icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床検査1巻1号

1957年04月発行

雑誌目次

創刊によせて

著者: 冲中重雄

ページ範囲:P.3 - P.3

 今度,『臨床検査』と云う月刊雑誌が発行されることになつた。数年前までは僅か一部の大病院だけで臨床検査を中央化しているに過ぎなかつたが,最近では日本中でかなり多数の病院が此設備を持つようになつて来ている。それと共に,臨床検査室で働く人々も次第に増して来つつあり,此の種の技術家の教育の普及が要望されるに至つている。
 臨床検査室,これは内容から云うと臨床検査であるが,機構の上から見ると中央化した臨床検査と云う可きものであり,臨床の各教室で患者の診断,治療の上で必要な検査を,専門の学者,技術者がその高度の知識,技術を以て正確に,しかも迅速に諸検査を行い,その結果を臨床家に役立たせるわけである。

グラフ

病理組織標本の染色

著者: 太田邦夫

ページ範囲:P.4 - P.5

 一般に臨床組織検査の目的で慣用されている組織標本の染色見本を,乳腺症の一つを例にして掲げてあります。
 成るべく少い種類の染色で診断の目的を達するのが主眼ですが,ここにあげたものの他,鍍銀法,神経染色其他が必要なことも起ります。

市販光電比色計の2,3について

ページ範囲:P.6 - P.7

1.EPO-B型日立光電比色計
 光源は10V50Wタングステン電球により白色光を出し,電圧変動を避けるために鉄共振型電圧安定器を自蔵しているが,この型の安定器は供給電圧が70V迄低下しても負荷への出力の減少は2%程度に止まる。尤もこれはサイクル変動のない場合のことであって.サイクルが僅かでも低下すれば著しく出力が低下するもので,サイクル変動を伴う電源に対しては効果がない。このような場合には蓄電池を用いるべきである。
 単色光器は干渉フイルターを使用し,波長幅を25〜30mμに止め,性能はいい。

大腸菌の培養所見

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.8 - P.9

 乳糖を分解して,酸及びガスを形成するのが,大腸菌の特徴であり,それによつて,他の紬菌と区別する事が多い。腸内病原菌の検索の際には,大腸菌の集団,即ち糞便の中に混在して居る,大腸薗でない菌を,分離培地で培養してえらび出すわけである。即ち,大腸菌以外の集落から得た菌について系紡的な検査を行うわけである。したがって,大腸菌群が,どのような集落を作るかを知つて居る事は,腸内細菌検査の第一である。
 遠藤培地上では赤い,BTA乳糖寒天上で黄色い集落を,デソキシコーレイト培地(DC培地),マツコンキー培地上では赤い,時には大きい集落から,まわりに胆汁酸塩の,レンガ色の沈澱の環を併う大きい集落を,EMB培地の上では赤紫色の集落を作る。EMB培地上では,大腸菌群中の,エロゲネスは,黒褐色の,金属光沢ある大きい集落を作る。第1図でみるとおり,やゝもり上り,光を反射して,キラリと光つて居る所から,この所見を記憶されるとよい。

技術解説

光電比色計による分析法の基礎

著者: 松村義寬

ページ範囲:P.11 - P.16

呈色反応
 臨床生化学部門において今日最も数多く行われる分析手段は表題にかかげた光電比色計を利用する比色分析法である。臨床分析では正しいデータを迅速に供給して患者の時々刻々の状態を適切に迫求することにより,診断と治療に役立たねばならない。この点から極めて僅かな検体を用いて,簡便な操作でしかも正しい結果を得るためには比色分析法は優れており,光電比色計で結果を読みとるのは客観的な数字を与えるのであるから,分析者の習熟度が余り問題にならないので極めて信頼のおける手段となつたのである。
 比色分析の根本は呈色反応である。最新の進歩した機器を用いる場合は,化学的前処理は大いに簡略化する事が出来るようになつたのであるけれども,旧来の肉眼的比色法を用いる場合には影響のなかつたような種々の条件が精巧な器械を用いて分析する場合には大きく結果を左右するような事も見られるようになつた。たとえば発色温度や,水素イオン濃度,ことに試薬の純度,濃度,反応時間等における僅かな変化により結果が著しく変動することのある事も知られている。

血清学的検査にたずさわる人のために

著者: 松橋直

ページ範囲:P.16 - P.18

はじめに
 血清学といゝますと,何か耳あたらしい学問のように感ずる方もおられるときいております。しかし,血清学は決して新しい学問ではありません。血清学の原理を応用した種々の検査法は,前世起の絡りから,病原体の同定に,また,病気の補助診断として,さかんにもちいられております。たとえば,みなさんおなじみの,腸チフスの補助診断法であるWidal反応の発見が1896年であること,また,Wasserman反応の創案が1906年であることをおもいおこせば,血清学の歴史はかなり古いものであることがおわかりのこととおもいます。そして,免疫の成立,抗体の産生,試験管内の反応などの解釈に便利な側鎖説をたてたEhrlich補体結合反応その他の創案者であるBordet,ABO式をはじめ数多くの血液型の発見をしたばかりでなく,血清学のあらゆる領域で活躍したLandsteiner,免疫化学に大きく貢献したHeidelhergerなどによつて,今日の血清学が確立されたのであります。わが国ではどうであつたかと申しますと,血清学は細菌学,病理学,法医学などの研究方法の一つとしてさかんに応用され,研究成果もゆたかではありましたが,血清学を対象とした専門の学問がはじまつたのは,故三田定則先生が大正7年,東京大学に血清化学講座を開かれてからでありましよう。

