文献詳細
増刊号 産婦人科医のための緊急対応サバイバルブック
Ⅲ. 産科編 ❹妊産褥婦の合併疾患への対応法
文献概要
遭遇しやすい典型ケース
32歳の初妊婦.妊娠前より甲状腺機能亢進症を指摘されており,プロピルチオウラシルの処方を受けていたが,妊娠を機に転居し内分泌内科が遠方になったため産婦人科で同量の処方を続けていた.妊娠経過に異常はなかった.
妊娠39週,陣痛発来を主訴に産婦人科に夜間受診したが,その際に体温39.4℃,血圧130/84mmHg,脈拍150回/分,また陣痛によるものとしては明らかにおかしい著明な発汗と錯乱した発言がみられ,その後意識がもうろうとし始めた.COVID-19迅速抗原検査は陰性.血圧の上昇がないことから高次施設への搬送を躊躇したが,意識障害が顕著となったことで周産期母子医療センターへの搬送を決定.搬送先でコンサルトされた内科当直医が頸部腫脹を見出し,既往歴の聴取から甲状腺クリーゼを疑って血液検査を行い,確定した.妊娠終結が望まれたが手術侵襲の危険もあったことからひとまず経腟分娩をめざすこととし,自然に分娩進行があったためヨウ化カリウムとプロピルチオウラシルの投与を行って経過をみた.幸い経腟分娩となり,母体の状態もその後安定した.
32歳の初妊婦.妊娠前より甲状腺機能亢進症を指摘されており,プロピルチオウラシルの処方を受けていたが,妊娠を機に転居し内分泌内科が遠方になったため産婦人科で同量の処方を続けていた.妊娠経過に異常はなかった.
妊娠39週,陣痛発来を主訴に産婦人科に夜間受診したが,その際に体温39.4℃,血圧130/84mmHg,脈拍150回/分,また陣痛によるものとしては明らかにおかしい著明な発汗と錯乱した発言がみられ,その後意識がもうろうとし始めた.COVID-19迅速抗原検査は陰性.血圧の上昇がないことから高次施設への搬送を躊躇したが,意識障害が顕著となったことで周産期母子医療センターへの搬送を決定.搬送先でコンサルトされた内科当直医が頸部腫脹を見出し,既往歴の聴取から甲状腺クリーゼを疑って血液検査を行い,確定した.妊娠終結が望まれたが手術侵襲の危険もあったことからひとまず経腟分娩をめざすこととし,自然に分娩進行があったためヨウ化カリウムとプロピルチオウラシルの投与を行って経過をみた.幸い経腟分娩となり,母体の状態もその後安定した.
参考文献
1)日本甲状腺学会,他(編) : 甲状腺クリーゼ診断ガイドライン2017.南江堂,2017
2)Satoh T, et al : 2016 Guidelines for the management of thyroid storm from The Japan Thyroid Association and Japan Endocrine Society(First edition). Endocr J 63 : 1025-1064, 2016
3)脇野 修 :甲状腺クリーゼ.臨婦産73 : 310-316,2019
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