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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科78巻8号

2024年08月発行

雑誌目次

今月の臨床 婦人科領域のホルモン治療―思春期から更年期まで 基本編 : マストな疾患を押さえる

思春期の無月経・月経周期異常

著者: 甲村弘子

ページ範囲:P.662 - P.669

●PCOSなどでみられる慢性的な希発月経やエストロゲン分泌が保たれている第1度無月経(WHO分類Group 2)では,周期的なプロゲスチン療法を行う.目的は子宮内膜保護である.

●極度の体重減少や神経性やせ症などエストロゲンが低値である第2度無月経(WHO分類Group 1)およびTurner症候群などの卵巣性無月経(同Group 3)では,エストロゲン・プロゲスチン療法を行う.これはエストロゲン欠落を改善するために行う.

●排卵障害による異常子宮出血を繰り返す場合にOC/LEPを用いる.第1度無月経,第2度無月経,希発月経にOC/LEPを投与してもよい.周期的な消退出血を起こすことができる.

機能性月経困難症

著者: 熊切順

ページ範囲:P.670 - P.674

●機能性月経困難症は器質的な疾患を伴わない病態であり,生殖年齢女性の生活の質を低下させる.

●機能性月経困難症の診断は,詳細な問診と画像診断による器質的疾患の除外が重要である.

●機能性月経困難症の治療は,NSAIDsによる対症療法が第一選択であるが,効果が不十分な場合はホルモン療法を行う.

低用量経口避妊薬と緊急避妊

著者: 福原理恵 ,   横山良仁

ページ範囲:P.675 - P.681

●低用量経口避妊薬は女性が主体的に使用でき,避妊効果が高い避妊法である.

●低用量経口避妊薬の処方前,投与継続中も薬剤のベネフィットを女性がより享受でき,リスクが低くなるよう十分な問診や指導が必要である.

●緊急避妊薬は性交後に緊急避難的に使用する薬剤であり,緊急避妊を必要とするすべての女性が対象となる.

月経前症候群・月経前不快気分障害

著者: 小川真里子

ページ範囲:P.682 - P.688

●PMS/PMDDに対するホルモン療法としては,主としてOC・LEPおよびGnRHアナログが用いられる.OC・LEPのうち,PMS/PMDDに対する効果が確認されているものは,ドロスピレノン含有の製剤である.

●GnRHアナログは強力にホルモン変動を抑制し,月経前症状を緩和するが,骨への影響などが懸念されるため,主に難治性のPMDsに対して使用が考慮される.

●米国産婦人科学会が2023年に発表したPMDsのガイドラインでは,精神症状に対する第一選択としてSSRIsを挙げている.また,漢方療法も日本では広く用いられる.

器質性月経困難症とheavy menstrual bleeding

著者: 泉玄太郎

ページ範囲:P.690 - P.695

●器質性月経困難症の治療には,LEP,ジエノゲスト,LNG-IUS,GnRHアナログなどの選択肢がある.

●子宮筋腫や子宮腺筋症の過多月経に対しては,GnRHアナログが第一選択であり,ジエノゲストやLNG-IUSの使用には注意が必要である

●婦人科特定疾患治療管理料は,器質性月経困難症に対して一定の要件を満たしたうえでホルモン療法を行う際に,算定可能である.

多囊胞性卵巣症候群女性にみられるインスリン抵抗性と高アンドロゲンへの対処

著者: 馬場剛

ページ範囲:P.696 - P.701

●PCOSの内分泌・代謝学的特徴として高アンドロゲン(アンドロゲン過剰症)とインスリン抵抗性があり,病態形成に重要な役割を果たしているとされる.

●インスリン抵抗性へのメトホルミン塩酸塩の投与は必須ではないが,排卵誘発薬に併用することで排卵効果の改善や卵巣過剰刺激症候群の低減が期待できる.

●挙児希望のないアンドロゲン過剰症にはOC/LEPが有効であるが,その禁忌症例ではメトホルミン塩酸塩の使用が考慮される.

卵巣過剰刺激症候群の予防と管理

著者: 江頭活子

ページ範囲:P.702 - P.709

《OHSS対策》

●患者のOHSSリスクを評価し,リスクが高ければ卵巣刺激法の工夫や予防投薬などでOHSSを軽度に済ませ,重症OHSSを防ぐ計画をたてる.

●生じたOHSSに対しては,重症度を軽減させ期間を短縮する目的の治療や,対症療法を行いながら,軽快を待つ.

《OHSSの予防》

●OHSSハイリスクであればアンタゴニスト法やPPOS法を選択してGnRHアゴニストトリガーを用い,全胚凍結を行うのが安全である.

●カベルゴリンは予防薬として勧められる.GnRHアンタゴニスト,レトロゾールなども考慮される.

《OHSSの管理》

●重症OHSSでは入院管理とし,輸液を行って水分出納バランスを観察する.

●改善徴候がなければ,人工膠質液やドパミン投与,腹水穿刺などを速やかに計画する.

子宮内膜増殖症

著者: 玉内学志

ページ範囲:P.710 - P.712

●異型のない子宮内膜増殖症は,①経過観察,②ホルモン治療,③手術療法,と治療選択肢が多岐にわたる.

●子宮内膜異型増殖症の基本的な治療は手術療法だが,挙児希望の症例では高用量黄体ホルモン療法も選択肢である.

●子宮内膜異型増殖症に対する高用量黄体ホルモン療法は,子宮摘出を後ろ倒しにする治療であり,挙児希望が終了した症例では子宮摘出を行うことが望ましい.

