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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科78巻9号

2024年09月発行

雑誌目次

今月の臨床 ―外来担当医として知っておきたい―婦人科腫瘍の卵巣機能・妊孕性温存療法 子宮頸がん編

円錐切除術の適応と限界

著者: 池田仁惠

ページ範囲:P.762 - P.768

●妊孕性温存を希望する患者に対しては,obstetrical outcomesとoncologic outcomesの双方の視点に立った過不足のない円錐切除術が行われなければならない.過度な切除は厳禁!

●細胞診・コルポスコピー所見・組織診・HPV検査を総合的に評価して,適応を決定する.加えて,それぞれの手術機器の特徴を理解して,適切な機器を選択し,円錐切除術を行う.

●断端陽性症例に対しては,症例ごとに再発のリスク因子(HPV検査,年齢など)を評価して,子宮摘出術などの追加治療を検討する.

広汎子宮頸部摘出術の適応と限界

著者: 松田理沙 ,   西尾浩 ,   山上亘

ページ範囲:P.769 - P.774

●早期子宮頸がんに対する広汎子宮頸部摘出術は,適切な症例選択により腫瘍学的な安全性が担保される妊孕性温存術式とされる.

●術後に頸管狭窄を生じる場合があり,広汎子宮頸部摘出術後の約6割の症例が生殖補助医療を必要とし,また,早産率が高いことから高次周産期医療施設での妊娠管理が必要である.

●妊娠中に診断された子宮頸がんでは,必要に応じて診断的円錐切除術を行ったうえで慎重な治療方針および治療・分娩時期の決定が求められる.

広汎子宮全摘出術で卵巣温存はどこまで許容されるか

著者: 太田剛

ページ範囲:P.776 - P.782

●広汎子宮全摘出術で卵巣温存を適応するには,卵巣転移のリスクを評価して安全性を担保する必要がある.

●50歳未満で子宮頸がんⅠB期の腺癌では卵巣温存を許容できる可能性がある.

●閉経前の患者に対する卵巣摘出は,健康障害が蓄積され,全生存率に悪影響を与える.

子宮体がん編

子宮内膜異型増殖症・早期子宮体がんに対する高用量MPA療法

著者: 三橋暁

ページ範囲:P.783 - P.790

●妊孕性温存を希望する若年の子宮内膜異型増殖症および子宮体がん症例に高用量MPA療法が推奨されている.

●若年の子宮内膜異型増殖症および子宮体がん症例は,多囊胞性卵巣症候群や肥満・インスリン抵抗性を有する頻度が高く,高用量MPA療法にメトホルミンを併用することによる再発率の低下が期待される.

●現在,MPAを用いた妊孕性温存療法にメトホルミンを併用する医師主導治験が行われており,その結果が待たれる.

子宮内膜異型増殖症・早期子宮体がんに対する高用量MPA再投与はどこまで許容されるか

著者: 坂井健良 ,   山上亘

ページ範囲:P.791 - P.797

●子宮内膜異型増殖症および早期子宮体がんに対する妊孕性温存療法としての高用量MPA療法は再発率が高い.

●子宮内再発例に対する高用量MPA再投与のエビデンスは乏しい.

●現在,本邦において子宮内再発に対する反復MPA療法に関する第Ⅱ相試験(JGOG 2051試験/REMPA)が症例登録中であり,前方視的試験によるエビデンス構築が期待されている.

高用量MPA療法以外の妊孕性温存療法の選択肢

著者: 西尾真 ,   鈴木幸雄

ページ範囲:P.798 - P.802

●高用量MPA療法以外の妊孕性温存療法として,レボノルゲストレル含有IUDとそれにGnRHアゴニストやメトホルミンを併用する方法がある.

●しかし,レボノルゲストレル含有IUDの治療成績は以前から報告されているが,いずれも少数例での検討であり,実地臨床への情報の外挿が困難であった.

●今年(2024年)に入って,厳密なシステマティックレビューとメタアナリシスによるレボノルゲストレル含有IUDの妊孕性温存療法の報告があった.

子宮体がん手術で卵巣温存はどこまで許容されるか

著者: 宇佐美知香

ページ範囲:P.804 - P.809

●子宮体がん治療により外科的閉経となる症例は少なくない.