細菌学的臨床検査のために

著者: 高橋昭三

ページ範囲:P.18 - P.21

 臨床細菌学的検査において,普通の細菌学の実験と異るのは,時間と材料の余裕の認められない事である。所謂病材料というものは,患者から得られるものであり,治療により,又菌に対する生体の反応により,細菌学的な病像は,どんどん変つてゆくものであり,他のいろいろの検査の際にくらべて,最も再現性の少いものである。即ち,ある患者から,得られた材料は二度と得られないものと思わねばならないし,又,その時の材料は,必ずしも多いものではない。又,時には,患者の受けて居る治療が,この材料の検査の結果により,大幅に変更される事もあるから,なるべく早く,結果が要求されるのは当然である。したがって,検査にあたり,自分の全智全能をつくしてそれを行うべぎものである。
 検査材料をみた時,第一にする事は,あらゆる可能性を考えて,検査方針を立てる事である。その次には,培地の選択であり,要すれば,判定の時期を通知する事である。

座談会

臨床検査の在り方

著者: 石山俊次 ,   太田邦夫 ,   樫田良精 ,   加瀬川卯太郎 ,   小酒井望 ,   斉藤かつら ,   中尾喜久 ,   松橋直 ,   松村義寛 ,   山寺さくら

ページ範囲:P.22 - P.36

 樫田 今日は皆様お忙しいところをお集まり頂きまして有難うございました。日本でも最近臨床検査というものの重要性が認められ,各方面で盛んに行われるようになつております。又それに当然附随するものとしまして,少し大きな病院では中央検査室的な制度が出来つつあります。私も東大で未だ完成しておりませんが,可成り整備されつつあります臨床検査部の管理的な仕事を兼職として行つておりますので,今日は私司会の役を申しつかりました。適任じやないのでございますけれども,皆様の御協力にり一応義務を果させて頂きたいと思います。
 この雑誌の在り方は臨床検査をやる立場にある方々Technicanを初め,そういう方面をやつておられるお医者さん方に読んで頂くというのが主な目的でおります。そういう狙いを以て臨床検査の在り方というものを各方面からいろいろ検討と言いますか,いろいろ御意見を述べて頂きたいのでありまして,今後日本で臨床検査を正しい在り方でおし進める為に,いろいろ参考になることをお話しねがいたいと思います。初めにこの臨床検査というものに対して,非常に御熱心に而も早くから手がけておられるこの方面のベテランの国立東京第一病院の小酒井先生に何か話の緒口をつけていただけたら,たとえば日本の臨床検査というものがどんな風に発達して来たかということについて一つ。

研究

寒冷凝集反応の条件について

著者: 西山節子

ページ範囲:P.37 - P.41

 結核予防会第一健康相談所は,従来主として,肺結核症の診断治療を行つて来た施設ではあるが,日常遭遇する外来患者の中には,出現した胸部X線写真の異常陰影が結核性のものであるか,非結核性のものであるかを鑑別する事に悩む場合が多い。
 非結核性の陰影はヴイールスを病原体とする原発性非定型性肺炎によることが多い。

医学常識

自然抵抗の機序

著者: 豊川行平

ページ範囲:P.42 - P.43

 伝染病の病原体が適当な経路で生体に到達しても,凡ての個体が感染し発病するとは限らない。それは生体の感受性に相違があるからである。
 生体の感受性で大きな役割を演じているものはいわゆる獲得免疫であるが,生体が先天的にもつ,いわゆる先天的抵抗,あるいは自然抵抗も大きな影響をもつているのである。ここでは一応獲得免疫にはふれず,專ら自然抵抗の機序について述べることにする。

--------------------

検査室管理(1)

著者: 守屋博

ページ範囲:P.44 - P.45

1.医学の定石
 医学の歴史は,文化の歴史と共にさかのぼる事が出来る。若し文化が2千年であるならば医学も2千年,1万年ならば1万年であろう。それは,病気の苦みから脱する事は生物の本能であるからである。
 しかし今にして考えて見るならば,今まで医学として行われていた事々がよくもまあ,大手をふつて通つたものである。多くの,診断に関する知識,治療に関する知識が荒トウ無ケィの物であつたかは,現在の医学知識をもつた者がふり返るならば,思い当る所である。その様なあてずつぽ医学は何も100年,1000年の昔にさかのぼらなくても,我々の知つている10年,20年昔でさえ,知らないとは云え,いかに間違つた診断,治療が行われたか各々が胸に手をおいて思い出す事が出来るのである。それ位医学が進歩したのである。