更年期障害

著者: 篠原康一

ページ範囲:P.714 - P.718

●更年期障害の主な原因は卵巣機能の低下であり,さまざまな身体的・精神的変化を引き起こす.一方で更年期は,女性にとってさまざまな節目を迎える時期でもあり,年齢に伴う身体的・精神的・心理的な要因や社会環境の変化が影響して,多種多様な精神症状を出現させるため,身体的症状のみならず,社会的背景も診断・治療において重要である.

●また,更年期には「手や足のしびれ」「朝起きたときの手のこわばり」などの症状がみられるが,関節リウマチでも「手のこわばり」という症状が認められることが知られており,症状が重篤な場合や悪化していく場合は,関節リウマチを含めた膠原病の精査を忘れないよう注意が必要である.

●甲状腺機能低下による易疲労感や冷え,不整脈,三半規管の異常によるめまい,整形外科疾患による手足のしびれ,あるいは起死念慮を伴ううつ病などを除外するために迅速な対応が必要なケースもあり,複数の診療科の受診が必要になることもある.

●患者説明のポイント : 周閉経期の女性へのHRTは,脂質異常や骨粗鬆症に対する効果もあり,メリットが大きいため,ごく小さなリスクを過大に評価しすぎないことが重要と考える.

●専門医へのコンサルト : 「イライラ感」「眠れない」といった精神神経症状を認める場合は,ホルモン補充療法が有効な場合もあるが,精神神経症状が強い場合には「不安神経症」「睡眠障害(不眠症)」の鑑別が必要であり,婦人科のみならず心療内科や精神神経科での加療を必要とする場合もある.

骨粗鬆症

著者: 北島百合子

ページ範囲:P.719 - P.725

●骨粗鬆症は,「骨強度の低下を特徴とし,骨折のリスクが増大する疾患」であり,脆弱性骨折が起こると不動・寝たきりから生命予後に影響を及ぼす可能性がある.

●骨粗鬆症の主な原因は,周閉経期のエストロゲン低下である.閉経後10年間で骨量は著明に減少し,骨量減少・骨粗鬆症へと進行する.

●更年期障害などの緩和を目的とした周閉経期からのエストロゲンを用いたホルモン補充療法は,骨粗鬆症への進行を予防することができる.

実臨床編 : こんなときどうする?

中学〜高校生の月経痛に対するLEPの長期投与の留意点は?

著者: 白土なほ子 ,   宮上景子 ,   瀧田寛子 ,   関沢明彦

ページ範囲:P.726 - P.731

●機能性月経困難症,外科的治療を要しない器質性月経困難症(若年性子宮内膜症による疼痛)に対しては,NSAIDs,鎮痙薬またはLEPを投与する1)

●OC/LEPは初経発来後から開始できるが,獲得骨量が低下する可能性があり,骨成長,骨密度への影響を考慮する必要がある2)

●各種治療にはメリットとデメリットがあり,患者・家族と相談し,患者の置かれた環境・疾病の状況・QOLへの影響に留意して個々のケースに対応する必要がある.

子宮筋腫と子宮内膜症の合併症例,ホルモン製剤をどのように選択する?

著者: 森泰輔

ページ範囲:P.732 - P.738

●子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内膜症はいずれもエストロゲン依存性疾患であり,それぞれの疾患が併存するケースも日常臨床上,頻繁に経験する.

●疼痛や過多月経などの女性のQOLを大きく損なう臨床症状に加えて,妊娠の成立や生児獲得を治療アウトカムとして考慮に入れる必要がある.

●ホルモン療法や手術療法,不妊治療,あるいは経過観察から,患者個々に適した治療方針を立案すべきである.

ジエノゲスト・LEP連続投与時にみられる繰り返す不正出血,治療継続のためのポイントは?

著者: 北島道夫

ページ範囲:P.739 - P.745

●ジエノゲストあるいはLEPを用いた月経困難症に対する薬物療法では,不正子宮出血は頻度の高い副作用であり,プロゲスチンによる破綻出血の発現機序を理解する.

●開始前の十分な服薬指導・カウンセリングが重要で,開始初期の出血は服用の継続あるいは休薬・消退で対応できるが,繰り返す場合には薬剤や投与方法の変更を考慮する.

●出血が持続する場合には器質性疾患の評価が重要であり,子宮腺筋症や粘膜下筋腫が存在する場合には大量出血をきたす場合がある.また,悪性腫瘍の鑑別を考慮する.

症例

メトトレキサートが奏効せず腹腔鏡下手術を要した腹膜妊娠の1例

著者: 夏山貴博 ,   松岡正造 ,   一宮素奈 ,   佐野友香 ,   大西和哉 ,   野々川結依 ,   新田勇人 ,   北口智美 ,   江島有香 ,   林田恭子 ,   細谷俊光 ,   宮原義也

ページ範囲:P.746 - P.750

▶要旨

 異所性妊娠は全妊娠の1.0〜1.5%の頻度で発生し,腹膜妊娠は異所性妊娠のなかで約1%の頻度と稀な疾患である1).発生部位は,ダグラス窩,膀胱子宮窩,広間膜,大網,腸管などさまざまである2).術前診断は困難であり,術中に診断することがほとんどである.今回,術前にMRI検査で腹膜妊娠を強く疑ったが,メトトレキサートが奏効せず,腹腔鏡下手術を要した1例を経験したので報告する.

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目次

ページ範囲:P.658 - P.659

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.752 - P.752

バックナンバー

ページ範囲:P.753 - P.753

次号予告・奥付

ページ範囲:P.756 - P.756

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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69巻10号(2015年10月発行)

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69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

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69巻3号(2015年4月発行)

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69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

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今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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