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雑誌目次

雑誌文献

臨床婦人科産科9巻7号

1955年07月発行

雑誌目次

綜説

現下関心事とすべき産婦人科臨床の新知見

著者: 安藤畫一

ページ範囲:P.647 - P.650

 本稿は去る5月21日熱海市公会堂に於て開催された,第12回日本産科婦人科学会関東連合地方部会に於ける特別講演に用意した原稿そのまゝである。時間の都合上で中止となつた為め,本誌に掲載してその責をふせぐこととした。

原著

妊婦腟内容細胞像と尿中卵胞ホルモン排泄量との関係

著者: 斎藤淳一

ページ範囲:P.653 - P.659

緒言
 妊娠時に於ける腟細胞像の変化は,非妊時に於けると同様にPapanicolaou1)〜3)の報告以来多くの研究により次第に明らかにされて来ている。
 妊娠時の変化,妊娠診断に対する価値,胎性判定応用への可能性について種々の意見が交されて,未だ一致していない点も少くない。余も此の問題にっいて検討を加えて先に報告した35)。その結果は細胞像は妊娠の成立及び進行に伴つて一定の変化を示していたが,個々の像については著明な個体差があり,妊娠診断法としての本法単独の価値は認める事が出来なかった。又胎性による差についても一部の像については幾分かの関係がみられたが,全体として性別による著明な差は見出し得ず,臨床的に性別判定に使用する事は全く不能であつた。此れらの妊娠による変化或は個体差等の由来する所は,他にも種々の因子があるが,最も重要なのは性腺ホルモンである事は申す迄もない。

メチール・アンドロステンジオールの新生児発育に及ぼす影響(その1)

著者: 佐々木寿男

ページ範囲:P.661 - P.669

緒言
 1.研究の目的
 生活力の薄弱な新生児特に前熟児(premature infant)に対する哺育は非常に難しい問題で,現在では児に対する保温,酸素の添加,感染予防等に留意して,カロリー源としてブドー糖・インシユリン液を補給する方法が最も普及しているようである。しかしこの方法は児の未発育な諸臓器の発育を待つて初めて奏効するので,治療法としては消極的な手段であると云わなければならない。また代謝の面から考えると,従来の方法は内藤1)等の研究に基いて主として糖代謝の改善へ向けられており,その他の栄養素の代謝については殆んど無関心であつたと云つてよい。
 しかるに最近の研究では前熟児の蛋白質,含水炭素の腸管からの吸収は極めて良好で摂取の約90%であると云われているが(Gordon等2))蛋白質の吸収は必ずしもそうではないようである。従つて腸管から吸収した蛋白質を組織に同化させて体重増加を促進させる男性ホルモンを哺育に応用することは適切な処置であると思われる。殊に1935年にRuzicka3)が合成したMethylandrostene-diol(以下MADと略する)は男性ホルモンとしての作用が比較的弱く,しかも蛋白質同化作用が強いので,哺育の目的には最もよく合致した男性ホルモンであると考えられる。

日本人のRh式血液型分布とその遺伝学的考察

著者: 塩津英晤

ページ範囲:P.669 - P.675

第1章 緒論
 Rh式血液型の発見に依り,従来原因不明とされていた新生児溶血性疾患の一部が母児間に於ける該血流型不適合に起因する事が判明し,欧米では其の基礎的及び臨床的研究が広汎に行われており,該血流型の分布及び遺伝に就いても,Wie-ner,Fisher,Race,Mollison等の研究に依り,略決定的となつたものと考えられるが,本邦では小川,猪野,神谷,木原等の主としてRho (D)抗原の分布に関する報告を見るのみでありその遺伝子型の研究に就いては古畑の報告があるにすぎない。
 Rh式血液型発見当初には, Rh抗原は単一なものと考えられていたが,Wiener及びLevineに依り3種類に分類され,更にRh抗原とは逆の関係にあるHr抗原が見出されて,6種類の抗原から成り立つことが明らかにされ,その研究は詳細を極めるに至つた。

