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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科9巻4号

1955年04月発行

雑誌目次

原著

分娩産褥時の血液性状

著者: 中山榮之助 ,   篠塚達三

ページ範囲:P.465 - P.467

 妊娠時の代謝は非妊時に比して可成りの相違点がある事は周知の事柄であり,従つて妊娠末期から,分娩,産褥期の体内変化は胎児娩出の前後の状態で,種々の点で甚しく急激な変化を来すであろう事は容易に想像される。
 従つて,血液性状についても報告は少くない。即ち,館,筒井,鈴木等は妊娠末期の赤血球,血色素の減少を,Siedentopf,吉松,岡田,七瀨は血清蛋量の減少アルブミン,グロブリンの比,即ち蛋白係数の低下を報告し,分娩時の赤血球,血色素についても,諏訪,向井は減少を,館は変化なしと,平沢,福井,筒井は増加を述べて居り,血清蛋白量の増加(平沢,吉松,岡田,明石,七瀨)蛋白係数の増大(平沢,吉松,岡田,明石,七瀨)等がある。

前熟兒哺育に必要な環境

著者: 岩淵庄之助

ページ範囲:P.467 - P.479

諸言
 前熟児哺育問題は母子衛生中の一部門であり,産科,小児科の両科にまたがり,且つ予防医学にも関連し,最近医学界に一重要課題として注目されるに至つた。
 我国に於ける乳児死因中で前熟因子は約1/3の高率を示すばかりでなく,肺炎・腸炎等の呼吸器系,消化器系の診断の許に死亡した大部分が,実際には前熟児であることは諸家の認めるところである。瀨木2)は乳児死亡統計に於いて前熟,以外の疾患に死因を記載された乳児死亡中,前熟児と附記されていたものが20〜30%であることを指摘し,Tyson3)は米国に於ける乳児死亡数の61%は前熟児であり,満期児は39%に過ぎなかつたと報告している等他の死因中に分類されたる中にも前熟因子に起因する死亡例が多数に含まれていることは明らかである。

新生兒黄疸の成因について

著者: 官川統

ページ範囲:P.478 - P.486

はしがき
 新生児黄疽の成因については,未だ客観性を有する定説は見られていない。即ち,或は溶血性説1)2)3),或は肝性説4)5)等,諸説多く,前世紀より産婦人科領域の迷路である事は,変りの無い事実である。然し詳細に,その頻度,経過を一考すると,本邦人では90〜100%3)5)6)に出現し,其の経過が生後2日目頃より10日目頃迄に互つており,加うるに生後赤血球数減少の見られる事等は,分娩時不明の一過性溶血性因子(以下H因子と略記)が出現し,其の二次的現象として本黄疸を発現せしめるものではないかと云うことを想像せしめるものである。余は此点を確めるために,以下一連の実験を試みた。

漿液性卵巣嚢腫及び卵管溜水腫内容液の蛋白質について

著者: 貴家寬而 ,   鈴木雅洲 ,   佐藤頌二

ページ範囲:P.486 - P.488

1.緒言
 漿液性卵巣嚢腫及び卵管溜水腫の内容液の化学成分に関して,既に大分以前に詳細な研究が行なわれたが,最近30年間の本邦及び外国の文献には,これらに関する報告を殆ど見出すことが出来ない。過去の報告によれば,漿液性卵巣嚢腫も卵管溜水腫も,アルブミン並びにグロプリン等よりなる血清様物質であると云う。最近化学的検査法が進歩し,殊に蛋白質に関しては数十年以前とは比較にならぬ程差が生じた。吾々は漿液性卵巣?腫と卵管溜水腫との内容液の蛋白質につき検討を加え,果して血清と同様な物質であるか否かを考究して発表する。

逆性石鹸オスバンに関する研究—(第1報)基礎的研究

著者: 淺野宜春 ,   野入輝男

ページ範囲:P.491 - P.495

1.緒言
 最近百花撩乱の観を呈している抗生物質以外にも,各種の消毒剤は吾々が日常良く使用する処であるが,1935年Domagkに依つて創案された一連の逆性石鹸は,広汎な分野に於て著効を呈し単に外科消毒の利用に止らず,食品衞生関係や公衆衞生分野に迄応用されつゝある。吾々は今回武田藥品工業株式会社より逆性石鹸オスバン液の提供を受け,若干の基礎的実験並びに臨床的使用を試みた故,此等の成績の中,第1報として基礎的実験結果を報告する次第である。

