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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科8巻11号

1954年11月発行

雑誌目次

原著

産婦人科領域におけるポントカイン(Pontocaine)腰椎麻醉法

著者: 長內国臣 ,   久保內美知子

ページ範囲:P.625 - P.633

1.腰椎麻酔法の進展に伴うポントカインの価値
 エーテル(1842),笑気(1844)及びクロロホルム(1847)等による吸入法で始まつた麻酔法はその後注射器の発明(1853)とコカインの発見(1860,Nieman)とにより局所麻酔法が可能となり,次いで1898年A.Bierにより腰椎麻酔法が創始されるに至つた。したがつて,現在既に50有余年になるが,この間,手技並に藥剤に対し盛んな研究検討が加えられ,より安全な簡易な麻酔法へと発達してきた。先ず手技の発達では当初のBier氏原法における一律的麻酔法から,現在の調節的方法へと進み,例えば麻酔剤の比重を重くして,体位の変動により麻酔部位の調節を計するが如きであり(Pitkin,1928;英,H.Johnes,1930及び独,Kirschner 1931),最近では無痛分娩として有名になつたAdriani(1946)のサドル・ブロックSaddle blockがある。またカテーテルを用いた調節的持続注入法Continuous spi-nal anesthesia (米,Lemon,1940,米Tuohy1944)も用いられ,さらにそのカテーテルを望む高さの蜘蛛膜下腔に送り込む脊髄分節既酔法,Segmental spinal anesthesia (米,Sagalad,1947)等が代表的である。

所謂Vagostigmin-testに関する研究

著者: 齋藤幹 ,   松井輝雄 ,   新海里子 ,   長野正男

ページ範囲:P.635 - P.641

I.緒言
 1940年,米のSoskin等はProstigmin-Methyl—sulfateの連続注射が月経遅延の治療に甚だ有効であることを発表した。この際月経遅延が妊娠に原因する時はProstigminを用いても月経様出血は起らないので妊娠の早期診断法としてこの注射を利用できると述べたことは既に多くの方が御承知のことと思う。妊娠初期の臨床診断が困難なことは更めて云うまでもなく,その為に既にFriedmanの家兎排卵試験やMaininiのガマ排精反応が用いられ殆んど100%に近い的中率を示している。しかし一般臨床医にとつては,これら反応の優秀性は充分わかつているのであるが尚且つその準備に手間を要するため,より簡便な臨床的妊娠鑑別法の出現が依然として要望されていたので早速Prostigmin注射に関する多数の追試が行われた。Elertは多年の文献より月経遅延例に対する奏効率91%と述べ金子は88%と報告し,その他の追試者の成績を見ても大体70〜90%の正確さで妊娠を診断することが出来ると云うようである。然しながらこれら妊娠診断の的中率を高める為には過去における月経歴が著るしく不順な内分泌機能不全症や子宮の局所疾患が予想されるような患者を除外して比較的に狭い範囲内で試験を行う必要がある。

水溶性軟膏基剤(グアノフラシンソルベース)による子宮腟部糜爛療法

著者: 立花省吾

ページ範囲:P.643 - P.645

緒言
 子宮腟部糜爛に対する姑息療法として今日迄多種多様の方法が行われて来たが,尚その治癒は比較的困難である。先に高知・東1)は水溶性軟膏基剤(ソルベース)を子宮頸管カタル,子宮腟部糜爛等に試用しタンポン塗布剤としては理想的藥剤である事を認めている。その特徴は水にとけ易く水洗可能で,肉芽創の上皮形成を促し,そのpH4.72〜5.60は腟分泌液の正常pH4.4〜4.8に近く,毒性なく且つ安価である事である。然うしてグアノフラシン(富山化学)が抗菌性強大で水に易溶性であり,刺戟作用極めて少く,且つ創面の縮少,上皮形成を促進する作用があること(三浦2),菊地3))に着目しグアノフラシンソルベースを作成し子宮腟部糜爛に使用し好成績を收めたので,以下実験成績を報告する。

子宮内容除去術に於ける靜脈麻酔剤Amipan-Sodaの使用経験

著者: 鑓田進一 ,   壽田鳳輔 ,   星野一正

ページ範囲:P.645 - P.648

1.まえがき
 静脈内麻酔剤は1932年Evipan-Natriumの発見によりその面目を新たにし,その後更にLundyがPentothalを紹介し,Evipanよりも一層すぐれた麻酔剤として現在広く使用されている。
 Pentothal-Sodiumについては邦製品Ravonalを使用し,産婦人科領域特に妊娠初期の子宮内容除去術における使用成績について先に我々も発表した。Pentothal以後も更に改良が重ねられ幾つかの新しい製剤が作られたが,短時間麻酔剤としてすぐれたものは,何れもThiobarbiturateである点に注目すべきである。今回はその1つでありBywaterによつて初めて合成されたSurital—Sodiumの邦製品Amipan-Sodaを子宮内容除去術50例の麻酔に単独使用し,みるべき結果を得たので,その成績を簡単にまとめてみた。尚数値は無作為抽出により求めたものである。

性周期に伴う白鼠循環好酸球数の変動に就て

著者: 一戸喜兵衞 ,   中村玄三郎

ページ範囲:P.649 - P.652

 Selyeが生体の反応機構を下垂体副腎皮質系統を以つて強調したことは従来から産婦人科領域にあつて内分泌学的並びにHomeostasisの概念をあたまに婦人生体反応を考察してきた研究者達にとつて刺戟となるには充分であつた。一部下垂体副腎と性機能の問題に就てみても過去幾多報告され而も区々一致をみぬままにある之等丈献報告に対して相互の矛盾と欠陥に,もう一度新しい見地から検討を試み止揚すべき機会を与えつつある。
 当教室に於ても自律神経緊張状態を窺うVakat—沃度酸値法を以つて始つた婦人性機能,殊に排卵に関する研索は,かかる概念の導入により小川教授の排卵機序に対する広大な仮説(1951)の想定を助成し,併せてこの実証を目的とする多くの綜合的研究に進展したのであつたが,この過程の一環として本実験も行われたものである。

症例研究

急性外陰潰瘍の細菌学的考察

著者: 石井次男 ,   林公健

ページ範囲:P.655 - P.659

緒言
 急性外陰潰瘍はLipschutz(1912)によつて独立疾患として記載された経過の急性な,主として若年婦人の外陰殊に陰門及びその附近に発生する潰瘍で,潰瘍面からは毎常B.crassus(LiPsch-utz)が証明されるのみならず,時には血液や皮疹・小膿疱からも本菌が見出されることがあり,従来B.crassusが本症の病原体と考えられている。然しB.crassusを動物或いは人体に接種して潰瘍を生ぜしめたという報告はないではないがその後の追試は全て不成功に終つており,従つて本菌を以て急性外陰潰瘍の病原体と断定し得る段階までには至つていない。最近注目を浴びているのは,本症がBehcet症候群(虹彩炎・前房蓄膿等の眼症状を伴う陰部及び口腔の潰瘍)とiden-ticalなものであるとの考えである。Behcet症候群は一般にウィールス感染によつて起ると考えられているがサルファ剤やTibioneの使用によつても発病することが知られており,従つてBehcet症候群の中にはアレルギー性の原因によつて起るものもあるようである。
 何れにしても本症の原因は明らかでなく,B.crassusの意義に関しては尚お幾多の疑問が残されており更に今後の研究に待つ処が大きいが,吾吾は最近本症の1例に遭遇し,該患者より腟桿菌及びB.crassusを分離して聊か実験をも試みたので症例と共に報告する。

卵巣腫瘍の莖捻転と誤つた単頸双角子宮破裂の1例

著者: 田邊信夫

ページ範囲:P.661 - P.662

1.緒言
 子宮の発育異常又は畸形は両側Müller氏管の発育抑制を主として発生するものである。双解子宮の本邦に於ける頻度は野島氏0.218%,木村氏0.141%となつて居り之と妊娠との合併率は全妊娠の凡そ0.3%とされている。
 今回単頸双角子宮の一角妊娠の破裂を卵巣腫瘍の茎捻転と誤った例に遭遇したのでその大様を報告する。

最近經驗せる避妊用リング使用患者の妊娠3例について

著者: 今野高信 ,   木村昭二

ページ範囲:P.662 - P.663

 金属性避妊器具の長期使用によつて生体に如何なる障害,又は変化を来たすかについての報告例は,避妊効果の宣伝に比して極めて少く,僅かに松本氏が避妊リングを中心とする子宮筋腫の例及び神山,本多両氏が不正出血,子宮内膜炎様症状を惹起せる例の報告があり,妊娠例については同じく神山氏の1例があるのみである。我々は最近避妊用金属リングを子宮腔内に使用したまゝ妊娠した3例を経験したので,これを報告し諸賢の御批判を乞う次第である。

再発性後腹膜脂肪腫症の1例

著者: 馬場太郎

ページ範囲:P.663 - P.665

 後腹膜腫瘍は外科領域に属する腫瘍であるが卵集腫瘍との鑑別が困難なことがあり,婦人科医に依つて卵巣腫瘍と診断され手術が行われた例が屡屡報告されている。私は最近巨大卵巣腫瘍の診断の下に開腹した所,後腹膜脂肪腫であつた為,これの手術を実施したが爾後再発を繰返し,前後3回に亘り手術を余儀なくされた興味ある1例に遭遇したので茲に報告する。

不妊手術後の卵管移植による妊娠分娩例

著者: 山口淸 ,   山田克己

ページ範囲:P.667 - P.670

まえがき
 卵管の成形手術は一般に術後の妊娠率が不良であるが,其のうち卵管移植術は他の卵管切開術又は剥離術に比して成功例の報告が可成り多い。併し不妊手術後に本手術を行つて成功した報告は,わが国では未だ見当らない。我々は最近他医に依つて不妊手術を施された患者に就て,両側の卵管子宮内移植を行い,術後間もなく妊娠し,正常分娩に依り成熟児を得た1例を経験したので茲に報告したい。

病理解剖

子宮膣部癌初期に見られた縦隔洞リンパ節及び肺・腎・脾・腹膜転移の1剖検例

著者: 渡邊英一 ,   小川次男

ページ範囲:P.671 - P.674

I.緒言
 子宮癌の内臓転移は一般に末期に多く,1〜2の臓器に好発するのが普通である。われわれは最近子宮腟部初期の患者に放射線療法を行い腟部潰瘍を消失せしめたが,合併症たる肺結核のため死亡したと思われた症例について,死後剖検の結果肺その他多数臓器に転移巣を発見し肺結核巣を見出し得なかつた1例を経験したので,その臨床経過並に剖検所見を報告し,併せて2,3考察を試みたい。

各臓器に転移を来したDysgerminoma Ovariiの1剖検例

著者: 福田透 ,   篠塚昭夫 ,   山本龍一 ,   小松崎徹

ページ範囲:P.674 - P.680

はしがき
 卵巣充実性腫瘍約10種類のうち,転移性粘液性癌,Granulosa-cell Tumor, Dysgerminoma,Arrhenoblastoma, Theca-cell Tumor等に就いては幾多の研究及び報告があるが,未だ疑問の点が少くない。本名称は1931年Robert Myeyerが癌性実質性卵巣腫瘍Karzinomatöse soliderOvarial Tumorの像を呈するものにつき研索の結果,之が未分化の性腺実質より発生した人卵胚細胞腫瘍(Keimdrüsengeschwulst)であると主張し,Dysgerminoma Ovariiとしたのに始まり,それ以前は分類が不明であつたため種々な名称で報告されている。

新産兒の心臓奇形の1剖見例

著者: 林强爾

ページ範囲:P.680 - P.681

緒言
 新産児の死亡原因中,奇型による死亡は大きな位置を占める。殊に最近著しき治療の進歩で一般に死因疾患が激減しつゝあるとき奇型が一層注目される所以でもある。新産児の畸形で外表に現われたものは多くの報告例があるも,内臓奇形に関する報告は比較的稀れである。三谷教授は内臓奇形の頻度は1.75%より稍々大きにのぼると述べていられる。私は最近生後27時間で死亡した新産児を解剖し,肺動脈口閉鎖,右心室の強度萎縮,左心室肥大,右心房拡張,右心房の左心室への開口,単一房室間孔等の所見を認めた高度の心臓畸形に遭遇したので茲に報告する。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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