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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科9巻2号

1955年02月発行

雑誌目次

原著

乳汁分泌開始期を巡る尿係数(O/K)の消長

著者: 岩下芳彦

ページ範囲:P.61 - P.63

緒言
 乳汁分泌現象は種々なる内分泌的又神経的要素のもとに営まれ,分娩と云う精神的肉体的激変後に急激に開始される極めて複雑な性現象の一つであり之が機序に関しては.或程度内分泌学的に解明されている。然して,本現象は臨床医学的立場より見て生理的とは云え,生体反応側より之を眺めるならば,生体内には相当高度の変動が惹起されているに相違ない。我々は斯る変動を物質代謝の一面よりうかがわんとし,余等が従来より用い来つたVakat—沃度酸法(特に尿係数O/K)を用いて観察してみた。抑々O/Kは,1950年西風氏により,Bickelの提唱するVakat-O/N (尿酸化商)を修正し,尿Vakat酸素(O)と尿沃度酸値(K)との比,即ち尿Vakat沃度酸値係数(O/K)として発表されたものであつて,以来更に検討改良されつつあるが,我々は之を臨床医学,実験医学の面に広く応用し,就中排卵と云う微妙の変動をも察知するに成功し,1951年,排卵期判定新法(小川)として発表されたものである。然して泌乳現象を巡る種々なるホルモンの動きによつて惹起された生体反応に対し,O/Kは興味ある消長を示したので此処に報告する。

ネオシネフリンによる腰麻時の血圧下降対策

著者: 長内国臣 ,   久保内美知子

ページ範囲:P.63 - P.68

はしがき
 腰椎麻酔時の血圧降下防止のため,じゆうらいより血管收縮,血圧上昇剤が用いられ,わが国ではアドレナリンとエフエドリンとが採用されている。ところが欧米の成書には,この他にネオシネフリンが記載されておるので,本剤について紹介すると共に,その試作品(田辺)の臨床効果を検討したので報告する。

妊娠時に見られる赤血球沈降反應促進現象の相関因子解析に関する研究—(第1報)妊娠時に於ける赤沈及び血液諸性状の妊娠月數による変動の確認

著者: 長尾ミト子

ページ範囲:P.69 - P.77

本研究緒言
 周知の如く赤血球沈降反応(以後赤沈と略)はその操作が簡便なる上に種々なる疾患乃至異常によつて鋭敏に支配されるので,Fahraeus1)以来極めて多くの追試によつてその事の確認はなされているがその機序については未だ不明な点が多い。
 赤沈促進の種々の因子として従来Fibrinogen増加,Globulin増加,従つて血漿粘稠度の増進,赤血球減少,血色素係数の上昇等,又抑制的因子としてはAlbumin増加,Co2増加,赤血球増多従つて全血粘稠度の増進,血色素係数の減少等が挙げられて来ていたが,近来Tieseliusの電気泳動法による血漿蛋白分析法その他によつて血漿蛋白が正確に分析され得るに至つたのて,この赤沈促進の機序の解析に於いても,殊に血漿蛋白分屑との関聯についての赤沈促進の解析を検討しやうとする試みが,多くの学者により行はれ初めている。

症例研究

巨大腹壁瘢痕ヘルニアの治驗例

著者: 田中武

ページ範囲:P.78 - P.81

緒言
 往時に於ける術後瘢痕ヘルニアはそれ程珍しいものではなかつた。スルフアミン剤の改良次いで抗生物質の発見,手術手技の進歩,手術用器械の改良等に依り手術創の一次治癒の極めて容易となつた現今,術後瘢痕ヘルニアは著しく其の数を減じたと謂われている。余は昨年,子宮腔脱根治手術後に発生し,再手術にも拘らず再発,患者の歩行までも困難ならしめた巨大腹壁瘢痕ヘルニアに遭遇し,腹壁成形術に依り治癒,今日に至るも再発を見ないので,茲に報告し文献に追加したいと思う。

卵管間質部妊娠の1例

著者: 野村秀夫

ページ範囲:P.82 - P.84

 昭和27年6月右側卵管妊娠破裂を経験した婦人が昨年再び右側卵管間質部妊娠を来した珍らしい1例に遭遇したので報告する。子宮外妊娠は卵管膨大部,卵管峡部,間質部妊娠に分類されるが間質部妊娠は全妊娠の約1%と言われる子宮外妊娠数の更に約1〜3%に過ぎず比較的稀な疾患である。

