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雑誌目次

雑誌文献

臨床検査11巻12号

1967年12月発行

雑誌目次

特集 簡易臨床検査法

簡易検査の一般問題

丹羽 正治

pp.855-859

簡易検査法とは何か

 簡易検査とは検査を簡易迅速に行なうため,特殊な装置や器具を使わず,錠剤,試験紙,アンプル入りなどの形状の出来合いの試薬を利用し,単純化された操作で行なう一群の検査を指しており,最近急速に発展普及している。

 理想的な簡易検査法とは,単にいい加減に手を抜いたものでなく,以下の諸条件を備えていなければならない。

簡易検査の検査室における利用のしかた

林 康之

pp.860-864

 病院中検制度の普及にともない,中検としては膨大な日常検査件数をいかに精度よく,合理的に実施するかという管理面での問題が重要となりつつある。その解決策として,将来は術式の簡易化と機械化の二方向に進むと考えられるが,現状でいわゆる簡易検査法をいかに採り入れるかという点を考えてみた。

 中検の規模それ自体は必らずしも検査件数の多いこと,あるいは検査種目数が多岐にわたるということは示していない。どちらかといえば臨床各科医師の利用度のみが検査業務の内容を示している。これはとりもなおさず検査種目数とその頻度は施設によって異なり,各施設毎に業務の合理化をはからねばならぬことを示すものと考えられる。すなわち,簡易化にしろ機械化にしろいかに利用するかということを画一的に考えることは難かしい。しかしながら,その目標とするところは(1)作業能率の増加,(2)結果的に現われる検査種目数の拡大,(3)緊急検査をいかに手ぎわよくさばくか,という3項目であろう。

尿

ウロスペック・屈折型尿比重計

折田 義正

pp.865-870

意義

 水は生体を構成する要素のうちで最も多く,体重の60%に達するが,その代謝すなわち出納は生命維持に不可欠で臨床的にもきわめて重要である。生体の水の出納調節は主として腎により行なわれており,尿の濃縮,稀釈力は生体の水出納の状態を反映している。したがって各種の腎疾患のさい,病変が尿細管特にヘンレー係蹄,遠位尿細管,集合管におよぶと,尿濃縮力および稀釈力の障害をきたし,これが代謝調節の異常から生体機構の失調を招く。こうした異常のさいは尿濃縮力の低下が尿稀釈力低下より早期にあらわれるので,Fishberg濃縮試験下の尿比重あるいは屈折率をもって尿に含まれる総溶質の多寡を推定し,これから尿濃縮力を推定すると,被検者の水分代謝出納状態あるいは腎障害の程度が把握できるわけである。ここに解説するウロスペックは尿比重の測定,屈折型尿比重計は屈折率より尿比重を推定するものである。前者は多数の検体を処理する場合,後者は患者が術後,ショックその他急激に起った水代謝出納失調の場合,小児あるいは乏尿のため検体が少量しか得られない場合に,ベッドサイド,検査室に用いてきわめて便利なものである。なお腎の尿濃縮力,稀釈力の病態生理学的考察ならびにこのための検査法であるFishberg濃縮試験,稀釈試験の実施法,問題点については,すでに本誌その他に述べてあるので,それらを参照して頂きたい1)〜3)

シノテスト簡易診断試薬(尿検査試薬の部)

国宗 博

pp.871-874

 シノテスト簡易診断試薬は篠原博士が,従来の臨床検査が実験室向非能率的でそこに何ら機動性も見当らず,それらが臨床検査の一般臨床医家への普及の妨げとなっている現状をみて,これを打破し,いつどこでもたとえ僻地の往診先においてでも,必要最低限の臨床検査が必ず実施できるようにとの目的で,戦時中すでに開発されたものである。

