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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科9巻5号

1955年05月発行

雑誌目次

原著

絨毛上皮腫の臨牀的観察—(第2報)治療並びに予後に就いて

著者: 金子光

ページ範囲:P.541 - P.550

諸言
 絨毛上皮腫の治療法に就いては,手術療法,放射線療法,手術・放射線併用療法を始め抗癌性物質療法,「ホルモン」療法等があるが,これ等治療法とその予後との関係を知ることは,本症の永久治療向上に絶対必要のことであることは勿論である。然るに,これが臨牀的研究は比較的少く,特に本邦に於ては,50例以上の臨牀例に依るものは関1)の報告を見るにすぎない。依つて第1篇に引続き我々の教室に於ける症例に就いて,これが観察を試みたので,その結果を簡単に報告する。

産婦人科領域に於ける副腎皮質機能に関する研究(上)—(第1報)尿中17—ケトステロイド及び流血中好酸球数の消長

著者: 谷山宗一

ページ範囲:P.553 - P.560

第1章 緒論
 19世紀末,Claude Bernardが副腎の内分泌機能を発見して以来,副腎は幾多の生理学者の注目する所となり,遂に1901年高峰1)氏が,アドレナリンの分離に成功した事は周知の事実である。1910年Biedle2)が副腎皮質のみを摘出し,定型的脱落症状を惹起し,致死せしめる事を報告して以来,皮質ホルモン抽出が各学者に依り企てられ,ステロイド化合体たる皮質有効物質が続々と提供される様になり,副腎皮質ホルモンとして現在までに28種が純粋に分離された。Hench3)等は其の中の11—dehydro−17—hydroxy corticosterone(Cortisone)を,リウマチ性関節炎に応用して,劇的効果を牧めてこのかた,此れに就いての研究は急速に推捗し,此れに関係の深い下垂体前葉より産出されるadrenocorticotrophic hormone(ACTH)と共に其の臨床応用の路も益々ひらけて来た。
 1914年Cannon4)は外的刺戟に対して生体が一定の変化を現し,やがて刺戟が除去されると同時に元の状態にかえる一連の経過を,Homeost—asisと名付け,生体反応機構として交感神経系の重要性を強調した。

症例研究

Rho因子に依る新生児赤芽球症の交換輸血による1成功例について

著者: 新井大作 ,   一宮勝也 ,   石井敏政 ,   上竹正躬 ,   横山三男 ,   牧野総一郞

ページ範囲:P.563 - P.565

緒言
 1940年Landsteiner & Wiener両氏1)により抗Rh抗体が発見せられ,以来Rh因子が新生児赤芽球症と密接な関係あることがわかつてきた。本疾患の治療法については現在最も有効とされているのは交換輸血であつて,これには臍静脈を使用するDiamond2)3)4)の方法が広く用いられている。Rh-Hr式血液型と関係のある諸因子のうちでは,Rho因子不適合5)によるものが予後最も悪いと云われている。即ち,Rho因子の抗原性が最も強いからである。
 我々は最近Rho不適合による新生児赤芽球症に対して交換輸血を行い,幸に助けることが出来た一例を経験したのでここに報告する。

白股腫に対するHeparin, Dicumarol併用療法

著者: 小島光 ,   宮地健三 ,   橘高祥次

ページ範囲:P.565 - P.569

緒言
 白股腫は極めて稀な疾患であつて,其の治療としては従来安静・冷温湿布・抗菌剤の使用等に限られていたが,近時Heparinに次でDicumarol(Bishydroxycoumarin)Tromexan(Ethyl-bi-scoumacetate),Phenindione(phenylindanedi-one)等一連の抗凝固剤の発見は,本症の予防並びに治療に一時代を劃したもので,欧米では其の応用は頓に活溌化しつゝあるに拘らず,本邦では本症の発生が少ない為かあまり顧みられない状態である。
 本症は臨床的にPhlebothrombosisとThrom bophlebitisとの2型に分けられるが,その診断は必ずしも容易ではなく.軽症なものは見逃され易く,又不明のまゝ看過される事も想像されるので実際には従来老えられているよりも多いのではないかと思われる。余等も最近数例の術後血栓症を経験し,其の内最も重症で長時間を要した産褥性のものにHeparin, Dicumarol併用療法を試みて効果を認めたが報告する。

月経瘻の1例

著者: 渡邊茂人 ,   佐野源治

ページ範囲:P.569 - P.571

はしがき
 Balliu (1928)1)は月経瘻とは「正常の月経と一定の関係をもつて周期的に出血を生ずる瘻を云う」と定義し,41例の中で帝王切開術後に発生せるもの32例,他は卵管妊娠の自然破裂,化膿性卵管炎,子宮腹壁固定等であると述べ,大部分は帝王切開術後に生じたことを報告している。
 その他,Halter (1927)2)を含む10数例の報告がある。本邦においては明比(昭5)3),川添,三好(昭16)4)遠矢(昭17)5)等の帝王切開術後の月経瘻及び永井(昭16)6),引地(昭24)7)等の帝王切開術後の子宮内膜症の数例の報告がある。吾女は某医により妊娠4ケ月の人工妊娠中絶及び広汎性腹膜炎により高位子宮体切断をうけ術後96日目術後初めての月経時及びその後の月経時に腹壁瘻より出血せる為,子宮卵管造影法により月経瘻と診断し,瘻管剔出術を行い全治し得たので報告する。