成長線の遣伝—女子に於ける観察

著者: 庄司忠

ページ範囲:P.677 - P.682

緒言
 青少年は身体の生長発育に伴い下肢・其他に皮下断裂線を発生する。其中で大腿部外側上端附近に生ずるものを余は本篇に於て時に成長線と呼ぶことがあるを予め断つておく。(曾て水野・福井が拡張線,申・江幡氏が類妊娠線と呼んだものと同一である)。この色調に就て林(文献(2))は最初赤色調を帯びているが次第に白色に変ずること恰も新妊娠線と旧妊娠線との差の如しと,又其頻度に就て男子に就ては比較的稀れにしか発見されないのであるが,女子に於ては満12歳で出現し爾後年齡に応じて増加するから思春期皮下脂肪の沈着と一定の関与あらんかと附言した。
 尚女子に於ては妊娠の進行に伴い下腹部に妊娠線を発生するものがあるが,其際両下肢にも屡々皮下断裂線の発生をみるのである。従つて女子に於ては真の意味の成長線と其後妊娠した場合その進行に伴つて発生する妊娠線との双方が大腿部に発生する可能性があるのである。

産婦人科開復術後における早期離床の臨牀的観察(その2)

著者: 森川益夫 ,   森川満夫

ページ範囲:P.682 - P.688

VII.早期離床が術後経過に及ぼす影響
 早期離床は術後の経過にどういう影響を及ぼすか,特に不安な合併症はどうかということについて観察し,次のような成績を得た。

トリコモナス腟炎に対するPentamethylen-thiuramdisulfidの治療効果

著者: 高田道夫

ページ範囲:P.688 - P.692

緒言
 トリコモナス腟炎はDonné(1837)により腟トリコモナス原虫が発見された後,Hoehne (1916)にょり始めて独立した疾患として記載され,その後幾多の業績により治療方面においても種々の藥剤が製作され,且つ使用法も改良が加えられ,一次的治療効果の卓越性を報ずる文献も少なくない。然しトリコモナス腟炎は再発の多い難治の疾患であるため,各藥剤は必ずしも優れた治癒成績を示しているとは限らない。
 私はかゝるトリコモナス腟炎患者に対してPentamethylenthiuramdisulfidを主成分とする腟錠(科研トリコモ錠)を使用し,聊か見るべき成績を得たので報告する。

吾が領域に於けるヘパトサルフアレーン検査について

著者: 小林敏政 ,   伊藤昭雄 ,   西沢正昭

ページ範囲:P.692 - P.696

 肝は最大の臓器で,広汎且複雑な種々の機能を営み,生命維持に必要な器官である。その主なものをあげると,胆汗を分泌して消化吸牧等に関与し,内的及外的の解毒,免疫,貯蔵,物質代謝等は勿論その錯雑多岐な機能によつて種々な調節作用を営んで居る。従つてその体内各臓器との関連は極めて密接であることは容易に想像され得る。而して斯くの如き多岐に亘る肝の機能を一つの検査法で窺知することが不可能に近いことは容易に老えられ,筆者等の一人小林14)も既に各種検査法を試みて之を認めて居るが,,同一の患者に諸検査法を実施することは簡単迅速ということに遠く,且つ速かに検査結果を治療に反映させるためには,より鋭敏且簡単迅速な方法が望ましい理である。
 然してヘバトサルフアレーン法はRosenthal1)が始めて試みて以来各種検査法よりも簡単且迅速でしかも各種肝障害時に極めて陽性率高く10)13)一方法を実施してこの結果を治療に反映させる場合の一有力検査法とされて居るので,我々は吾領域に於て実験した結果を報告する次第である。

症例研究

無脳児のレントゲン診断について

著者: 真中肆郞

ページ範囲:P.699 - P.701

 無脳児は新生児畸形中,比較的屡々遭遇するものであるが,妊娠中にその診断を下すことは却々困難である。その確定に当り,レントゲン撮影は必須のもので,1917年James Caseにより初めて報告せられて以来,内外諸家により報告されているが,著者も最近妊娠第10ヵ月初めに,レ線写真によりその診断を確定し得た1例を経験したので,こゝに報告する。

卵管間質部妊娠の1例

著者: 能勢英章 ,   堀江識

ページ範囲:P.701 - P.705

I.緒言
 卵管妊娠は妊卵の着床部位によつて,狭部妊娠,膨大部妊娠,間質部妊娠に分類され,前二者はしばしば見られるが,之に反し卵管間質部妊娠は稀有に属する。
 間質部妊娠の報告は欧米は於ては,Schmitt(1801)の記載を最初とし,以後本症の報告は必ずしも少くない。Werthは180 i年から1904年迄の文献中40例,V.Fintererは1904年から1908年迄に17例,Gläsmerは1908年から1915年迄に17例,川島は1908年から1931年迄の西洋丈献中から更に30例を加え,総計104例,Bufeは1935年迄に150例と報じている。

基本情報

臨床婦人科産科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1294

印刷版ISSN 0386-9865

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