 したがってごく最近のペーパー法のシノテスト8号を除いては,ほとんどの試薬は1回分がアンプル入となっていることがいちじるしい特長で,このアンプルがそのまま試薬ビンであり,試験管であり,また比色管でもあるきわめてユニークのものである。アンプルに密封されているため試薬は常に新鮮で保持性にとみ,ペーパー法などと異なりうっかり試薬に栓をし忘れたというようなことは考えられない。また1検体1試薬が原則であるから,開封によって余分な試薬が無駄になるということもない。すなわち経済性にとみ,安全で,取扱いが簡易で,何ら器具がいらず,どこでも実施できるといういちじるしい特長をもつ。また,本法によって得られる精度は従来からの方法によって得られるものと全く匹敵する。定量結果については,少なくとも診断に役立つだけの精度は維持されている。

エームス試薬による尿の簡易検査

末広 雅也

pp.875-879

アルプスティックス(Albustix,AXと略)

 AX1)は,周知の如く尿蛋白の検出を目的として開発されたdip&read方式の試験紙であり,その試験部分にはブロムフェノールブルーとクエン酸緩衝液が浸みこませてある。通常は指示薬の変色が起こらないpH条件でも蛋白が存在すると指示薬の色調が変化するという"指示薬の蛋白誤差現象"を反応原理としている。この原理は,1909年にSörensen2)により報告されたものであり,模式的に説明するとAXの場合は図1のごとくなる。反応のメディウムのpHを3.0に保つようにすれば,蛋白の存否により指示薬(ブロムフェノールブルー)は変色する。

 すべての尿検査の試験紙に共通することであるが,操作としては試験紙を尿中に瞬時浸し,過剰に浸みた尿は容器の縁に試験紙を触れさせて拭い去る。そして定められた判定時間に明るい光線下に迅速に瓶に貼ってある比色表と比較する。

テス・テープ,ウロペーパーA法,ウロペーパーB法,ウロメトリー

林 康之

pp.880-883

テス・アープ

1.意義

 尿中ブドウ糖の定性および半定量に利用する。尿中ブドウ糖陽性は,血糖値が域値(健康人では170mg/dlといわれる)を越える場合か,腎域値の低下した場合におこる。前者は過血糖性糖尿,後者を腎性糖尿といって治療上厳密に区別される。尿糖検査は実際に糖尿病治療上の指針となり,スクリーニングテストとしても過血糖をきたすすべての疾患の発見に役立つ重要な意義がある。

糞便

糞便潜血反応

正宗 研

pp.884-886

糞便潜血反応の種類と原理

 消化管疾患の症状のうち,消化管出血は最も重要なものの一つであり,吐血,下血のごとき顕出血はむろんのこと,潜出血の場合にもこれを他覚的に証明するために糞便潜血反応は重要な日常の検査手技の一つとして診断学上応用されている。

 糞便潜血反応には,1)分光鏡法,2)化学試験法(触媒法),3)ヘミン結晶生成試験法などがある。分光鏡法はSnapper法が最良とされ,最も正確な方法である。しかし,臨床的には触媒法が広く用いられ,その簡便法も実用化されている。触媒法の原理は,血色素中のPerioxydase作用により,それらの試薬が酸化されて青色となることを応用したものである。触媒法としては古くからグァヤック原法,ベンチジン原法,フェノールフタレイン法,オルトトルジン法などが用いられてきた。しかるに最近ば簡易潜血反応として,器具や試薬が簡単になったベンチジン潜血反応濾紙法(参木・上杉法),ヘモペーパー法,シノテスト4号法,ヘマテスト法などが,手数が省け,どこでも手軽に行なわれるので実用化されている。

胃液

胃液検査法

正宗 研

pp.887-891

胃液検査法の歴史と無胃管胃液検査法の種類

 従来,胃液検査を行なうには,胃ソンデを胃内に挿入し,採取した胃液について直接その酸度を測定してきた。しかし,その方法は胃ソンデをのむことが患者にかなり苦痛であるため,神経質な人や,老人,幼若者には挿入因難であり,また重症の食道,胃疾患には禁忌である。また,近年胃癌の早期発見の目的で集団検診に胃液検査が行なわれているが,この場合には胃管法は時間的,労力的に不適当である。さらに技術的にも困難なため,これに代る簡単かつ確実な胃液検査法の考案が望まれていた。