新しい検査法

糞便中の原虫類嚢子検査法

著者: 松林久吉

ページ範囲:P.46 - P.46

 寄生虫の検査のうちで多くの人が困難を感じているのは腸虫寄生原虫類の検査であろう。一般の病院ではこれらの原虫類は殆んど検査の対象となつていない。正確な診断を下すにはこの方面の検査が必要となる場合も少なくない。ここでは腸管に寄生する原虫類の嚢子を検出する方法で,比較的新しく,然も甚だよい成績を示すと思われるものを紹介する。それには糞便中の嚢子を集める方法と,集めた嚢子を染めて鏡検すると云う二段の手順が必要である。
 a)嚢子を集める方法としてはMGL法と云うのがある。之は原虫類と限らず,一般の寄生虫卵をも集めるために考案されたものであるが,原虫類の嚢子に特によい成績を示すように思われる。方法は次の如くする。

燐酸塩を用いて行う簡易迅速A/G測定法(比濁法)

著者: 阿南功一

ページ範囲:P.47 - P.49

 日常の臨床検査で行われて来たA/G測定法は,アルブミン(A)とグロブリン(G)分劃後の蛋白(或いはN含量)の測定法は種々あるにしても,分劃という梢々厄介な操作は避けることが出来ない。またこの分劃の方法によつてはA/G値が多少相違するものである。
 血清(漿)蛋白質の金属イオン,アニオン,または中性塩による分劃は旧くから種々試みられており,Tiseliusによる電気泳動装置の発明以後は,むしろ電気泳動値を基準にして種々の塩析分劃と電気泳動による蛋白分劃との関係についての広汎な研究がなされた。

超微量血液ガス分析器の日常検査への利用

著者: 斉藤正行

ページ範囲:P.49 - P.55

 昔からアチドージスとかアルカロージスという言葉は毎日の診療に必ず附随するものであるに拘らず,その判定のための血液CO2含量の測定分析は殆んどの病院の日常検査としては取扱われてない。
 最近は特に生体内電解質の問題が注目され多くの病院でも高価な焔光光度計を設備しなければその現代診療水準の体面を保てない状態となり,昔は困難であった体液中NaとかKの測定が日常的に取扱われるようになつたに拘らず,それらと一体であるべきCO2の測定が,依然として実用化しないのは全く片手落というべきである。

私の検査室

大阪淀川キリスト教病院

著者: ブツシユオビド・ビ ,   坂口治男

ページ範囲:P.58 - P.59

 第二次世界大戦以後,検査は臨床治療上,長足の進歩を遂げて来た。今日我々臨床医が色々複雑な疾病の診断上一番の介助となるのは検査であるが,小病院に於いては完全な検査設備を持つことは不可能であると思われる。そこで私達は此の様な小病院に於いて,次の様な検査をなされるのが理想的であると思う。
 ①血液検査:赤白血球数及び白血球核分劃,血色素,血液沈降速度,ヘマトクリット。

讀者の頁

「臨床検査」創刊に寄せて

著者: 加瀬川卯太郎

ページ範囲:P.60 - P.61

 この度「臨床検査」創刊号が発行されるに当り,病院中央検査室にあつて臨床検査を日常の業務とし,且つ直接責任者として検査室全般の管理運営に当つて居ります「検査抜術者」としての立場から,この雑誌の発行に大いに期待する処を述べ,併せて我々の最も愛好する雑誌であつて頂き度い等,若干の希望を述べ度いと存じます。
 医学の進歩と共に,戦後医療改善の重要なる対策として,病院臨床検査機関の中央化が晶導されて以来,急速に実現普及されております現在,臨床検査業務が病院診療に於て,極めて重要な地位にありますことは,もはや我々の多言するまでもない事であります。

検査室メモ

Evelyn-Malloy氏法による血清(漿)ビリルビン定量の際に注意すべき1,2の点について,他

著者: 宮川啓

ページ範囲:P.61 - P.62

 Evelyn-Malloy氏法による血清(漿)ビリルビン定量法は,少量の検体で迅速に比較的精確に施行出来るので各検査室で広く行われている。之の方法に関して日常屡々遭遇する1,2の点について述べて見よう。
 1)メタノール

海外だより

Simplified Rapid Technic for the Extraction and Determination of Serum Cholesterol without Saponification.

著者: 宮川啓 ,   ,  

ページ範囲:P.63 - P.63

 従来知られている多くのコレステロール定量法は殆どLiebermann-Burchardの反応に基くものであるが,之の反応をクロロホルム液内で行う時には,エステル型コレステロールは同当量の遊離コレステロールに比較して強く発色することが多くの研究者達により報告されている。それで,之等の方法を用いて,鹸化せずに血清総コレステロールを定量する場合には不精確な値を招く。
 J. J. Carr等は,之の点を考慮して,Liebermann-Burchardの反応を氷酢酸無水酢酸液の中で行い,エステル型コレステロールも遊離コレステロールも全く同程度に発色する一方法を案出した。以下,之の方法の概略を述べて見よう。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら