ることができ,子宮全摘術と両側付属器切除術を施行した.術後4日目,急激な腹痛のため,ナースコールがあった.訪室してみると,表情は苦悶状で腹部全体の疼痛を訴えている.尿量も減少しているようだった.造影CTを撮影したところ,骨盤内に液体が貯留しており,5分の造影後期相でダグラス窩に造影剤の漏出が確認された.尿管損傷を疑い,泌尿器科医師にコンサルトし,右尿管ステント留置を行ったところ,徐々に腹痛は軽快した.
参考文献
1)Wong JNK, et al : Urinary tract injury in gynecologic laparoscopy for benign indication : a systematic review. Obstet Gynecol 131 : 100-108, 2018
2)Walker JL, et al : Laparoscopy Compared with Laparotomy for Comprehensive Surgical Staging of Uterine Cancer : Gynecologic Oncology Group Study LAP2. J Clin Oncol 27 : 5331-5336, 2009
3)Aarts JWM, et al : Surgical approach to hysterectomy for benign gynaecological disease. Cochrane Database of Syst Rev 2015 : CD003677, 2015
4)Jensen AS, et al : Iatrogenic bladder and ureteral injuries following gynecological and obstetric surgery. Arch Gynecol and Obstet 307 : 511-518, 2023
5)Sahai A, et al : British Association of Urological Surgeons(BAUS)consensus document : management of bladder and ureteric injury. BJU Int 128 : 539-547, 2021
掲載誌情報