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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科8巻1号

1954年01月発行

雑誌目次

原著

Mainini妊娠反應の本體に關する研究

著者: 高木繁夫

ページ範囲:P.3 - P.10

緒言
 1947年Carlos galli MaininiがBufo arena-rum (Hensel)の成熟雄を用い,妊婦尿の排精誘發作用を利用する一新妊娠診斷法を確立して以來其の本體並びに應用に關する多數の業績が發表せられた。私も先にBufo vulgaris formosus(Bo-ulenger)を主とする關東産ヒキガエルを用いて,本反應の本體は下垂體其の他の内分泌腺や神經系を介さぬ尿中性腺刺戟ホルモン(以下ホルモンを"ホ"と略),即ちL.H.の特異な血行性睾丸直接刺戟作用に基くことを證明した。更に肝剔除によつてBufo屬に關する限りは從來否定的であり,むしろ蛙種屬の特異性と見做されていたRobbinsParker (1949)のXenopus laevis及びRanapipiens,坂元,神保,竹內(1950)等のRana ca-tasebiana及びRana nigromaculataに見られたアドレナリン(以下"アド"と略)排精を證明し,進んで之等兩反應間の相似性と,其の特異性とから,兩者の相關性に關する微妙な問題を示唆すると同時に,L.H.作用の本體も畢竟其の"アド"樣作用か或は"アド"樣物質の遊離に基く間接作用なるべきことを推定した(1951年1月及び4月)。

排卵期を巡る流血中好酸球の態度

著者: 岩下芳彦

ページ範囲:P.10 - P.12

序言
 月經周期に於て副腎機能に動揺のある事は從來より或程度知られていたが,之が詳細特に排卵現象と如何なる關係にあるかは殆んど知られていない。然るに1949年Davis, Hulit等,又1951年William,Roy等の觀察によれば,排卵期に流血中好酸球數(E)は減少すると言い,亦1951年小川教授等は月經周期を物質代謝の面より觀察し,排卵期には副腎機能の關與する事を指摘した。而して1948年Thorn等はA.C.T.Hを注射すると副腎皮質からコルチゾン樣ホルモンが分泌され,其の結果血液像に變化を來すこと,特に好酸球の減少に着目し,之を副腎機能テストに應用した。從つて,生體が特別の病變を有しない場合,一定條件下に於ける好酸球數の連續測定は,副腎皮質機能の消長を或程度窺う事が出來るものと考えられる。
 そこで予は月經周期を巡るVakat—沃度酸値係數の消長を検索中,同時に好酸球數の測定を行つたところ,些か興味ある結果を得ているので此所に發表する次第である。

妊娠早期に於る人工妊娠中絶術後の初回月經に關する統計的觀察

著者: 幸崎彌之助 ,   秋穗裕美

ページ範囲:P.12 - P.14

 人工妊娠中絶術後,月經異常を訴える婦人は,吾人の日常屡々經驗する所であるが,その實態は一般に餘り知られていないので,著者等は昨年6月以降當院で人工妊娠中絶術を施行した患者で,施術時妊娠4ヵ月以前のものに就て,その初回月經を統計的に觀察した。

鹿兒島縣の離島における女性の月經調査

著者: 齋藤マサ

ページ範囲:P.14 - P.17


 今回は離島全島の材料は得られなかつたが,種子島,屋久島,竹島(三島村),中之島,平島(七島村),五島の調査をまとめ得たので,既報(公衆衞生第11巻第2號の鹿兒島における中學校高等學校女生徒の月經調査)に引續き次のように發表する。調査は昭和27年10月に五島の中學生高校生一般女性計151人について行つたものである。
 I)五島における女性の初經年令は次の通りである。