 1950年,Segalらは始めてイオン交換樹脂にキニーネを結合させた陽イオン交換樹脂を被検者に内服せしめ,尿中に排泄されたキニーネ量を測定して,間接的に胃内遊離塩酸量を測定するキニーネ樹脂法の考案により,無胃管胃液検査法が実用化し,臨床的に応用して好成績を収めた。しかし,その検査法はなお,その操作が繁雑であり,かつ螢光比色法による尿中キニーネを定量するために高価な装置を必要とし,広く普及するにいたらなかった。

血液

屈折計による血清タンパク濃度の測定

降矢 熒

pp.892-896

意義

 血清タンパクの定量法には重量法,キールダール法,比色法,屈折計法,比濁法,沈澱容積法などがある。このうち屈折計法は,屈折計を用いて血清の屈折率を測定してタンパク濃度を求める方法であり,ごく少量の試料で簡易な手技により迅速に信頼しうる結果が得られるという特長をもつために,臨床検査室において日常検査として広く用いられている。この方法ば最初Strubell1)により報告され,以後Reiss,Robertson,により系統的に研究され,最近吉川,松村,中村らにより臨床検査への適用が記述され,また松村ら,櫛下町らによる本法の検討も行なわれている。

 屈折計としては国産のものでアタゴ血清蛋白屈折計,アタゴ卓上蛋白計,日立血清蛋白計,DZ型血清蛋白計,エルマ臨床屈折計などがある。

ユニグラフ法

北村 元仕 , 三上 晃代

pp.897-901

尿素測定の意義

 腎排泄能の障害によって蛋白質の終末代謝産物である残余窒素(NPN)が血中に停滞する現象は昔から注目され,血中NPNの測定は腎不全の指標として現在のように検査が普及しない時代でも血糖とならんで広く診断に利用されていた。

 NPNは多くの窒素化合物の総称であって,約半分が尿素で占められるほか,尿酸,クレアチニン,アミノ酸そのほか多くの微量の成分から成り立っている。腎疾患の場合のNPN上昇の主役を演ずるものはもちろん尿素であり,とくにNPNが高度に上昇した時にはその80%以上を尿素が占めるようになる。すなわち腎排泄障害の指標としてはNPNよりも尿素窒素を測定する方が診断的価値が高く,今日では特殊の場合を除き一般に,血中尿素窒素の測定が行われるようになってきている。

アミラーゼ

丹羽 正治

pp.902-905

アミラーゼ管法とは

 テミラーゼ(AM)活性の簡易測定法としてはわが国ではWohlgemuth法が広く用いられている。この方法では特殊な器具は必要でないが1検体について対照を含めて11本の試験管と37℃ 30分間の保温も必要になるため,所要試験管の数を減らしたり,所要時間を短縮するため種々の工夫がされた。しかし,どの方法でもデンプン液をしばしばつくりかえなければならなかった。

 下記のAM管は,1回の検査に必要なデンプンなどを長期保存可能な乾燥状態でアンプルに封じたものである。これによれば1検体1本の管で,数分間で検査をすますことができる。本法はその簡易迅速性から考え,実地医家の日常検査や病院の救急検査などの場合に適当した方法である。

アルカリ性ホスファターゼ

丹羽 正治

pp.906-908

簡易法について

 臨床検査に関係深いホスファターゼはリン酸モノエステルを水解する群であり,このうちでも特に問題になるものは至適pHが5あるいは9附近にある酸性あるいはアルカリ性ホスファターゼ(AIP)である。

 AlPの活性測定には使用する基質や緩衝液の相違によって種々の方法が工夫されている。

Dextrostixの正しい使用法と問題点

斎藤 正行 , 小泉 恵美子 , 林 真袖

pp.909-913

はじめに

 国民生活水準の向上とともに糖尿病患者は急速に増加し,現在わが国では数十万人が医師の管理下に生活を営んでいるが,一般的常識から考えてそれと同等数以上,わが国の公衆衛生的現状から見る時ば数倍の人々が不幸にも糖尿病に犯されていながら発見されずに放任されていると考えられる。これに本病の遺伝的いわゆる"Carrier"の数を加えると,数十年後のわが国の糖尿病患者数は想像するだけで戦慄を覚える。