顆粒膜細胞腫の1例

著者: 相馬廣明 ,   日吉陸人

ページ範囲:P.571 - P.573

 顆粒膜細胞腫は比較的稀な卵巣充実性腫瘍である。本邦では樋口教授によれば,これらの充実性腫瘍のうちの2〜4%を占めるといわれる。然もその大半が一側に発生する場合が普通で(87%),両側の場合は少ない(11%)。本腫瘍は概ね良性腫瘍として見徹されているが,時には悪性変化を来すこともある。又本腫瘍の組織発生やその悪性度についても末解決な点や疑問が少くはないし,興味ある腫瘍と老える。最近本教室では閉経期以後に本腫瘍を発生し,その後悪性の経過を辿り死亡した1例を糧験したので参考迄に報告する次第である。

子宮破裂の4例と患家に於ける手術例

著者: 池定好

ページ範囲:P.575 - P.577

I緒言
 子宮破裂は妊娠,分娩の合併症としては非常に重駕なものであつて,妊娠の経過中及び分娩介助に当つては特に注意を要するものである。私は昭和25年に,アブレルAburel氏法に由る人工妊娠中絶中に1例,昭和26年妊娠10ケ月で畑仕事中破裂した1例,昭和29年にリバノール液の羊膜外注入法に由る人工妊娠中絶中に1例及び妊娠9ヵ月末期に於て分娩中に破裂した1例の4例の子宮破裂を経験したが,何れも子宮剔徐により救い得た。4例中の2例は人工妊娠中絶と云う特別の場合に起つたものであるが,之も一括して報告し,諸先生の御教示を乞う次第である。

子宮内妊娠と合併した続発腹膜妊娠の1例

著者: 小原達也

ページ範囲:P.577 - P.579

I はしがき
 子宮外妊娠の大多数は卵管妊娠で,腹膜妊娠は極めて稀で,1〜2%に過ぎず,しかも大部分続発性である。従つてその診断は容易でなく,又長期に亘つて経過を観察し得る機会は極めて少い。私は最近初診から妊娠第6ヵ月に至る110日間にわたつて経過を観察し,しかも子宮内妊娠と合併したと思われる本症の1例に遭遇したので,以下これを報告し諸賢の御批判を仰ぎたいと思う。

診療室

膝胸位法による骨盤位の整復に就て

著者: 七瀨雅尚 ,   宮川治夫

ページ範囲:P.581 - P.582

緒言
 頭位分娩に比して骨盤位分娩に於ける胎児の予後不良を慮う時,骨盤位の整復に関心をいだくのは当然である。事実,其の整復方法に.関しては種々なる方法が唱道されている。即ち,田岡氏は側臥位法(第一胎向ならば右側臥位,第二胎向ならば左側臥位をとつて就寝させる方法)によつて62%,整復を示すと云い,外川氏はヒマシ油内服及洗腸法(早朝空腹時にヒマシ油25gを内服せしめ,第2日には家庭にあつてイチヂク浣腸を行わしめる方法)によつて初産婦では87%,経産婦では100%を整復せしめ得たと云つて居り,河辺氏は膝胸位法に適宜外廻転を併用して初産婦では70%,経産婦では96%を整復し得たと発表している。然し骨盤位の整復法の実施については賛否両論がある。即ち之を否定する側では種々なる危険を誘発するとなし,又骨盤位の大部分が自然廻転によつて整復され,永久骨盤位となるものは極く少数であり,骨盤位牽出術が適正に実施されるならば骨盤位分娩も決して危険視する必要がないとするものである。然し骨盤位分娩に於ける胎児の予後は明かに不良である。試みに昭和28年度の当院に於ける死産率をみるに第1表に示す如くであつて,骨盤位分娩に於ける死産率は頭位分娩のそれに比し実に7倍強である。(此統計は妊娠28週未満のものは除外す)
 又,東京浜田病院の昭和14年より26年に至る期間に於ける記録によつても骨盤位の胎児の予後は頭位分娩のそれに比して明かに不良である。

分娩時臍帯処置の新経験(臍帯切断放置法と假稱す)

著者: 塚本胖

ページ範囲:P.583 - P.584

まえがき
 従来分娩時臍帯の処置は,習慣的にその搏動停止後胎児側及び胎盤側を結紮止血し,その中間で切断する方法が行われ,結紮部位並びに切断端の長さ等については種々の変法がある。たとえ結紮法でも,結紮糸の弛緩から時に新生児の臍出血をみることもあるが,娩出後第1呼吸の開始により新生児体内血流に変化が起り,下血大動脈の血圧は低下し,併せて臍輪部腹筋の緊張により臍帯動脈の血行は停止すると,いわれ,搏動停止後の切断では臍帯動脈からの出血はは考えられず,唯臍帯静脈からの逆流出血が予想されるが,少数例ではあるが実験的に結紮せずに切断放置する方法(臍帯切断放置法と仮称す。)を試みたので,その概略を報告する。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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