トリコモナス並にカンデイダ發育阻止物質の效果と腟内pHとの關係

著者: 室岡一 ,   宮崎知惠子

ページ範囲:P.17 - P.24

1.緒言
 産婦人科領域でも近時カンディダが問題視されるようになり,外來患者に就てカンデイダの出現率,症状,治療劑等に關する諸報告があるが,未だ治療法は確説がない。之が理由としては症状が輕いか無症状で患者に殆んど苦痛を與えないためと,一般にカンデイダ症の治療法が充分に確立されていないためとによるものと思われる。婦人科領域では殆んどその總てが腟カンデイダであるため,内臓カンディダ症に比較すればその治療法は容易ではあるが,一旦發症したカンデイダによる糜爛,帶下,掻痒,膀胱炎,腎臓炎,敗血症は仲仲難治であるから,我が領域に於ても本症の治療適劑の出現することが切望されるわけである。現今迄に表われた數種の優秀なカンデイダ發育阻止物質は試驗管内成績では極めて良好であるが,生體應用時の効果の減殺が著明である。その原因として血清の添加が効果を著減すると一部説明されているが,生體内の過程は複雑であり,試驗管内過程の如く單純ではないが,治療効果の一指針として試驗管内成績も無視することはできない。現今帶下の主因をなしているトリコモナス,カンデイダを殺菌することを目的とした各種帶下治療劑が現われつつあるが,之等製劑の中にはアルカリ状態で溶解し,酸性で藥劑の沈澱を起すものがかなり多くある。かかる製劑は賦形劑中に重曹等入れてアルカリ状態として作用させている。

腸線の吸收についての研究(II)

著者: 八田貞義 ,   功刀博 ,   石關忠一

ページ範囲:P.24 - P.27

1.まえがき
 この報告の第1報に於ては,著者らにより腸線の試驗管内消化實驗及び動物の體内埋没による吸收の度合が検討された。ここにはウサギの背筋内に埋没縫合された腸線を1週間或は2週間間隔ごどに埋没部周圍組織と共に取り出して,病理組織學的に觀察した成績について報告する。

診療室

腟式不妊手術に就いて

著者: 篠塚達三

ページ範囲:P.29 - P.31

緒言
 腟式不妊手術は患者に對する浸襲比較的少く,傷跡も見えず術後の苦痛も輕く,早期離床も可能で回復の早い利點がある。然し手術野が狹隘で手技稍複雑な缺點がある。私の實施している方法を記すと

トリコモナス腟炎に就て

著者: 渡部博 ,   矢島鑑

ページ範囲:P.33 - P.38

1.緒言
 膣トリコモナス(以下腟トと略記する)はDo-nńe (1837)により發見され,Höhne (1916)が之に基く腟の炎症たる所謂トリコモナス腟炎(以下ト腟炎と略記する)を記載したが,其の病原性に就ては其後種々論議せられ末だ確定的なものを見ない。一般にト膣が存在する場合には黄色稀薄,膿性又は白色泡沫性の帶下が増加し,屡々外陰の掻痒感を訴える者があり,又腟壁が充血し,藥液による洗源に際して疼痛を伴うことがある。これ等の症状が果して腟トの毒性によるものか或は共存する多くの雑菌によるものかは不明であるが,治療により腟トが死滅すると共に帶下が著明に減量し,掻痒等の自覺症状も消退して肉眼的にも明らかに正常状態に恢復し,腟内容の性状も改善される點等から見れば,腟トが腟炎の原因となり得ること,從つて所謂ト腟炎の存在は十分可能と考えざるを得ない。
 從來ト腟炎に對する統計的観察,腟トの培養實驗,其の治療効果等に就て數多の報告があるが,未だ幾多不明な點があり,統計的觀察に就ても比較的少數例のものが多く,從つてその結果も千差萬別である。

重症子宮外妊娠手術の術中大量輸液の問題

著者: 林桂三 ,   松島一幸 ,   井上英正

ページ範囲:P.38 - P.40

 重症の子宮外妊娠で高度の貧血状態にあるものに手術を行うと益々これを惡化せしめ死亡することがあるので,手術の時期に關しては諸家によつて意見の相違がある。木村氏は重症子宮外妊娠に於て可逆ショックと不可逆ショックとを區別し,可逆シヨツクの状態にあるものは手術の豫後がよいことを強調している。手術時には大野の輸血又は腹腟内血液の再注入(還血)が必要であり,術前及び術中のリンゲル液大量注入は血管内の血液を洗い出すので危険であるといつて反對するものが多い。破裂部位の止血と同時に大量の輸血又は還血を行い得ればこれに優ることはない。しかし實地醫家にとつて大量の血液を得ることは必ずしも容易でない。少量の輸血又は輸液で手術を行わねばならない場合もあり,手術を躊躇して時期を失することもあろう。リンゲル液の術中大量點滴注入は從來大なる手術に於て手術ショツクの豫防に賞用されているが,余等も子宮頸癌の手術には常にこれを行つて極めて便宜を得ている。最近重症子宮外妊娠の手術にも試みたので,少數例であるがその成績を報告し考察を試みたいと思う。