 実際世界一糖尿病の多い,かつ早期発見対策も十分行なわれているアメリカにおいてすら,現在約200万近い患者が医師の管理下にあり,さらに未だ200万以上もの人が発見されずに放任されているといわれる。

血清コリンエステラーゼの簡易測定法

坂岸 良克

pp.914-918

意義

 コリンエステラーゼ(ChE)はアセチルコリンを

 <式省略>

のようにコリンと酢酸に加水分解するエステラーゼの1種である。この酵素にはさらにアセチルコリンのみに特に親和性の高いもの(true cholinesterase)と種々のコリンエステル(例ブチリルコリン)を水解する酵素(pseudocholinesterase)が含まれ,赤血球,神経(ニューロン間のシナプス)と筋肉(myoneural junction)に見出されるものは前者,血漿中のものは後者に相当する。臨床化学分析の対象となるのは億とんどpseudo ChEである。pscudo ChEは肝臓,膵臓,消化管の粘膜,筋層,心筋,副腎髄質,および血漿中に存在するが,神経組織にも含まれている。血漿中のChEは電気泳動分画のうちのα2-グロブリン位に見出されるが,これはほとんど肝臓に由来するものと考えられている。四塩化炭素による中毒実験では肝臓ChEの減少と血清ChEの減少が平行することが認められた。またジイソプロピル・フロロ・リン酸(DFP)で血漿中のChE活性を抑えていても,ChEは肝臓中で生合成され,2〜3週間で回復してしまう。さらにネフローゼの例を除くと,血清ChE活性の増減ば血中アルブミン量の増減とよく一致する。

トロンボテスト

寺田 秀夫

pp.919-921

意義

 心筋硬塞や血栓症などの予防や治療にクマリン系ならびにインダンジオン系の経口的抗凝固剤が用いられるがトロンボテストにはこれらの薬剤の投与量や維持量のコントロールの目的でプロトロンビン時間と併用して用いられる。すなわち上述の抗凝固剤を投与するとⅡ(Prothrombin),Ⅶ(安定因子),Ⅸ((PTC),Ⅹ(Stuartprower因子)が減少するが,トロンボテストはこれら4因子の消長を綜合的に反映するからである。またこの理由から出血傾向のスクリーニングや肝機能障害の程度を知るためにも利用される(図1)。

トランスアミナーゼ簡易検査法とその検討

金井 正光 , 野本 昭三 , 石田 美智子

pp.922-928

 Fast violet Bをオキサロ酢酸の発色に応用するBabsonら(1962)1)の血清GOT測定法は操作が簡単で感度がよく,発色調が肉眼比色に好適なこと2)から簡易検査法への応用が試みられ,Whetzel(1963)3)は多数検体の処理に適する巧妙な血清GOTスクリーニングテストを考案し,筆者ら(1964)4)5)はBabson法の市販キットを利用した簡易肉眼比色法を発表した。その後内外においてWhetzel法の追試6),改良7),応用,新法の考案19)などが行なわれ,最近邦製の簡易法キットも発売されている。本稿ではまず筆者らの簡易法考案にあたって行なった検討について述べ,2,3の簡易検査法(表1)の概略,特長臨床的応用などについて記す。なお方法の詳細については原著,市販キットの使用説明書を参照されたい。

血清

リウマチ,その他の簡易血清検査法

徐慶 一郎

pp.929-932

CRP Test(協和薬品,Difco,など)

1.意義

 身体の一部に炎症や組織の退行変性があるとその患者の血清中に肺炎球菌の体成分のC多糖体と反応する特殊な蛋白があらわれる。これはβグロブリン分劃にありC多糖体と反応するのでC反応性蛋白(C-reactive Protiein CRP)とよばれている。このCRPは発病後間もなく血清中にあらわれ,病期の極期をすぎるとただちに消えてしまう。したがってCRPを検出すろことによって,その患者のどこかの組織に病変のあることが探知出来,また症状の軽重や予後の判定に役立つ。

