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文献詳細

雑誌文献

臨床婦人科産科78巻5号

2024年05月発行

文献概要

症例

卵巣がんによるがん性腹膜炎が疑われた囊胞状変性を伴う有茎性子宮筋腫の1例

著者: 長澤佳穂1 伊藤雅之1 増田ゆうき1 小西莉奈1 飯藤宰士1 成冨祥子1 村上法子1 津戸寿幸1 加藤俊1 亀谷英輝1

所属機関: 1大阪府済生会吹田病院産婦人科

ページ範囲:P.453 - P.458

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▶要旨

 子宮筋腫は超音波検査などで比較的容易に診断がつくことが多いが,二次変性をきたした場合に卵巣腫瘍や子宮肉腫などの悪性腫瘍と類似した所見を示し,鑑別が困難になることがある.今回,術前検査がいずれも卵巣がんを疑う所見であったにもかかわらず,開腹手術によって変性筋腫の診断に至った症例を経験したので,報告する.

 症例は49歳,女性.腹部膨満感に加え,腹痛も出現し,前医に救急搬送された.腹部単純CT検査で卵巣腫瘍の破綻が疑われたため,当院に転院となった.腹水貯留を認め,MRI,PET-CTなどの画像検査から右卵巣がん,腹腔内播種と診断し,開腹手術を行った.両側卵巣は正常大であり,子宮底部から有茎性漿膜下筋腫を認めた.術中迅速病理検査では変性筋腫であり,単純子宮全摘術を施行した.最終診断は内膜症を合併した平滑筋腫であった.

 変性筋腫は他の疾患との鑑別が難しく,各種検査を総合的・経時的に判断することが重要である.

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1294

印刷版ISSN:0386-9865

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