ネオ・ペルカミン使用成績

著者: 加藤孝

ページ範囲:P.43 - P.47

緒言
 現在婦人科領域に於ける麻醉としては,1897年,Bierにより始められた腰髓麻醉が大部分を占めており,使用藥劑としては現今ペルカミン系が愛用されているようである。この系統の麻醉藥には麻醇發現時間の遲延及び麻醉効果不確實と云う缺點があつたが,偶々最近此の點に改良を加え麻醉發見時間の短いTカイン0.2%と麻醉持續時間の長いペルカミン0.3%とを含有し,これ等の相乘作用により,より高い臨床効果を發揮するとされているネオ・ペルカミン(以下ネ・ペと略記する)の試供を受けたもので,之を實地に試み,例數は少いが若干の成績を得たのでこゝに報告する。

Pentobarbital-ScopolamineとPentobarbital-Demerolとによる分娩第I期の鎭靜・鎭痛

著者: 長內國臣 ,   齋藤博

ページ範囲:P.49 - P.51

緒言
 先進國の産科醫によつて經驗的に承認されていたPentobarbitalの邦製化にともない,その製劑ラボナによる經口注が本邦でも分娩第1期の鎭靜に適することを確めたわれわれは1),さらに同劑の靜注法併用による麻醉で効果が増強されることを認めた2)。このことはPentobarbitalが他種藥劑併用の可能性と安全性とをしめしたのみならす,むしろ効果上好ましいことを考え,今回はScopo-lamineおよびdemerol等を併用することにより,Pentobarbitalの産科的有用性とその限界とを検討することにした。

症例研究

子宮腟部混合腫瘍の1例

著者: 渡邊健

ページ範囲:P.53 - P.55

緒言
 予は最近,偶々異状出血を主訴として來院し,内診により子宮膣部筋腫と診斷,茎で之を切除し,組織検査の結果,子宮腟部混合腫瘍と判明した稀有な1例に遭遇したのでこゝに報告する。
 患者:神○き○,35歳

妊娠脊髄炎の1例

著者: 福島修 ,   荒井信造

ページ範囲:P.55 - P.57

緒言
 妊娠中には種々の疾患に罹り易いし,又疾患が妊娠の爲に増惡する場合があるのみならす,妊娠の爲に特別の疾患を起す事がある。及妊娠の生理的現象が増惡して病的となる事は少くない。而して妊娠に特有な所謂妊娠中毒症には種々あるが,就中惡阻,妊娠浮腫,妊娠腎,子癇等が最も屡々遭遇するものである。我々は當教室に於て妊娠中毒による脊髓炎と思われる1例を經驗したので此處に報告する次第である。

胎兒腹膜炎の1例に就て

著者: 楢林重樹 ,   永田弘

ページ範囲:P.57 - P.59

緒言
 胎兒腹膜炎は1838年Simpson1)によつて報告されてからその存在を注目され,その後Dorland2)は本疾患と密接な關係にある胎兒腹水について1919年に至る迄の世界の文献を再調査しその320例を報告し,我國に於ても末永3),安住4),佐佐木5)等の報告が散見されるが,何れも本疾患を稀有なものとし死産の場合が多く,時に生産でも數日内に死亡し胎兒の異常な腹部膨大を件うものでその成因に關しては,母體の梅毒或は重症傳染病(化膿性,結核性等)の胎兒移行,泌尿性器の奇型,腸管異常及びその他不明の原因等を擧げている點は一致している。
 偶々我が教室に於ても,ラボナールによる無痛分娩(産婦人科の實際第1巻第11號既報)施行中胎兒腹膜炎の1例に遭遇したので此處に報告する。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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