RPRカード

鈴田 達男

pp.933-936

 最近の梅毒血清学的検査法の進歩を大きく2大別するならば,1)脂質抗原以外の,梅毒に特異的な反応の開発と,2)脂質抗原を用いた反応の簡易,迅速化に分けることができる。前者はトレポネーマそのものまたは構成成分を抗原として用いる反応で,Nelsonらのトレポネーマを動かなくする反応(TPI)を始め,トレポネーマの凝集(TPA),免疫付着反応(TPIA),補体結合反応(TPCF),抗体と結合したトレポネーマの染色性の変化(TPMB),螢光抗体法(FTA),ライター株トレポネーマからの抽出タンパクとの補体結合反応(RPCF),トレポネーマからの抽出タンパクによる受身凝集反応(TPHA)などが報告され,特異性の高い検査法としてしだいに実用化されつつある。

エルドンカード

二之宮 景光

pp.937-941

 型不適合輸血の防止は輸血関係者の常に最大の課題の一つであり,このためには適正な手技,良質な器具と試薬ならびに細心の注意をもって血液型の判定を行なうべきことが繰返し強調されている。しかもなお血液型の誤判定を100%除外することは実際上不可能といわねばならず,ことに臨床検査施設の不充分な小医療施設や緊急輸血の場合には誤判定の危険性がきわめて高く,このような時にこそ検査精度が高くかついわゆる事務上の書き写しのエラーの入り込む余地の少ない血液型判定法の実現が望まれるし,また検査成績の記録が後日の点検に供覧することができるならばさらに好都合のものといえよう。

 このような要望をみたすためにK.Eldonによって考案されたいわゆるエルドンカードは,わが国においてもすでに二,三の使用経験が報告されているが1)〜3),東大病院輸血部における予備的検査,および第二外科ならびに胸部外科における臨床経験をもととして,実態を報告かたがた使用法の要点を紹介することとする。

免疫学的妊娠反応

長峰 敏治

pp.942-947

 妊娠反応としては,妊卵の着床後に発育する絨毛に由来する絨毛性ゴナドトロピン(以下HCGと略す)を検出する方法が妊娠に特異的なものとしうる。HCGの検出はAschheimおよびZondek1)の劃期的な業績以来,種々の動物を用いた生物学的妊娠反応として発展し2)3),診断的価値は確立されていたが,動物を用いるための支障があり,in vitroの検出法が望まれていた。

 動物に妊婦尿を反覆投与していると,次第にHCGに対する感受性が減少することからもHCGが異種動物に抗原として作用することが知られ4),免疫学的検出も試みられてはいたが,純粋なHCGのえられないこと,HCGの抗原としての素因が弱いことなどから充分の結果はえられなかった。

細菌

感受性検査

小酒井 望

pp.948-951

 細菌の各種化学療法剤に対する感受性検査はいろいろの目的で行なわれるが,臨床検査として行なわれるのは,細菌感染症に対する化学療法剤を選定する目的である。

 臨床検査に用いられる感受性検査の方法はいろいろあるが,わが国では結核菌の場合は1%小川培地を用いる希釈法か,同じく1%小川培地を用いる直立拡散法が,それ以外の一般病原細菌の場合は市販の感受性ディスクを用いる方法が専ら行なわれている。

ビオテスト,BCテストなどによる細菌の生化学的検査法

水野 孝重 , 木村 貞夫

pp.952-956

まえがき

 細菌の鑑別は,形態,染色性,生理学的性状,生化学的性状,血清学的性状などによって行なわれている。このうち生化学的性状検査は生化学の進歩にともなって多岐にわたり,現在各種の鑑別培地が多くの先人たちによって考案され,乾燥培地として簡単に使用できるようになった。しかし,細菌を同定するためにそれらの培地を常に使用できるように準備しておくことは,特に少い人数で多くの検査を扱う臨床検査室ではきわめて困難なことである。誰でもいくどかせっかく作った培地を数本しか使わずにかびが生えたり,乾からびたりして捨てた経験があると思う。しかも,菌の同定は赤痢菌やサルモネラ菌では公衆衛生上,感染症では診断・治療上なるべく早く確実に行なわれることが必要である。

