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雑誌目次

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臨床婦人科産科78巻5号

2024年05月発行

雑誌目次

今月の臨床 異常子宮出血(AUB)の診断と治療―婦人科診療の基本を鍛える! 診断総論―AUBの実像をより正確に把握する

異常子宮出血(AUB)とは?―わが国の「月経異常」と比較したFIGO AUB分類の理解

著者: 髙井泰

ページ範囲:P.368 - P.375

●FIGO AUB症状別分類は「標準的月経からの逸脱」という観点からの分類であり,わが国の月経異常とは共通点・相違点を有する.

●FIGO AUB原因疾患分類(PALM-COEIN分類)は,器質的疾患と非器質的疾患を並行して対象とする.

●非器質性AUBの鑑別診断・治療・管理の標準化と普及が重要である.

PALM-COEIN分類に基づくAUB診断・治療に必要な知識

著者: 小野政徳

ページ範囲:P.376 - P.379

●PALM-COEIN分類は,FIGOが2011年に提案,2018年に改訂した,非妊娠時の生殖可能年齢女性におけるAUBの原因疾患を分類するシステム(FIGO AUB System 2)である.

●PALM-COEINは,AUBの原因疾患を表す言葉の頭文字からなる.

●PALMは,子宮の器質性疾患の頭文字を示している : Polyp, Adenomyosis, Leiomyoma, Malignancy and hyperplasia.

●COEINは非器質性疾患の頭文字を示している : Coagulopathy, Ovulatory dysfunction, Endometrial, Iatrogenic, Not otherwise classified.

本邦の実態調査結果からみたAUB診断の全体像

著者: 北原慈和 ,   岩瀬明

ページ範囲:P.381 - P.387

●AUBはFIGOより発表されているAUB System 1によってAUBの有無の問診を行い,PALM-COEIN分類(AUB System 2)を用いて原因疾患の探索を行う.

●AUBは子宮異常出血だけではなく,月経周期異常も含んだ包括的な概念であることに留意する.

●PALM-COEIN分類のうち,非器質性疾患(機能性疾患)であるCOEINの鑑別診断は慎重に行うべきである.

AUBの診断手法―基本を押さえる

超音波検査―画像によるAUBの原因診断法

著者: 太田郁子

ページ範囲:P.388 - P.394

●AUBは,その原因から器質性疾患であるPALMと機能性疾患であるCOEINに分類される.

●主に外来では経腟超音波検査がfirst lineで施行されるため,まずは超音波検査による診断を紹介する.適宜重症度に応じてMRIを撮像するが,近年,経腟超音波検査の三次元化に伴い,経腟超音波検査の精度は向上している.

●特にAUBの診断の場合,疾患が出血に影響する程度を診断する必要があり,外科療法の要否も含め,超音波機器を主に子宮内膜モードに設定して検査を施行することも重要であると思われる.

ソノヒステログラフィー/子宮鏡検査―子宮内腔からの評価の実際

著者: 平池修

ページ範囲:P.396 - P.404

●ソノヒステログラフィーは経腟超音波断層法を用いれば容易に行うことができ,診断上も有用である.

●子宮鏡は子宮内腔の評価に有用であるが,専用の設備が必要である.

●器質的疾患の子宮内腔評価において,子宮内膜ポリープ,子宮筋腫,悪性疾患が重要である.

細胞診/組織診―悪性疾患の鑑別ポイント

著者: 寺尾泰久

ページ範囲:P.406 - P.411

●子宮内膜細胞診・組織診検査は,すべてのAUB患者に必要なのではなく,年齢,肥満,遺伝的因子や子宮内膜の厚さなどから検査を行うか決める.

●肥満があれば30代でも子宮体がんのリスクは高まる.また,Lynch症候群などの家族歴をもつ女性は子宮内膜生検を積極的に行う.

●内膜細胞診,内膜組織診検査は患者不利益になることもあるので,インフォームド・コンセントを得てから行うようにする.

●閉経後出血は悪性腫瘍の可能性を念頭におき,子宮頸部,腟,外陰,尿道,肛門周囲も診察する.

血液検査(内分泌・凝固)―機能性AUBの見分け方

著者: 吉野修

ページ範囲:P.412 - P.416

●機能性AUBの原因としてはAUB-O(排卵障害)が一般的であり,AUB-E(子宮内膜機能異常)は正常な排卵周期があるが月経間出血や過多月経がある場合に診断される.

●AUB分類ではAUB-OとAUB-Eの鑑別が難しく,器質性疾患が否定された場合にAUB-O,AUB-C,AUB-I,AUB-Nの診断が行われ,それに当てはまらない場合にAUB-Eとなる

AUBの管理・治療―コモンディジーズの最近の話題

子宮内膜ポリープ―外来子宮鏡手術の適応と実際

著者: 野見山真理

ページ範囲:P.418 - P.423

●子宮内膜ポリープは器質性子宮出血の原因疾患の1つであり,症候性ポリープは年齢にかかわらず悪性や不妊症の原因となる可能性があり,切除すべきと考えられている.

●子宮内膜ポリープの診断と管理には,子宮鏡手術が安全で効果的であり,外来子宮鏡手術が普及しつつある.