●卵巣温存の腫瘍学的な安全性について,外科的閉経によるリスクについて報告されている.

●閉経前の子宮体がん症例については,腫瘍の治療とヘルスケアの両面からのリスク・ベネフィットを考慮した治療選択が必要である.

卵巣腫瘍編

良性卵巣囊腫摘出術が卵巣機能に及ぼす影響

著者: 髙橋俊文

ページ範囲:P.810 - P.814

●システマティック・レビューによると,良性卵巣囊腫(内膜症性囊胞を除く)の囊胞摘出後にはAMH値が低下し,卵巣機能が悪化する.

●内膜症性囊胞摘出術によりAMH値が低下し卵巣機能を悪化させるが,AFCは変化しない.

●内膜症性囊胞の反復手術や両側性の囊胞摘出術は,初回手術や片側性の場合と比べ,より卵巣機能を悪化させる.

上皮性卵巣がんの妊孕性温存療法の適応と限界

著者: 新美薫

ページ範囲:P.815 - P.821

●日本における上皮性卵巣がんの妊孕性温存療法は,非明細胞癌G1/2でステージⅠA期または片側ⅠC1期,および明細胞癌ⅠA期に対しておおむね適応と判断されている.

●妊孕性温存療法後の妊娠率の低下や周産期リスクの上昇を明示する報告はない.

●妊孕性温存療法後の生殖補助医療により妊娠・出産に至った例は多く報告されている.しかし,囊腫摘出後の卵巣穿刺による腫瘍飛散リスクや卵巣組織凍結後の卵巣片の移植の安全性など,課題が残る.

上皮性卵巣がん妊孕性温存手術の工夫―3D-CTナビゲーションによる卵巣動脈温存

著者: 寺田信一 ,   大道正英

ページ範囲:P.822 - P.827

●妊孕性温存手術の適応・術式は個々の症例に応じて決定する.

●温存する卵巣への血流低下は可能な限り避ける.

●3D-CTによる血管構築は血管走行の把握に有用である.

悪性胚細胞腫瘍の治療

著者: 西川隆太郎

ページ範囲:P.828 - P.833

●卵巣悪性胚細胞腫瘍は若年発症であり,妊孕性に関わる重要な疾患である.

●通常の卵巣がんに対する化学療法や手術方針とは異なる考え方での治療となるため,過剰な手術,過剰な化学療法とならないよう,方針を決める際には注意が必要である.

●生存率,妊孕性ともに予後はよい反面,一部に予後不良となるケースがあることも忘れてはならない.

婦人科悪性腫瘍診療に伴う生殖補助医療

婦人科悪性腫瘍治療に際しての卵子・胚凍結

著者: 林正美

ページ範囲:P.834 - P.840

●がん治療の種類によっては,治療後に卵巣機能が低下することがあり,若年患者では将来の妊孕性温存が関心事項の1つになっている.

●挙児希望を有する女性がん患者に対する生殖補助医療として,パートナーがいる場合は胚(受精卵)凍結保存が推奨される.パートナーがいない場合は,未受精卵子凍結保存が考慮される.

●挙児希望がある場合,可能な限り早期に生殖補助医療を専門とする医師に紹介する必要があるが,患者の自己決定の過程においてはがん治療が最優先されるべきである.

FOCUS 自律神経温存広汎子宮全摘出術①

子宮頸がんの根治手術

著者: 金内優典 ,   加藤達矢 ,   半田康 ,   小舘英明 ,   星信哉 ,   渡利英道 ,   櫻木範明

ページ範囲:P.842 - P.846

▶要旨

 根治手術(curative surgery)とは,悪性腫瘍をその周囲組織にがん細胞が存在しないように切除することであり,これにより局所制御が得られる.radicalityとは手術が根治的(curative)であるために必要な周囲組織の切除範囲のことである.子宮頸がんに対する神経温存広汎子宮全摘出術が根治手術となるためには,がんの深達度,基靱帯浸潤,腟浸潤,神経周囲進展などを考慮した術式でなければならない.顕微鏡的な子宮傍組織・腟傍組織浸潤リスクがある症例に対して,神経温存のために子宮傍組織・腟傍組織を削るような手術は避けなければならない.腫瘍細胞が神経鞘に浸潤する所見が神経周囲浸潤(perineural invasion : PNI)であり,神経に沿って臓器外へ進展していくことが神経周囲進展(perineural spread)である.PNIは,進行期,深達度,子宮体部浸潤,腟浸潤,リンパ管侵襲,子宮傍組織浸潤,リンパ節転移などとの関連が報告されている.