 これらの問題を解決するために細菌の生化学的性状検査の簡易法が多くの学者によって考えられた。そして,坂崎により基質を濃厚保存液として常備し,随時に,簡易に,迅速に行なえる検査法が考案された。それをデスク化したのがビオテスト(日本栄養)である。その後アンプル入り滅菌液体培地がBCテスト(日水製薬)として市販されている。また最近ではチトクローム・オキシダーゼ試験用ろ紙(日水製薬),インドール産生試験用ろ紙(日水製薬)が使用され,前者は腸内細菌とその類似菌の鑑別に常用されている。

組織および細胞の迅速固定

内海 邦輔

pp.957-960

まえがき

 組織および細胞の簡易固定について書くよう指定されているが,病理検査では迅速法という呼び方はあるが,簡易法という呼び方はない。今回の特集が《簡易臨床検査法》ということから,簡易固定という標題が生れたと思われるので,できるだけその趣旨にそうよう心がけて,迅速固定法について述べることにしたい。

輸送培地

高橋 昭三

pp.961-964

 リン菌の培養をおこなうときは,GC培地などの培地を,37℃にあたためておき,患者から検体をとったらすぐに接種しなければならない。そのようにできない場合,検体をなるべく早く培地に接種しなければならないが,検体を室温で30分おいたら,検出率はいちじるしく低下するであろう。

 輸送培地は,検体をその中に入れておけば,室温で12〜24時間ぐらいは,多少の検出率の低下はあっても,上記の場合の,最もよい接種条件をたもつような培地である。

使い捨て検査器具

右田 徹

pp.965-970

使いすて器具使用の背景

 近年高分子化学工業の発達にともない,医学方面でも高分子化合物製品が導入され,使いすて器具の開発利用が一段と進んで来た。使いすて医用器具の中にはいわゆる高分子化合物でないものも含まれるが,近代工業の進歩はこれらすべての製品の改良,低廉化を可能にしている。従来の医用器具とそれに相当する使いすて器具を経済性という面から比較する場合,前者についてはその原価のほかに繰り返し使用に要する諸経費を合算する必要があるが,この中には人件費が高率に含まれ,今後この諸経費の高騰は想像に難くない。かくして技術革新により従来器具と同等またはこれ以上の性能を有する製品が容易に得られるようになるとともに,使いすて器具の低廉化とこれに対して従来器具維持費の高騰という経済事情が加わるため,将来使いすて医用器具はますます普及するものと考えられる。わが国でも医療施設により,あるいは医用器具の種類により,すでにかなりの使いすて器具が採用されているが,現状はむしろ作業の能率化や医学上の要請が優先し,経済性はある程度無視されている場合が少なくない。

第10回衛生検査技師国家試験—問題と模範解答

pp.971-987

公衆衛生学

 問題1次の定期予防接種のうち,生後12ヵ月以後に開始されるものはどれか。

1.腸チフス,パラチフス混合ワクチン

昭和42年度二級臨床病理技術士資格認定試験—問題と模範解答

pp.988-995

細菌学(寄生虫学を含む)

1.次の文章のうち,正しいものには○印を,誤っているものには×印をつけなさい。(30点)

1) SS寒天培地に発育できるのはサルモネラ菌属と赤痢菌属だけである。

二級臨床病理技術士資格認定試験昭和42年度—総括および講評

田中 昇 , 富田 仁 , 清水 文彦 , 山中 太木 , 矢島 権八 , 寺島 寛 , 松村 義寛 , 小延 鑑一 , 浅井 一太郎 , 杉島 聖章 , 福岡 良男 , 水谷 昭夫 , 安田 三弥 , 高橋 辰宏 , 仁木 偉瑳夫 , 吉井 信夫

pp.996-1003

総括

 試験全般について:2,000名を超える受験者と,その1/4に達する400名に近い試験委員,助手による大規模なる技術士資格認定試験はあと極く少数の受験者を対称とする一級試験を残して無事に終了し得た。日本臨床病理学会が行なっている検査技術土の資格認定試験は来年で発足以来15周年を迎えようとしている。各医学会が今頃になって専門医制度の発足をいそいでいるのに本学会は技術士の専門化を既に15年前に始めている次第で,発足当時の先輩諸先生方の賢明さにひとかたならぬ敬意を表する次第であると同時にその威業を引き継いだわれわれはひとしお責任の重大さを感ずる。