外陰エスチオメーヌより外陰癌を来せる1症例

著者: 山形收

ページ範囲:P.84 - P.86

 皮膚科領域疾患中には癌腫変性を来す症例が比較的多いが,鼠蹊淋巴肉腫の末期である外陰エスチオメーヌより癌変性を来した症例は極めて少い。
 私は約8年前に外陰エスチオメーヌと診断され,該治療を種々受けたにも拘らず再三再発し,治癒傾向少く遂に之が組織学的に明かに癌変性を認めたので,その経過の概略に就き報告する。

完全内臓転錯症の1例

著者: 岡田和親 ,   加納泉

ページ範囲:P.87 - P.91

 我々は分娩時に発見せる完全内臓転錯症の1例を経験し,その家族調査に依り,同胞間に更に一人の転錯が認められた家系に遭遇したので2,3考察を加えて発表する。

左側後腹膜血腫(内精系血管破裂)の1例

著者: 井出隆夫

ページ範囲:P.91 - P.92

緒論
 本症は稀な疾患であつて従来の報告も少い,偶偶最近経験した本例は掻爬手術についで起り診断が困難であつたので報告して批判を仰ぎ度いと思う。

綜説

骨盤位に於ける豫防的頭位外廻転術

著者: 河邊昌伍

ページ範囲:P.93 - P.100

外廻転術の歴史
 抑も骨盤位分娩の母児の予後が不良であつて,これを頭位に廻転すべきを称えたのは遠くヒポクラテス学派であつた。然し今日行われる様な外廻転術は1807Wigindが妊娠中の児の位置は腹壁からの操作によつて容易に変えることが出来ることを発見してからであり,しかも同氏は未だ斜位及横位に限りこれを行つた。
 外廻転術を骨盤位に最初に行つたのは,フランスのMatteiであつた。1889フランスのPinardは骨盤位を外廻転すべきを提唱,以来骨盤位の外廻転術は先ずフランスに於て盛んに行われる様になつた。即ちRoland (1906),Pollock (1907),Levy-Solale 1922),Decugniere (1923)等の発表を見るに至つた。

診療室

子宮腟部結核に対するストレプトマイシン大量療法

著者: 落合時典

ページ範囲:P.103 - P.105

 子宮腟部結核を来す程の広汎性々器結核に対して,Streptomycin(S.M.と略す)注射殊にその大量療法がどの程度有効であるかは未だ判然としていない。しかもこの種の症例報告は少い。私は結核性卵管炎,内膜炎を伴う腟部結核に,S.M.80gを使用してその経過を観察する機会を得たのでその概要を述べておく。

ネオヂスクレンの帯下治療に対する応用

著者: 舟橋良治

ページ範囲:P.105 - P.105

緒言
 粘膜病的分泌抑制剤ネオヂスクレンは,主して耳鼻科領域における炎症性疾患粘膜の異常分泌に対して用いられているが,このたび日本新藥より本注射藥の供試をうけたので,之を経管カタル及子宮腟部びらん等に原因する帯下の治療に応用した。ネオヂスクレンは,睡蓮科植物有効エキスと抗ヒスタミン剤「Diphenhydramine hydrochlo-ride」(U.S.P.XIV)10mgを2cc中に含有する。

速報

膣及び口腔粘膜塗抹標本(Vaginal & Oral Smear)の臨床観察

著者: 松井輝雄

ページ範囲:P.107 - P.111

 発生的にMüller氏管と密接な関係にある子宮粘膜と腟粘膜が性ホルモンに対して敏感に反応する事はよく知られている事であるが,Müller氏管と全く関係のない口腔粘膜が性ホルモンの影響を受けるものであるか,もし受けるとすればどの程度のものであるかは興味深い問題である。
 これに就ては現在迄先人によつて観察されているが種々の意見がある。Daniel E.Ziskin(1948)は腟粘膜と口腔粘膜をsmear法によつて比較し特に口腔頬部粘膜は月経周期の喪失状態の際にestrogenが欠乏していると角化度が低く,これにestrogenを投与するとsmearの角化状態は腟,口腔共に平行して増加するが,周期性の変化の様な僅少の性ホルモンの増減はvaginal smearの方によく現われると云つている。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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