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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科9巻1号

1955年01月発行

雑誌目次

原著

卵巣機能判定に於ける膣内容細胞像の検査法に対する再検討,及び正常婦人周期性変化の連続検査成績

著者: 齋藤淳一

ページ範囲:P.1 - P.12

緒論
 動物の膣内容細胞成分の性ホルモン分泌状態に伴う変化はoucht, Moran Lataste, Heap,Loep等により周期性変化の存在が暗示せられ,Stockard and Papanicolaou (1917)がモルモットの周期性変化を始めて明確にした。その後Long and Evans (1922)のラッテ,Allen (1922)のマウスを始めとし種々の動物の変化が明らかにせられ,Allen and Doisyは此れを利用して卵胞ホルモンの定量法を報告した。
 一方人体に就いてはPapanicolaou (1925)が始めて月経周期に伴う変化を明示し,以来各方面に於いて多くの報告をみるに到つた。

妊娠子宮下部筋束の走向

著者: 中村肆郎

ページ範囲:P.12 - P.23

緒言
 日本産科婦人科学会第2回総会に於ける人工妊娠中絶方法に関する共同研究宿題報告に際し,本学尾島は,妊娠4ヵ月以後に於ける観血的切開中絶方法として,安藤—Fuchs氏子宮下部横切開術に手術実施成績を報告し,同法を紹介推奨した。該術式の特徴は従来の所謂腟式帝王切開術が,子宮頸部を外子宮口に連続して縦切開するに反し,外子宮口に関係なく子宮下部を横切開するにある。この特殊なる方式の解剖的意義を明かにする目的で,私は妊娠中期に於ける子宮につき,同術式の子宮切開部位たる子宮下部前壁の筋構造について研究を企てた。
 子宮下部の構造に関しては,僅かにH.Stieve(1927)の記述があるが,筋層及び筋束の走向に関してはふれることは少い。子宮全体の筋構造に関する文献は次の如く要約せられる。

絨毛上皮腫の臨牀的観察(第1報)—既応症並びに,現症に就て(その2)

著者: 金子光

ページ範囲:P.23 - P.30

 生物学的妊娠反応:本症84例中A.Z.R.竝びに,Friedman反応を実施したもの67例にして,この内,A.Z.R.反応を実施したもの6例,Friedman反応を実施したもの61例である。而して,本症患者に実施した生物学的反応は症例34を除いて総て陽性であつた。
 1.症例34,成○や○,20歳,P〜2,(山元,永田報告例10))。最終月経,昭和12年中旬/Ⅵより7日間,同年3/X胞状=奇胎自然分娩。その後,H細覧持続,分娩後2週間後子宮内膜掻爬術を受くるも爾出1丘し持続,12/XI当院入院。当時,心,肺異常なし,腹部右腸骨窩に抵抗感あり。内診所見,腔柔軟,子宮大さ小驚卵大,軟,圧痛なし,可動性。右附属器は手拳大,左附属器は鶏卵大,阻痛なし。分泌物は曙褐色粘液性,中等量。依つて,予宮内残留乃至絨毛上皮腫を疑い,Friedman反応を実施,陰性。8日後再度Friedman反応を実施せうも陰操。ここで出血を伴う卵簗嚢腫の病名で開腹手術施行の為検査するに,赤血球127万,白血球7200,血色素(Sahli)50%。子宮卵策造影術所見,子宮壁弛緩,子宮底部の像は.突起状の凹凸不整形,特に右側子宮角の附近薯明,術右側子宮角を熟視するに,子宮角より子宮等底に亘り栂指頭大の凹部が見える。

持続性局所麻醉剤使用の経験

著者: 石北明

ページ範囲:P.33 - P.36

 手術時の疼痛を消失せしめる為には種々な麻酔法が考案せられ,殆んど完壁に近いまでになつたのであるが,手術後の疼痛に対しては阿片製剤を慣用する他は殆んど意を用いられていない。
 しかしながら我々は手術時の鎮痛と同様手術後のそれに対しても努力しなければならない。最近アメリカでは組織に膿瘍,壊死性変化等を起さず,しかも相当長時間持続する局所麻酔剤たるEfocain (Fougera社)が創製されて汎用されている。本邦でもそれと殆んど同じ組成を有するランゲカイン(科研)が創製されたが,我々はそれを臨床上に応用して相当の効果をみとめたので,以下その概要を報告する。