腟及び外陰Candida症の逆性石鹸による治験

著者: 田中英

ページ範囲:P.496 - P.498

緒言
 ペニシリンに始まる一連の抗生物質剤の進歩発展に伴つて,各種疾病の治療法は著しい改善をみたが,同時にその一般的普及は濫用という程に汎用される傾向にあり,之に伴つて副作用についての報告も勘からずみられる様になつた。
 その中注目されているものにペニシリン・アレルギー及び真菌類感染症(Candidiasis)の問題がある。

妊娠時に見られる赤血球沈降反応促進現象の相関因子解析に関する研究—(第4報)妊娠時に於ける赤沈と血漿蛋白各分屑との単相関の檢討

著者: 長尾ミト子

ページ範囲:P.501 - P.512

〔I〕緒論
 著者は本研究に於いて妊娠時の赤沈の促進因子の解析を行わうとして先ず各月令の妊婦につき赤沈値を測定し,それと同時に血液諸性状を測定してその性状の各々と赤沈値との相関を検定しようとした。
 即ち先づ第1報1)に於て赤沈値の各妊娠月令についての変動分散並びに血液諸性状の中,赤血球関係諸量{赤血球総数R,ヘマトクリツト値,Ht/R全血比重GB,(GB—GP),(GB—GS)},血漿蛋白関係諸量(血漿比重GP,血清比重GS,血漿蛋白量,血清蛋白量)及び粘稠度関係諸量(全血粘稠度,血漿粘稠変,血清粘稠度)の妊娠各月令の変動分散について報告し,第2報2)にてそれらと同様に測定した血漿蛋白分屑の一々についての妊娠各月令の変動分散をTiselius法によつて測定報告した。

妊娠時に見られる赤血球沈降反応促進現象の相関因子解析に関する研究—(第5報)妊娠時に於ける赤沈値に対する血漿蛋白各分屑値の眞相関並びに疑相関の検定について—偏相関検定

著者: 長尾ミト子

ページ範囲:P.513 - P.520

〔I〕緒論
 妊娠時に於ける赤沈の促進現象は妊娠変化の中でも特に目立つた特異現象として従来より注目されて来た事である。しかしこの現象が如何なる機序によつておこるものであるかと云うことは未だ完全には解析されておらない。これらの機序の解析は妊娠時に於ける身体変化についての検討に資する点も極めて多いが,一方又未だ完全には解析しつくされておらない一般の赤沈の機序に対する解析に対する一つの有力な示唆を与えるものとして注目された。
 著者は第1報より第4報1〜4)にかけて無作為に抽出された健康妊婦197名について一方に於いては赤沈臆を測定検討しながら,同時にそれらの促進叉は遅延因子と考えられる各種の血液諸性状を測定し,それらの間に如何なる単相関が存在するかを推計学的に検討したのであつたが,すでに第3報及び第4報に於て述べた通り,妊娠時の赤沈の促進は確かに一面において赤血球の性質即ち赤血球比重関係量としての(GB—GP),(GB—GS)及び赤血球一ケーケの容積即ち所謂赤血球平均容積(Ht/R)等に単相関を示すと同時に他面において血漿蛋白の各分屑中Al.と(−)の単相関を示し,叉α—,β—Globulin, Fibrinogenとは(+)の単相関を示すが,γ—Globnlinとは正負共に相関を示さないと云うことを知つた。

症例研究

示唆に富む1治験例—特に帝切時の子宮収縮剤使用時期に就て

著者: 清水直太郎

ページ範囲:P.523 - P.525

 吾々実地医家は日常余りに受持つ症例が多いとつい診療業務が肉体労働的になり,慣れた診療行為を啻々機械的に繰返すことになり勝で,大学の医局時代のように割り当つた少数の症例の診療について充分研究し,又翫味する余裕がない場合が多いことは真に臨牀第一線に働く医家の悲哀であり,技能退歩の始まりと思つて常に自戒反省している処である。最近経験した下記症例は日常診療上に種々示唆する点があると思うので治療経過を略記してみることにした。