症例

調節卵巣刺激に遺伝子組み換えFSHを使用しARTで生児を得たKallmann症候群の1例

著者: 和田麻美子 ,   藤峯絢子 ,   藤井調 ,   平山和宏 ,   星和彦

ページ範囲:P.847 - P.852

▶要旨

 Kallmann症候群は特発性低ゴナドトロピン性性腺機能低下症(IHH)に嗅覚障害を伴う疾患である.今回われわれは,Kallmann症候群の患者に遺伝子組み換えFSH(rFSH)を使用して調節卵巣刺激を行い,ARTで生児を得たので報告する.

 症例は31歳,アンタゴニスト法でrFSHによる調節卵巣刺激を行い,1個の顕微授精由来の胚盤胞を得,ホルモン補充周期で凍結融解胚移植し妊娠が成立した.妊娠経過は順調で,妊娠36週6日,2,386g,アプガースコア8/9の男児を分娩した.

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目次

ページ範囲:P.758 - P.759

読者アンケートのお願い

ページ範囲:P.841 - P.841

バックナンバー

ページ範囲:P.853 - P.853

次号予告・奥付

ページ範囲:P.856 - P.856

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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今月の臨床 精子・卵子保存法の現在─「産む」選択肢をあきらめないために

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今月の臨床 あなたと患者を守る! 産婦人科診療に必要な法律・訴訟の知識

71巻11号(2017年11月発行)

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71巻10号(2017年10月発行)

今月の臨床 最新! 婦人科がん薬物療法─化学療法薬から分子標的薬・免疫療法薬まで

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今月の臨床 着床不全・流産をいかに防ぐか─PGS時代の不妊・不育症診療ストラテジー

71巻8号(2017年8月発行)

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今月の臨床 若年女性のスポーツ障害へのトータルヘルスケア─こんなときどうする?

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今月の臨床 周産期メンタルヘルスケアの最前線─ハイリスク妊産婦管理加算を見据えた対応をめざして

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増刊号 産婦人科画像診断トレーニング─この所見をどう読むか?

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今月の臨床 婦人科がん低侵襲治療の現状と展望〈特別付録web動画〉

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69巻12号(2015年12月発行)

今月の臨床 婦人科がん診療を支えるトータルマネジメント─各領域のエキスパートに聞く

69巻11号(2015年11月発行)

今月の臨床 婦人科腹腔鏡手術の進歩と“落とし穴”

69巻10号(2015年10月発行)

今月の臨床 婦人科疾患の妊娠・産褥期マネジメント

69巻9号(2015年9月発行)

今月の臨床 がん妊孕性温存治療の適応と注意点─腫瘍学と生殖医学の接点

69巻8号(2015年8月発行)

今月の臨床 体外受精治療の行方─問題点と将来展望

69巻7号(2015年7月発行)

今月の臨床 専攻医必読─基礎から学ぶ周産期超音波診断のポイント

69巻6号(2015年6月発行)

今月の臨床 産婦人科医必読─乳がん予防と検診Up to date

69巻5号(2015年5月発行)

今月の臨床 月経異常・不妊症の診断力を磨く

69巻4号(2015年4月発行)

増刊号 妊婦健診のすべて─週数別・大事なことを見逃さないためのチェックポイント

69巻3号(2015年4月発行)

今月の臨床 早産の予知・予防の新たな展開

69巻2号(2015年3月発行)

今月の臨床 総合診療における産婦人科医の役割─あらゆるライフステージにある女性へのヘルスケア

69巻1号(2015年1月発行)

今月の臨床 ゲノム時代の婦人科がん診療を展望する─がんの個性に応じたpersonalizationへの道

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