基本情報

臨床検査

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1367

印刷版ISSN 0485-1420

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今月の特集2 不妊・不育症医療の最前線

62巻4号(2018年4月発行)

増刊号 疾患・病態を理解する—尿沈渣レファレンスブック

62巻3号(2018年3月発行)

今月の特集1 症例から学ぶ血友病とvon Willebrand病
今月の特集2 成人先天性心疾患

62巻2号(2018年2月発行)

今月の特集1 Stroke—脳卒中を診る
今月の特集2 実は増えている“梅毒”

62巻1号(2018年1月発行)

今月の特集1 知っておきたい感染症関連診療ガイドラインのエッセンス
今月の特集2 心腎連関を理解する

60巻13号(2016年12月発行)

今月の特集1 認知症待ったなし!
今月の特集2 がん分子標的治療にかかわる臨床検査・遺伝子検査

60巻12号(2016年11月発行)

今月の特集1 血液学検査を支える標準化
今月の特集2 脂質検査の盲点

60巻11号(2016年10月発行)

増刊号 心電図が臨床につながる本。

60巻10号(2016年10月発行)

今月の特集1 血球貪食症候群を知る
今月の特集2 感染症の迅速診断—POCTの可能性を探る

60巻9号(2016年9月発行)

今月の特集1 睡眠障害と臨床検査
今月の特集2 臨床検査領域における次世代データ解析—ビッグデータ解析を視野に入れて

60巻8号(2016年8月発行)

今月の特集1 好塩基球の謎に迫る
今月の特集2 キャリアデザイン

60巻7号(2016年7月発行)

今月の特集1 The SLE
今月の特集2 百日咳,いま知っておきたいこと

60巻6号(2016年6月発行)

今月の特集1 もっと知りたい! 川崎病
今月の特集2 CKDの臨床検査と腎病理診断

60巻5号(2016年5月発行)

今月の特集1 体腔液の臨床検査
今月の特集2 感度を磨く—検査性能の追求

60巻4号(2016年4月発行)

今月の特集1 血漿蛋白—その病態と検査
今月の特集2 感染症診断に使われるバイオマーカー—その臨床的意義とは?

60巻3号(2016年3月発行)

今月の特集1 日常検査からみえる病態—心電図検査編
今月の特集2 smartに実践する検体採取

60巻2号(2016年2月発行)

今月の特集1 深く知ろう! 血栓止血検査
今月の特集2 実践に役立つ呼吸機能検査の測定手技

60巻1号(2016年1月発行)

今月の特集1 社会に貢献する臨床検査
今月の特集2 グローバル化時代の耐性菌感染症

59巻13号(2015年12月発行)

今月の特集1 移植医療を支える臨床検査
今月の特集2 検査室が育てる研修医

59巻12号(2015年11月発行)

今月の特集1 ウイルス性肝炎をまとめて学ぶ
今月の特集2 腹部超音波を極める

59巻11号(2015年10月発行)

増刊号 ひとりでも困らない! 検査当直イエローページ

59巻10号(2015年10月発行)

今月の特集1 見逃してはならない寄生虫疾患
今月の特集2 MDS/MPNを知ろう

59巻9号(2015年9月発行)

今月の特集1 乳腺の臨床を支える超音波検査
今月の特集2 臨地実習で学生に何を与えることができるか

59巻8号(2015年8月発行)

今月の特集1 臨床検査の視点から科学する老化
今月の特集2 感染症サーベイランスの実際

59巻7号(2015年7月発行)

今月の特集1 検査と臨床のコラボで理解する腫瘍マーカー
今月の特集2 血液細胞形態判読の極意

59巻6号(2015年6月発行)

今月の特集1 日常検査としての心エコー
今月の特集2 健診・人間ドックと臨床検査

59巻5号(2015年5月発行)

今月の特集1 1滴で捉える病態
今月の特集2 乳癌病理診断の進歩

59巻4号(2015年4月発行)

今月の特集1 奥の深い高尿酸血症
今月の特集2 感染制御と連携—検査部門はどのようにかかわっていくべきか

59巻3号(2015年3月発行)