妊娠中毒症患者に見た「出産後特発性心筋不全症」の1例に就いて

著者: 久保木元 ,   深尾勇 ,   佐藤泰三 ,   六川隆弘

ページ範囲:P.526 - P.529

1.緒言
 産褥に於ける特発性心筋不全症に就いては,Gouley.Sodeman等により報告せられ,我が国に於いても,馬杉教授,桜沢,佐々及び木村,村上及び馬場,等の諸氏により報告せられたが,産科学の領域に於いては未だあまり注目せられていないかの様に見受けられる。我々は最近中毒症患者に於いて,産褥経過に於いて,尿蛋白が陰性化せざるまゝに加療中,突然に,胸内苦悶,不整脈を来し,心電図的に特異な所見を示し,続いて発熱,白血球増多を来したが,幸にして加療により好転した例に遭遇した。本例を以つて直ちにGouley,Sodeman等の言う特発性心筋不全症と呼ぶべきものかどうか,些か躊躇するものでめるが,少くも発病以前に於ては心疾患の発病を予想せしめるものは存在せず,妊娠或いは中毒症に関連して起つて来た心不全と考える外はなく,かゝる意味に於て,同一疾患群に属するものと老えられるので,報告する事にした。

上肢奇形と口蓋破裂を伴った新産兒奇形の1例

著者: 庄司冏 ,   山田武男 ,   倉持利男

ページ範囲:P.530 - P.532

 新産児奇形に関する報告は多数見られるが,四肢奇形に関する報告は比較的稀であつてDoerf-fer1)によれば,70年間に僅かに14例の報告を見るのみであると云う。本邦に於ける四肢奇形としては.伊藤2)の左側前腕欠損,野村3)の左半腕症及び無脚症,伊4)の左上肢欠損,陶守5)の四肢欠損等の各1例及び片倉6)のPhocomelieを来せるものと,両側傾前腕発育不全及び両足下肢発育不全の2例を見る。其の他,DoerfferのPhocomelie,E.Redenz7)のbrachiale Amelie等が見られるに過ぎない。
 我々は妊娠7ヵ月の死産胎児に,前腕骨,手掌骨,及び手指骨欠損と,口蓋破裂を伴つた1例を経験したので報告する。

診療室

腟式卵管結紮術における膣壁創の皮内縫合に就いて

著者: 渡邊輝彦 ,   印牧義孝

ページ範囲:P.533 - P.534

いとぐち
 腟式手術の際に,腟壁創に通常の如く腸線の結節縫合を行う場合,術後7日目に抜糸すると抜糸時の出血が不快であり,抜糸をおくらせ,或は抜糸せぬ方針をとると縫合創に糸によるきれこみが生じていて,かなりの期間その部の接触による小出血をみるのが常であり,完全治癒迄に長期間を要する事が多く,腹壁創の治癒現象に比較たて甚だ不満足であるのが常である。吾々は腟式卵管結紮術後18日目に腟壁創哆開による大出血(性交に起因する)の1例を経験して以来,結節縫合を皮内縫合に変更し,その結果を比較検討した。

妊娠惡阻の治療

著者: 菊川滿

ページ範囲:P.534 - P.537

 妊娠中毒症に関する研究が最近数年間に目ざましく発展したが,今日なお"学説の疾患"としてその本態は未だ明らかにされて居ない。然るに妊娠中毒症の本態乃至原因を闡明するには2つの方法が考へられる。即ち(1)中毒症の原因と考えられる要約を動物に作用さして実験的に中毒症と同様の病状乃至病理組織学的所見を惹起せしめ得るか,又は(2)人体に発現したる中毒症を,人工妊娠中絶を行わなくとも,治癒せしめ得る合理的な治療法を確立する事が出来たならば,それから中毒症の本態乃至原因を推定し得るかも知れない。以上の考えから特に妊娠悪阻の治療に就て観察したところを述べる。
 妊娠悪阻の研究に当つては「つわり」乃至悪阻の際に現われる諸症状の臨床的統計的観察を試みた。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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