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増刊号 産婦人科医のための緊急対応サバイバルブック Ⅲ. 産科編 ❹妊産褥婦の合併疾患への対応法
外傷/交通外傷
著者: 江沙音1 兵藤博信1
所属機関: 1東京都立墨東病院産婦人科
ページ範囲:P.328 - P.334
文献購入ページに移動34歳女性,2妊1産.既往歴なく妊娠経過は良好であった.妊娠32週2日,歩行中に左側より普通自動車に追突されERへ救急搬送となった.目撃者によると,交差点を右折しようとした時速20km程度の普通自動車が横断歩道を歩行中の患者に衝突し,患者は1 mほど飛ばされ倒れており,周囲の人が救急車を要請した.来院時,会話は可能であるが,事故当時の状況を覚えていなかった.バイタルサインは安定しており,右顔面,右前腕,右下肢に擦過傷を認める以外に特記所見はなかった.focused assessment with sonography for trauma(FAST)で腹腔内出血を疑う所見はなく,頭部CTでも異常所見はなかった.子宮収縮感はなく胎動は感じられ,胎児超音波検査およびノンストレステストでも異常所見を認めず,児の健常性は保たれていると考えられ,帰宅とした.翌日,朝より持続する腹痛を主訴に来院されたところ,腹部は触診で硬く,腟鏡診で少量の性器出血を認めた.ノンストレステストで遷延一過性徐脈を認めたため,常位胎盤早期剝離を疑い緊急帝王切開とした.
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