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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科78巻7号

2024年07月発行

雑誌目次

今月の臨床 臨床力をグッとUPさせる「貧血」の知識―鉄代謝の基礎から管理・治療の具体策まで 鉄代謝の基礎

生体内の鉄代謝

著者: 内場光浩

ページ範囲:P.566 - P.571

●鉄は活性酸素産生能が高く,また沈着しやすいなど毒性が高い分子であるため,生体では,厳格に管理されている.

●鉄は能動的な排出機構がないため,腸管からの吸収および貯蔵細胞からの放出によって血中鉄濃度は調整されている.

●ヘプシジン―フェロポーチン系が鉄代謝の調整の中心を担っている.

鉄欠乏性貧血の疫学

著者: 小船雅義 ,   堀口拓人 ,   後藤亜香利

ページ範囲:P.572 - P.575

●鉄欠乏性貧血は,特に30〜40歳台の成人女性に頻繁にみられる.

●鉄欠乏の診断には,血清フェリチン値とトランスフェリン飽和度の低値の両方を重視する.

●先進国では食生活の改善により鉄欠乏の頻度が減少している.

食品からの鉄摂取量

著者: 庄司久美子

ページ範囲:P.576 - P.581

●食品中の鉄は,ヘモグロビンやミオグロビンに含まれる二価鉄のヘム鉄,植物性食品に含まれる三価鉄の非ヘム鉄,三価鉄のフェリチン鉄があり,ヘム鉄の吸収率は非ヘム鉄の吸収率の約3倍と報告されている.

●妊婦の鉄摂取量は,非妊娠女性の摂取量と同等であり,妊娠による鉄需要増大に応じて摂取量を増やせていない.

●鉄はさまざまな食品から摂取することができるため,食事バランスがよい者は鉄摂取量が多い.

貧血診療の基本

貧血治療の選択肢と選択法

著者: 兵藤博信

ページ範囲:P.582 - P.586

●輸血は,貧血の直接的で即効性のある治療法であるが,一種の「臓器移植」であり,必要最小限にとどめる.

●経口鉄剤は,ヘプシジン―フェロポーチンシステムにより鉄過剰を回避できる.2価鉄でみられる消化器症状が,3価鉄では回避できる.

●注射鉄剤は,鉄過剰回避システムを強制的にショートカットする.高濃度鉄剤によって効率的に補充を行えるが,フェリチン濃度のフォローが望まれる.

鉄欠乏性貧血と隠れ貧血(非貧血性鉄欠乏症)

著者: 岡田定

ページ範囲:P.588 - P.592

●鉄欠乏性貧血の診断は,ヘモグロビン低値(成人女性では12g/dL未満)とフェリチン低値(12ng/mL未満)で確定される.

●慢性疾患による貧血(ACD)に鉄欠乏性貧血が合併しているかどうかは,フェリチン値が30ng/mL未満なら合併している,100ng/mL以上なら合併していないと判断する.

●隠れ貧血(非貧血性鉄欠乏症)とは,ヘモグロビンは正常でもフェリチンが低下している病態である.ほとんどは見逃され,放置されているのが現状である.

二次性貧血の診かた

著者: 戸井田達典

ページ範囲:P.594 - P.598

●二次性貧血は,血液・造血器疾患以外の基礎疾患により二次的に生じた貧血の総称である.

●二次性貧血の原因として,慢性感染症や非感染性炎症性疾患・悪性腫瘍などの慢性疾患に伴う貧血,腎性貧血,内分泌・代謝疾患や肝疾患による貧血,薬剤による貧血に臨床上よく遭遇する.原因は複数併存する場合がある.

●二次性貧血の治療は基礎疾患のコントロールが重要である.腎性貧血では,赤血球造血刺激因子製剤や低酸素誘導因子―プロリン水酸化酵素阻害薬での治療を行う.

産科領域の貧血

妊婦のヘモグロビン値の基準

著者: 利光正岳

ページ範囲:P.600 - P.603

●日本人妊婦の正常なヘモグロビン(Hb)値の推移は,妊娠第1三半期から第3三半期の初期にかけて徐々に低下し,第3三半期の後期にわずかに上昇する特徴がある.

●妊婦のHb値の解釈では,妊娠時期に応じた基準範囲を考慮する.

●妊婦の低Hb値のみならず,高Hb値にも留意することが重要である.

貧血と産科合併症の関連性

著者: 植木典和 ,   牧野真太郎

ページ範囲:P.604 - P.609

●妊娠中の貧血は,慢性的な低酸素状態に対する代償反応に関連して,産科合併症が生じている.

●妊娠に伴う母体の循環血漿量増加による希釈性貧血は,母児の有害事象の低下と関連している.

●妊娠中の貧血は分娩転帰だけでなく,児の心奇形や将来的な発育・発達にも影響を及ぼす可能性がある.