今月の特集1 検査システムの更新に備える
今月の特集2 夜勤で必要な輸血の知識

59巻2号(2015年2月発行)

今月の特集1 動脈硬化症の最先端
今月の特集2 血算値判読の極意

59巻1号(2015年1月発行)

今月の特集1 採血から分析前までのエッセンス
今月の特集2 新型インフルエンザへの対応—医療機関の新たな備え

58巻13号(2014年12月発行)

今月の特集1 検査でわかる!M蛋白血症と多発性骨髄腫
今月の特集2 とても怖い心臓病ACSの診断と治療

58巻12号(2014年11月発行)

今月の特集1 甲状腺疾患診断NOW
今月の特集2 ブラックボックス化からの脱却—臨床検査の可視化

58巻11号(2014年10月発行)

増刊号 微生物検査 イエローページ

58巻10号(2014年10月発行)

今月の特集1 血液培養検査を感染症診療に役立てる
今月の特集2 尿沈渣検査の新たな付加価値

58巻9号(2014年9月発行)

今月の特集1 関節リウマチ診療の変化に対応する
今月の特集2 てんかんと臨床検査のかかわり

58巻8号(2014年8月発行)

今月の特集1 個別化医療を担う―コンパニオン診断
今月の特集2 血栓症時代の検査

58巻7号(2014年7月発行)

今月の特集1 電解質,酸塩基平衡検査を苦手にしない
今月の特集2 夏に知っておきたい細菌性胃腸炎

58巻6号(2014年6月発行)

今月の特集1 液状化検体細胞診(LBC)にはどんなメリットがあるか
今月の特集2 生理機能検査からみえる糖尿病合併症

58巻5号(2014年5月発行)

今月の特集1 最新の輸血検査
今月の特集2 改めて,精度管理を考える

58巻4号(2014年4月発行)

今月の特集1 検査室間連携が高める臨床検査の付加価値
今月の特集2 話題の感染症2014

58巻3号(2014年3月発行)

今月の特集1 検査で切り込む溶血性貧血
今月の特集2 知っておくべき睡眠呼吸障害のあれこれ

58巻2号(2014年2月発行)

今月の特集1 JSCC勧告法は磐石か?―課題と展望
今月の特集2 Ⅰ型アレルギーを究める

58巻1号(2014年1月発行)

今月の特集1 診療ガイドラインに活用される臨床検査
今月の特集2 深在性真菌症を学ぶ

57巻13号(2013年12月発行)

今月の特集1 病理組織・細胞診検査の精度管理
今月の特集2 目でみる悪性リンパ腫の骨髄病変

57巻12号(2013年11月発行)

今月の特集1 前立腺癌マーカー
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査②

57巻11号(2013年10月発行)

特集 はじめよう,検査説明

57巻10号(2013年10月発行)

今月の特集1 神経領域の生理機能検査の現状と新たな展開
今月の特集2 Clostridium difficile感染症

57巻9号(2013年9月発行)

今月の特集1 肺癌診断update
今月の特集2 日常検査から見える病態―生化学検査①

57巻8号(2013年8月発行)

今月の特集1 特定健診項目の標準化と今後の展開
今月の特集2 輸血関連副作用

57巻7号(2013年7月発行)

今月の特集1 遺伝子関連検査の標準化に向けて
今月の特集2 感染症と発癌

57巻6号(2013年6月発行)

今月の特集1 尿バイオマーカー
今月の特集2 連続モニタリング検査

57巻5号(2013年5月発行)

今月の特集1 実践EBLM―検査値を活かす
今月の特集2 ADAMTS13と臨床検査

57巻4号(2013年4月発行)

今月の特集1 次世代の微生物検査
今月の特集2 非アルコール性脂肪性肝疾患

57巻3号(2013年3月発行)

今月の特集1 分子病理診断の進歩
今月の特集2 血管炎症候群

57巻2号(2013年2月発行)

今月の主題1 血管超音波検査
今月の主題2 血液形態検査の標準化

57巻1号(2013年1月発行)

今月の主題1 臨床検査の展望
今月の主題2 ウイルス性胃腸炎

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