●子宮鏡下内膜ポリープ切除術には,レゼクトスコープ以外にも細径硬性鏡や組織回収システムなどの新しい器械が使用できるが,いずれの方法でも手術成績は同等である.

子宮腺筋症―薬物療法の進め方と手術療法の実際

著者: 熊澤由紀代

ページ範囲:P.424 - P.429

●子宮腺筋症による過多月経などの異常子宮出血に対し,子宮温存療法としてはホルモン療法が第一選択である.

●患者の年齢,腺筋症の大きさ,合併症を考慮して,治療薬を選択する.

●薬物療法無効例や子宮腺筋症による難治性不妊症・不育症には,手術療法が有効な場合がある.以前は先進医療として実施されていたが,現在は除外されている.

子宮筋腫―進む病態理解と治療の実際

著者: 前川亮

ページ範囲:P.430 - P.436

●薬物療法では,筋腫縮小と出血量減少を目的にエストロゲンとプロゲステロンの両者を低下させる方法と,出血量減少を目的としてプロゲステロン作用によって子宮内膜を菲薄化させる方法があり,前者は骨量減少や更年期症状が,後者は筋腫増大のリスクがある.

●外科的療法では,根治的な子宮全摘術を除き術後の再発が課題である.

●子宮筋腫の約70%を占めるMED12遺伝子変異陽性筋腫は,平滑筋細胞と線維芽細胞の比率が同程度で膠原線維が豊富な腫瘤である一方,MED12遺伝子変異陰性筋腫は平滑筋細胞が優位で線維芽細胞は少ない特徴を有する.

排卵障害―管理のポイントと新規治療薬の使い方

著者: 岩佐武 ,   野口拓樹 ,   田村公

ページ範囲:P.438 - P.443

●排卵障害による異常子宮出血はAUB-Oに分類される.AUB-Oの管理については年齢や原因を考慮して検討する必要がある.

●閉経移行期や思春期におけるAUB-Oでは,器質性疾患を除外したうえで経過観察されることが多い.

●多囊胞性卵巣症候群によるAUB-Oに対して排卵誘発が適用となる.2022年4月からはレトロゾールとメトホルミンが新たに保険適用薬に加わった.

稀な疾患を見逃さないために

帝王切開瘢痕部症候群と子宮動静脈奇形の診断・治療

著者: 銘苅桂子

ページ範囲:P.444 - P.447

●異常子宮出血(AUB)の原因となる稀な疾患として帝王切開瘢痕部症候群と子宮動静脈奇形がある.

●いずれも診断基準や管理方法が時代によって変化しており,その動向をup dateしたうえでの管理が必要である.

先天性出血性疾患の診断・治療

著者: 長尾梓

ページ範囲:P.448 - P.452

●産婦人科医の役割 : 過多月経や他の出血症状をもつ患者のなかには未診断の血液凝固異常の患者が潜在している可能性がある.産婦人科医がその発掘の鍵を握る.

●過多月経と出血性疾患 : 過多月経は出血性疾患の女性に最も一般的な症状で,von Willebrand病(VWD)や他の先天性出血性疾患との関連が指摘されている.

●VWDの有病率と診断率 : 日本のVWDの有病率は比較的低いが,実際の未診断患者数は多いと考えられる.これは,診断率や認知度の低さに起因する可能性がある.

●VWDの特徴と診断 : VWDはvon Willebrand因子(VWF)の低下や異常が原因の疾患である.診断には,VWF抗原量,VWF活性,第Ⅷ因子活性の3つの検査が必要.

症例

卵巣がんによるがん性腹膜炎が疑われた囊胞状変性を伴う有茎性子宮筋腫の1例

著者: 長澤佳穂 ,   伊藤雅之 ,   増田ゆうき ,   小西莉奈 ,   飯藤宰士 ,   成冨祥子 ,   村上法子 ,   津戸寿幸 ,   加藤俊 ,   亀谷英輝

ページ範囲:P.453 - P.458

▶要旨

 子宮筋腫は超音波検査などで比較的容易に診断がつくことが多いが,二次変性をきたした場合に卵巣腫瘍や子宮肉腫などの悪性腫瘍と類似した所見を示し,鑑別が困難になることがある.今回,術前検査がいずれも卵巣がんを疑う所見であったにもかかわらず,開腹手術によって変性筋腫の診断に至った症例を経験したので,報告する.

 症例は49歳,女性.腹部膨満感に加え,腹痛も出現し,前医に救急搬送された.腹部単純CT検査で卵巣腫瘍の破綻が疑われたため,当院に転院となった.腹水貯留を認め,MRI,PET-CTなどの画像検査から右卵巣がん,腹腔内播種と診断し,開腹手術を行った.両側卵巣は正常大であり,子宮底部から有茎性漿膜下筋腫を認めた.術中迅速病理検査では変性筋腫であり,単純子宮全摘術を施行した.最終診断は内膜症を合併した平滑筋腫であった.

 変性筋腫は他の疾患との鑑別が難しく,各種検査を総合的・経時的に判断することが重要である.

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目次

ページ範囲:P.364 - P.365

バックナンバー

ページ範囲:P.459 - P.459

次号予告・奥付

ページ範囲:P.462 - P.462

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

71巻3号(2017年4月発行)

今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

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合併増大号 今月の臨床 性ステロイドホルモン研究の最前線と臨床応用

69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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