胎盤位置異常に対する最適な貯血の方法

著者: 酒井あゆみ

ページ範囲:P.610 - P.617

●貯血式自己血は,同種血輸血を回避する方法として有効であるが,近年,廃棄量が多いことが問題となっている.

●貯血量を階層化した最適な自己血貯血量の検討では,貯血量600mL(300mL×2回)が同種血輸血を回避し廃棄率を抑えるという観点からは最適な貯血量であると考えられた.

●全血保存による貯血式自己血は,貧血改善と循環血漿量の増加効果は見込まれるが,凝固因子を補充し血中濃度を上昇させるためには,その濃度が不足しており,また冷蔵保存による機能の失活の可能性があり,貯血量を多くしても凝固因子を上昇させることができず,同種血輸血率は変わらないと考えられる.

婦人科領域の貧血

婦人科良性疾患に伴う貧血の管理法

著者: 大須賀拓真 ,   露木香 ,   江川美保

ページ範囲:P.618 - P.623

●女性を診療する際,隠れた過多月経,貧血・鉄欠乏を見逃さない.

●PALM-COEIN分類に沿って原因病態を考え,緊急性・症状・併存疾患・年齢・妊孕性温存の必要性・患者の希望などから個別に治療方針を検討する.

●フォローアップにおいてはヘモグロビンだけでなく貯蔵鉄も評価し,鉄のIn-Outのマイナスバランスが是正できているか判断する.

婦人科悪性腫瘍に伴う貧血の管理法

著者: 黒崎亮

ページ範囲:P.625 - P.631

●腫瘍からの大量出血患者に対しては,ヘモグロビン値にかかわらず止血処置(機械的圧迫,子宮動脈塞栓術,緊急子宮全摘術)を行う.

●治療中(手術療法,化学療法,放射線療法)の婦人科悪性腫瘍患者においては,ヘモグロビン値10g/dLを下回らないように管理するのが望ましいが,少なくとも7〜8g/dLを維持するよう対策を講じる.

●終末期患者においては,ヘモグロビン値にかかわらず,自覚症状の緩和を第一に考えて貧血の管理を行う.

女性アスリートの貧血の診かた

著者: 中村寛江 ,   能瀬さやか

ページ範囲:P.632 - P.636

●女性アスリートは複合的な要因で貧血になる可能性がある.なかでも頻度が最も高いのは鉄欠乏性貧血である.

●発育期や初経発来後には鉄需要が高まるため,ジュニア選手ではその点に留意する.

●治療は世界アンチ・ドーピング規定や,各競技会のルールに基づいて行う.

これからの代替輸血療法

人工赤血球の開発

著者: 照井克生

ページ範囲:P.638 - P.643

●産科出血や外傷などによる急性の貧血に対して,赤血球製剤輸血までの応急処置として人工赤血球に対するニーズがある.

●ヘモグロビン修飾酸素運搬体(hemoglobin based oxygen carriers : HBOCs)の開発や治験が先行したが,一酸化窒素と結合して血管収縮をきたすため,臨床使用可能な製剤は少ない.

●日本で開発された人工赤血球(ヘモグロビンベジクル : Hb-V)は,産科出血の動物モデルで有用性が示されており,臨床応用が待たれる.

症例

卵巣成熟奇形腫に対する腹腔鏡下卵巣囊腫摘出術後に生じた化学性腹膜炎・皮下膿瘍の治療に難渋した高度肥満の1例

著者: 北島遼 ,   高田友美 ,   澤本康平 ,   上杉俊太郎 ,   山本実咲 ,   大久保理恵子 ,   尾上昌世 ,   吉岡恵美 ,   後藤摩耶子 ,   堀謙輔 ,   伊藤公彦

ページ範囲:P.645 - P.650

▶要旨

 卵巣成熟奇形腫の手術中に囊腫内容物が漏出することは稀ではなく,化学性腹膜炎の誘因となりうる.今回,卵巣成熟奇形腫摘出術の際の囊腫被膜破綻に起因する術後化学性腹膜炎と創部感染により,治療に難渋した1例を経験したので報告する.

 38歳,0経妊,BMI 49.右8cm大,左10cm大の両側卵巣成熟奇形腫に対し,腹腔鏡下卵巣囊腫摘出術を実施した.術中に囊腫が被膜破綻し,脂肪成分と毛髪が漏出した.腹壁が厚く,右下腹部のポートが頻回に抜去し,再挿入を余儀なくされた.術後4日目に,炎症反応上昇と腹部造影CTにて子宮周囲および皮下に液体貯留を認めた.化学性腹膜炎および創部感染と診断して抗菌薬投与を開始したが,入院期間は28日間に及んだ.術後37日目に外来にて,皮下膿瘍に対して穿刺,排液を行った.抗菌薬投与を計2か月間,創部洗浄を計8か月間行い,治癒した.

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目次

ページ範囲:P.562 - P.563

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.652 - P.652

バックナンバー

ページ範囲:P.653 - P.653

次号予告・奥付

ページ範囲:P.656 - P.656

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

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今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

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今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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