妊娠初期人工中絶に対するトライレンの吸入麻醉について

著者: 山中茂 ,   秋元豊

ページ範囲:P.36 - P.39

緒言
 初期人工妊娠中絶術の麻酔法,技術,麻酔効果,副作用などに関しては,既に幾多の報告を見る。しかるに,Trichloroethylene (TRILENE)を用いた麻酔に関して,我国では,久保,田所の報告を見る程度で,この両者の報告により,初期人工妊娠中絶時,さしたる副作用なく,麻酔効果が得られることは明らかにされているが,その麻酔方法についてはなお検討する余地があるように思われる。
 一方,麻酔の効果,副作用の有無などは,麻酔の技術もさることながら,患者の体質,例えば神経質であるか否か,又,手術の難易などにより,左右されるものと考える。これらの点から,初期人工妊娠中絶に対して,Trichloethyleneの麻酔効果を検討し,成績を得たのでで報告する。

症例研究

膀帯の過度捻轉による子宮内胎兒死亡の1例

著者: 肥後晃

ページ範囲:P.41 - P.42

緒言
 臍帯の大多数は,左方或は右方に捻転して居り,その程度が生理的(6〜7回)以上の場合を過度捻転と云い,循還障碍のため胎児を致死せしめることがある。
 本症については1838年D'Outrepontにより始めて報告され,StöckelはunwersellとZirkum-skriptに分類しているが。本邦でも1917年菅野の報告以来10数例に過ぎず,最近も石塚の2例の報告があるが,猶比較的稀有である。余も最近1例経験したので迫加報告する。

膀胱に排出された腹腔内遺殘ガーゼ症例

著者: 千葉卓 ,   井坂浩三

ページ範囲:P.45 - P.46

 開腹術後,原因不明の高熱が持続し,同時に腹腔内膿瘍を形成した場合,これが再手術に際して初めて前回手術時の遺残異物によることを発見した症例や,自覚症状なしに長い年月を経過し,偶然の機会に腹腔内遺残ガーゼを発見した症例は文献上決して稀ではない。
 我々は手術後,膀胱炎様症状が種々なる化学療法によつても改善されず,膀胱鏡検査の結果,腹腔内遺残ガーゼが膀胱内に排出されたものであることを発見し,これを尿道より摘出して治癒せしめ得た極めて稀な症例を経験したので茲に報告する。

特異なる経過を辿つた卵巣癌の1例

著者: 西谷司

ページ範囲:P.49 - P.52

1.序言
 元来悪性卵巣腫瘍(卵巣癌)と云えばその主たるものとして先ずKrukenberg腫瘍を連想するのであるが,私共は次の如き特異にして興味ある経過を辿つた卵巣癌の1例に遭遇し且つそれは組織学的には膠様癌の所見を呈する転移卵巣癌の一例にして且つ手術による腫瘍の摘出後にも同時に生じ始めていたallgemeine Carcinomatosisと.でも云う可き状態が終に彼女に死の転帰を与えた経過を観察し得たので此処にその臨床経過の大略を記すと共に些かの考案を加えて見度いと思う。

半頭骨無頭無心体(緒方)の1例

著者: 板倉信一郎 ,   福西泰三

ページ範囲:P.52 - P.57

緒言
 無心体は胎児奇形のうちでも稀なものであるが一卵性双胎児で胎盤血行に吻合があつて血液循環に力学的不均衡を来した場含或は一児に心臓原基の欠損があつた場合等に一児が時に無心体として発育する事があると言われている。吾々は妊娠8ヵ月で早産した一卵性双胎児の一児が半頭骨無頭無心体緒方)であつた1例を得,剖検の結果従来あまり追究されていない体内血管系の状態について聊か所見を得たので報告する。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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